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日本再興機関ESPセクション ー虚空を超えてー  作者: 島田小里
第1.5章 日常とキャラクター紹介
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1.縣 譲

「そーいや、譲知らねー?」


 朝食を食べて居るとき、思い出したように克己が言った。


「知らなーい」


 と、食べながら麻里奈が返す。


「私も知らないわ。真維に聞いてみたら?」


 るいざが真っ当な意見を言った。


「だな」


 それに同意して、克己は鍵を取り出した。


「真維、譲今どこにいる?」


 すると立ち上がったウィンドウに少女が現れ、地図の一点を指差した。


『コンピュータールームのメインエリアに居るわよ』

「Thanks」


 礼を言って鍵をしまう。

 そんな克己に、不思議そうな顔をしてるいざが聞いた。


「譲に何か用?」

「ほら、この間言ってた車と外出の件」

「ああ、あれね」


 るいざは納得して、キッチンへと姿を消す。

 麻里奈は我関せずと朝食を食べている。


「ごちそうさま」


 手を合わせてそう言うと、克己は使用した食器をまとめ、キッチンのるいざの元へ持って行く。

 すると、キッチンでるいざにラップのかかった皿を渡された。中身はサンドイッチだ。


「ついでに譲に渡してくれる? また食事してないと思うから」

「OK」


 洗い物をるいざに渡し、サンドイッチを受け取ると、克己はコンピュータールームへと向かった。

 ここに来たときに居た職員達が引き上げてから2日、基本的に食事は克己、麻里奈、るいざの3人は揃って食べている。譲はマイペースなのか、作業に集中しているのか、食事をどうしているのかは良くわからない。よって、るいざが気付けば、こうして差し入れをしているのだ。

 連絡通路を歩きながら克己は端末を取り出し、譲の公開されているプロフィールを眺めてみた。


名前:(あがた) (ゆずる)

所属・役職:日本再興機関第7シェルター所長兼特殊能力課長

年齢:21歳(2136年4月1日現在) 誕生日:4月8日 性別:男

身長:174cm 体重:56kg 血液型:B

髪:淡い茶色 瞳:赤紫色

特記事項:旧日本軍に所属していた縣北都(ほくと)の子である。コンピューターについて秀でた知識を持つ。また、強い特殊能力(念動力)を持つ。

挿絵(By みてみん)


 大した情報は公開されていない。まあ、誰でも見られる情報などこんな物だろう。

 コンピュータールームに着くと、扉が自動で開いた。

 メインエリアに居るということだったが、どこに居るのか。克己がキョロキョロと探すと、入って左手のコンソールに突っ伏している譲の姿が見えた。どうやら眠っているらしい。

 どうしたものかと思っていると、気配に気付いたのか譲が目を覚まし、克己を見た。


「おはよーさん」

「何か用か?」


 寝ぼけたりはしていないしっかりした声だった。まだそこまで克己に気を許していないと言うことなのだろう。

 克己は譲に歩み寄ると、手に持っていたトレイをコンソールの空いた場所に置いた。


「朝飯。るいざから」

「ああ、Thanks」

「それと、車借りて外出ても良いか?」

「構わない」


 さらりと返された答えに克己が驚く。


「キーは部屋の鍵で代用出来る。出入りの履歴は真維に言っておいてくれ」

「OK。るいざも良いか?」

「良いよ。何で?」

「いや、前に外に出るなって言ってなかったか?」


 克己がそう言うと、譲は少しの間の後、思い出したように言った。


「ああ、あの時は状況が状況だったからな。今はもう問題無い。真維に登録していけば、俺の許可も特に要らないぞ」

「イヤ、それはさすがにどーよ?」


 コイツ面倒臭いだけなんじゃないのか?と言う言葉は辛うじて飲み込んだ。


「じゃ、借りるわ。夜には戻るから夕食は一緒に食べようぜ」

「作業がキリになったらな」


 これはアテにならないヤツだな。

 克己が溜め息を吐いたとき、思い出したように譲が言った。


「そうだ。もう少し経ったら能力測定とトレーニングが始まるから、それまでに引っ越しの後始末は終わらせておいてくれ」

「もう少しってどのくらい?」

「一週間はかからない」

「はいよ。2人にも伝えておく」

「よろしく頼む」


 譲がサンドイッチを食べ始めたのを確認して、克己はコンピュータールームを後にした。






 テラスに戻ると、るいざがお茶を飲みながら、1人で休憩しているところだった。


「おかえりなさい」

「ただいまー」

「譲、食べた?」

「食ってたよ」


 その言葉にるいざはホッと胸をなで下ろす。


「なんだか野生の動物を手懐けてる気分ね」

「確かに」


 麻里奈はコミュニケーションに事欠かないが、譲は放っておくと遭遇すら出来ない事がある。


「まあ、そのうち慣れるだろ」

「だと良いんだけど」

「今回は、長い付き合いになりそうだしな」

「それもそうね」


 こんなご時世だ。短い付き合いの方が多い現状で、珍しくも長い付きあいになりそうな相手が居るというのは、なんだか喜ばしい。


「そう言えば外出OKだって。真維に言っておけば自由にして良いらしい」

「そうなのね。良かったわ」

「荷物、今からでも取りに行くか?」

「そうね。思い立ったが吉日とも言うしね」


 そう言うと、るいざはカップを片付けるために立ち上がった。


「麻里奈に昼飯の伝言もしていかないとな」

「忘れたら大変よ。後で怒られちゃうわ」

「半泣きになって叫ぶ姿が目に浮かぶな」

「笑い事じゃないわよ」


 カップを洗い、麻里奈へこれから出掛ける事を伝えると、2人は外へ出るべくエレベーターへと乗り込んだ。


「そう言えば、そろそろトレーニングが始まるらしい」

「いよいよ本格的に始動するのね」

「ああ。生き抜いてやろうぜ」

「ええ。そのためにも、トレーニング頑張らなくちゃね」


 少し不安そうな表情になったるいざの背を、克己は励ますようにポンポンと叩いた。


「大丈夫。なんとかなるって」

「そうね。なんとかしなくちゃね!」


 2人はエレベーターを降り、車庫へと向かう。


「まずは、引っ越しを終わらせないとだな。大事な物なんだろ?」

「そうよ。私の宝物たちよ」


 るいざが胸を張って言った。

 少し歩くと車庫に着く。そこには一台だけ車が止めてあった。

 克己は車の運転席に座りながら、操作を確認する。


「夕食に譲を誘ったから、それまでに帰ってこないとな」

「それは重要ね。さ、早く行きましょう」


 軽口を叩き合いながら、克己は車を発進させた。

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