表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
156/311

47.対アメリカ連合軍③

「消えた……?」


 麻里奈が呟く。


「多分、テレポーテーションで飛んだのよ。それより、早く克己を治療しないと!」

「あっ! そうだった! でも、どうしたら……」


 車までは距離がある。それに、まだ拠点の制圧も全ては出来ていない。こんな状況で海軍の助けも期待出来ない。

 と、近くの拠点から突然、銃弾が飛んでくる。


「きゃあ!?」


 驚いた麻里奈が悲鳴をあげるが、克己のシールドに阻まれて事なきを得る。

 が、シールドも長くは続かないだろう。


「出血が激しすぎる……」


 るいざが眉をひそめて言うと、通信機から譲の声が響いた。


『克己、車まで飛べるか?』

「いや。悪い、ちょっと無理そうだわ……」


 荒い息を吐きながら、克己が言った。


「発火!」


 麻里奈は咄嗟に、近くの拠点へ火を放つ。

 これで少しでも時間が稼げれば、譲が何とかしてくれるに違いないと、麻里奈は思ったのだ。


『分かった。海軍の車を回すよう手配するから、少しだけ待ってくれ。シールドはもつな?』

「もたせるしかないだろ?」


 苦笑した克己に、譲は少し安心する。時間との闘いではあるが、今すぐにどうこうという問題ではないらしい。


『るいざと麻里奈は周りから攻撃を受けないよう、遠距離攻撃していてくれ』

「了解!」






「あっ! 克己のバイタルデータのゲージが黄色になった!」


 コンピュータールームで椅子に座っていた憲人が、立ち上がり言った。


「何かあったな」


 おそらく、沙月の置き土産だろう。それにしたって、克己のシールドでここまでのダメージは無いはずだ。


「何かに気を取られたな」

「譲! 克己は大丈夫なの!?」


 克己のバイタルデータはイエローからオレンジへ変わる辺りで止まっている。

 心配する憲人に、譲は言った。


「今すぐどうこうってことは無いだろう。ただ、時間がかかるとマズいな」


 敵の母艦がテレポーテーションで飛んだと言うことは、増援は無いと言うことだ。そして、沙月の攻撃も。

 譲は海軍に車を回して貰うよう手配しつつ、通信を入れる。


「克己、車まで飛べるか?」

『や。悪い、ちょっと無理そうだわ……』


 予想通りの答えが返ってきた。譲は海軍へ至急、車を回すよう依頼し、通信を続ける。


「克己君のシールドを突破するとはね」


 創平が愉快そうに言う。譲は通信を終わると、ウィンドウを一気に開いた。


「創平、残りはこれで全部か?」

「ああ。でも、克己君の方は良いのかい?」

「すぐに終わらせるから問題無い」


 譲は小さく息を吐くと、ざっとウィンドウの中身を把握し、一気に仕上げてしまう。


「さすが、本気になった譲は違うね」


 創平は苦笑しつつも、内容を確認し、動作チェックをかけていく。

 憲人はそんな2人のやり取りに、やきもきしつつ、メインモニターの克己の体力ゲージを見ていた。克己の体力ゲージは、少しずつ、だが確実に減っている。そして、麻里奈とるいざのゲージも僅かずつだが、減ってきている。


「譲……」

「少し待っていろ。憲人」


 そう言われ、憲人は黙り込む。憲人には、譲がどうしてそんなに冷静なのか解らなかった。


「OK」

「了解。テストプログラムを流すよ」


 譲が言うと、即座に創平はテストプログラムを流す。そして、結果が出るより先に、海軍の車が克己たちの元へ到着したようだった。






 発火と雷電で敵を減らしていると言っても、ゼロに出来ているわけではない。たまに銃弾が飛んでくる。しかも克己の集中力も限界が近いのか、ほとんどの弾はシールドで弾かれるが、たまに通過する物も出始めた。

 このままでは危ない。

 そう思った瞬間、海軍の車が敵からの攻撃を遮るように横付けされた。


「お待たせしました! 自分は海軍第3部隊所属、岡田(おかだ)清澄(きよずみ)少尉であります! 陸軍拠点までの送迎の任務で参りました!」


 運転席の男がそう自己紹介する。


「乗ってください! 拠点は海軍が殲滅します!」

「ありがとう!」


 るいざはお礼を言うと、克己に肩を貸し、車に乗せる。そして、自分も車に乗り込む。麻里奈はこれで最後とばかりに、思い切り炎をお見舞いして、2人に続いて車に乗った。


「飛ばします! 気を付けてください!」

「了解!」


 言葉通り、岡田はアクセルを勢い良く踏むと、拠点と銃弾の間をかいくぐり、陸軍の拠点へと最短距離で向かう。


「麻里奈、車の運転、頼んでも良い?」


 るいざは自分たちの車に戻った後の事を、麻里奈と打ち合わせる。

 既に敵の拠点からは距離が出来ている。陸軍の拠点からESPセクションまではおそらく安全だろう。だとすると、自分がすべき事は。

 麻里奈は頷いて、銃を仕舞う。


「運転は任せて。るいざは克己の止血をお願いね」

「ええ。でも、傷が深いから、止血仕切れないかもしれないわ」

「わかったわ。出来るだけ急いで運転する」

「お願い」


 話してる間にも、陸軍の拠点が見えてきた。

 克己は出血が多いせいか、すでに意識が曖昧になっているようだ。

 岡田は陸軍の拠点へ勢い良く突っ込むと、ESPセクションの車の隣に横付けし、ぐったりしている克己を運ぶ手助けをしてくれた。


「岡田さん、ありがとう!」

「いえ! これが仕事ですから! では私は戻ります。ご無事を祈っております!」

「ありがとう!」


 そう言うと、岡田はまた車を飛ばして先ほどの戦場へと戻って行った。

 麻里奈は運転席に乗り込むと、シートの位置を調節して、エンジンをかけた。


「るいざ、準備はいい?」

「いいわ! 飛ばしちゃって!」

「了解! いっくよー!」


 麻里奈は勢い良くアクセルを踏んだ。






 岡田が3人を送迎している間に、テストプログラムは問題無く終わった。


「完璧だね。さすが、譲だ。最初からあの早さで手を出してくれても良かったんだよ?」

「やだね。それはアンタの仕事だろ。それより、そろそろ時間だ。見送りは無いが、構わないな?」

「ああ。今はそれどころじゃないだろうしね。プログラム、ありがとう」

「どーいたしまして」


 譲に手を振ると、創平はコンピュータールームを出て行った。

 譲はウィンドウを1つ開いて、創平の監視用にする。

 それと同時に、車に乗ったるいざへと通信を繋ぐ。


「るいざ。後ろの荷物の中に救急箱がある。それで止血をしてくれ。大きい傷は手前を縛って圧迫して、血流を緩やかにしてからシートを貼れ」

『傷が多いのだけど、どれを優先したら……?』

「血の色が鮮やかな赤のところだな」

『力いっぱい縛って平気? 壊死しちゃったりしない?』

「克己は筋肉があるから、るいざの力なら大丈夫だろ。内蔵が出たりはしてないか?」

『た、多分それは無い、と、思う……』


 さらりと告げられた質問に、るいざだけでなく憲人も驚いて目を見開く。


『とりあえず止血するわ』

「こっちの準備はしておくから、気負わなくて良いぞ」

『……うん』


 るいざは少し落ち着いた声で返事をした。

 その間にも、一度部屋に戻った創平は荷物を持って車に向かう。


「今回はすんなり帰ってくれるようだな。憲人、医務室に移動するぞ」

「え!?」


 譲はウィンドウをいくつも開いたまま、コンピュータールームを出て行く。

 憲人は慌ててそれを追った。


「譲の頭の中ってどうなってるのさ……」


 平行で色々な事が進みすぎて、憲人はついて行けない。

 譲が医務室で克己を迎え入れる準備を始めると、ちょうど創平が車で出て行った。それを確認して、譲は1つウィンドウを閉じた。

 残りは克己たち、3人のバイタルデータと通信機からのデータやらなんやらである。


「沙月が相手と言うことは、かまいたちだろうから、上手く塞げば輸血くらいでいけるか?」


 譲は呟きながら手洗いをして、消毒用の薬剤や縫合用の糸と針、固定用テープを出していく。

 そうして、準備が終わると、憲人を医務室に残して、譲は駐車場へと移動した。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ