45.対アメリカ連合軍①
コンピュータールームへ来た譲を見て、創平はおやという顔をした。
「緊急出動はどうしたんだい?」
「俺以外の3人で出る」
「珍しいね」
「たまには良いだろ。トレーニングではよくやっている組み合わせだしな」
譲はいつもの位置に立つと、ウィンドウとメインモニターを起動した。
「憲人はコーヒーでも飲んで休憩していてくれ」
「はーい」
憲人は言われるがままに、邪魔にならないようコーヒーサーバーのところで椅子に座る。
譲はインカムを付けると、通信をスタートする。
「揃ったか?」
『麻里奈がまだだな』
「場所は分かるな?」
『ああ。マップは把握した。この印目指して行けばいいんだろ?』
「ああ。そこに車を止めて、テレポーテーションで接近してくれ。接近範囲は麻里奈の透視次第だ」
『トレーニング通りだな』
『おまたせ!』
『揃った。んじゃ、行ってくる』
「ああ。くれぐれもシールドを切らさないようにな」
『OK』
メインモニターに、駐車場から出て行く車が映される。
「わあ。メインモニター、迫力あるね」
「デカいからな」
譲はウィンドウを操作すると、マップをメイン表示にし、車の現在位置を表示する。
それ以外に、3人のバイタルデータと、本部とのやり取り、現地のアメリカ連合軍の様子をメインモニターに表示する。
「凄い……」
憲人が感心したように呟く。
が、譲はそこまですると、現地に車が到着するまでする事が無いので、創平の方を振り返った。
「で、続きをやるが、どこまで進んだ?」
「平行作業とは恐れ入るよ。分析回路のDセクションの254行目で詰まっている」
「分岐のところか」
「ああ、分岐がスペルミスしてるのか」
「そっちの訂正は任せた。俺は分岐先を修正してる」
「了解」
目の前で繰り広げられる会話と、すごい早さで動いていくウィンドウに、憲人は呆気にとられてしまった。最近、勉強の範囲に情報工学も入ったから、余計に譲と創平の凄さがわかり、感心してしまう。
2人はしばらくシステム作成に集中していたが、克己から通信が入った事で、譲はインカムのマイクをオンにした。
『もうすぐ着くけど、現地には誰か居るのか?』
「陸軍の第2部隊が居るはずだ。車で判別してくれるよう要請は出してある。飛んだ先は海軍の第1~第3部隊が出ている」
『OK』
克己はインカムの電源を入れっぱなしにして、第2部隊との合流点へと車を走らせた。
「ESPセクションだけど、車はどこに止めればいい?」
克己は第2部隊の人間が数人いる場所に、勢い良く車で突っ込んで、近くの兵士に聞いた。ちゃんと、人は轢かないように注意したが、兵士たちはさすがに驚いたらしく、少し怯えた顔をしていた。
「この先を右に行ったところに、止めてください」
「OK、Thanks」
克己は再度アクセルを踏むと、駐車場へと車を止めた。
「着いたぞ」
「ありがとう」
「さあ、行きましょう!」
久々の出撃に張り切っているのは克己だけではなかったようで、麻里奈も、銃を構えてやる気満々だ。
『今回は可能なら捕虜を捕まえたい。それが無理なら船を沈める。それも無理なら、追い払え』
「了解」
麻里奈が答えると、船までの道筋を透視する。
「今回は、船に能力妨害装置があるわ。それ以外は無いみたい。ただ、準備する時間があったから、既に拠点が数カ所出来ているわ」
『拠点は放置で構わない。邪魔なモノ以外は海軍に任せろ』
「了解。場所だけ送るわ」
麻里奈はウィンドウを立ち上げると、数カ所にバツ印を付けて、譲に送る。
『分かった。これは海軍に回す。船の手前の2カ所だけはつぶした方が良い』
「OK。先に左から行くか」
「克己、一度で飛べる?」
るいざが念のため確認すると、克己は頷いた。
「船の妨害装置が気にかかるけど、その手前までなら行けると思う」
最近のトレーニングの成果が出ていて、克己のテレポーテーションは飛距離がかなり伸びている。
「飛んだら、るいはテレパシーで能力者を探してくれ。麻里奈は妨害装置の場所と、敵の配置を」
「了解!」
2人の返事を確認して、克己は言った。
「んじゃ、突っ込む」
『ああ。細かい事は任せた』
「OK。行くぞ!」
そう言うと、克己はテレポーテーションでアメリカ連合軍の船の手前の左の拠点へと飛んだ。