表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
128/311

19.新しい能力について

 翌日の朝食の最中、譲が唐突に言った。


「しばらく克己には自主トレに集中してもらう。よって、トレーニングは午前、麻里奈、午後はるいざで固定するから」


 その言葉に、るいざが不思議そうな顔をした。


「かまわないけど、どうかしたの?」

「アスポートを身に付けたいらしい」

「アスポート?」


 麻里奈とるいざが揃って聞いた。

 すると、創平が答えた。


「手を触れていない物体を、移動させる能力だね」

「へー。そんな能力があるのね。さすが創平ちゃん。詳しいわね!」


 麻里奈が創平を誉めると、るいざが譲に聞いた。


「でも、どうして急に?」

「昨日の中華統一軍に、その能力を持っているヤツが居る可能性が高いんだ。で、克己にも出来る可能性はあるって話をしたら、トライしたいと言ってきた」

「なるほど。テレポーテーションと同じ系統になりそうだものね」

「ああ。まあでも、あくまで可能性が高いだけで、違う能力だからな」

「解ってるよ。無理かもしれねーけど、一週間だけ、集中してトレーニングしてみたいんだ」


 克己が言った。

 その言葉に、麻里奈とるいざは微笑んだ。


「良いんじゃない? やってみないことには解らないしね」

「もし身に付いたら便利そうだし、頑張って!」

「麻里奈は農作業に使えそうだとか思ってるだろ!?」

「当然よ! 色々使えて便利そうだもの」

「ちなみに、譲は既に使えるぞ」


 克己が道連れとばかりに、暴露する。と、麻里奈は呆れたような顔をした。


「本当に譲って、何でも出来るのね。逆に、持ってない能力とか、無いの?」

「だから、何でも出来る訳じゃない。植物を操るなんかの、特殊枠は基本的に全く使えないからな」

「ああそうか。それがあったわね」


 麻里奈が納得する。


「でも、そのアスポート? って言うのを、新たに身に付けるって難しそうね。今までは持ってる能力を使いこなすトレーニングしかしてなかったし」


 るいざの言葉に、譲が言った。


「基本的に、最初に目覚めた能力以外は使えるようになる確率が低いんだ。まあ、研究例が少ないから、単にトライしていないだけで実際は出来るのかもしれないが。そういう意味でも、今回の克己のチャレンジは意味があるんだ」


 すると、創平も口を開いた。


「そうだね。持っている力を使いこなす方に、今はどこの国も集中しているが、トレーニングのノウハウが出来てくれば、新しい能力の開発に乗り出すのは当然だろう。そう考えると、非常に価値のあるチャレンジだね」


 すると、譲は創平を見て聞いた。


「そういえば、ドイツにはアスポート出来る人間は居るのか?」

「居るには居るが、そんなに強い力じゃないよ」

「強くなくてもかまわない。能力発動のコツを聞きたいんだ」

「君の説明では不十分なのかい?」

「サンプルは多い方が良いだろ?」

「それじゃ、後で聞いておくよ。今は向こうは夜だからね」

「頼む」

「了解」


 その言葉を合図に、話が終わり、朝食の場は普段の世間話になった。






「私たちも、何か新しい能力を身につけた方が良いのかしら?」


 麻里奈が手伝って、朝食の片付けをしている最中、るいざがふと言った。


「うーん、どうなんだろう」


 麻里奈はお皿をすすぎながら、考える。


「今ある能力を伸ばすのも大事だと思うし。そりゃ、新しい能力が身に付けば良いとは思うけど。特に、私なんて2つしか能力が無いわけだし? るいざは3つもあるんだから、それを伸ばした方が良いんじゃない?」

「予知は余り使いこなせてないしね」


 3つ能力があると言っても、予知は今のところ、自分の意思で使いこなせているかと言えば否である。


「そうよね。私は今ある能力を使いこなせるように、トレーニング頑張るわ」


 るいざが言うと、今度は麻里奈が聞いた。


「私は、もう一つくらい能力身に付けるべきだと思う?」

「うーん。でも、身につけようと思って身に付くものでもないし、克己の結果を見てからでも遅くはない気がするわ」

「確かにそうね。克己が新しい能力を身に付けられたら、コツを聞いて私もやってみることにするわ」

「うん。それが良いかも」


 何も2人同時に、新しい事にチャレンジする必要は無いだろう。と言うか、効率が悪い。


「それにしても、やっぱり海外には色んな能力を持った人が居るのね」


 るいざが、お皿を洗い終わり、流しを片付けはじめる。麻里奈も、最後のお皿を流し終わり、水切りカゴに入れた。


「日本はウイルスの影響が少ないんだっけ?」

「そうらしいわ。それに加えて少子高齢化社会だったから、能力者も少ないのよね」

「譲がスカウトした人は、もう少し居たんでしょ?」

「何人って言ってたかは忘れちゃったけど、でも10人くらいに声を掛けたらしいわよ」

「じゃあ、断った人も居たのね」

「そうね。戦争する事になるもの。それと、亡くなった人も居たみたい」

「能力を使いこなせなくてっていう、アレね。そう考えると、千鳥ちゃんじゃないけど、新人さんが来る可能性もあるのよね?」


 麻里奈が今気付いたとばかりに言うと、るいざも驚いた顔をした。


「そう言えばそうよね。いつまでもこの4人ってことは無いわよね? 譲、新人スカウトなんてしてるのかしら?」

「してなさそう」

「そうよね……」

「今度、聞いてみるわ」

「お願い」


 そう言うと、片付けが終わった2人はそれぞれの予定をこなすべく、麻里奈はトレーニングルームへ行き、るいざはお昼の支度を始めるのであった。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ