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34.譲の調べ物

「そーいや、お前は本部で何を調べていたんだ?」

「ああ。中華統一軍の件だ」


 さらりと答えた譲に、克己が神妙な表情をする。


「それって、あんまり突っ込んで調べない方が良いヤツじゃねえの?」

「神崎さんにも言われた」


 譲の言葉に、克己はやっぱり危ない事かと納得する。


「所詮は下っ端なんだし。別にお前だって、日再で出世したいとか思ってるわけじゃないんだろ?」

「これ以上出世したら、日本再興機関長になっちまう」

「そりゃ、日再の将来が不安すぎるな」


 遠慮のない克己の発言に、譲は反論せずに頷いた。

 譲とて、正義感や日再の為などという目的で調べ物をしているわけではない。

 降りかかる火の粉を払いたい。そのための武器として情報を集めているだけだ。まあ、単純に譲が気になるからと言うのもあるが。


「で、何か解ったのか?」

「結局、足を突っ込むのか」

「気にはなるじゃん」


 フリーダムな克己に、譲はため息をついて食べ終わった皿を押し付けた。


「情報には対価が必要だよな?」

「へいへい。洗い物くらいいくらでも」


 皿を引き取って、克己が言う。譲はコーヒーを一口飲むと、机にひじを付いて言った。


「日再の中に、中華統一軍と繋がっているヤツがいる」

「だろうな」

「今回、捕まえたヤツらも、そろそろ脱獄している頃だろ」

「ってことは、結構上の立場のヤツか」

「ああ。一派で、それなりの人数ひっかかったな」


 譲の言葉に、克己はコーヒーを飲み干すと、皿に重ねて置いた。


「中華統一軍はヨーロッパ連盟と敵対しているよな?」

「ああ」

「じゃ、西塔はかなり微妙な力関係の上で来てたってことか」

「そうなるな」


 譲もコーヒーを飲み干すと、席を立った。


「まあ、日再に居るのは中華統一軍と繋がってるヤツらだけでもないがな」

「ヨーロッパ連盟やアメリカ連合軍と繋がってる派閥も居るって事か?」

「当然」

「これだから政治や戦争は嫌なんだ」


 克己はボヤくと、皿を持って立ち上がった。そして、譲のマグも取りキッチンへと向かう。


「悪いことばかりでもないさ。お互いに牽制しあっているおかげで、平和が保たれてるんだ」

「張り詰めた糸だけどな」

「それでも、そのおかげで自由に出来てるわけだし?」


 譲の含みのある言葉に、克己が譲を見た。


「……まさか、その派閥争いを裏で糸引いてるんじゃ無いだろうな?」

「さすがにそこまではしていない。多少の加減を操作してるだけだ」

「お前、何気に日再を牛耳ってるだろ……」

「人聞きの悪い。俺はここを平和に保つよう努めているだけだ」


 こういうのを、敵に回したくないと言うのだと、克己はしみじみ思った。この分だと他の国と繋がっていても不思議じゃない。いくら何でもそれは無いだろうが。


「まー、俺らに害が無ければいーや」


 藪をつついても良いことはない。克己は、自分とるいざ、麻里奈、憲人、譲の身の安全が保証されればそれで良い。


「お前らしい回答だな」


 譲は克己のそういうところが、気に入っていた。ここに居る連中はそういうヤツらばかりで、好ましい。


「それじゃ、俺は部屋に戻る」

「おう。おやすみ」

「おやすみ」


 挨拶を交わすと、譲は自室へ戻っていった。

 話しているうちに、遅い時間になっている。克己も洗い物を終わらせると、寝るために部屋へと戻るのだった。






 部屋に戻った譲は、ドアを閉めると同時に真維を起動し、ウィンドウを一気に展開した。


「検索結果は?」

『ゼロ件ね』

「そうか……。範囲を広げてみたらどうだ?」

『古い記録なら、可能性があるものがあるわ』

「どんな記録だ?」

『クローン技術と、人工の人体生成について』

「可能性は高いな」

『でも、その施設は20年以上前に火災により消失しているわ』

「消されたか」

『おそらくね』

「実験施設の名称は?」

『国立生物学研究所』

「無難な名前だな。出資もとと場所はどこだ?」

『表示するわ』


 真維がウィンドウを開き、そこに一覧と地図を表示する。


「憲人が見つかった場所とは、近くもないな」

『そもそも、火災が激しかったらしくて、何も残らなかったみたい。その後、再建したって話も見ないわ』


 譲は少し考えると、当時の記録や記事を検索した。が、大した情報は出てこない。


「この施設の記録は、日再の倉庫に眠っているか?」

『あったとしても、表向きのものだけだと思うわ。画像で保管されたものはいくつかあるけど』


 真維が画像で保管されている当時の文書を表示する。譲はそれをざっと見て、ため息をついた。


「この分だと保管されている文書も、真維の言うとおり、改ざんされている、公式に発表出来る内容だろうな」


 ウィンドウを数枚消して、地図を眺める。

都内にあったその施設は、ここから近くも無ければ遠くもない。


「ダメ元で今度行ってみるか」


 譲はそう言うと、ウィンドウを消す。


『それは良いけど、そろそろ寝た方が良いわ』

「ああ。わかってる」


 譲はそのままベッドに倒れ込んだ。


『シャワーは?』

「明日浴びる……」


 そのまま、譲は眠りに落ちていった。

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