表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
104/311

31.陸軍第6部隊との任務

 車の中を見回し、克己は譲に言った。


「任務っつーわりに、和やかじゃん」


 車はトラックのような形をしていて、荷台の箱の中の両側に椅子がついていて、そこに座りきれない人間は床に座っているが、そこそこの人数が乗っているせいで、賑やかだ。


「今回は、そこまでドンパチしなさそうだからだろ」

「ふーん」

「実際はどうか解らないがな」

「だな」


 一応克己と譲は椅子に座っているが、クッションがきいてなくて座り心地は悪い。

 できれば早く到着して欲しいところだ。

 小一時間程走ったところで、車は停車した。

 ここで、相手を待ち構える作戦だ。

 主に陸軍が担当しているので、特殊能力課の出番は、敵に特殊能力持ちが居た場合と、陸軍が押された場合のみだ。

 克己は他の兵士と一緒に車を降りたが、譲はそのまま椅子に座ってのんびりしている。


「降りないのか?」

「ここでいい。お前も離れすぎなければ、好きな場所に居て良いぞ」

「そう言われてもなー」


 顔見知りが居ない上に、他の兵士は仕事がある。無駄口をたたいているわけにもいかないので、克己も車を降りた場所でストレッチしつつ待機することにした。

 しばらくすると、敵を迎え撃つ準備が出来たようで、車周辺はほぼ人が居なくなる。

 近くに本陣があるので、情報はそこに行かないと入ってこない。が、それはあくまで本来ならの話だ。


「譲、敵の動きは解るか?」

「もうすぐ、こっちの部隊とぶつかる」


 やはり、透視で様子を覗いていたらしい。

 と、譲が入り口付近の椅子まで移動した。


「帰りに試したいことがあると言ったが、今でも構わないな?」

「は? まあ、暇だけど?」


 克己はトラックに背中を預けて、譲のそばに立つと、譲が克己の肩に手を当てた。


「目を閉じてみろ」

「ああ」


 言われて素直に克己が目を閉じる。当然なにも見えない。

 それにかまわず、譲が言った。


「映像をそっちに流すぞ」

「へ?」


 言われた瞬間、目の前に景色が広がった。

 視界全部とはいかないが、見る分には問題ない広さだ。

 その映像は、空から俯瞰で車の走る様子を捕らえている。


「これ、もしかしてお前の透視してる映像か?」

「ああ。接触テレパシーでお前の方へ流し込んでみた」

「すげー。メッチャ便利じゃねーか」


 映像では、もうすぐ陸軍が仕掛けた地雷群に車がさしかかるところだ。


「これ、麻里奈も出来るのか?」

「透視+テレパシーが必要になるから、麻里奈とるいざの組み合わせなら、もしかしたら出来るかもしれないが、難しいだろうな」

「なるほど。お前が両方持っているから出来るだけってことか」

「ああ。それと、接触していないと出来ないから」

「から?」

「お前が余計な事を考えると、それまで見えてしまうな」


 それは結構な問題なのではと思いつつ、克己は朝のハンバーガーの事を思い出してみる。と、譲に怒られた。


「腹が減ることを考えるな」

「怒るとこ、そこかよ」


 映像では、先頭車両が地雷でタイヤがパンクし、立ち往生したところだ。

 地雷と言っても、出力は抑えられており、人が死ぬような事にはならない。


「上手く足止め出来たようだな」

「ああ。この分だと、俺たちの出番は無いな」

「ひょっとして透視だけじゃなく、テレパシーも飛ばしてるのか?」

「ああ。今のところテレパシーを使っている気配も、それっぽい会話もない。こっちの無線の傍受の方が騒がしいくらいだ」


 そう言って、譲は耳を指した。

 どうやらピアスをスピーカーモードにして、無線の傍受もしていたらしい。


「まさか、真維はここでも使えるのか?」

「簡単な機能だけはな。お前のも無線の傍受くらいなら聞けるぞ」

「マジか。そういうことは早く言ってくれ」


 克己は一旦目を開き、ウィンドウを起動すると日再の無線にチャンネルを合わせる。

 目を開くと映像がダブってちょっとクラクラしたため、すぐに目を閉じる。

 無線では、作戦が第二段階へ移行したことを告げている。

 車から降りてくる敵に対し、防護盾を持った兵士が前を固め、鶴翼の陣形を取り敵を待つ構えだ。


「早く終わるかな?」


 克己が早くも飽きて、譲に聞いた。


「時間の問題だろうな」


 譲は克己から手を離すと、車から降り、本陣へ向かって歩いていく。


「シールドだけは張っておけ。俺は一応顔だけ出してくる」


 さすがに本陣に顔も出さないで、車に乗っているだけと言うわけにはいかないらしい。

 克己は少し考えたが、暇だったので譲について行くことにした。






 結果的に、少々時間はかかったものの、敵のほぼ半数以上を捕虜として捕らえることができ、味方の損害も想定より少ないという、上々の結果になった。

 相手は予想通り、中華統一軍で、能力持ちは居なかったようだ。

 帰りの車に揺られながら、克己がうとうとしていると、譲から急にテレパシーが送られてきた。


『おかしいと思わないか?』

『へ? 何が?』

『偵察にしても、やり方が雑すぎるだろ』

『ああ。そうだな。これじゃ捨て駒扱いだもんな』

『何か引っかかるな』


 譲はそう言うと、考え込んでしまう。

 そこまで深く考えていなかった克己は、言われてみて、確かに違和感を感じたが、考えても解らないし、そもそも考えるのは自分の仕事でも無いので、早々に考えることを放棄した。


『お前なあ……』


 譲からツッコまれるが、克己はしれっと答えた。


『考えるのは課長のお前に任せる』

『こういう時だけ持ち出しやがって』


 実際、ESPセクションではほぼ上下関係は無い。譲が課長で所長という事も忘れられがちだ。なんなら、胃袋を握っているるいざの方が強いまである。


『それより、夕食に間に合うかな?』

『……間に合うだろ』


 譲は諦めたように返事を返した。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ