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30.任務説明

 朝食を取り、克己と譲は一足先に駐車場へ向かった。


「運転は俺で良いのか?」

「ああ、頼む」


 譲は助手席へ座ると、ウィンドウを立ち上げた。

 運転席に座りながら、克己がチラリとウィンドウを見ると、表示されているのは地図のようだった。


「酔うなよ?」

「平気だ。それより、音を流しても良いか?」

「かまわねーけど、珍しいな」


 このご時世、ラジオなんてものが有るわけがない。かといって、傍受する無線も無いだろう。

 一体何を聞くのかと思ったら、車のスピーカーから流れてきたのは外国語だった。


「……もしかして中国語か?」

「良く解ったな」

「なんとなーく、消去法の結果」


 克己は英語が母国語で、日本語も話せるが、その他にフランス語の日常会話が出来る。その影響で、ヨーロッパ付近の言語なら、なんとなくわかる。加えて、中国語は話せないまでも、中華系の人間はアメリカにも多かったので、多少の聞き覚えはあった。


「今回の相手は中華統一軍か?」

「その可能性が高そうだが、まだその情報はうちに来ていない事になっている」

「は?」


 一瞬何のことか解らず聞き返した克己だったが、すぐに納得した。


「ああ。そーいや、本部のシステムを掌握してるんだったな」

「そう言うことだ」

「知らないふりをしとけば良いわけね」

「Yes」


 譲はウィンドウを弄りながら、中国語を聞いているが、克己は運転していて単調なところに、知らない言語が流れている状態のため、授業中は眠くなる現象で、だんだんまぶたが重くなってくる。

 それを振り払うように、口を開いた。


「今回は陸軍の、どこの部隊と一緒なんだ?」


 邪魔をするなと怒られるかと思ったが、譲は普通に答えた。


「第6部隊だな」

「第6。いくつまであるんだ?」

「陸軍は9までだ。第1~第3が関東担当、第4が北方面、第5は東海・中部、第6は日本海側、第7は関西以西」

「遠くに行くほど大雑把なんだな」

「ああ」

「で、第8と第9は?」

「第8は内部で、第9は諜報部だ」

「ふーん。諜報部なんてあるんだな」

「情報は重要だからな」


 そう言うと、譲はウィンドウを消し、音も消した。


「良いのか?」


 克己が聞くと、譲は伸びをしながら答えた。


「とりあえず思い出せたからもう大丈夫だ。それに、お前に寝られても困るしな」


 お見通しだったらしい。

 それにしても、思い出せたとは。


「お前は何ヶ国語話せるんだ?」

「さあ?」

「さあって」

「数えたことがないから解らない」

「そのくらい色々話せるわけだな」

「まあ、あちこちの国に居たからな」


 譲が自分の過去を話すとは珍しい。

 克己はついでのように聞いた。


「ちなみに母国語は何なんだ?」

「ドイツ語か日本語か、迷うところだな」

「へえ」


 とりあえずドイツに住んでいたことはあるらしい。


「それより、帰りに少し試したい事がある」

「試したい事?」


 唐突に変わった話題に、克己が聞き返す。


「また帰りに言うつもりだが、忘れてたら言ってくれ」

「ああ、お前忘れそうだもんな」


 本人にも自覚はあったらしい。

 そう思った克己を睨んで、譲は言った。


「余計なお世話だ」






 集合場所である陸軍の会議室へ行くと、そこには一條圭吾を始めとするメンバーが、既に揃っていた。


「特殊能力課、2名到着」


 ざっと向いた視線を気にした様子もなく、譲が言う。

 すると、一條が譲を視線で呼びつける。


「お前はその辺に居ろ」

「OK」


 克己は空いている部屋の壁にもたれて立つ。

 譲は上層部が集まっているところへ歩いていった。


「待っていたよ」

「まだ定刻にはならないが?」


 一條の言葉に譲が返すと、陸軍大将の武藤尊が、口をへの字に曲げて言った。


「相変わらずの減らず口だな」

「偵察隊の対応にあんたたちが居るなんて、暇なのか?」

「小僧がっ……」

「まあまあ。2人ともその辺にしてくれ。みんなが怯えるからね」


 譲を良く思っていない武藤が手を出しかけたところで、一條が制止した。


「今日は共同任務だからね、ケンカは程々にしてくれよ」


 そうまとめると、一條は任務の説明に入った。


「今回の任務は、日本海側から船で上陸したと思われる部隊、約20名弱の確保だ」


 空いていた壁に、地図が表示される。

 すると、一條に変わって武藤が前に出た。


「続きは私が。相手はこのルートで、ゆっくり進んでいる。おそらく、日本の復興状態を探りながら進んで居るものと思われる」


 地図にルートが表示され、所々に×印が書かれる。


「この印がある場所が、奴らが調べたと思われる場所だ。そして、ヤツらは東京へ向かってきている」


 そう言うと、武藤は八王子付近に大きな丸を描いた。


「長野から山梨に抜けるルートを取っていることから、おそらくそのまま東京へ抜けてくると思われる。よって、今回は八王子付近で待ち構える」


 武藤は力強く、壁を叩いた。


「今回の司令官は樋口大佐だ。出撃は第6部隊と、特殊能力課。中華統一軍の動向は不明点が多い為、今回の任務はなんとしても成功させたい。それでは、細かい作戦は、樋口大佐に説明を任せる」


 そう言うと、武藤はどっかりと椅子に座った。そして、今度は樋口大佐が前に出て、細かい作戦の説明に入った。

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