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第284話 ルーナシア・レウ・アステピリゴス教皇陛下

2番目の来客が中央教会に入ってくるのを見つけた民衆は、すぐに食べるのをやめて膝をついて祈るようなポーズをとった


教皇様、その人であった


隣には枢機卿のジジイ、シンラ枢機卿もいる


後ろには何十人もの魔導師を引き連れて、オレの前までやってきた


オレも国民の皆さんの真似をして、膝をついて頭を下げていた

これでいいのだろうか


「ライ・ミカヅチ殿

どうか頭を上げてお立ちください」


教皇様に優しい声をかけられる


え?頭あげて大丈夫なの?ホントに?


チラッと顔をあげると、教皇様は笑っていて、隣のジジイは面白くなさそうな顔をしていた


んー、、

とりあえず言われた通り、立ち上がってみる


そんなオレをリリィが支えてくれた


「すみません、まだ身体が万全ではなくて、妻に肩を借りるのをお許しいただけるでしょうか?」


「ええ、もちろんですよ、どうぞ楽な姿勢でお話しください」


「ありがとうございます」

ペコリと頭を下げる


「ふふ、あのとき、クロノス神殿で大きな声を出していた方とは別人のようですね」

笑われてしまった


たしかに、あのときは言葉遣いも荒かったし、地団太を踏みながら怒鳴っていた

少し恥ずかしくなる


「あのときは、教皇様に失礼なことを言ってしまい、申し訳ありませんでした」


「いえ、そんなことはありません

私はあのときのことを感謝しに参ったのです

私の目を覚まさせていただき、

そして

我が民たちを守っていただき、

誠にありがとうございました」


教皇様がゆっくりとオレの前に跪き、頭を下げた


それを見た民衆はざわざわとする


まさか教皇様が頭を下げるなんて!?

そういう雰囲気だ


「陛下!なりませぬ!冒険者風情に!」


やはりというべきか、隣の枢機卿は声を上げる


「シンラ!

彼はこの町の救世主です!失礼な態度は控えなさい!」

教皇様が大きな声を出す


それを聞いて、枢機卿のジジイは顔を青くし、教皇様と同じようにオレに頭を下げた


すぐに後ろの魔導師たちもそれに続く


「ちょ!?

やめてください!!王様がそんなことしちゃダメですよ!」


「いえ、改めてお礼を言わせてください

ライ・ミカヅチ殿

あなたのおかげで私は目を覚ましました

大切なものは自分で守れ、なぜおまえが守ってもらってるんだ

そう言ってくれましたね?」


「ええ、、まぁ、、」


そんなこと言ったような気もする


「ありがとうございます

その言葉で目が覚めました

国民が苦しんでいるのに、こんなときに、私は何をしているのかと

助けに行くべきなのだと

気づけました

なので、改めて、ありがとうございます」


「いえ、こちらこそ危ないところを援護していただきました

教皇様と魔導師団のみなさんの援護がなければ、絶対勝てなかったです

なので、どうか頭を上げてください」


「ふふ、それでは、失礼します」


教皇様が立ち上がってくれ、後ろの者たちもそれに倣った


ふぅ、と安心する

王様に頭を下げられるとか居心地が悪すぎるのだ


「ところで、そちらの方がリリアーナ殿でしょうか?」


「え?

ああ、そうです」


なんでリリィの名前を?と首を傾げる


「そうですか、良かったです

ライ殿がクロノス神殿で大声で探し回っていた方がご無事だったようでなによりです」


あ、そうか、リリィの名前を叫び回ってたもんな


隣のリリィが恥ずかしそうに俯く


「えーっと、、

ありがとうございます

オレ、、私の、最愛の妻、リリアーナ・クローバーです

私は、妻を助けに来ただけですので、そんな畏まってお礼なんてしていただかなくて大丈夫ですよ」


「そうですか

それでは、リリアーナ殿に感謝をしなければいけませんね

あなたのおかげで、あなたの素敵な旦那様がレウキクロスを救ってくれました

ありがとうございます」


教皇様がリリィの方を向いて頭を下げた


「そんな!私などにお言葉を!

光栄です、陛下、、」


リリィは、オレを支えながらではあったが、深々と頭を下げる


そうか、やっぱり教皇様とお話しするってすごいことなのね

とリリィの様子から察した


「ときに、ライ殿、その腕は?」


「え?ああ、左腕ですか?

聖剣様が持ってたエクスカリバーを握ったら動かなくなりまして、、」


「そうですか、もしよろしければ、私に治療させていただけないでしょうか?」


「いいんですか?」


「はい、是非診せていただければと」


「じゃあ、お言葉に甘えて、、お願い致します」


「ライ殿に椅子を、聖水と包帯、筆をお願いします

国民の皆さんは食事を続けてください

今は有事、私のことは気にしなくて大丈夫ですよ」


教皇様が魔導師の1人に道具の準備を依頼し、そして国民に話しかけた


その言葉を聞いた国民の皆さんは恐れ多そうに悩む素振りを見せたが、

枢機卿のジジイが

「いいから食べろ、陛下のお言葉だ」

とかなんとか言い出したらみんなおずおずと食事を再開しはじめた


言い方はあれだが、あのジジイも役に立つときは役に立つようだ

ま、相変わらずオレのことは睨んでくるけど


オレは、言われるがまま椅子に腰かけ、

教皇様がその前に膝をついて左腕を診てくれる


「これは、、」

難しそうな顔をされる


え?この腕もうダメですか?ダメなんですか?

と、めっちゃ焦る


「あの、、教皇様、、もしかして、、」


「いえ、、治してみせます、、」

そう言って両手をかざして、オレの左腕に回復魔法をかけ出した


両手から薄い緑色の光が輝き、オレの腕に入っていく


これで治るのだろうか

不安と期待の眼差しでジッと見続けた


「しばらくかかりますので、楽にしててください」


「は、はい、わかりました

お願いいたします」


それから、30分くらいだろうか

教皇様が長い間オレに回復魔法をかけ続けてくれた


すると、

「なんだかあったかくなってきました」

なにも感覚がなかった左腕に変化がおとずれる


「血が通ってきた証拠ですね

では、仕上げを致します」


緊張していた顔から、優しい表情に戻り、教皇様が道具に手を伸ばす


隣に控えていた魔導師から包帯を受け取り、

聖水に浸してからオレの左腕に巻き始めた


聖水につけたはずの包帯は湿っておらず、なんだか温かくすら感じた


そして包帯を巻き終わったら、

筆をとって読めない文字を包帯に書き出した


これ、クリスの包帯と似たような文字だな、と思い出す

そっか、あいつの怪我も教皇様が治療してくれたんだもんな


包帯全体にびっしりと文字が描かれると、最後の仕上げという感じで、もう一度回復魔法をかけてくれた


「これで、しばらくしたら動くようになるはずです」


「ホントですか!?ありがとうございます!!」


「教皇様、、ああ、、ありがとうございました、、」

リリィが涙を浮かべて頭を下げる


みんなも嬉しそうにしてくれた


「いえ、、完全に治せるかはわかりませんが、、

また診せていただきますね」


「ありがとうございます」


こうして、教皇様一向はクロノス神殿に帰っていった


「ふぅ〜、緊張したぁ〜、、」


「ほんとですね、、」


オレとリリィはぐったりする


「なによあんた、昨日はあの王様に暴言吐いたんでしょ?

今更緊張なんてして」


「いや〜、だってさ〜、あのときはリリィのことで頭がいっぱいだったしさ~」


「ライ様、、ありがとうございます、、」

顔を赤くするリリィ


「そんな、当たり前じゃん」


「いいですね〜♪たくさん愛してもらって♪

ん〜、昨日、クロノス神殿で叫んでたライさんのセリフ聞いてみたかったですね♪

なんて言ったんですか?」


「ホントじゃな、あとでクリスにでも聞いてみるかのう」


「やめてよ、、それにクリスはその場にいなかったよ」


「それは残念じゃな」


「ははは!それでは我々から話してやろう!!」


「ん?」


聞いたことがある声に振り返ると、また見知った面々が姿を現してくれた

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