第283話 エクスカリバーの意思
翌朝、明るくなってから中央教会の中で食事の準備をしていると、
何人もの人がオレたちのことを訪ねてきた
まずはクリス
「やっ」
「、、、」
「なんだよ?」
「なんで女のままなんだ?」
オレたちの前に現れたのは、金髪オッドアイの美少女であった
髪の毛は短髪ではなく、肩に触れるくらいまで伸びていたし、
まつ毛も伸びていて、顔も少し柔らかい印象になった気がする
とはいってもイケメンといえばそうだ
宝塚系美人、という感じだった
そして何より、細い足腰にちょうどいいサイズのバストがついている
モデルのようなスタイルだった
「ほんとに、、おんなのこに、、なってる、ね、、」
ミリアが最初に口を開く
昨晩、みんなにもクリスが女になったことは話したのだが、
やはり実物を見たらビックリしたようだ
みんな驚いた顔をしている
「ミリアさんは僕のことを女の子扱いしてくれるんだね!
感動だな〜
ライのやつは、キモいとか怖いとか言ってくるだけだし」
「いや、、キモいとは言ってないけど、、普通に怖いよ」
「怖いんかい」
「だって、ずっと男だと思ってたし
なんなのおまえ?」
「まぁ、男の姿だったのは僕も不本意でね
エクスカリバーを抜いたときに男の姿に変わったんだ
エクスカリバー曰く、女を捨てて戦いに身を置け、とかなんとか」
「なんだそれ、マジでそいつ怖いな
オレの左腕もこんなんにしやがったし」
首から布でぷらぷらさせている左腕をさしていう
「あ、、その腕大丈夫なのかい?」
クリスが申し訳なさそうにする
「大丈夫じゃない、なんの感覚もない
でも、別におまえのせいじゃないし、あの豚を倒せたんだし結果オーライやろ」
「、、なんていうか、、キミはすごいな、、」
そっと、クリスがオレの左腕に手を置く
「っ!?ごめん!」
しかし、なにかを思い出したように焦って、すぐに手を離して謝ってきた
「なにが?」
「え?」
「だからなに謝ってるんだ?」
「い、痛くないのか?」
「いや、感覚ないし」
「そんなまさか、、ちょっと右手も触ってもいいかい?」
「ええ?なんかこわいな、、」
「いいかな!?いいよね!?」
焦りと期待が混ざった表情のクリスが顔を近づけてくる
あいつだって、クリスと同一人物わかっていても、
こんな美少女に接近されたらドギマギしてしまう
くそ、、クリスのくせに、、
「ど、どうぞ、、」
たどたどしく了承した
ピタ
クリスのゴツい小手をつけた手がオレの右手に触れた
特になにも起こらない
「痛く、ないのか?」
「そりゃ、触ってるだけだしなぁ?」
「そ、そっか、、そうなんだ、、」
チラ
触っていた右手を見るのをやめ、オレの顔を見てくるクリス
その頬はなんだか赤く染まっているような気がした
「、、なんなの、、こわいよ、、」
「はっ!?
いや!なんでもない!なんでもないよ!
ハッハー!いやー!今日も忙しくなりそうだ!」
「で、結局あんた何しにきたのよ?」
と、避難民への食事の配給を手伝っていたソフィアが聞いてくれる
「あ、えっと、僕は今日も出撃するけど、キミたちはゆっくりしてていいからねって伝えに来たのと
あとで教皇様とシンラ様もお礼に来るからって伝言を伝えにきたんだ」
「気をつけていけよ、おまえも怪我人なんだし」
クリスの左腕と右脚は、なんか変な文字が描かれた包帯でグルグル巻きにされてたし、その包帯の間からは青い光が漏れていた
こいつの怪我が酷かったのは昨日の様子から明らかなのに、今日も戦うという
まぁ、、そうだな、心配だ
「ありがとな、でも大丈夫さ
教皇様の回復魔法のおかげで、斬られた手と足は元通り繋がるらしいし」
「マジか、あの人すごい人だったんだなぁ
オレたちと変わらないくらいの年に見えたけど」
「はは、そりゃそうだよ
アステピリゴスの教皇は、最も回復魔法に長けた人物が務めるものだからね」
「へぇ〜
てか、、あの人たち後でくるの?
イヤなんだけど、、」
「なんでだよ
教皇様と話せるなんてなかなかないことだぞ?光栄に思うがいい」
「なにおまえ、あのジジイの孫かなんかなの?」
教皇をやたらと持ち上げる言い草に、シンラなんとかいう枢機卿のジジイのことを思い出す
教皇様の隣にいたやつだ
「僕とあのジジイはなんの血縁もない
ただの他人だよ
ああそっか、シンラ様に暴言を働いたから怒られるのが怖いんだろ?
だっさ」
「こいつ、、ムカつく、、
てか、あのジジイもそうだけど、、
教皇様にも、、結構ズケズケと物申したような気が、、」
クロノス神殿での暴言の数々を思い出し、頭が痛くなってくる
「マジかよ、、
ライ、、キミ死んだね、、」
「死罪か、、つ、辛い、、逃げないと、、」
「はは!ウソウソ!
町を救った英雄にそんなことするわけないだろ!」
「だ!だよなぁ!!」
さすがに冗談だとわかっていたが、
国のトップに命令口調で話したことがどれほどの罪になるのか想像し、
少し怖くなってはいた
いざとなったら聖剣様に庇ってもらおう
「じゃあ僕は行くよ」
「おお、くれぐれも気をつけていけよ」
「ありがと、あとは雑魚しかいないし、サクッと片付けてくるよ」
「だから油断すんなよ〜」
背中を向けたクリスに声をかけると
振り返らずひらひらと手を振ってきた
まぁ、あの様子なら大丈夫か
ピンチになったら渡してある指輪で呼びかけてくれるだろう
、、ホントか?
あいつ、あの巨大オークと戦ってるとき、オレに連絡してきたっけ?
いや、そんな記憶はない
「あーあー、クリス聞こえるか?」
すぐに指輪を取り出して話しかける
「んー?なんだよ?さっきの今で」
「ピンチになったら逃げるか、この指輪で助けを呼べよ」
「だから雑魚しかいないって」
「死にかけてた奴がなに言ってんだ
いいから言うこと聞け」
「、、はぁーい」
「なんだよ、イヤそうな声出すな」
「はいはい、、じゃあまたね」
プチ
言いながら通信を切りやがった
あいつ、、
まぁいいや
釘刺しておいたし、大丈夫だろう
そのあと、
教会内にいる人たちへの炊き出しを続けて、全員に行き渡ってあろうというころに
次の来客がやってきた




