第278話 聖剣様の正体
目を覚ますと、そこはリリィの膝の上だった
3人の治癒魔術師がオレの周りに集まって、回復魔法をかけてくれているようだった
「ライ様!!」
膝を貸してくれているリリィはボロボロと泣いていた
「リリィ、、泣かないで、、」
抱きしめたくって、両手を伸ばそうとするが左腕には力が入らない
しょうがなく、右手でリリィの頬を触った
「リリィは、、笑顔が1番可愛いよ、、」
へへ、と笑いかける
そんなオレの手を両手で握って
なにも言わず、涙を流しながら笑顔を返してくれた
「良かった、リリィが無事で、笑ってくれて」
「そんな、、ライ様こそ、、」
オレたちは2人して見つめ合う
2人の空間だ
誰にも邪魔はされない
「やっ、生きてるみたいだね」
「あん?」
さっそく邪魔された
見知った金髪のイケメンが覗き込んできたのだ
「あ、おまえも死ななかったのね」
「なんだよ、死ぬなって言ってくれたくせに」
「あれ?おまえ、腕と脚吹っ飛んでなかったっけ?」
なんでこいつ立ってるんだ?と疑問に思う
「あぁ、とりあえずの応急処置さ」
言いながら、欠損した右腕を見せてくれた
青白く、透明な腕が斬られたところから伸びていた
グーバーグーパーと動かしてみせる
「なにそれ、キモい」
「キモくない、教皇様しか使えない最上位の回復魔法だぞ、無礼者」
「あぁ〜、神殿にいたジジイみたいなこと言うね、おまえ」
「キミが暴言を吐きまくったシンラ様のことだね
あの人めちゃくちゃキレながらオークと戦ってたよ」
「ふーん、あのジジイ戦えたんだ」
「いや、むしろ結構強いんだよ、あのジジイ」
「はい、ジジイって言った〜、不敬罪〜」
「だる、、
はぁ、、それよりも今のレウキクロスの状況だけど」
「、、あぁ、どうなってる?」
オレたちはふざけるのをやめて、2人とも真面目な顔になる
「だいぶ攻勢に出れてる
たぶん、明日か明後日のうちには全部駆逐できると思うよ」
「そっか、よかった」
「それもキミたちとリューキュリア騎士団のおかげだけどね」
ははは、と笑うクリス
「リューキュリア騎士団?」
「あぁ、キミの仲間たちが、ついさっきこの町に到着したのさ
リューキュリア騎士団を引き連れてね」
「みんなが?」
「うん、そのおかげもあって、こっちの戦力が回復して攻勢に出れてる
でも、それもこれも、あの化け物をキミが倒してくれたおかげだよね
はぁ、、僕より強いやつがいるなんて、、
ちょっとショックだな、、」
クリスがそう言うと
すぅぅっとクリスのやつの背丈が縮んだように感じた
「あん?」
そして短髪だった金髪が、肩くらいまで伸びて止まる
なんだか、身体つきも変わったような気がした
なんというか、女性的な身体つきに
「え?なに?変身魔法?」
「変身?」
変身した本人がなぜか驚いた顔をする
「クリスさん、、お胸が、、」
リリィがそんなことを指摘する
たしかに、クリスには男にはないはずの胸部の膨らみがたしかにあった
「胸?」
むにゅん
クリスが自分の胸を揉む
「え!?まさか!?」
髪と顔をペタペタと触った
「僕、女に戻ってる!?」
「戻る?は?
てか自分の胸揉むの見せつけないでもろて」
「なに見てんだよ!えっち!」
「えっちとかいうな!男だろ!」
「だから女なんだってば!」
「だからってなんだ!こわい!」
「うるさい!」
「聖剣様!、、聖剣様?」
聖騎士の1人が駆け寄ってきてクリスに声をかける
しかし、彼も女になったクリスタル・オーハライズに戸惑いを隠せていなかった
「あぁ、僕で大丈夫、聖剣本人だよ」
「しかし、お姿が、、」
「エクスカリバーの力で変身してたんだ
なぜか元に戻ったけどね
ほら、エクスカリバーを使えてるってことは聖剣だろ?」
ぶんぶんとエクスカリバーを振り回すクリス
「たしかに、、失礼しました!
西地区の駆逐が完了したため!次は南地区の制圧に向かいます!
よろしいでしょうか!」
「うん、僕も行くよ、報告ありがとう」
「はっ!!」
聖騎士が離れていく
「おまえ、まだ戦えるの?悪いけどオレはしばらく無理だ~」
「まぁ、キミはのんびりしてなよ、あとはやるからさ」
「うん、てか、みんなを、妻たちをココに」
「そうだよね、見つけたら声かけておくよ」
言いながら手を振ってクリスが教会の外に出ていった
「ライ様、意識共有で呼びかければいいのでは?」
「あ、そりゃそうか」
リリィのアドバイスを聞いて、オレはすぐにみんなに連絡した
リリィが無事なこと
オレは戦いでぐったりだけど無事なこと
そして、中央教会にいること
それを聞いたみんなは、すぐにこちらに向かうと言ってくれた
オレはリリィの膝の上でみんなの到着を待つことにした




