第272話 不穏すぎるアドバイス
攻略さんに言われて馬車を停車させると
「ヒヒン?」
白馬のアルテミスが不思議そうな声を出してこちらを振り返った
「ん?どうして止めるのさ?」
と隣のコハルが言う
「え、えっと、、ちょっとお腹が痛くって!まってて!!」
オレはばっと馬車から飛び降りて、その辺の木陰に隠れることにする
時間稼ぎのためだった
『ど、どうするんすか?そんな長くは誤魔化せませんよ?』
隠れて、馬車の方を見ながら攻略さんに話しかける
みんながなんだなんだとコハルに声をかけていた
『これ以上進んだら殺します』
『こ、ころ?なんなんですか一体、、』
『いいからその場で待機しなさい』
『で、でも、、聖騎士隊とはぐれるとまずいですし、みんなをどう足止めすれば、、』
『そんなこと自分で考えなさい』
『そんな、、でも、、』
『一歩でも馬車を前進させたらもう2度とアドバイスしません』
『に、2度と?
いや、でもオレは攻略スキルっていうチートスキルを神様から授かったわけで、、
そんな権利、、』
『なんですか?いいんですね?使えなくしても、このスキルを』
『いやいや!それは困ります!』
『あなたは私のこと、信頼してますね?』
『え?いや、もちろん信頼してますけど』
『なら、待機です
もし進んだらあなたは私が殺さなくても勝手に自殺するでしょう』
『な、、そんなことあるわけ、、』
自殺だって?
オレはいまこんなに幸せなのに
あんなに可愛い嫁たちに囲まれて
自殺なんてするはずがない
『いいですね、一歩も動いたら許しませんよ』
オレが混乱していると、攻略さんはさらに釘を刺してきた
『は、はい、、』
オレは大人しく従うことを決意する
そして、攻略さんは静かになった
とにかくオレはここから動けないようだ
ということで、うんこを装って時間を稼ぐことにする
ケツを出して15分くらいふんばっただろうか
「ライさーん?大丈夫ですかー?」
ステラが近づいてきて声をかけられる
「うん!も!もうちょっと!」
「そうですかー?なら待ちますねー」
さらに10分
「薬草ならもっておるぞ、戻ってきてはどうじゃ?」
「ま!まだギュルギュルでして!」
「そうか、はやく出して戻ってくるのじゃぞ」
「うん!ごめんね!」
さらに10分
「あんた!ホントにうんこしてるの!」
ソフィアがキレ気味に声をかけてきた
そんな、美少女がうんことか言ったらダメでしょ
「うんこうんこ!絶賛うんこちゅー!」
オレは焦りながら声を張り上げる
まだ時間を稼がないと!
しかし
ざっ!
木陰に隠れていたオレのことを、ソフィアが覗き込んでくる
「いやん!えっち!」
オレはケツ丸出しだ
「なんも出てないじゃない!行くわよ!
もう前の馬車が見えなくなっちゃったわ!」
「あ、あの、、ちょっとまって、、」
「いいから来なさいー!」
ソフィアが腕を掴んでくる
「わ、わかった!わかったから!
引っ張らないでー!ズボン履くから!」
そしてオレはソフィアに連行されてしまった
稼げた時間は1時間もいってない
どうしたものか
というか、いつまでココで待機すればいいんだろう
「ほれ、薬草じゃ」
「う、うん、ありがと」
はむはむ
ティナに渡されためっちゃ苦い草を噛んで、水で流し込む
「さ、出発よ、このままじゃ追いつけなくなるわ」
「えーっと、えーっと、、」
ソフィアが馬車を動かそうとしているので焦る
どうやって、どうやって時間を稼げばいい
「なんなのよ、なにかあるなら言いなさい」
どう言うべきか
シミュレーションしてみる
オレ氏:攻略スキルさんから動くなって言われまして
ソフィア氏:攻略スキルってなによ?
うん、ダメだ
「うー、、」
頭が痛くなってくる、攻略さん助けて
『、、、』
攻略さんから助け船は出されない
「くっ、、」
「ほら!早く乗って!」
「や、、」
「や?」
「やっぱりうんこ!」
オレはまた木陰に向かって逃げ出した
「ちょ!こいつ!」
すぐにソフィアが追ってくる
「なんなのよ!なにかあるなら言いなさいって!」
木陰の裏でケツを出したところで再度捕獲され、ぐいぐいと引っ張られる
「うー、、だって、、」
「なんなのよ!」
「えっとえっと、、」
ドン!!
やけくそになって、ソフィアのことを木の幹に押しやってみた
両手をついて逃がさない
「な、、なによ、、」
「そ、そそ、ソフィアとセックスしたい!!」
やけくそであった
「は、はぁ!?」
「そ、ソフィア!」
強引にキスしようとする
「時と場合を考えなさい!!」
スパーン!
「いたい!!」
激しくビンタされた
「ほら!行くわよ!」
ズルズルとまた引っ張られる
「うわー!いやだー!」
「もう!鬱陶しい!」
そして重力魔法で浮かされて連行された
「もうこのまま馬車に放り込むわね、みんなそこどいて」
「待って!まじで待って!」
馬車の中に放り込まれそうになって慌てる
少しでも馬車を動かせば神スキルが使えなくなるからだ
それに、「私が殺さなくてもあなたは勝手に自殺する」そんな不吉なことを言われて、無視するわけにはいかない
「おにいちゃんの、、はなし、、きこ?」
ミリアが助け舟を出してくれた
それを聞いて、ソフィアが溜息をつきながら、オレを地面におろしてくれる
「で、結局なんだったんでしょう?ライさん?」
「えっと、、何にも根拠はないけど、、胸騒ぎがして、、」
万策尽きたオレは、正直に話すことにした
攻略さんのことを伏せて
「胸騒ぎ?どういうことじゃ?」
「えっと、、イヤな予感がするというか、、」
「なんでそれで止まるのよ」
「わ、わかんない、、」
「なによそれ」
「ごめん、、でも、もう少しだけ待ってほしい」
「ダメよ、聖騎士隊とはぐれるじゃない」
「いえ、ここからは一本道ですし、砦までの道は私が把握しております
ですので、もし聖騎士隊の一団と離れてしまっても急げば追いつけると思いますよ」
サンディアさんがオレのことを見かねたのか、素晴らしい提案をしてくれる
「どれくらいまでなら追いつけると思うかのう?」
「そうですね
今日の夕方までに動き出せばなんとか」
「じゃあ、、ミィは、待つ、、ね、、」
「ミリア、、」
なにも説明してないのに、オレに同意してくれて感動する
「私も大丈夫でーす♪」
「じゃあボクも」
「うーむ?どうするのじゃ?ソフィア」
「なによ、、わたしだけ反対したら、悪者みたいじゃない、、
はぁ、、いいわよ、追いつけるうちは待ちましょ
よくわかんないけど、許してあげる」
「ありがと!」
オレはみんなに頭を下げてから馬車の周りをうろつき出した
攻略さんはここで待機だと言った
つまり、ここにいれば何かが起きるか
または、なにか悪いことを回避できるか、のどちらかだろうか
前者なら誰かがやって来て重要な情報を教えてくれる
後者なら聖騎士隊がモンスターに襲われて逃げてくる
そんなところか
後者だったらイヤだなと思いながら、うろうろ、うろうろと不安な時間を過ごした
その疑問が解消されるときがやってくるまで




