第270話 金髪清楚シスターがいないと発症する症状
「ライ、あれ、、」
コハルに声をかけられ、馬車の荷台から顔を出す
コハルが指差す方を見ると、左手の森の中からキラキラと光るものが見えた
「サンディアさんだね、速度少し落として」
「わかった」
聖騎士隊の馬車の一団の最後尾にいるオレたちの馬車だけ速度が落ちる
それを見計らって森からローブの男が飛び出してきた
手を出して、そいつの手を掴み、馬車に乗り込ませる
「ふぅ、、緊張しました、、」
ローブのフードを下げて安心顔のサンディアさんが顔を出した
「お疲れ様、ま、その辺に座ってて下さい」
「はい、ありがとうございます」
ボフッ
サンディアさんが1番前の座席に腰を下ろす
そしてキョロキョロしてオレたちを1人ずつ確認した
「どうかしました?」
「いえ、今日はあのクロノス教のシスターの方はいないのですね」
「、、、」
「、、あー、リリィに何かようじゃったか?」
リリィの不在を指摘され、魂が抜けているオレに代わり、ティナが質問してくれる
「いえ、この前治療してもらった騎士たちから、お礼を言っておいて欲しいと頼まれまして
そうですか、リリィさんというお名前なのですね」
「てめぇ、、てめぇ!
てめぇがリリィの愛称を呼ぶなー!
リリアーナさん!だろうがー!」
「ぐぐぐぐ!?ぐるじい!!」
魂が抜けていたオレは、サンディアさんが突然リリィを呼び捨てにしたように聞こえ、一瞬で頭が沸騰しサンディアさんの首を両手で掴む
そして、そのまま上空へと持ち上げていった
「あんた!?なにやってんのよ!?」
「おにいちゃん!?」
「ライさん!サンディアさんはリリィの本名知らなかったんです!」
「リリィ!リリィ!」
オレは目をグルグルさせながらサンディアさんの首を絞め続ける
目の前の男の目もグルグルしはじめたような気がする
「落ち着きなさい!!このバカ!!」
ゴスッ!
ソフィアたんの杖がオレの頭に突き刺さった
「はっ!?」
パッと両手を離す
「ぜぇ!ぜぇ!
、、な、ななな、なにか、ごほっ!
私の発言が、お気に触ったのでしょうか、、」
サンディアさんは荒い息をしながら、ガクガクと怯えていた
「リリィ、、リリィ、、いない、、」
しかしオレは、そんなかわいそうな男に見向きもせず、夢遊病患者のようにフラフラしているだけであった
♢
「先程は本当にすみませんでした」
お昼過ぎ、聖騎士隊の馬車団が止まったタイミングでオレたちも馬車から降りて、
お昼ご飯の食卓を囲んでいた
オレは何度目かの謝罪をサンディアさんに行う
「いえいえ!こちらこそ失礼なことを言ってしまいました!
ライ殿の大切な奥方のお名前を馴れ馴れしく!
今後は気をつけますので!」
「いえ、、だとしても、あれはやりすぎです、、」
サンディアさんが目を回しながら苦しそうにしているのを思い出し、また頭を下げた
「こいつ、嫁のことになると見境なくなるのよ」
「それと、嫁と少しでも離れるとパニックになるようじゃの」
「でも、そんなライさんが私たちはみんな大好きなんです♪」
「そ、そうですか、、あの、みなさんとライ殿の御関係って?」
サンディアさんがステラの発言で察したのか
確認を取ろうとする
「私たちは全員ライさんの奥さんです♪」
「なるほど、、
こんなにお綺麗な方ばかり、やはりライ殿は只者じゃありませんね、、
みなさんにも失礼がないようにしなければ、、」
サンディアさんは、どこに地雷が埋まっているのか怯えるような様子だった
またなにか失言したら殺されかねない
そう思ってそうな顔だ
そんなそんな、殺さないよ?
大丈夫、次は大丈夫だから、安心して
とは前科のあるオレにはとても言わない
せめてもの償いに、
「ステラのスペシャル美味しい料理を召し上がり下さい」
と、両手でお皿を持って、頭を下げながら、サンディアさんに手渡す
恐る恐るそれを受け取ったサンディアさんは、料理を食べ始めたらすごく感動した様子でその美味しさを語り出した
「こんなに美味しい料理ははじめてです」
とかなんとか
やっと怯えた様子がなくなったようだ
よかったよかった、ステラ様様である




