第263話 聖騎士隊への出兵命令
「ウチナシーレへの出兵が決まっただって?」
「うん、、」
クリスと話してから数日後、
本人がオレたちの宿にやってきたかと思えば、不穏なことを報告し出した
「おまえ、それって、、」
「いや!でも!出兵とは言ってもいきなり攻めろってわけじゃなくて!
まずはリューキュリア側の意向を聞こう、ってことにはなってるから!」
「なるほど、ならまぁいい、、のか?
じゃあ、なんで出兵なんて言い方するんだよ?」
「それは、、こういうときは普通、聖騎士隊はせいぜい数名が護衛につくくらいなんだけど、今回はまとまった数を派遣するってことになって、、」
「何人?」
「300人、、」
「不穏だな、、」
「だね、、」
「んー、、指揮官がバカなやつだと攻め込んだりしそうだなぁ
まぁ、そもそもウチナシーレが無事なのかどうか怪しいけど
その出兵とやらに、おまえは同行することになってるのか?」
「いや、僕はレウキクロスに残れって言われてる
だから、なるべく僕と志を同じくする人を派遣部隊に入れようとしてるんだ
もちろん指揮官も」
「ならまぁ?
んー、どうなんだろう
またこの前のときみたいに暴走するバカがでないもんかね」
ユウのことを斬りつけたおっさん聖騎士のことを思い出す
「僕もそれが心配で、、
それで相談なんだけど、ウチナシーレへの派遣部隊にライたちも同行してくれないかな?」
「オレたちが?それはまたなぜ?」
「聖騎士隊が暴走しそうになったら止めてほしいのと、
もしウチナシーレの人たちが首都にいるなら、ジャン騎士団長を連れて行って、穏便に話を聞いてもらいたいんだ」
「なるほど、聖騎士隊を止めれるかはかなり疑問だけど、
ジャンを連れて行けるのはオレたちくらいか」
「だよね、どうかな?」
「ん〜、みんなはどう思う?」
「そうじゃな
まず、この派遣部隊への同行にはどれほどの危険が伴うか、それを明確にせんことにはなんとも言えぬのう」
「たしかに、みんなが危険にさらされるなら同行はできないよね
そのあたりはどうなん?」
「えっと、、全く危険がない、とは言い切れないけど、
ジャン騎士団長を連れて行ってくれて、戦いが起きなければ、対人間に関しては大丈夫だと思う
問題は、例のモンスターがまだウチナシーレにいるのかどうか
それ次第だよね、、」
「まぁ、そうだよなぁ
首都を壊滅させるようなやつとはなるべく戦いたくないしなぁ」
「えー!倒そうよ!
ライはボクと英雄になるんだろ!
英雄はこういうときに立ち上がるはずだ!」
「ちょ、ちょっと落ち着いてコハル」
興奮気味のコハルをどーどーと抑える
「あのさ、オレももちろん助けれる人は助けたいと思ってるよ?
それはわかるよね?」
「うん!」
「でもさ、ごめん、オレはあくまで他人は他人だと思ってる」
「なんだよそれ!」
「ごめん、聞いてくれ
でさ、なるべく助けれるなら助けたい、他人でも
でもさ、その人たちを助けるために、コハルたち家族が危険になるなら
ごめん、オレは手を貸せない」
「な、なんだよ、、それ、、そんなの英雄じゃないよ!」
コハルは悲しそうな顔で抗議を口にする
「、、オレはさ、コハルとピーちゃんと、みんながさ
無事だって、安全だって確信できるなら、どんなやつとでも戦うよ
でもさ、家族の誰かが傷ついたり、取り返しの、、つかないことになったりしたらさ、、
オレは耐えれないんだ、、
ごめんな、、英雄になるって言っておいて、こんなビビりで、、」
「、、、そっか、そうだよね、ライならそう言うよね、、
ごめん、ボクの方こそわがまま言って
ボクもみんなが傷つくのは耐えれない
でも、ボクは戦えるなら、命をかけても戦うよ
それはいい?」
納得したかに見えたコハルは、物騒なことを言い出す
強い目をして、ライの気持ちは理解したけど、あくまで自分は英雄として振舞う、そう言っていた
「コハル、あんた」
ソフィアが口を挟む
「わかった、そのときは付き合うよ」
「ライ様!?」
「ごめん、これはオレのわがままだ
みんなが無事なら、オレはコハルと死地を共にする
最愛の妻の気持ちは、もちろんみんなの気持ちもだけど、尊重したいから」
「それでライさんが死んじゃったら!!私はコハルを許しません!!」
言いにくいだろうことを、みんなを代弁してステラが言ってくれる
「え?ステラ、、ボク、、
ボク、、もうちょっとちゃんと考えるよ、、
ご、ごめ、、」
ポロ、、
唐突にコハルが泣き出してしまう
「ピー?ピー!ピー!」
ピーちゃんがなにごとかとあわてて騒ぎ出してしまう
「あ、、私の方こそ、ごめんなさい、、
でも、さっきの言葉は撤回しませんよ」
ステラがコハルの肩を抱きながら言う
「うん、、ごめん、ボクもみんなが大好きだ
だから、ちゃんと考えるよ」
「はい、、」
シーン
コハルが泣き出してしまったことで、部屋の中の空気が暗いものになる
それぞれ思うことはあっても、今は口にしない
「あー、、えっとなんかごめん
変な空気にして、、」
黙ってるクリスに頭を下げる
「いやいや!こちらの方こそ!
火種を撒いたのは僕の方だし!
みんなはみんなが好きなようにしてくれ!
出兵への同行については忘れてくれていいから!」
「いや、そのことについてはもう一度みんなで話し合うよ
リョクとショウのことはさ、もう家族同然みたいなもんだし
ちゃんとみんなで話し合う」
「そ、そっか、ありがとう
それにごめんね、コハルさん、ステラさん、みんなも、、」
「ううん、ボクがバカだから、、」
「そうですね、コハルはおバカです
でも、そんなところも可愛くて、私は大好きですよ」
よしよしと、抱きしめつつ頭を撫でながらステラが言った
その言葉にコハルも少し笑顔になる
そのあと、クリスは仕事があるとかで、気まずそうにしながら帰っていった
オレは宿の入り口まであいつを見送って、自室に戻る
改めて、さっきのことについて話し合わなければならない




