第248話 飢えた民を救う方法
レウキクロスのギルドでモンスター討伐を受け、森林エリアでその依頼をこなし、
森の中のセーフエリアで子どもたちと一緒に食事を食べる
そんな生活をここ1ヶ月していたのだが、
3日前から
リョクとショウに加え、ユウが同行するようになった
「エポナ様!今日もお美しいです!」
「お?おおう?ありがとうなのじゃ?」
ユウのアホは、相変わらずティナのことをエポナ様だと勘違いしていた
「修行するか〜」
「はい!お願いします!師匠!」
「ミリアお姉ちゃん!あやとりしよー!」
「う、うゆ、、いい、、よ、、ぽかへいが、、教えてくれるって、、」
リョクはオレと
ショウはミリアとぽかへいの方に向かっていく
カンッ!カンッ!
リョクに木刀を渡して打ち合いながら話しかける
「おまえらのグループだけど、大丈夫そう?」
「、、どうなんでしょう、、」
リョクたちが一緒にいるであろう周りの大人たちについて聞いてみる
「みんな腹減ってるんじゃないの?」
「それは、、はい、、」
「んで、食料どうするって言ってた?」
「教えてくれませんでした、、」
「ふーん、はい隙あり」
「イテッ!」
質問しておいてなんだが、集中できていないようなのでリョクの頭に木刀を打ち込む
「師匠、ずるいです」
「話しながらでも集中できてこそ一人前だ」
「な、なるほど」
「いやいや、噓だろ、また適当なこと言って」
とクリス
「え!?嘘なんですか!?」
「嘘は言い過ぎじゃね?連携とかとるときしゃべるじゃん」
「んー、まぁ言われてみればそうか?」
「はいー、訂正してくださいー」
「うぜぇぇ、、」
「え?え?結局どっちなんですか?」
「ごめんね、リョク
ライの言ってることも一理あるよ
一対一の敵とならしゃべることはないけど、
仲間と一緒に戦うときは連携のために会話するんだ
僕はさっき、一対一を想定して口を出しちゃったんだ」
「な、なるほど、さすがクリス師匠、わかりやすいです」
「ほい、続けるぞー」
「はい!」
こうして今日もステラの料理ができるまでリョクと修行を続ける
少ししたら美味しい料理が出来上がった
「今日も美味しいなぁ、ありがとな、ステラ」
「いえいえ♪」
「本当に美味しいです!ステラさん!」
「落ち着いて食べるのじゃ、ユウ」
「はい!エポナ様!」
「あー、、ユウ」
「はい!なんでしょうか!」
「おまえの周りに大人って何人くらいいるん?」
さらっと探りを入れてみた
「詳しいことは知りませんが、村一つ分くらいかと!」
お?すんなり情報が開示された、これはいいぞ
「兄さん!?父さんが何も言うなって!」
「おお!そうだったか!?」
む、賢い子どもはキライだ、リョクくん
「んー、コハル、リョクが鍛えてほしいって、厳しめに」
「そうなの?わかったー!いくぞー!リョクー!」
「え!?ちょ!コハル師匠!ま!待って!」
「剣士ならいついかなるときでも戦えるようにするのだー!ハッハー!」
ノリノリのコハルにリョクは首根っこを掴まれて引きずられていく
「ピー!」
ピーちゃんは楽しそうにその上をクルクル飛んでいた
これで邪魔者はいない
アホのユウから情報を引き出す準備は整った
「んで、その村一つ分の人たちってのは、みんなリューキュリアの人たちなんだよな?」
「はい!」
「どこからきたの?」
「首都からです!」
「ふーん、リューキュリアの首都って?」
「首都は、ウチナシーレって町だよ
この森を挟んだところにある」
わからないことはクリスに説明させる
「で、なんで首都からこんなところに来たんだ?」
「それは、、魔物に襲われて、、」
当時のことを思い出したのか、一気にテンションが下がるユウ
「魔物?」
「はい、、」
「どんな?」
「とても、、恐ろしい魔物です、、」
「なるほど」
これ以上聞くのは酷だろうか
おそらくだが、今までのリョクの様子からして、その魔物の襲撃とやらで、こいつらの母親が、、
「教えてくれてありがとな」
「いえ、、」
「でさ、今おまえたちはこの森に逃げて来たわけだけど、冬になって食べるものに困ってるよな?」
「は、はい、そうですね」
「モンスターを狩って食うとかしないわけ?」
「そんな!エポナ様への背信になりますので!」
「だってさ、エポナ様?」
「む?わ、わしか?
あー、、わしは、生きるためならば、食っても良いと思うぞ?」
「な!なな!なんと!?
そんなまさか!?
では!今までの教えはなんだったのですか!エポナ様!」
「おお!?わ、わしは、肉を食うななんて言った覚え、、ないのじゃ、、」
これは事前に打ち合わせしていて、ティナに言わせているのだが、
嘘をつくティナ本人は非常に気まずそうだった
「そ、そんな、、
いや、、でも、、司祭たちが勝手に?
いや、、」
ティナのことをエポナ様だと勘違いしているユウはティナの言葉を間に受けて悩み出す
「あー、それで、司祭たちはモンスターを食べるなって言ってるんだよな?」
「はい、、それに、この教えは昔から言われてきたことですし、、」
「ふむ、で、食糧どうすんの?
教えのためなら、餓死してもいいとか思ってるわけ?」
「それは、、な、なんとかします、、」
「どうやって?」
「お、大人たちは、す、すぐになんとかするって、、」
「すぐ?この状況で?なにする気だ?」
「それは、知りません、、
おまえはついてこればいい、とだけ言われています、、」
「ふーむ?なにすると思う?」
「順当な考えだと、食糧のある場所に移動するか
教えを曲げてモンスターの肉を食うか
それか、、」
クリスが言い淀む
「、、略奪か」
「そう、、だね、、」
「おふたりは、なにを?」
ユウは不思議そうな顔になった
そんな、思慮が足りないコイツに説明してやることにした
「ユウ、食糧がある場所はどこだと思う?」
「え?は、畑、とかですか?」
「そうだな、畑はどこにある?」
「それはもちろん、町の近く」
「この辺りで1番近い町は?」
「え?レウキクロス、、
ま!まさか!?我々がレウキクロスに略奪に向かうとでも!?」
「いや、予想してるだけだけど」
「ありえません!誇り高きリューキュリア騎士団がそのようなこと!
司祭たちが許しても!父が許しません!」
「父?おまえの父ちゃん、騎士団員なの?」
「そうです!父、ジャン・フメットはリューキュリア騎士団の団長!
誇り高き騎士です!
略奪などには絶対に加担しません!」
新しい情報が手に入った、コイツらの父親は騎士団のトップだと言う
話が通じる相手なら、直接話すのが良さそうだと考える
でも、それは置いといて今は目の前のコイツだ
「なるほどな、でもさ、ユウ
自分の家族や仲間たちが飢え死にしそうなとき、おまえの父ちゃんはなにもしない男なのか?」
「え?いや、、それは、、」
「意地の悪いことを言うな、まだ子どもじゃぞ」
「いや、もう大人でしょ、こいつは」
見た感じ、中学生か高校生のユウは、オレ基準だと大人判定されていた
剣も使えるわけだし、一応
「ユウ、理想を言うのはいい
だけど、もう少し自分の頭で考えろ」
「、、はい、、」
「よいのじゃぞ?ほら、もっと食べるとよい、美味いぞ?」
「は、はい、、エポナ様、、」
せっかく説教したのに、またエポナ様、じゃなかった、ティナが甘やかし出す
キミより、だいぶデカいそいつが子どもに見えるんか?
とツッコミたくなったが、身長のことを言うとティナが怒り出しそうなのでやめておいた
クリスに目で合図して、少しみんなから離れる
「町の警備、強化した方がよくないか?」
「だね、そうした方が良さそうだ」
「じゃ、そこは任せた、おまえなら手配できるだろ」
「うん、はは、ずいぶん信頼されちゃったね」
「ま、1ヶ月以上一緒にいるしな」
それにコイツの正体は思い当たっている、たぶんコイツが言えば聖騎士が動くだろう
「はは、なんか嬉しいよ」
「キモいなぁ、、あと、聖騎士隊のやつらに、襲撃があってもなるべく殺すなって伝えれるか?」
「それは、できるけど、、意味があるかは、、」
「でも頼む」
「わかった、、」
こいつが言ってどこまでの効力があるかはわからないが、クリスの言葉なら少しは聞いてもらえるだろう
なぜなら--
「師匠!ひどいです!」
「あん?」
コハルから解放されたリョクが駆け寄ってくる
「だって、おまえ頭いいから邪魔なんだもん」
「ひどい!兄さんから情報聞き出したんですか!」
「ま、そうだね」
「師匠はひどい人です!」
「大人はこういうもんだ、また賢くなったな」
「はは、ごめんね、リョク
でも、僕たちはリョクたちが心配なだけなんだ」
「それは、、嬉しいですけど、、」
「コハルー!脱走兵はココだぞー!」
「あ!リョク!おトイレだって言ったのにー!
悪い子だね!」
「え?ちょっ!?」
ガシッ
逃げようとするリョクの頭を掴む
「痛い!」
そして、コハルに受け渡した
「つかまえたぞー!今日はビシビシいくからねー!」
「し、師匠!た、たすけ、、」
リョクはオレの笑顔を見て、助けてもらえないことを悟ったらしい
死んだ目になってグッタリとコハルに引きずられていった
「ウケるw」
「キミってドSだよね、、」
「そうかな?そうかも?」
「はは、、」
隣のクリスは引きぎみだった
ま、そんなことどうでもいい
とにかく、リューキュリア騎士団とやらが、近いうちにレウキクロスに攻めてくるかもしれない
そんな不穏なことを察知したオレたちは、どう対処するか、頭を悩ませることになったのだ




