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第242話 宗教の対立、戦争の歴史

「なぜ、それを剥がすのじゃ?」


「あ、、それは、その、、」


ギルドに帰ると、受付嬢が貼り紙を剥がすところに遭遇した

そのことについて、ティナが1番に気づく


その貼り紙は、

---------------------------------------------------------------

森林エリアでリューキュリアの子どもが見かけられた

モンスターと間違えて攻撃しないように

---------------------------------------------------------------

と注意を促すものだった


つまり、リョクとショウのことだ


ティナに問い詰められ、受付嬢は気まずそうにしている


「あの、良かったら話してくれないかな?」

そこにクリスが割って入った


「、、枢機卿様から、剥がすように、と指示があったようです」


「そっか、、わかった、ありがとね」


「いえ、、」


受付嬢が申し訳なさそうに貼り紙を持って離れていく


「どういうことじゃ?」


「、、あっちで話そう」


クリスは難しい顔をして、待合所の方に向かったので、その後ろに続いた


みんなが揃って1つのテーブルにつくと、さっそくティナが口を開く


「それで、どういうことなんじゃ?

あまり意味のない貼り紙だとわかってはおるが、子どもたちの安全を考えれば、わざわざ剥がす必要はないじゃろう?」


「まぁまぁ、ティナの気持ちはわかるよ、落ち着いて」


「む、そうじゃな、クリスが悪いわけではないのじゃ

すまなかったのう」


「いや、、この国に問題があることだから、代表して謝罪するよ

ごめん」


クリスは深々と頭を下げる


でも、その姿がなんだか面白くない、とオレは感じた

なぜなら、


「おまえ、オレたちのこと他人だとでも思ってんのか?」


「え?」


「変なことしてないで、事情だけ教えろよ」


仲間に悪くもないのに頭を下げるのはおかしいだろ、そう思ったが照れくさいのでわざわざそんなことは言わない

別に言わなくても、コイツは察せれると思った


「あ、、うん、ありがと

やっぱり、キミは優しいな」


「別に優しくない」


「ふふ♪」

「ツンデレね」


オレの態度を見て、ステラは笑い、ソフィアはニヤついている


クリスが他人行儀なのが気に入らない

オレがそう思ってるのを見抜かれたらしい


「男なのにしょんぼりしててキモい、早く話せ」


「照れ隠しね」

「そうですね♪」


、、こいつらは今夜お仕置きしようと思う


「ははは、、

じゃあ、今回の一件について説明するよ、、

まず、アステピリゴス教国とリューキュリア教国について、二国の歴史から話すね

この2つの国は、

どちらも教皇をトップに置く宗教国家で、土地が隣り合っていることもあって、昔から競い合って発展してきたんだ」


「ふむふむ、リョクたちの国も宗教国家だったのか」


「アステピリゴスでは、時の神クロノスを

リューキュリアでは、豊穣の神エポナを信仰していて、

それぞれ、クロノス教、エポナ教、という宗派ができたんだ

で、

クロノス教では教徒の私生活にあまり制限はかけない自由が多い教え、

エポナ教では色んな制限があるお堅い教えが普及した

例えば、

豊穣の女神様が与えてくれるものだけを食べろ、とかね

つまり野菜とか木の実とか、大地に実る食べ物のことを指す」


「それが、モンスターを食べるな、に繋がるのかしら?」


「そう、その通り

信心深い人は肉すら食べないらしいよ

で、この教えの違いで、二国は対立することになるんだ

エポナ教徒からは、

クロノス教徒は神への感謝が足りない、常日頃から神に感謝して生きるべきだ

クロノス教徒からは、

エポナ教は教徒に苦痛を強いる邪悪な宗派だ、教徒に苦痛を強いる神など偽物だ

みたいな感じにね」


「うーむ?なんか作為的なものを感じるなー」


「おぉ、キミって意外に頭いいよね」


「あぁん?」


「ごめんごめん

でも、ライの言う通りで、この言い合いは国同士が戦争をはじめるための前準備だったのさ

お互いを憎しみ合うように、お互いの宗教を貶めるように、国の上層部が情報捜査して噂を流したんじゃないかって、

国外の学者さんたちは批評してるよ

あ、この話、町中でしないでね

イヤな顔されるから」


「わかったのじゃ

それで、その情報操作が原因で戦争になったと?愚かなことじゃ、、」


「そう、すぐに戦争は始まった

これが200年前のこと

歪みあった両国は長い間戦争を続けて、その戦火は150年間もの間続いた」


「150年?ずいぶん長いな

つまり終戦したのは50年前?」


「うん、その通り

だから、終戦したと言っても、、」


「両国は憎しみあったままってことね」


「そう、、

だから、、昔のことを知っている年配の方、特に国の中枢にいる枢機卿の1人は、リューキュリアのことを憎んでいるんだ」


「じゃから、その枢機卿は、貼り紙を剥がせ、と?」


「そうだね、、」


「歴史はわかったが、、やるせないのじゃ、、」


「うん、、僕らの世代は戦争なんて知らないし、リョクやショウのこと、助けたいけど、一部の人はそう思ってくれないみたいだ、、」


「、、、」


みんなが暗い顔をする


そうか、だから受付嬢さんは気まずそうにしてたんだ

あの子もオレたちと同世代に見えた、戦争を知らない年齢だ

だから、自分としては剥がしたくないけど、国教であるクロノス教の枢機卿の命令は無視できない

渋々、子どもたちの張り紙を剥がすことになったんだろう


そもそもの話だが、

リョクとショウが見かけられたとギルドに報告したとき、

隣国の子どもだろうと、救助隊を出すくらいはしてもいいのでは?と思った


そのときはクリスになだめられて深く考えなかったが、

国同士のいざこざがこのような対応に繋がったのだろう、と納得することができた


「わかった、教えてくれてありがとな」


「ううん、ただ、歴史の話をしただけだよ」


「いや、おかげで国を頼ることはできないってのはわかった

本格的にあいつらをどう保護するのか考える覚悟ができたよ」


「ライ、おぬし」


「うん、待たせてごめんね、ティナ

リョクとショウが望むなら、オレたちが2人を連れて町を出よう」


「え?でも、リリィの修行はどうするのよ?」


「もちろん、リリィには修行を続けてもらう

今考えてるのは、

リョクとショウを連れて、ウミウシまで戻って、ノアールたちの店で働いてもらうっていうプランだ

だから、2人をそこまで送り届けて、またレウキクロスに戻ってこようと思う」


これは前々から考えてたプランだった


冒険の旅に子どもは連れていけない

だから、レウキクロスで保護しようとも考えていたが、歴史を知った今はそのプランもなしだ

もしレウキクロスに居場所を作っても、リューキュリア出身だとバレたら迫害されるのは目に見えていた


だから、自分たちの力が及ぶ範囲でなんとかしなければならない


「やはり、それしかなさそうじゃのう」


ティナも同じ考えに至っていたようだ


「うん、だけど問題は、、」


「2人が保護を求めるか、ですね、、」


「んー、ボクの直感だけど、2人とも行かないって言うと思う

だって、リョクは家族を守りたいから強くなろうとしてるんだよ?

その家族ってショウのことだけじゃないよね?」


「だよね、、」


コハルの言う通りだった

おそらく、リョクの近くには父親か親戚、ショウ以外にも大切な人が近くにいるはずだ

だからあいつは12歳なのに剣を握っている


「ピー、、」


なんとも上手い結論がでない話し合いであった

結局のところ、あの2人が納得しないとことが運ばないのである


「もちろん、無理やり連れてくってこともできるけど、、」


「それは、よくないと思うわ」


「だよね、オレもそう思う」


「様子見、、ってことになるのかな、やっぱり、、

レウキクロスで保護できれば、、1番良かったんだろうけど」


クリスが申し訳なさそうに言う


「ま、それはしゃーねーよ

おまえのせいじゃないしな」


「はは、ありがとな」


「んー、でもやっぱり2人が助けてって言うまでは様子見だな

通信手段も与えてるし、突然どうにかなるってことはないと思う

生きててくれればなんとでもなるさ!」


結論が出ないと踏んで、一旦明るく振舞って、話題を終わらせることにした


「そうね、そうするしかないと思うわ」


「はい、私もそうするしかないと思います

大丈夫です!ティナ!

私も毎日栄養のあるものを2人に食べさせますし!」


「そうか、、そうじゃの、、うむ、いつもありがとうなのじゃ、ステラ」


「いえいえ♪当たり前のことじゃないですか♪」


「ボクもリョクが強くなってモンスターを倒せるくらいに鍛えてあげるから!」


「うゆ!ミィも!えと、、なにか、、ご飯の準備とか!がんばりましゅ!」


「コハルも、ミリアも、ありがとなのじゃ」


「ふふ、いいパーティだね、ホントに」


クリスのやつにやっと笑顔が戻ってきた


「あぁ、自慢のパーティ、自慢のお嫁さんたちだ」


「じゃあ、明日もいつも通り、森林エリアでの依頼をこなしつつ、

リョクたちのところに行く、ってことでいいかい?」


「あぁ、そうだな」


「わかった、もしなにかリョクから連絡があったら教えてくれ

僕の宿は変わってないから」


「了解、そんときは緊急性に応じて連絡するわ」


「うん、頼んだ」


ここまで話して、今日は解散となった

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