第230話 男には適当に対応しちゃう
レウキクロスを出て西に向かって歩いていくと
すぐに森が見えてきた、案内してくれるクリスを先頭に森の中に入る
森の中は鬱蒼としていて、ジャングルのようだった
太い幹にはツタが絡まり、その木々は5階建ての建物くらいの高さまで伸びて、空はところどころしか見えないほど、葉っぱで覆われていた
「ジャングルみたいなのに蒸し暑くはないんだな」
「そうだね、むしろ寒いくらいさ」
クリスと前衛を務めながら森の中を歩いていく
「どういう気候なんだ?冬になっても枯れないのか?」
「そうだね、この森の木は年中枯れないよ
他の地域は違うんだっけ?」
「ん?おまえってレウキクロスから出たことないの?」
「うん、そうだね、僕は生粋のレウキクロスっ子さ」
「へー」
「聞いた割に興味なさそうだな、、」
「まぁ、正直興味ないな」
「ひどいやつだな、キミはどこ出身なの?」
「出身、、んー、まぁ、遠いところ
冒険者になったのは、エルネスタ王国」
「エルネスタから、へー、結構遠いよね
なんで、わざわざレウキクロスまで?」
「今はパーティに参加してないリリアーナって子の修行のために帰郷した」
「へー?じゃあ、その子はレウキクロス育ちなんだ?」
「そうだなー
でも、なかなか師匠に修行をつけてもらえなくてだなー」
「そうなんだ?それはなぜ?」
「んー、、」
こいつにどこまで話していいものか、と悩む
師匠の名前を出さなければいいかと思って話しはじめた
「なんというか、リリアーナは治癒魔術師なんだけど、
その子の師匠がちょっと頑固で、、喧嘩中というか、なんというか?」
「ほう?治癒魔術師ってことは、クロノス教のシスターなのかな?」
「元、な」
「ふむ?なら、中央教会に行けば修行つけてもらえると思うよ?」
さすが生粋のレウキクロスっ子
少し話しただけでだいぶ核心までたどり着かれてしまった
「中央教会、、かぁ、、」
「なに?」
「いや、そこに通ってるんだけど、、」
「あれ?そうなんだ?
もしかして、喧嘩中の相手って、ユーシェスタさんじゃないよな?」
「、、その人っす」
ユーシェスタさんの名前を言われてしまい、正直驚いたが、ここまで話して嘘をつくのも不自然だったので素直に話すことにした
「んー?そうなんだ?
そんな意地悪な人じゃないはずなんだけど、、」
「まぁ、複雑なのよ、、」
「そっか、あ、そろそろだよ、構えて」
「おっけ」
討伐対象の生息エリアに近づいたようなので、みんなにも合図して臨戦体制に入る
今日の依頼は中級B、相手はワニのようなモンスターだ
なので、森の中の川の近くにきた
「陸地におびき寄せて倒すから、川には近づきすぎないで」
「わかった」
言いながらクリスが煙玉に火をつけて地面に置く
「それは?」
「匂いでおびき寄せるアイテム」
「へー」
煙が辺りに充満してくる
なんだか甘い香りがした
すると、ザバザバと、ワニ型モンスターが川から3匹現れた
白色の体表に赤い目をしている
アルビノっぽい
「カバンにしたら売れそうだな」
「そんなの誰も買わないよ、こわい発想だなぁ」
あれ?こっちにはワニ皮って流通してないのか?
と疑問に思っていると
「いくぞ!」
隣のクリスが走り出したので後に続く
「あ、おう!」
昨日、今日の仲だが、クリスとの連携はとてもやりやすく、2人で1匹を同時に倒して、次に向かった
「連携は楽しいなー!」
「でも、これくらいなら1人でも!余裕だろ?」
2匹目を捌いて問いかける
「まぁねー!でもそれはそれさっ!」
また2人で駆け出して3匹目にとどめをさした
「楽しいなー♪」
「戦闘狂かよ」
「ちがうよ!ひさびさに僕について来れる人たちに会って嬉しいだけさ!」
「嫌味かよ」
「卑屈なやつだなー」
「うるせー」
オレはもくもくとモンスターの牙を剥ぎ取りながら、クリスに悪態をつく
「ホントに皮は売れないのか?」
近くで見ても、白いワニ革は美しく、高級かばんに使われていそうなものに見えた
「だから売れないって」
「うーん、、」
そうなんかなぁ?と思いながら、一応1匹分は皮を剥いでアイテムボックスに入れておくことにした
それを見て
「変なやつ」
とクリスが言ってくる
「おまえもなー、戦闘狂」
軽口を叩きつつ移動し、オレとコハルが交代してまたワニモンスターを狩る
その後はステラ、またオレ
という具合に2周したらいい時間になったので帰ることにする
今日もクリスは戦いっぱなしであった
でも、全然疲れた様子はない
「明日は中級Aでいい?」
「んー、いいと思う、ミリア大丈夫?」
「うゆ、、大丈夫、、みんな、つよい、、から」
「ミリアのことはちゃんと守るからな」
「うゆ、、えへへ、、」
「かわよ」
クリスがニコニコするミリアを見てつぶやく
それを聞いたミリアは、すぐにオレの腕に抱きついて後ろに隠れてしまった
「可愛いのは当然だが、こっちみんな、変態」
「み、見ただけで変態呼ばわり、、こわい、、」
「せいぜい怖がってくださいー」
「変態はキミの方だろ、こんなに可愛い子ばっか」
「ひがまないでくださいー」
「う、うぜぇ、、」
今日もクリスのことをぞんざいに扱いながらギルドに帰ってきた
「じゃ!また明日な!」
それなのにやつは楽しそうに手を振って見送ってくれる
「、、あいつ、マゾなのかな?」
「帰るわよ」
「あ、うん」
オレの疑問には誰も答えることもなく、その日も1日が終わった




