第228話 自分たちよりも強いかもしれない人間
「この辺りのモンスター討伐依頼だと、山岳地帯か、もしくは森林地帯のどっちかがメインなんだ
今日はひとまず山岳地帯の方を選んだけど、高難易度の依頼は足場が悪いからやめた方がいいかもね」
「ふむふむ、なるほど」
レウキクロスに来たときに越えてきた山道を登りながらクリスの話を聞く
少し歩くと馬車道から外れて、人しか通れないような道になった
「ふぅ、ふぅ、、」
「ミリア、大丈夫?」
「ちょっ、と、、くるしい、、」
結構急な山道だけあって、体力が少ないミリアは苦しそうに、でも必死にオレたちに合わせようと頑張って歩いていた
「おんぶしてあげる、乗って」
オレはミリアの前にしゃがんで、背中に乗るように促す
「で、でも、、ミィだけ、、だめ、だよ」
「大丈夫よ、少しずつ慣れていけばいいのよ」
「そうですよ、ミリアはまだ初心者なんですから」
「うみゅ、、ありがと、、」
みんなに後押しされて、大人しくオレにおぶさるミリア
「いいパーティだね」
そんな様子をクリスは微笑ましく眺めていた
「自慢のパーティだし、家族だ」
「羨ましいよ」
「入れてやんないぞ」
「あはは、そりゃそうだよね
ごめんね、ミリアさん、もうちょっとで着くから」
「は、はい、、」
ミリアをおんぶしたまま、山道を登って行くと、開けた場所に着いた
遠目に、鳥型のモンスターがいるのが見えた
岩の上に止まって毛繕いしている
鷲のような見た目だが、体は黒色で羽と足、クチバシは青かった
サイズは人間よりは小さいかなってくらいだ
鳥としてはかなりでかい
そっとミリアを下ろして、岩影に隠れる
「1匹だから余裕だと思うけど、さっき話した陣形でいいよな?」
「あぁ、そうだな」
「じゃあ行こう!」
「おう!」
みんなしてそいつの前に飛び出して、構える
オレとクリスが前衛
ティナがその後ろ、さらに後ろのソフィアとミリアを
コハルとステラがガードする
鳥型モンスターはこちらをみると
「グァ!」
とひと鳴きし、オレめがけて飛び掛かってきた
その鉤爪をキルクで弾く
「お手並拝見」
「こんなやつじゃ、たいしたもん見せれないぞ」
「まぁ、そう言わず」
「わかった」
クリスと軽口を叩きながらバシバシと相手の攻撃をいなしていく
倒そうと思えば倒せるのだが、陣形の確認のためにも少し戦いを長引かせることにする
そんなオレの攻防をクリスはジッと見ていた
「暇なら譲ろうか?」
「譲ってもらっても暇には変わらなそうだ」
「まぁ、そうだよな」
オレはこれでも特級Bの冒険者だ
クリスは特級A
中級のモンスターなんて相手にならなかった
ということで、もういいかな、と判断して翼を切って、落ちてきたところをとどめを刺す
「お見事」
「まぁ、そりゃ、このレベルならなー」
「じゃ、次は複数体いこうか」
「おっけー、おまえの剣もみたいしな
みんなも問題ないよね?」
みんなに振り返って確認すると頷いてくれた
今の戦いでは、オレ以外動いてないので大丈夫そうだ
開けた道をさらに進むと今度は同じ鳥型モンスターが3体いた
「じゃあ、打合せ通りに」
「おう」
オレとクリスが駆け出して、それぞれ1匹ずつモンスターに斬り刻む
オレは一回攻撃を受けてからとどめをさし、クリスのやつは接敵と同時に胴体を一刀両断していた
最後の1匹に狙いをさだめたところ、にやけ面のクリスが既に駆け出していて、
ジャンプしながら首を落とした
「やりますなー」
「まだまだ、キミの方は準備運動中かな?」
ラスト1匹を先に仕留めたから煽っているんだろうか
「そうかもなー」
「じゃ、次いこ次」
「おっけ」
次は5体、また奇数だ
2人で駆け出して、ふと隣を見ると、またクリスはニヤけていた
「舐めてると怪我するぞー」
斬りつけながら話しかける
「こんなので怪我してたら特級は名乗れない」
「まぁ、そりゃそうか」
同時に2体目を倒して、最後の1匹に駆け寄る
くしくもこれも同時に斬りつけて、お互いの位置を交換するように、クロスに切り裂いた
合体技のようにも見える
「僕たち、いいコンビなんじゃないか?」
「べつに嬉しくない」
「つれないやつだな〜、楽しくやろうよ」
「気が向いたらな」
話しながらみんなの位置に戻る
「ボクも!ボクも戦いたい!」
「じゃあ、、オレと、交代、、かぁ、、連携の練習した方がいいもんなぁ、、」
「なんでイヤそうにしてるんだい?」
「ライさんは乙女なので♪」
「なるほどね」
「コハルたん、気をつけて」
「余裕だよ!」
「愛してるよ、コハル」
「な、なんだよ!調子狂うから夜だけにして!」
無意識に若干えっちなことを言ってしまうコハル
「あはは!ホントに面白い人たちだ!」
それを聞いてクリスは笑っていた
その後、3戦、コハルとクリスが前衛で戦った
2人が戦ってる間に後ろから別の個体が襲ってきたりもしたが、すぐにソフィアとティナが撃ち落とした
「では、そろそろ私も前に行きますか
クリスさん交代しましょう」
「んー、僕は余裕だし、ステラさんとも連携の練習したいから、
できればコハルさんと交代してもらってもいいかな?」
「わかった!
やっぱりクリスは強くてワクワクするね!こんど戦おうよ!」
「あはは、じゃあ模擬刀でね
いいかな?ステラさん」
「はい、大丈夫です
それと、ミリアの強化魔法も体験してもらいましょうか」
「おぉ!ついに!
僕、強化魔法はじめてなんだよ!楽しみだなー!」
「では、ミリアお願いします♪」
「うゆ、、ぽかへい、、」
とことこと、地面におろされたぽかへいが前に出る
ミリアは小さい杖を構えて
「すぅ、、みんなー!!がんばってー!!」
と叫ぶ
すると、ぽかへいに光が集まって、クリスとステラに向かって放出された
「おぉ、、おぉぉ!!身体が軽い!」
クリスは嬉しそうにピョンピョンとその場で飛び跳ねていた
ブン!ブンブン!
そして、少し離れたところで刀を振り回し始める
ブンブン!ブンブンブンブン!!
「お、おい、、」
ブンブンブンブン!!
その刀はどんどん加速していき
クリスの周りに砂埃が舞い出す
ザンッ!
そして、次の瞬間、近くにあった大きな岩を横に一刀両断
空中に浮いた岩の塊は、気づいたときには小石ほどのサイズにバラバラになって地面に崩れ落ちた
「すごい!強化魔法ってすごいね!」
満面の笑みで振り返るクリス
「あ、、」
しかし、オレたちをみて、顔色を青くする
またやってしまった、そんな顔だ
「、、別に、それくらいオレもできるし」
「ウソつきなさい、できないでしょ」
「、、ライトニングで粉々にできるし、、」
「ライさんは可愛いですねぇ♪」
「やっぱクリスはめちゃくちゃ強いね!早く手合わせしたいなー!」
「え、、あ、、僕のこと、えっと、、引いたりしてない?」
「なんだぁ?強すぎて引かれちゃうみたいなアレか?
自意識過剰おつ、オレたちだって強い、あんまり調子のんなよー」
オレは黒髪イケメンを一瞥してから横切って先に進む
オレだって負けてないんだからね!
「うふふ♪では、いきましょ♪クリスさん」
「うん、、うん!いこう!」
オレたちの様子に拍子抜けしたのか、クリスのやつは調子を取り戻して、戦いを再開する
あまり褒めたくないが、やっぱりクリスの剣技は洗練されていて見事だった
ステラとも美しい連携を決めていた
♢
帰り道、山道を下りながら会話する
「楽しいなー!」
「そうか?」
クリスはうっきうきでスキップでもしだしそうなテンションだ
「僕は最近で1番楽しいよ!」
「そりゃ良かったな」
「明日もやらないか!」
ウホッ?
「、、まぁ、いいけど、、」
「そっか!ありがとな!みんなもありがとう!」
「いえいえ♪私たちも強い前衛がいると心強いです」
「む、、」
ステラの発言にちょっと嫉妬の炎が、、
「あ、後衛の守りが万全になるので♪ん~便利ですね!」
「うむうむ」
「うふふ♪」
「ねぇ!クリス!いつ手合わせする!?」
「むむ、、」
「コハル、コハル」
ステラがコハルを小突く
「え?あ!ライともやる!」
「そっかそっか!」
「あはは!ホントに面白い!これから楽しみだなー!」
そのままギルドまでゆっくりと帰り、報奨金を分配して、クリスとは別れた
明日も午前中に待ち合わせ、ということになった
宿に帰る途中
「あの、ライさん、少し食材の買い出しに付き合ってもらえませんか?」
とステラからお願いされる
「ん、もちろんいいよ」
断る理由なんてないからもちろん了承する
「では、みんなは先に帰っててください♪」
ステラはニコニコとみんなに手を振る
「そんでなに買うの?」
「買いません、来てください」
グイっと力強く引っ張られる
「な、なになに!?」
そのままづかづかと近くの宿屋に連れ込まれた
「2名で、はい、はい、どうも♪」
楽しそうに鍵を受け取ると部屋に引っ張り込まれる
「ステラさん?」
リーン
いつの間にか自分の分も手に入れていたサイレントのベルを鳴らすステラさん
「はぁはぁ、ライさん♪
今日のライさん可愛すぎです♪あんなに嫉妬して」
なんだか鼻息が荒いステラさんがオレの方に近づいてくる
両手を前に出しわきわきしながら
「だ、だって、、」
「もう!たまりません!」
グッと押されてベッドに押し倒される
「す、ステラさん?」
はぁはぁと息が荒い、目がハートだ
「私がライさんのこと大好きだって!嫉妬しなくていいって!
わからせてあげますから!」
それから激しくキスされ、脱がされ、
ステラに捕食された
オレはされるがままだ
そんな野生的な求め方をするステラをジッと見て、とてつもない快感を与えてもらう
オレは、Sのはずなのに、、なのに、、
ちがうんだから、、ちがうんだからね!
そう思いながらもオレはステラに抗うことができなかった
♢♦♢
ニコニコ
「買い出しは終わったのかの?」
「はい♪たっぷり補充しました♪」
ステラと宿に戻ったら、ツヤツヤしているステラにティナが疑いの目を向けた
「そうか?よかったのう?」
「はい♪とっても良かったです♪」
「おぬし、、そういうことか、、はぁ、、」
ステラの様子があきらかにおかしいので、
ティナにすぐに気づかれ、オレの方にジト目を向けてくる
え?オレのせいじゃないよ?ステラが襲ってきたんだよ?
だから、オレは悪くないよねぇ?
「ニヤけておるぞ、、」
キリッ、真面目な顔に戻る
「、、、まぁ、べつによいが、、夫婦じゃしの、、」
許された
まぁ、ティナはやれやれ、という仕草をしていたけど
その後、リリィが帰ってきたのでみんなで夕食を食べて、クリスのことを報告して上手くいきそうだと伝えた
リリィは少し複雑そうにしていたが、
「あいつがパーティに入るのはレウキクロスにいる間だけだし、
リリィがいないと不安で不安で仕方がない
はやくリリィに戻ってきて欲しいなぁ」
と熱烈に伝えたら笑顔になってくれた
よかったよかった
ひとまず上手くことは運びそうだ
しかし、リリィの方は未だ雑用係をやっているようだった
なにか修行をつけてもらうにあたり、ユーシェスタさんの機嫌が良くなるいい作戦はないのだろうか、と考える
リリィの義理のお母さん、ユーシェスタさんはかなり頑固なようだ
リリィの頑固さは母親譲りなんかね?
なんて思いながら、これからのレウキクロスでの生活について思案する
とにかく、オレたちは生活資金を貯めつつ、リリィのことを全力でサポートしよう、そう思って今日は眠りにつくことにした




