第225話 瞬光(正式名)
「そういえば、クリスのことはどうするのさ?」
「あー、そんなやついたな」
みんなのおかげで自信を取り戻しつつあるオレは、コハルに言われるまでやつのことなんかすっかり忘れていた
「んー、どうしようね」
「ひとまず、みんなに話してみてはどうじゃ?」
「そうだねー、それじゃリリィが帰ってきてから相談しよっか」
リリィが留守の間にみんなを堪能した翌日、お昼ご飯を食べながら、そんな話をする
「ソフィアとミリアは今日も魔法のお勉強かな?
今って重力魔法中級だっけ?」
「うゆ」
ミリアはレウキクロスにくる旅の道中、アイテムボックスの習得を完了していた
なので、今は重力魔法の次のレベルを習っているところだ
「そうね、たぶんもう少しで習得するわ」
「へー!さすがミリア!早いな!」
「ま、まだ、、できてない、、よ?」
「ソフィア先生が言うなら大丈夫さ!」
「がんばりゅ、、」
「そうね、ミリアなら大丈夫よ、才能あるわ」
「えへへ、、」
順調そうでなによりである
「ん〜、ならオレは瞬光の練習でもしてようかな〜」
「瞬光ってなによ?」
「あの足からライトニング出す技の名前」
「ほー、そんな名称にしたんじゃな」
「ボクも一緒に考えたんだ!」
「私もです!」
「2人ともありがとな、カッコいい名前つけてくれて」
というのも、毎朝の剣の稽古のときに2人と相談して決めたからだ
一瞬で移動するから、瞬間とか瞬時っていうのがしっくりくるし、
光のように早い、みたいなイメージで組み合わせて、瞬光、という名前にしてみた
ちなみに、ステラの最初の案は、
【一瞬剣一閃〜まばたきのまにまに〜】
で
コハルは、
【おまえは斬られたことに気付けない、クックッ(微笑)
光の速度で斬り刻め!雷帝剣キルゥゥゥク!!】
だった
瞬光と比べてみると原型をとどめてはいないのはおわかりいただけるだろう
でも、2人に相談したのは本当だし、参考にさせてもらったのも本当だ
野暮なことは言うまい
たとえ跡形も無かったとしても
「しゅんこう?の、練習するなら、、ミィも、、お手伝い、、する?」
ミリアの言う通り、瞬光はミリアの強化魔法がないとまだ制御はできない
手伝ってくれるのはありがたいのだが、、
「んーと、ミリアに強化魔法をかけてもらったときのことを思い出しながら練習するつもりだったんだけど、ミリアの勉強の邪魔にならないかな?」
「なら、宿で強化魔法かけてもらってから裏庭で練習すれば?」
「裏庭だと広さが足りないんです
ライさんの瞬光はかなりの移動距離がありますから」
「横に移動するからでしょ?
縦にジャンプして、制御の練習だけすればいいじゃない」
「それだとライは落っこちてペチャンコになるよ?」
怖いこと言わないでコハルたん、、
「重力魔法で浮きておりてきなさいよ」
「たしかに、、」
「あんたたち3人そろって、、
ア、、なんでもないわ、、」
なんでこんなこと思いつかないのよ?
と言いたげなソフィアたんだったが、大人になって口をつぐんだ
アホね、とでも言ってきたらお仕置きされると思ったのだろうか?
正解です
でも、言わなくてもそういう態度をとったので今晩お仕置きしたいと思います
ニコニコ
「、、、なによ?」
「べつに?さすが天才魔法使いだね!」
「、、、」
「じゃ、じゃぁ、、今、かける?」
「そうだね!お願いしてもいいかな?」
「うゆ!」
そのあと、ミリアは嬉しそうに強化魔法をかけてくれた
よしよしと笑顔のミリアを撫でて裏庭で特訓する
強化魔法は数分しか保たないが、この感覚を忘れないように身体に覚えさせようと努力する
バシュ!っと両足からライトニングを放出し、上空にジャンプ
4階建ての建物あたりは飛び越せそうなくらいジャンプしてから、重力魔法で地上に降りる
その練習方法を何度か繰り返す
「空飛んでるみたいですねー」
「ホントだねー」
見学の剣士2人はオレの様子を見てそう呟いていた
5分くらいすると、ミリアの強化魔法がきれて、全然制御できなくなる
ジャンプできる高さもせいぜい2階まで、そもそも真っ直ぐ上に飛べず、斜めに飛んで建物にぶつかりそうになったりもした
「こぇぇ、、」
「やっぱり難しいんですね?」
「そうだねー、コツを掴んだらいけると思うんだけど
自転車的な感じで」
「自転車ってなに?」
「んー、乗り物かな」
そういえば、こっちに自転車ってなかったな
商売に使えるだろうか?またディグルムにでも売りつけてみるか
そう思いつつ、オレは瞬光の練習を続けた




