第152話 一人暮らしの理由
「おじゃましまーす
えっと、明かりはつけてもいいかな?」
やはり、室内に入ってもかなり暗いので確認する
なにかの儀式でもしてないのなら、明るくしたい
「あ、、ろうそくは、、もう無くて、、」
「そうなんだ?じゃあ、ライト」
オレは魔法を唱えて部屋を明るくすることにした
「わ、、わぁ!魔法つかえるんですか!?」
「え?う、うん、一応ね」
ミリアちゃんが目を輝かせて、オレの方を見てくれた
突然のことで少しビックリする
魔法使えるのってすごいんだっけ?
「す、すごいです!」
すごいらしい、でも気後れしてしまう
なぜなら
「そんなそんな、うちにはもっとすごい魔法使いが3人いるよ」
「そ、そうなんですか!?」
「うん、ソフィアとティナとリリィだ」
「ふん、だいたいの魔法は使えるわ、天才だから」
「わしは精霊に力を借りてるだけじゃがな」
「わたしは治癒魔法だけですが」
最初の1人以外はずいぶん謙遜した自己紹介だった、最初の1人以外は
「へ、へー!絵本の中の人たちみたい!」
ミリアちゃんは、3人にも興味を示してくれたようで、更に目をキラキラと輝かせた
「あはは、そうかもね
ミリアさんは魔法とかは使ったことないのかな?」
ひ弱そうな女の子だ
冒険者業に耐えれそうか気になって、戦いへの適正があるのか探りをいれてみる
「わ、、わたしは、、わたしなんかが、、そんな魔法なんて、、」
「ふむ?そうかのう?
なんだかお主からは魔法の才を感じるのじゃ
なんでかのう??」
ティナが不思議そうにミリアの周りをグルグルと回って観察する
「あ、、あの、、」
そんなティナを不安そうにみるミリアちゃん、また縮こまってしまう
「おぉ、すまんかったのう、ふーむ?」
ティナは顎に手を当てて引き続きミリアちゃんを眺める
なにか気になるのだろうか?
くぅ〜
そこで誰かのお腹の音が室内に響き渡る
「、、、」
ミリアちゃんが恥ずかしそうにお腹を押さえていた
「あ、あー!!
お腹すきすぎて我慢できなくなっちゃったなー!
ステラ!ご飯作ろっか!」
あきらかにミリアちゃんのお腹の音だとみんな分かっていたが、
わざとらしく、オレだオレだよ、と自ら濡れ衣を被ることにした
「ライは食いしん坊ね、夕食の支度をしましょ」
ソフィアがうまいことのってくれた
「そうだね!テーブルと椅子は使わせてもらっていいかな?」
「あ、、は、、はい、、」
「よし!じゃあ足りないイスとテーブルはアイテムボックスから出して!
ご飯はオレとステラで用意しよっか!
台所借りてもいいかな?」
「は、はい、、おてつだい、します」
「うん!ありがと!」
そして3人で台所に向かう
「まずは火を起こしておいて、と」
オレは台所にある小さい釜戸に、アイテムボックスから取り出した薪を入れてから
「ファイア」
を唱えて火をつける
「わ、わぁ、、すぐに火が、、すごいなぁ、、」
その様子をミリアちゃんが興味深そうに後ろから見ていた
「よし、ステラ、今日はなに作ろうか?」
「そうですねぇ〜
クリームシチューとかにしましょうか」
「いいね!じゃ、その材料を」
オレとステラでそれぞれ必要な材料をアイテムボックスから取り出し、調理をはじめる
「すごい、、たくさん、、」
食材の種類が豊富だからなのか、そんな感想を述べるミリアちゃん
「ミリアさんは食べれないものとか、きらいなものってある?」
「え?、、い、いえ、、なんでも食べれます、、」
「そうなんだ、良かった
じゃあ、このジャガイモをシチューに合わせて切ってくれるかな?」
「あ、、は、はい、、」
1人だけなにもさせないのは逆にかわいそうなので、仕事を依頼してみた
素直にジャガイモを受け取って、台所に置いてあった小さいナイフで切り始めた
すごく切りにくそうだ
「ずいぶん小さいナイフだね?お気に入りなのかな?」
「いえ、、そんなことは、、」
「じゃあさ、こっち使う?」
手入れしてある切れ味のよい包丁を渡してみた
「じゃ、、じゃあ、、ありがとう、ございます、、」
これまた素直に受け取って、作業を再開してくれた
3人で料理を進めていく
いつも料理をしているのか、ミリアちゃんの手際は良かった
「そういえば、食事を用意する人数って、7人分でいいのかな?
ミリアさんのご家族は?」
「えっと、、一人暮らし、、なので、、」
明らかに暗い顔をするミリアちゃん
これは、、
「そ、そうなんだ、、」
ご両親は?
と聞こうとしたが、口をつぐむ
ミリアちゃんの表情からして、聞いてはいけない領域なのだとわかったからだ
しかし、
「そうなんですか?お皿とかの数から3人家族かと思ったのですが」
ミリアちゃんの顔を見ていない、料理に集中していたステラがそのことに触れてしまう
まずいのでは、と思ったときには遅かった
「、、お父さんは戦争で、、、
お母さんは、、きょ、去年、、病気で、、」
ポロリと涙がこぼれる
「ご!ごめんなさい!!」
ステラが料理の手を止め、すぐにミリアちゃんを抱きしめた
「辛いことを無神経に聞いて本当にごめんなさい!
もう言わなくて大丈夫です!」
「は、、はい、、」
ミリアちゃんの涙はもう止まっていたが、大人しくステラに抱かれている
「私、今が幸せすぎて無神経になっていました、、
本当にごめんなさい、、」
「い、、いえ、、」
「あの、、私も両親を亡くしてるんです、、」
「え?、、」
「とは言っても、母は物心つく頃には亡くなっていて、
父に育ててもらったんですが、その大好きな父も、私が家にいないときに、、
病気で、、」
「グスッ」
とステラが鼻をすする
「だから、、ミリアさんの気持ち、少しはわかると思います、、」
「そ、、そうなんですか、、えっと、、」
ミリアちゃんがステラの顔を見る
「ステラって呼んでください」
ニコリと笑いかける
「す、、ステラ、、ちゃん、、」
「はい!もうお友達ですね!
なんでも話してください!私もなんでも話しますから!」
「おともだち、、」
友達、その言葉に、ミリアちゃんは控えめな笑顔を見せてくれた
ふ、ふぅ、、デリケートな話題だ
なんとかなって良かった、、
オレは2人の間に入れず、眺めていることしかできなかった
「ごめんなさい、それじゃ続きを作りましょうか」
「う、、うん、、」
ステラが誠実に対応してくれたおかげで、なんとか料理を再開することができた
その後は特に問題はおきず、ステラがミリアちゃんに積極的に話しかけて料理は進んだ
ポツポツとだが、ミリアちゃんからも回答がある
少し仲良くなったようだ
そして、ステラ特製のクリームシチューが出来上がり、パンを添えて食卓に並べる
楽しい夕食のはじまりだ
 




