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第131話 コハル・カグラザカ(後編)

アークたちのクランに誘われてから

ワクワクしながら、英雄たちの仲間みたいな関係を期待して、依頼に向かった


でも、彼らとの冒険は、ボクの想像とは全然違った


アークたちの中には、3人前衛職がいたのに、なぜかボクだけが前衛に立たされた


ボクが削った相手を他のメンバーがのんびりと倒しているように見えた


「コハルがいると助かる」


そんな言葉は聞こえてきたが、これは違うんじゃないか、と思った

でも、まだ信頼されてないからかな、これから徐々に仲良くなるのかも!

そう前向きに考えて、組み続けた


でも、半年経っても、その関係は変わらなかった


モンスターの剥ぎ取りもボクだけがやって、

クランのみんなが休憩して楽しそうに話しているときも、

ボクだけ何もしゃべらなかった


最初はしゃべろうとした

でも、冷ややかな目をされて、怖くてしゃべれなくなった


全然楽しくなかった


こんなの英雄じゃない

ボクには無理なのかな、そんなことを考え始めていた


そんなとき、昨日倒したデッカいトカゲみたいなモンスターが現れて、

仲間たちを惨殺した


仲間たちがやられていくのを見て


すごく怖かった


すごくすごく怖かった


でも


悲しくなかった


そんな自分が怖くなった


これはボクに対する罰なのかな

仲間を大事にしなかったボクが悪いんだ

そう諦めかけたとき


ピーちゃんが現れて、ボクを救ってくれた


新しい力を手に入れたボクは、あろうことか撤退しながら、ワクワクしていた


これからボクの英雄譚がはじまるんだ!


ギルドに戻って仲間を募ってアイツを倒す!


そんなことを考えていた


今思うと、よくなかった

アークたちを弔うべきだった


ギルドに戻ると、キースがボクのせいでクランが壊滅した

と言いふらしていた


すぐに反論しようとしたが、

半年間、まともに人と話してなかったボクは、うまく声が出せないことにそのとき気づいた


すごく怖くなった


そして、さっきまでのワクワクが幻想で

罪深いことに気づいて

口を開くのをやめた


黙っているボクを見て、

唯一、ルカロが声をかけてくれたけど、

ギルドの人たちの冷ややかな目が怖くなり、その場から逃げ出した


次の日、ボクは死神と呼ばれるようになった


なんだよ、それ、ボクは一生懸命戦ったし、一生懸命がんばってきたのに、、


でも、、

ボクが仲間と信頼関係を築けていたら、こんなことにならなかったかもしれない、、


それに、もしボクが真実を語ったとき、嘘つきなんて言われたら、、


こわい、、


言えない、、


そう思い、口を閉じた


英雄を目指していたのに、死神と呼ばれるようになった


そのギャップに心が壊れそうになった

でも、ピーちゃんがそばにいてくれたおかげで耐えられた


そして、ボクは人と距離を置くようになる


ボクはソロで活動することにした


仲間がいなければあんなことにはならない

気楽なものだ


皮肉なことに、キースが大袈裟に報告したことで、

生き残ったボクのランクは特級Bにランクアップした


上級Aまでの依頼は、ソロでも誰も文句を言わなかった


ピーちゃんの力を借りれば余裕だったし、まだまだ上に行けると思っていた


正直、物足りなかった

もっと強い敵、もっと強い、あいつみたいなモンスターと戦って、、

楽に、なりたかったのかもしれない


だからなのかな


ルカロのところに特級の依頼を何度も持っていったけど、依頼は受け付けてもらえなかった


何度も、何度もルカロに怒られた


コハルなら仲間を作れる、仲間と一緒なら受諾するわ、そう言われた


でも、それで上手くいかなかったじゃないか


そう思った


だから、ルカロがいない日にこっそり受けてやろうと思った

でも、ルカロのやつは、ボクの依頼を止めた日から、ずっと休まず出勤して、

いない日はなくなった


なんだよ、あいつ

ボクが休んでる日もずっと働いてたんだ

こっそり物陰から見てみたら、

ボクの姿を探すように、毎日キョロキョロして、、


ボクの行動を読んでいたんだろう


そのときは、イラッとしていたと思う

でも、今はすごく嬉しくって、

あのときも、ちょっとだけ嬉しい気持ちは心の奥にあったと思う


唯一の友達と呼べる相手のボクを思いやった行動だ

今度ちゃんとお礼をしよう


思い出して、今はそう思えた


そんな日々を

ソロでの活動の日々を半年くらい過ごしていたら、

ルカロが

「コハルをパーティに歓迎してくれる人たちがいるよ!」

と言ってきた


そんな人たちがいるの?

ボクのことちゃんと説明した?

と確認した


説明したけど了承してくれた、という

変な人たちだ

ボクは警戒した


どうせ、ボクが強いから、また使い潰す気だろう


でも、上に行くために、特級の依頼は受けたい


少し組んでみて、嫌な奴らだったら、今度は絶対抜けてやろう

と思った


そこに現れたのが、ライたちだ


ボクの噂を聞いても、なお歓迎する、とボクの目を見て言ってくれた

少し嬉しかったが警戒は解かなかった


ライたちと冒険すると、

今までとは違って、戦う前にみんなで作戦会議をするし、

大変なポジションは交代でやろう、と言ってくれた


はじめての体験だ


モンスターと戦うときは、お互いに声を掛け合って、カバーしあって、

連携が決まって倒せると、すごく気持ちが良かった


信頼し合う仲間たち、英雄のパーティってこんななのかな?

羨ましいなって思った


ライのやつは、モンスターを倒すと、大変な剥ぎ取りを全て引き受けてくれて、

休憩するときもボクに話しかけてくれた


ソフィアやステラもたくさん話しかけてくれて、

ボクは少しずつ、人と話すのって楽しかったんだ、と思い出すことができた


みんなのことを信用してきたら、ライがボクのことを女の子として見てる、なんて言い出した


いや、前から言ってたような気もするけど、気にしていなかった


でも、ライのことやみんなのことは、ピーちゃんが懐いたこともあって、もう警戒はしていなかった


ボクのことを女の子として見てる、という言葉は疑わなかった

だから、何でそう思うのか気になって、ライとデートした


そうすると、ボクの男勝りな趣味を肯定してくれて、

一緒にいると楽しい

と言ってくれた

ボクもライといるとすごく楽しかった


でも、ボクはお姫様になりたいわけじゃない

英雄になりたい


だから、いくらボクを女の子として見てくれたって、ライとは付き合えない

そういうつもりで、断るつもりで答えた


でも、ライは

2人で英雄になろう

と言ってくれた


なんだよそれ、、じゃあもう断れないじゃないか、、

そう思った


それから、すごくライのことを意識するようになって、

すぐにソフィアとステラに相談した


2人は、本当にライがボクのことを好きなのか確認しよう

あいつはわかりやすいからすぐわかるわよ

なんて言って笑ってた


そして、ボクがライのことが好きなのか確認する必要がある

とアドバイスしてくれた


相手のことを褒めて相手の反応をみる

その人に手を繋いでほしいとお願いして反応をみる

そして、その人と触れ合ったとき、ボクがどう思うか確認する

と言うのだ


実際にやってみた


そして、

ライと手を繋いだら、すごくドキドキした


これが恋というものらしい


ボクが恋心を認識したとき、クルーセオ鉱山で行方不明者が出て、やつの復活を彷彿とさせた

アークたちのクランを壊滅させたやつだ


その日、ボクはクラン壊滅の真実をみんなに話した


今まで溜め込んだものが決壊して大泣きしてしまったが、

みんなを見るとみんな泣いてくれていて、

本当にボクのことを思ってくれてる


ボクもみんなの仲間になれたんだ


そう実感して


すごく嬉しかった


すると、ライから、ボクの濡れ衣を晴らすためにギルドメンバーの信頼を獲得する

という提案がされた


ボクはまた人に冷たくされるのが怖かったけど、

もしそうなっても、みんながいる、そう言い聞かせて、その提案に同意した


ボクの杞憂はなんだったのか、

少しトラブルはあったけど、いろんなパーティと上手く連携をとって戦うことができた


これもみんなの、ライのおかげだ


改めて、ライがすごくかっこよく見えるようになった


行方不明者の出るエリアが深部から入り口に近づいた日、

ボクたちは調査に向かって、そしてピーちゃんが死んだ


ボクも死にかけた


ピーちゃんが灰になったとき、ボクはなにも出来なかったけど、

ライが灰を集めてくれて、死にかけたボクのことも救ってくれた


そういえば、そのとき、ボクのファーストキスは奪われたらしい


恥ずかしい、、

でも、ボクはライの妻になったから、これからもっとキスされると思う、、

そう考えると身体が熱くなる


ライと2人でデルシアまで撤退すると、

ピーちゃんの灰が光り輝き、

ピーちゃんが復活した


ライの言う通りだった

ピーちゃんはフェニックスなんだ


ライはすごい、カッコいい

もっと、もっと、好きになった


デルシアであいつと戦っていると

最近一緒に依頼を受けた人たちが次々に加勢してくれた


心が震えた


これが英雄譚だ


信頼を築いた大勢の仲間たちと巨大な敵に立ち向かう


ボクは心の底から力が湧いてきた


そして、みんなのおかげで、あいつを倒すことができた


大勢の仲間たちに囲まれて祝福を受ける中、

その光景を作り上げた本人をみて、

すごく輝いて見えた


この人のことが愛おしい

大好きだ


そして勢いでキスしてしまった

あんな大勢の前で

恥ずかしい


でも、後悔はしなかった


そのころには、キースのことなんて忘れればいいや、と思い始めていたけど、

みんなのおかげで言い返す勇気が自然と出て、

そしてティナのおかげでボクの無実は証明された


暗く沈んでいた昔のボクの心が浄化されたような気分だった

スッキリした


そんな、全てを解決してくれて、

ボクの憧れの仲間たちを与えてくれて、

ボクと2人で英雄になろう

と言ってくれた人が、今目の前でボクのことを血走った目で見つめている


少し怖い

でも、正直ちょっと期待もしている


ステラに借りた恋愛小説では、女の子はすごいことをされていた


ライは、ボクにも同じことをするんだろうか

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