第120話 息抜きの提案
ソフィア先生の魔法勉強会4日目
オレとコハルは相変わらず魔法の習得に苦戦していて、
覚えが悪いオレたちにだんだん厳しくなっていくソフィア先生にビシビシとしごかれていた
だから、本来、オレは必死で頭を働かして勉学に励まねばならない
しかし、それができていなかった
なぜか
それは、昨晩読み終わった
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英雄グリムの冒険
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が関係してくる
この本は、以前コハルと本屋に行ったときにオススメしてもらった本なのだが、
3日かけて毎晩読み進め、昨夜やっと読み終わったのだ
すごく面白かった
概要はこんな感じだ
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グリムという少年は最初、なんの変哲もない村に生まれる
しかし、ある日、森の中で伝説の剣を見つけ、力に目覚める
彼は世界中を旅して仲間たちを増やしていき、みんなと助け合って、人々を魔物から救う
そして、ついには仲間たちと協力して、魔王を倒し、世界に平和をもたらした
そして最後の締めはこうだ
1人では戦うことは出来ても世界は救えなかっただろう
しかし、グリムは仲間たちと助け合うことで偉業を成し遂げたのだ
この世で1番大切なのは、仲間を信じ、信じ合い、お互いを支え合うことだ
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そんな、少し恥ずかしいセリフで物語は閉じられる
ハッピーエンドだ
実に素晴らしい、オレはこういう話が大好きだ
と、いうことで、オレはコハルと本の話をしたくてウズウズしている
だから、魔法の勉強に集中できていない
オレがコハルの方をチラチラとみて、話しかけたくてソワソワしていると
ベシッと、ソフィア先生に参考書で頭を叩かれてしまった
「集中しなさい」
「はい、、」
「うー、、うー、、」
オレはペンを握り直したが、隣のコハルは頭から煙が出そうなほど唸っていた
コハルも限界のようだ
「はぁ、、ダメね、、明日はお休みにしましょう」
いやいや、攻略さん曰く、オレは2週間以内に重力魔法を習得しなければいけない
ここで休んでいる暇はないのだ
「お、オレはがんばれます、、」
だから、力なく、、んん!力強く続投を宣言する!
「ぼ、ボクも、、がんばれ、、る、、」
「、、ウソね
はぁ、なら討伐依頼の方を休むのはどうかしら?」
「それは賛成!」
「それならいいよ!」
「息ぴったりね
じゃ、空いた時間でデートでもしてこれば?
少しはリフレッシュになるんじゃない?」
「え?」
キョトンとするコハル
ソフィア先生、ナイスアシスト!やったぜ!!ワクワク
目を輝かせて成り行きを見守るオレとは反対に、コハルは戸惑っていた
「で、デート?な、なにそれ、、」
「あの、コハルがイヤじゃなかったら、ぜひ、、」
雲行きが怪しいので、口を挟まずにはいられなかった
「え?イヤ?とかではないけど、、
ボク、デートなんてしたことないし、、」
「あれ?この前、本屋行ったり、ご飯食べたのも、
オレはデートだって思ってたんだけど、、」
ちょっとだけシュンとする
どうやらデートだと思っていたのはオレだけだったらしい
まぁ、なんとなくコハルがオレのことを意識してないってのは感じてたけど
「ええ!あ、あれはそういうのなの!?
でも、デートっていうのは、好き同士がするもんだろ!?」
「えっと、オレはコハルのこと好きだよ」
「ええ!?どういうこと!?
何を言ってるのさ!ソフィア!教えて!」
「ん〜、つまりコハルは今ライに口説かれてるってことよ」
「く、口説く?ボクを?な、なんで?」
「それはコハルのことを魅力的な女性だと思ってるからだよ」
「ですって、よかったわね」
なんだかソフィア先生の援護がだんだん適当になっていく
「ぼ、ボク、恋愛とかわからないよ、、」
「コハルはオレのこと嫌いか?」
「え?そんなことはないけど、、」
「じゃあ、今はそれでいいよ
よければ明日デートしてくれないかな?」
「わ、わかった、、いいよ」
ほんのり赤くなったコハルが、チラリとオレの方を見てから了承してくれた
すぐにソフィアの袖を掴んで離れて行ってしまう
「ね、ねぇ、ソフィア、デートってどうすればいいのかな」
「かわいいじゃない、しょうがないからソフィア先生が教えてあげるわ」
「う、うん、、お願いします」
「私もアドバイスしますよ♪」
「では、わたしも協力します」
「デートはいいものじゃぞ、しかしあやつはスケベじゃから注意が必要じゃ」
なにやら、女性陣がわいわいと盛り上がり出した
コハルにデートのいろはを教え込む算段のようだ
ふむふむ、楽しそうでなによりだ
え?オレ?
そりゃあ!!楽しみすぎて狂っちゃいそうだよ!!
苦手な勉強会から解放されることも相まって若干クレイジー気味なオレではあったが、明日はコハルとの正式なデートができることになった
明日までに正常な脳みそに整えておくことにしよう
 




