第118話 縮まる仲間との距離
フェニックス伝記-前編-
を読んでから、耐火袋を買って宿に戻ると、
さっそくソフィア先生の重力魔法講座がはじまった
久しぶりに行う魔法の勉強だったので、覚悟して臨んだのだが、
重力魔法初級の講義はめちゃくちゃ簡単に感じて、すんなりと内容が頭に入ってきた
やはり、初級魔法適正のスキルが有効に働いているようだ
この調子なら、初級は簡単に習得できて、本番は中級から、という感じになりそうだ
2時間ほどの座学のあと、
「なかなかスジが良さそうじゃない、明日も続きをやりましょう」
とソフィア先生のお墨付きが出て、その日の勉強会は終了となった
♢♦♢
翌日、冒険者ギルド
「今日からしばらく上級Cの依頼にするんだよね?」
「そうそう、昨日から始めたんだけど、しばらくは魔法の勉強に時間を使いたくて」
「うん、わかった
、、ソフィアって魔法教えれるんだよね?すごいね」
「そうよ、わたしはすごいの」
うちの魔女っ娘は、ふふん、と自慢げだ
両手を腰に当て鼻高々である
「、、あのさ、ボクにも魔法教えてくれない?」
「コハルも?重力魔法を?」
「ううん、教えてほしいのは、アイテムボックスと火属性魔法」
あぁそうか
今は、コハルの荷物はソフィアが預かって依頼に向かっているが、
やはり自分で管理したいという気持ちはあったのだろう
「別にいいわよ、じゃあギルドの依頼が終わったら、宿に集まって勉強会をしましょう」
「いいの?」
「もちろんよ、その、、仲間なんだから!なんでも頼りなさいよね!」
少し恥ずかしそうにそんなことをいうソフィア
「うん、、ありがとう!ソフィア!」
コハルも嬉しそうにお礼を言っていた
こうして、夜の魔法勉強会にはコハルも参加することになった
意図せずコハルと一緒にいる時間が増えたのは、ナイス展開である
♢♦♢
それからオレたちは上級Cの依頼を受注してクルーセオ鉱山に向かい、
洞窟内を進んでいた
「ねぇ、ステラ、ちょっといい?」
「なんですか?」
「あの、、その、、ステラ、その角どうしたの?
なんでみんな何も言わないの?」
オレの後ろを歩くコハルが控えめな口調で、ステラの角のことを話題にする
はて?
なぜいまさら??
「え?あぁ、コハルには昨日まで見えてなかったんですね」
「見えてなかった?どういうこと?」
「私はこの魔法具の腕輪のおかげで、初対面の人、もっと言うと、信用してない人には角が見えないようになってるんです」
あ、そうか、雷龍キルクギオス様に貰った腕輪の効果でそんなのあったな
「へー、でもないんで?キレイな角なのに」
「ありがとうございます♪
えっと、昔、角のことで色々言われまして、ちょっとそれがトラウマなんですよ」
「そ、そうなんだ、嫌なこと思い出させてごめん、、」
「いえいえ、今はあんまり気にしてませんし」
「えっと、それじゃ、ボクのことを?」
「ええ、心から信頼したんだと思います
この魔法具、私自身ではコントロールできないので」
「そ、そっか、、えへへ、嬉しいな、、」
「はい♪私も昨日コハルが仲間だって言ってくれて、嬉しかったですよ♪」
そんな微笑ましいやり取りをオレは振り返らずにニコニコと聞いていた
みんなが仲良くなってくれてなによりだ
「ん?あれ?そういえばティナのときって、ステラの角って」
疑問に思い隣のエルフちゃんに小声で話しかける
「わしも途中から見えるようになったの」
「およ?話題にしたっけ?」
「してないが?」
「なぜに?」
「なにがじゃ?」
「?」
「?」
2人して不思議そうに首を傾げ合う
そうか、まぁエルフは多種族に理解がある種族だからこういうことに寛容なのかな?
と勝手に納得して、それ以上深堀りするのはやめることにした
♢♦♢
依頼を終えて宿に戻ると
オレは重力魔法
コハルはアイテムボックスの勉強を始めた
ソフィア先生は相変わらずわかりやすく教えてくれている
重力魔法については、
ティナはもう使えるし、
リリィは回復魔法使いだから光属性しか使えない、
ステラは特に興味ないということで、
他のメンツは適当に時間をつぶすことになった
「うー、、難しい」
コハルは魔法を使ったことがないらしく、頭を抱えて苦戦している
「まぁ、のんびりやればいいわよ、なんでも教えてあげるから」
「うん、お願いします」
ソフィア先生は、相変わらずコハルには甘かった
勉強会がはじまってからも、付きっきりになっている
でも、他人と壁を作っていたコハルにはこれくらいがちょうどいいのかもしれない
よし!オレも自分の勉強を頑張ろう!
オレは2人のことを観察するのをやめて、ペンを握り直した
 




