あけましておめでとうございます。と言えるのは余裕のあるやつだけ。
あけましておめでとうございます。
本年もよろしくお願いいたします。
王城には煌々と光が灯され、どれだけ俺達から搾り取ったらあれだけのことが出来るのか、自覚しているのだろうかと、明かりのある方向を見やる。
今日はもう燃やす物もなくて、家の中にあるのは寒さで震える子供と俺達だけだ。
今年の夏はうだるような暑さに死にかけ、食物は水不足で育たなかった。
冬は寒さと、食べ物が手に入らなくて今日をしのげるか、毎日不安で仕方がなかった。
誰も示し合わせたわけじゃなかった。
一年の終わりと、新年を祝う煌々とついた王城の明かりに暖を求めただけだった。
食べるものを分けてほしかった。
俺達は皆ペラペラの毛布を子供に着せて、ただ明かりを求めて、明かりを目指した。
隣を歩くのは二件先に住んでいる親子だ。
前を歩くのは四件先の、後ろには両隣の家族がいた。
人の集まりがどんどん大きくなり、それは街を上げて皆、明かりへと向かった。
暴動だとかそんな事を企んだわけじゃない。
ただこの空腹を、ただこの寒さをなんとかしてほしかっただけだ。
先頭を歩いていた誰かが兵士に咎められ「帰れ、戻れ」と言われたが、帰ってももう、寒さと貧しさで死ぬだけだ。
俺達は明かりに向かってただ前進した。
何人かは斬り伏せられたが、兵士や騎士より住民の方が何十倍も多い。
俺達は口々に「食べ物をくれ、薪をくれ」と言いながら明かりの中に入り込んだ。
「どうか、私達に食べ物と、薪をください。そうでないと私達全員死んでしまいます」
と誰かの通る声が聞こえた。
王様、貴族連中は上段へ逃げ込み、俺達はそれを追う。
貴族に触れることも禁止されているような世の中だ。
けれど、俺達はもう、生きるか死ぬかのところまで追い詰められている。
子供達は食べ物があるところへ行って、手掴みで食べ物を食べている。
「王様!貴族様!!貧しい我々に施しを・・・」
王は怒り狂った。楽しい夜会を汚されて、集まった者達を全て殺せと命じた。
平民達は誰も抵抗しなかった。
戻っても死ぬだけだったから、ここで殺される方が、ほんの少しでも暖かいと感じて死ぬことが出来る。
赤子も女も関係なく殺されていった。
王は、血に酔ったように「もっと殺せ」と命じた。
王都に平民は居なくなった。
騎士や兵士が、己のしたことが恐ろしくて悪夢を見て、怯えるようになってしまった。
王都の防衛はないも同然だった。
いくら平民は人間じゃないと言われても、今まで喋って、動いていた人達を殺し尽くしたのだ。
心の均衡を保てなくて当たり前だろう。
戦争ではないのだ。
自国のただの貧しい人達なだけだった。
少し暖かくなると、腐った匂いが王都中に広がった。
それをかじったネズミが病気を媒介して、国中に広がった。
春になっても、畑に種を植える人が居ない。
欲しいものがあっても、商店主が死んでしまって新しいものが手に入らない。
その年の納税は普段の三%程度しかなかった。
貴族が飢え始め、王もまともにものが食べられなくなった。
疫病が新たな疫病を呼び、その国は次の冬が来る前に滅んでしまった。
新しい年がやってくる。
そう思って書き上がったのが、この話になります。
本当はおめでたい話を書こうとしたのに、こんな話になってしまいました。