54 ウィリアム視点
今日は目まぐるしい1日だった。
聖女捜索に父である国王への謁見、教会の光に温泉視察と、いくら私でもさすがに疲労困憊しそうだが、心身の調子はすこぶるいい。
考えられるのは温泉の効果だろう。
温泉で父上達を見送った後に、配下の者達に後処理を任せ、私はテオバルドとアルバンと共に城へ戻った。
夜も更け、二人を解放したいのは山々だが、情報の共有と意見のすり合わせ及び今後の方針をある程度決めておく必要がある。
特に温泉の効果を知った今では、1日も早くハジメリ村の村長と話し合いの場を持ち、私の翼下に収めたい。
温泉を実体験したテオバルドとアルバンはこの意見に賛同してくれた。
村長に話をするのは然る事ながら、村を管轄している領主にも事前に話を通しておく必要があるだろう。
確かあの地の領主は、ブロワ辺境伯だったか?
「アルバン、ブロワ辺境伯はアメリア嬢の縁故ではなかったか?」
「ええ、確か母方の大叔父の子…だったかと。アメリアは幼少の頃に一度会う機会はあったようですが、何分幼かった故に覚えていないようです」
「確か…若くして戦で功績を挙げ、先々代国王より彼の地を賜った御仁ですね。王家への忠義に篤く、国境を守護している為か滅多に領地を出ることは無いようです」
「なるほど…忠臣だな。会う手配はできるか?出来れば村長との会談前に」
「影からの報告では、現在ブロワ辺境伯はハジメリ村へ向かっているようです。
村長が温泉含め村の近況を、領主に手紙で報告していたようですのでその視察かと。
恐らく明日にでも村へ到着すると思われます」
「ふむ…手間が省けたな。秘密裏に村長とブロワ辺境伯に会う。先触れを出してくれ。
…あ、いや、ちょっと待て。
村長に会うのはイツキに確認してからにしよう。
先触れはブロワ辺境伯だけでいい。入村する前に話をしておきたいので、村の手前で足留めしておけ」
「畏まりました、至急手配いたします」
テオバルドが部下に指示している間、私は本日の聖女捜索の報告書に目を通した。
残念ながら聖女の所在はつかめなかったようだ。
例の教会の件があり、人員が割かれたので仕方がないだろう。
アルバンに教会の調査状況を確認すると、光の原因はいまだ分かっていないとの事だ。
それとは別で、教会の運営状況も調べてさせているが、どうにもきな臭い。
いずれにせよ、近いうちに調査の主導権を求めて神殿勢力が出張ってくるはずだ。
まぁ、渡す気はサラサラ無いがな。
「テオバルド、教会の調査が長引いた場合、子供達を引き続き宿で保護することは可能か?」
「問題ございません。ただ、年長の子供二人がイツキ殿の事を気にしているようです。
宿の者が『自身のお住いに戻った』と伝えたようですが、住いの場所を知りたがっていたとか」
今日会ったばかりだというのに懐かれたものだな…。
利発な子供達なので、下手に探しに動かれても困る。
イツキは近い内に宿屋に来る予定がある事を、子供達に伝えておくようテオバルドに指示しておいた。
「明日は朝早い、これで協議を終えよう。二人ともご苦労だった。今後も頼む」
大まかな話は終えたので二人を解放して、私も自室へ戻った。
明日は朝イチでハジメリ村近郊へ向かう。テオバルドの話を聞いた限りでは、ブロワ辺境伯は私の温泉後援に協力してくれる可能性が高そうだが、実際会って話をするまでは分からない。
いくら善良な領主であっても、領地のことに口を出される事を嫌がる者も多いのだ。
(それも踏まえて、辺境伯に断る選択肢は与えないつもりだがな。辺境伯からの了承を得たら、先ずはイツキに会いに行こう。『また明日』と約束したのだから)
温泉の効果か、別の要因かは分からないが、珍しく就床してすぐに私は眠りに落ちていった。
次回もウィリアム視点です。




