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 掏られたお金の件は一先ず片付いた。

マットも泣き止み落ち着いたので子供達のもとへ戻ると、その場にはウィル様とテオ様もいて更には馬車が2台用意されていた。

 俺はこれ幸いと、小脇に抱えていたマントをもう一度たたみ直してからウィル様に駆け寄った。


「ウィルさ…ん、これ有難うございました」


 ススッとマントを差し出すと、ウィル様は一瞬何かを考えるふうだったが「ああ」と言ってマントを受け取ってくれた。本来洗濯してから返すべきだろうが、今回は大目に見てもらおう。


 俺は無事に高額マントを返却できて安堵した…はずだった。


次の瞬間、俺はウィル様に体ごと引き寄せられた。

そして彼の腕の中にすっぽり収まっている状態となっていて俺は軽く混乱した。更にウィル様は俺の髪にまで触れてくる始末…。


(え、何この状況???)


「まだ濡れてる…。身体も冷えているではないか。大切な薬師見習いに風邪を引かせたとあっては、後見人である私の立場がない」


そう言いながらウィル様は、返したはずの高級マントを再び俺に羽織らせた。

ほぼゼロ距離の状態で聞くウィル様の声は、男の俺でも下腹に響く。

体温の上昇はマントせいだと思いたい。

 

「次会う時に返してくれればいい」


「いやいや、私の服はもうだいぶ乾いてますし、本当に大丈夫ですから」


 内心『勘弁してくれ』と思いつつ、マントを脱ごうとする俺の手をウィル様が掴む。顔を上げるとウィル様が笑顔で圧をかけてきた。


「人の好意は素直に受け取っておくものだ」


「……わかりました、お心遣い感謝いたします」


 ウィル様は頑なに俺にマントを押し付けてくる。

子供達もいることだし、仕方なく俺が折れることにした。後でレオンに装備品の洗濯方法を聞いておこう。


 俺とウィル様の話が終わり、大人と子供で分かれて馬車に乗り宿へと移動する事になった。

『小さな子もいるのに子供達だけで馬車に?』と心配したが、テオ様が付き添いとして宿屋の女性従業員を呼び寄せており、その人が同乗するようで安心した。

 馬車が動き出すと、すぐにウィル様が今に至るまでの報告を俺とレオンに求めてきた。多分そうなるとは予想していたので話す段取りは頭の中で整えてある。

 俺の報告は長くなりそうなので、先ずはレオンから報告をしてもらった。


 レオンは先程俺に捲し立てた事を、やや丁寧な言葉にしてウィル様達に報告していた。

やはりというか、レオンは俺の側から離れたことをウィル様とテオ様に叱責されていた。

 元はといえば街に出たいという俺の我儘にレオンを巻き込んだのだ。更には叱責の原因を作ったのも俺だ。

「そもそも私の所為なので」と彼等の間に割って入ると、「貴方は自分がどれだけ尊い存在か自覚するべきだ」と矛先が俺に向けられた。よし、誘導成功。


「重々承知してます。私に何かあれば()()()()()をお渡し出来なくなるからですよね。

今回の件はレオンに責任はありません。

すべて私の不徳の致すところです、本当に申し訳けありませんでした」


馬車は走行していたが俺は起立し、向かいに座るウィル様に向かって深々と頭を下げた。

俺の謝罪を見て隣に座るレオンも慌てて起立し、俺と同様頭を下げる。


 [……全然わかっていない]

 [そのようですね]


 ウィル様とテオ様が何かを言っていたようだが、俺とレオンの耳に届くことはなかった。


 ◆


 “今日の失態はすべて私のせい”


 そういうことにして、今度は俺の今までの行動を報告した。取り敢えず一通り話すので質疑応答はその後にしてほしい旨を伝え済みだ。

 先ずはお金を掏られた後に輩に追われたことを話すとウィル様の口元がヒクッと動き、レオンに至っては「マジかよ…」と呟いて顔を青褪めていた。

いや、これもレオンのせいじゃないから。俺が不用意に輩と目があったのが悪いから。

 そのフォローは後回しにしてそのまま話を続け、輩を巻いたが道に迷ったこと、ラナとの出会い、教会内での出来事、マットが掏りの犯人だったという事を順を追って話し報告を終えた。

 補足としてマットの罪に関しては、俺とマットの間で決着がついているので干渉不要をお願いしておく。

 そしてマットが購入した“薬”の件は、ベッドの上で拾った現物を渡して対応を丸投げした。この人達なら迅速かつ的確に動いてくれるはずだ。


ちなみに教会で俺が体感した事の報告はやめておいた。正直あの不思議な感覚を説明するのが難しいし、“気の所為”であることも否めないからだ。

勿論鑑定スキルが生えたことも黙っておく。

そして話はユウの事になった。


「…で、ユウという子供が魔力を発現したと同時に室内の床が光ったと?」


「はい、私にはそのように見えました。

それから少し話は逸れますが、1つお願いしたいことがございます。ユウは以前より体が弱かったらしいのですが、今まで十分な医療を受ける事が出来なかったそうです。

今回の魔力が、体の弱いユウに悪い影響を及ぼしていないか、医者に診てもらうことは可能でしょうか?勿論診療代金は私が支払いますので…」


「わかった、医者を手配しておこう。ただし代金は不要だ。彼の魔力は私も関心がある。それから念の為、他の子供達の体も診させよう。光の影響がないとも限らないからな」


「寛大なご配慮をありがとうございます」


 魔力持ちならまだしも、平民、しかも孤児である子供達まで医者に診てもらえるとは思っていなかった。

マントの件を差し引いて、俺の中のウィル様の株が少しだけ上がった。


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