ドレスよりタキシードを着たいふたり
球技大会当日。
和香は昨年と同様一回戦で負けて、希沙たちの応援に来ていた。
端っこに座って眺めていると、亜利から写真付きメールがきた。
『みてみて、通天閣!』
亜利は修学旅行を満喫しているようだ。
すげーでけーな\(^o^)/、と返信して携帯を半分にする。
今年はバレーの参加チーム数が少ないから、総当たり戦をしている。
バレーのルールを知らないから、見ていても何が何やら。痛そうだなというのが率直な感想だ。
相手のアタックで負け、コートの外に出てきた。リクはまだ体力が有り余っているようで、のんきに片手を上げる。
「おっす水沢。もう負けたのか」
「ほぼ打ち返さなかったからな」
リクは汗を拭き拭き、和香の隣に腰を下ろす。
希沙と雪江、他の子は次の試合までに飲み物が欲しいからと、自販機コーナーに行った。
「リクも希沙たちも去年より楽しそうだな」
「ははは。今年はオレらだけでなく対戦相手も素人だからな」
去年の嫌味な先輩を揶揄して笑っている。
「なあ水沢。明日はバイト休みだから、またみんなで遊ぼうぜ」
「そうだな。希沙たちも予定空いてるかな」
「どうだろ。あいつら最近彼氏とデートがどうこう言ってるからな」
青春真っ只中だから、彼氏優先になるのも仕方なし。
希沙と同じ中学出身の百合奈にいたっては、「ゴルフ場でバイトしてたら、どこかの社長に気に入られてマンションをもらった」なんて、ドラマみたいな展開になっている。
百合奈はモデル級の美人だから、さもありなん。
「リクはデートしなくていいのか」
「ははは。去年の冬の時点でとっくに別れてるからな」
「マジかー」
「やっぱ、自分に嘘つくのは無理だなって思ったから」
彼氏の話を聞いてから何ヶ月もしないうちに別れていたとは。
結婚を前提にした付き合い? と聞いたときに曖昧な反応だったのはそういうことか。
あの時点で別れ話でも出ていたのかもしれない。
「水沢は一切浮いた話がないな」
「男が嫌いだからな。一生、恋愛も結婚もしないと思うぞ」
中学の時に学年中の男子にされたあれこれは、高二になった今思い返しても殺意しか湧かない。
和香にゴミを投げつけて笑い転げる男ばかりとは思わないが、必須の用事がないかぎり会話するのも嫌だ。
なら女は恋愛対象かと聞かれると、それも違う。
友だちとして好き、それ以上はない。
「たしかに、水沢がウェディングドレス着ている姿想像つかねーや」
「だろ。ドレスは絶対無い。俺、どうせ着るならタキシードがいい」
「オレも着るならタキシードだな」
体育館の片隅で、年頃の女子とは思えない会話をしながら二人で笑った。





