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高校二度目の秋は静かに過ぎていく

 夏休みが開けて新学期。

 ホームルームで日帰り旅行の案内が配られた。

 普通高校なら二泊三日くらいの修学旅行があるけれど、定時制の生徒は社会人もいるためそうもいかない。

 その代わりにあるのが日帰り旅行だ。


 行き先は県内にある遊園地。

 ネズミがパレードしているようなオシャレでお高いところではなくて、町内会で小学生を連れていくような小さな遊園地。

 和香も小学生の頃、地区の子供会で何回か来たことがある。


 希沙やリクたちも「私、ここに来るの小五の時以来だな」「懐かしー」と、観覧車を見上げている。


「昼食は十二時までにレストランに集合、だってさ。どの順で巡るんだ?」


 リクに聞くと、リクは園内パンフレットを手にケラケラ笑う。


「時間はたっぷりあるし、せっかくだから子どものとき身長が足りなくて乗れなかったやつ乗ってみようぜ。ジェットストリームコースター。フリーパスだから連続で乗れるし」

「初っ端から絶叫マシン行くのか。元気だな。いってらー」


 こんな時でも男気あふれるリクである。和香は逃げるつもりで手を振る。


「いってらーってなんだよ。水沢も来るだろ。希沙や雪江も乗るって言ってるし」

「俺は三半規管弱いんだよ。これに乗るより先にあっちに行きたい。テラーホラーハウス」


 園内の左手奥、蔦に囲まれた薄暗いコーナーを指して答える。


「ホラーハウス!? やだよオレそんなとこ入るの」

「なんだ、怖いのか。俺は一人でも入れるけど」

「こ、怖くなんかないって! 平気だ。オレだって一人でも平気だ」

「ほー」


 いつものメンバーで、ああでもないこうでもないと相談しながら園内を巡っていく。

 小中学生の頃はぼっちだったから、こんなふうに仲間と遊園地をまわることなんてなかった。


 この高校に入れて良かったと改めて思う。


 昼ごはんのあともコーヒーカップや絶叫マシン系に乗って遊び尽くし、最後に四人ずつで観覧車に乗る。

 ゆっくりゆっくりと和香たちの乗る籠がのぼっていく。頂点からは園内が一望できた。

 かすみのかかる山をぼんやり眺めながら、和香はつぶやく。


「二週間後は球技大会だったな。希沙はまたバスケやるのか?」

「バスケはもうやだ。バレーにする」


 去年は事前に予想していたとおり、初戦から上級生のバスケ部男子と当たってボロ負けしていた。

 先輩方は遊びでも手加減する気は一切なかったらしく、希沙のチームは一点も取れずに敗退したのだ。


 そんな苦い思いをしながらも、やはり大人数でやる競技が好きらしい。

 希沙なら友だちが多いから、即日メンバーが集まるに違いない。


 隣に座るリクから答えはない。

 遊び疲れてしまったのか、舟をこいで和香の肩にもたれかかった。


「リクは一番はしゃいでいたもんな」

「いつもより元気だったね〜」


 雪江がリクを見てウンウンと頷く。

 またこのメンバーでここに来れたら楽しいだろうな。


 

 希沙と雪江と、声を控えめにして話す。

 観覧車はゆっくり降りていく。

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