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似ているふたり

 もうすぐゴールデンウィークに入るという頃、希沙を介して友人になった雪江ゆきえが和香を呼んだ。


「ミズっち、科学室に筆箱忘れちゃったから一緒に来てほしいな」

「いいよ」


 二階の奥にある科学室は、なんだか薄暗い。日照のせいだけでなく不気味さが漂っているから、苦手な子は多い。和香は二つ返事で雪江の共をした。


 科学室に入ると、黒板の文字を消していた生徒がこちらを向いた。

 真っ黒いライダージャケットを着た、ショートヘアの女子だ。


「よう」


 その子は雪江に片手を上げてあいさつした。


「あ、リク。ここの掃除当番だっけ?」

「そうだよ」


 リクって基本、男の名前だ。見る限りこの子は女子のようだけど、リクはその名で呼ばれることを受け入れている。


 雪江は和香のほうに振り返って、リクと呼んだ子を紹介してくれた。


「ミズっち。アタシ、リクとミズっちは気が合うと思うんだ。なんか雰囲気似てるし。紹介するね。リクだよ」


 正面から向き合うと、リクは赤茶に染めた短髪がよく似合う人だった。

 体型はひと目で女子とわかるけど、仕草はどこか男性じみている。


「オレは田部涼子たべりょうこ。あんま自分の名前好きじゃないからさ、リクって呼んでくれ」


 涼子……いや、リクはニカッと歯を見せて笑う。

 喋り方も女らしさはかけらもなくて。

 たしかに、和香と似ている。

 容姿はまったく似ていないけれど、内面、気質が似ていると本能で感じた。


 こんな人に会ったのは初めてだ。

 仲間意識が芽生える。

 この人の前でなら、そのままの和香でいていいような気がする。


「……俺は、水沢和香。名字で呼んでほしい」

「おう。よろしくな、水沢」

「ああ。よろしく、リク」


 敬礼するように片手を上げるリクに、和香も片手を上げて答えた。


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