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呪いのランドセル

挿絵(By みてみん)


 この小説を、親友Rのためにつづる。

 1980年代の後半。

 和香わかはM市の病院で生を受けた。

 女の子も欲しかった母がたいそう喜んだらしい。


 四才になり、父と兄の真似をして立ちションをしようとした。

 なぜかおしっこは正面に飛ばず、足元に流れる。パンツとズボンがびちゃびちゃになって、母に叱られた。


「なんでおれはたちションできないの」


 自分のことをおれと言うのは、二歳上の兄の真似だ。

 母はため息一つついて、


「和香は女の子なんだからできるわけないでしょ」

「なんでおんなの子だとできない」

「そういうものなの!!」


 おしっこでぐっしょり湿ったパンツとズボンを脱がされて、くだらないこと聞くなと怒られた。



 ちんちんが生えてないから立ちションできないんだ。あと何年かしたら生えてきて、父さんと兄みたいに立ちションできるはず。


 願いも虚しく、何年経ってもちんちんは生えてこなかった。



 そんなこんなで小学校入学の年になった。

 もう立ちションの練習はしない。怒られるから。


「良かったわね〜、和香。おばあちゃんがランドセル買ってくれたわよ」


 母が箱からランドセルを取り出した。

 兄のランドセルは黒いのに、和香のランドセルはなぜか赤かった。



 十人十色という言葉があるけれど、店に並んでいるランドセルは黒か赤の二択しかない。


「黒がほしかった」

「何馬鹿なこと言ってるの和香。あなたは女の子なんだから赤よ。黒は男の子の色なの」


 この瞬間から、世界で一番嫌いな色は赤になった。

 二択どころか赤しかない。

 赤以外許されない空気が嫌いだ。


 おばあちゃんからのおくりものだから喜ばないといけない空気が嫌だ。



 女の子だから、という言葉は呪いだ。

 スカートは呪いの鎧だ。

 赤いランドセルは呪いの重石だ。




 女の子だから立ちションできないのに、女の子らしい赤いランドセルを背負わされスカートの制服を着せられている。


 入学式で集合写真を撮らされて、他の女の子はみんなかわいいのに、和香は自分だけは女装した男の子に見えた。

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