森
少年に導かれるようにして少女は森を進む。少年の持つ転移のような力も、土地勘もないので逸れてしまえばもう一度会うことは叶わないだろう。
「この先にあるの?」
「うん、少し歩くけど我慢してね」
もとより少女と疲労は無縁なものだ。全くもって疲れないというわけではないが、この世界に来た初日では何も食べずに一日中活動してたことからも察することができるだろう。
森の木々は少女の背丈よりもずっと高い。葉が多い種類ではないのか隙間から漏れる日の光は多く森の中とはいえ明るさはそれなりに保たれている。鬱蒼とした森ではないので少女も不快な気持ちは特になく、むしろ心地よい空気に少女は既にわくわくしていたのだった。
歩くこと数分、少しだけ開けたところが現れた。そこは周囲の土地よりも一段だけ高くなっており、木が生えていないようである。そしてそこに家が建っていた。少女の家のように庭はないが、その代わり周囲の木々に溶け込むような自然のデザインでこの少年のセンスが高いことが窺い知れた。少女も自分のセンスにはそれなりの自信があったが、これだけを見る限り少年の方が一枚上手のようだった。
「良い家ね」
「ありがとう。せっかくだから入ってって」
少年は少女を家の中に招き入れた。
家の中も外観と似て自然を感じられるような間取りとデザインだ。最も大きい部屋となるリビングには大きな窓が張られており、そこから裏手にある森を見ることができる。しかもその方向の森は少しだけ木々が少なく、結構遠くまで見ることができる。その先に何もないのが少し残念だ、と少女は感じていた。
そして表から見ると分からなかったが、裏手には狭いものの庭が存在していた。そしてそこには少女が求めていた動物がいたのだった。とはいえ一種類のみ…もこもことした毛を持つ羊だ。だが少女の望むお肉として食べることもできる。少女が羊を見ていることに気付いたのか少年が声をかけた。
「羊が気になるかい?」
「食べたい…」
「正直だねぇ…まあいいか。君はごはんを食べようとしてたところだったしね」
そう言うと少年は倉庫と書かれた部屋に入った。数十秒後にはその手に羊肉があった。外にいる羊が減った様子はないし、どうやら倉庫の中にある程度の食料を保存していたようだ。
「ジンギスカン鍋でもしようか」
「私も手伝うわ」
少女と少年はキッチンに立って仕込みを始めた。羊肉を捌くのは初めてだった少女は少年に仕方を教えてもらいながら、そして少女はやっとお肉を食べることができたのだ。




