隣人
随分と家の周りも発展した。と言ってもヨーロッパにある庭園のような広さになっただけで、家の他に建造物があるというわけでもないのだが。
畑で作物を採って家に帰り調理。それ以外の時間は大体外にいるという生活。少女は段々とつまらなくなっていた。刺激となるものがなければ創造というものはマンネリ化し新しいものとならない。
次いで飽きてきたのはその食生活。この世界に来てから少女はまだ植物しか食べていない。特に栄養バランスなんか気にしなくとも体調が悪くなることはないのだが、それでもやはり味に飽きてくる。出来るならやはり肉が欲しいものだと少女は感じていた。
何もないところから植物の種子を出し、建材を出し、と何かと特殊な力を使っていた少女にも出来ないことはある。それは動物の創造だ。
何故かは知らないがこの世界では少女は捕食者を創造することが出来なかった。そのせいでずっと少女は植物の食べるしかなかった。
少女の創造の力は少女自身あまり理解できているわけではなく、これが欲しいと思ったら何もないところからパッと出てくる。無から有を生成するのでそれだけで物理法則を覆す凄まじい能力ではあるが、出来ないこともあるしそれがなぜ出来ないのかを少女は理解することが出来なかった。
少女がお肉を食べたいと思ってから四日、転機が訪れた。庭仕事を終えて家の中でじゃがいもを焼いていた時、玄関のドアをノックする者が現れた。少女が期待半分で開けてみるとそこには少女より少しだけ背が高い少年がいた。
「手紙を読んだ。呼びに来たよ」
「まぁ!あなたが手紙の人さんね!」
ついさっきまで少女は庭にいたのにどこから少年が来たのか、疑問は残っているが少女は何も考えなかった。この世界で初めての【他者】は少女の寂しさを和らげた。
「もしかして今からご飯だったかな」
「あ、えっと…」
振り返る少女。そこには火をつけたまま放置したせいで既に炭へのカウントダウンを始めたじゃがいもが。
「そんなことないわ!連れて行ってくれるの?」
「うん、手紙に書いてあったからね」
少女は花開くような笑みを浮かべ、じゃがいもの炭化カウントダウンを止めてから家を出た。
元々誰かいると想定したものではなかったので鍵なんていう機構はないので何もせずに少年についていく。
庭を囲う塀を抜ければそこは何もない平原。少年は庭の外に出たところで少女の手を掴んだ。
「僕に捕まっていてね」
「ええ!」
何の警戒心も抱かない少女に少年は苦笑しつつ目を閉じた。
数瞬のあと少女を浮遊感が襲った。それと同時に移るは景色。まるで高速で落ちているかのような転換をしたあと、少女の瞳は…
広い森を映していた。




