イロハモミジ
朝、光が差し寝ている少女の肌を照らす。
少女は起き上がると同時に自分がお腹が空いていることに気が付いた。そういえば昨日は何も食べずに作業をして、そのまま寝てしまった。
しかしこの場所には食べ物がない。昨日植えた木は成長しておらず、そもそも成長したところで食べれる実をつけるような品種ではない。
少女は外に出て、昨日のうちに作っておいた水場で喉を潤した。
「こんなことなら昨日で畑でも作っておけばよかったわね」
少女はそう呟きながら作業を始めた。畑を作り、種を植える。育てば金色の小麦が家の庭の一角を占領し、実りを感じさせるきれいな場所へと生まれ変わるだろう。
ただ少女はお腹が空いていた。今現在にお腹が空いていた。少女はちょっとだけズルをすることにした。スカートのポケットから特殊な粉を取り出して種にかけた。するとすくすくと成長し、一瞬のうちに穂をつけた小麦へと成長したのだ。
「うん、こんなものかな」
少女は小麦を刈り取り家へ持って帰った。適当に作業場を作って適当に料理をすればパンの完成。創造の力があればそれなりに適当にやっても望んだ結果にすることができる。
「うぅ…かたい…」
それが完璧なものとは限らないが。
そんなかたいパンで腹を満たした少女は新しく植物を育てることにした。普通の木、もいいけどもっと庭には彩りがなくては。取り敢えず少女は手持ちから良い色に育ちそうなものを選んで植えた。
「これは赤松…あ、違う。これはイロハモミジだ」
別に少女は手持ちのものを全て把握しているわけではないので品種を間違えても仕方ないのだ。うっかりとも言う。
イロハモミジを植えた少女は昨日の苗木も含めて全部に水をあげ、ついでに昨日設置した郵便受けの様子を見に行った。もしかしたらどこかの誰かさんが手紙を書いてくれているかもしれないという期待。
だがまあ予想通り手紙など来ているはずもなく少女は溜息一つ。
少女にとってこの世界はとてもつまらない。何もない平原がいつまでも続く世界に少女は着々と彩りを加えてはいるが、まだまだこんなものではない。少女はもっと世界を鮮やかなものにしたいと思っていた。
えーい、と少しだけ投げやりな感じで花を植えたあと少女は家の中に引っ込んでしまった。このまま不貞寝するつもりである。
少女とて自分が万能であると傲っているわけではないが、それでもやはりこの世界の寂しさはただ一人ぼっちの少女に対してまるで覆い被さるように精神を削っていた。




