関係者のその後7
これで最後です。
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日本中の反応と現状の実態
本日昼過ぎに「審判と裁きの女神」様が何処かに顕現された。
そして審判が下されたと脳内に響き渡り、四つの魂が穢れ悪しき魂であったとし【赤色表示】に落とされ「死神の視線」までも【加護】の欄に贈られたそうだ。
時が止まり、三年半前に時間が戻った時の真実が審判と裁きの女神様の独断により、世界が知る事となった。
それと同時に【ステータス】内に阪本仁に関する記載がある者はいつ裁かれてもおかしくない、底の見えない断崖に立たされている事も思い知らされた。
しかし一部の自分等がした事を棚に上げて、阪本仁に対して恨み言を叫んだ者を〔神〕様が不要物とばかりに【赤色表示】し「死神の視線」まで賜る事となったのであった。
時間が戻る前に死んでいた者もまた、生き返りはしたが今のままじゃ輪廻にすら還れない事実を知り、〔神〕様に取って利用価値の低い存在だと思い知らされた。
【白色表示】なだけで、善き魂でも強き魂でも無かった。【レベル】を上げおせっかいなぐらい他者を守れる位鍛えないと先が無いと現実を突き付けられた。
今回の顕現とお告げにより、各個人の受ける印象は様々であったが、ただ一つ真摯であれと思い知らされた。
形だけの謝罪、アピールするだけの謝罪、心のない償い、許して貰える事が前提なのではない、許されるまで償い続けろと言う事なのだと心から知らしめられた。
ここまでの出来事ははちょくちょくとある。と言っても時間が止まってまでのお告げは時間が戻ってから二度目だ。
ちょくちょくあると言うのは、審判と裁きの女神様が顕現されて審判なり裁きなりを行ったと言うSNS上での書き込みがそれなりの回数あるからだ。
内容は様々だが、一番多いのが死者の魂を穢れ悪しき魂と間違った認識がなされた時に顕現される事が多いようだ。
次に多いのが事故での虚偽に対して真実を告げに来るのもSNSで報告されていた。
中には、時間が戻り生き返った事を特別な選ばれた者と勘違いした者も多く。それが元で諍いが起き審判と裁きの女神様が顕現し、真実を告げられる。ふたを開けてみれば使い道のない魂が、在庫処理されただけとわかり、落胆する者も多くいたと言う。
特別になりたいのであれば、鍛え上げれば良いのである、心身共に。
〔神〕様のやってきたこの地球では、過失は一切認められないし、不注意や怠慢も許されない。
一例として山の上で小石を転がり落してしまいそれがどんどん大きな石に連鎖的にぶつかり最終的に大きな岩が転がり落ちて誰かに直撃して死なせてしまっても、〔神〕様は人殺しの罪を表示し【善悪値】は大幅に下がる事になるとSNSで申告があった。
この事から生きにくい世界に変わるかと思えば、そうでもなかった全員が全員、決められた事をしっかりと守る事が思ったよりも生きやすかった。
守れば事故も起きないし、そもそも整備不全とかで事故を起こすと持ち主と運転者の【善悪値】に顕著に表れる。もちろん、不備も不注意もなく飛び出し事故の場合は制動距離や回避可能な広さか等も考慮されて飛び出した側が【善悪値】が下がるようでもあった。
それと事故を起こすと【善悪値】が簡単に下がる事もわかり、死後の事を考えると不真面目な生活は避けるようになった事から、自分で運転する者も減った。
そうは言っても、すでに自己中心的な考えを持っていた人物はほぼ全て存在が消されてしまってる上での秩序なのでそう乱れた事は起こらない。
【スキル】や魔法もフレンドリーファイアは過失扱いにもならないので注意が必要だ、使う者が熟練しないと危ない。
悪意を持って仲間を狙ったとしたら最悪だ【黒色表示】や【赤色表示】に速攻でなり下がり【スキル】の使用が不可能になってしまうからだ。
さらに分かった事は、所謂大罪七つを実践しても、他者へ迷惑さえ掛けなければ何も問題もない事が勇気ある者の実践で実証された。
勇気はあっても【善悪値】を出来るだけ下げたく無いので穏便な方法での検証だが。
傲慢に【ダンジョン】内で単独活動しようと他者へ迷惑さえ掛けなければ問題ないし、嫉妬しようと好きなだけ嫉妬すれば良い、行動にさえ起こさなければ心の中でいくら嫉妬しようと問題ない、ただし思い込みすぎると【善悪値】の減少が見られるらしいが、その程度だ。
憤怒もそうだ、憤怒の怒りが他者へ向かわなければ好きなだけ憤怒してればいい、怠惰は少し違うが自分で食料調達しないのであれば好きにすれば良いが、他者へ依存する怠惰の場合だけは【善悪値】が下がり続ける。
強欲は欲を出した所で、意味がない。暴食も自身で食料調達した物は好きに食べれば良いだけの事だ。スーパーを利用出来る者はインフラ系を担当してて【ダンジョン】に行きたくても行く時間が取りにくい人用だから、入店審査まである。
色欲は言うまでもなく【ステータス】で触れ合えるかが決まるから、顔が良く【レベル】が高くても腐った魂だと安易に触れる事さえ出来ない。
そう言う事で、大罪七つに憧れた所で死後の自分が苦労するだけの事だと結論付けられた。
次に出てきたのが、○○警察とか○○指摘者とか、正義を振りかざす輩だ。ただ細かい粗を探して注意して満足する輩で特に害はない。
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今井智樹
岬の育て親を見た時から良さそうな人物には見えなかったが、祖父の家に来た時は酷かったな。
あれから数日経ち、岬からは家を出て一人暮らしを始めたいと連絡が来た。未成年だから保証人をお願いできないかとも言ってきたが「良いよ」の一つ返事で返した。
住宅を探すのは非常に簡単になったのだ、なぜなら人口が半分未満になったため。
存在を消された者の持ち物も綺麗さっぱり消えてるから空き地や空き家やが多いし取り壊しすらもしない。
なぜならいつか導入される概念で以前みたいに消えてくれるから、撤去費用を節約してるのだろう。家賃も以前の半分にも満たないし、人気があるのが【ダンジョン】近辺の住宅で少し離れるだけで、入居者探しも大変なのだそうだ。
岬からSNSが来たついでに、おばあちゃんの墓参りに行くけど、どうするかも聞いてみたが、即答で「行く!」って返事が来て驚いた。あの後なにかあったのか、出来れば何もないのが望ましいが無理だろうなとは思う。
あの三人では、今後も存在を残せるのか心配になる。
ホテルの広間で会った時から不思議に思ってたんだよな。俺は今の「今井家」とは特別養子縁組で子として迎え入れて貰って大事に育てられたし、俺も大切な存在だと思ってる。
でも岬は里親制度で俺と引き離されたと聞いてる。調べてみたら里親制度って国から月々給付金が出ているようだし、二人目からは給付額も減るらしい。それに18歳までしか養育されないようだ。詳しくは知らないが。
[実父の思い]ではそこの所は、混同されて実父も詳しく知らなかったようだ。
たが特別養子縁組と里親制度では大きな違いがある、俺は今井家として今の両親と親子の繋がりが出来、元親の実父や実母とはすでに親子関係が切れてしまっている。
それでも[実父の思い]で知り得た記憶は懐かしさを思い出させてくれて、実父には愛されてた事を知り切なくはなったが実父もそれで良かったと思ってる。
妹の岬は実父と実母との親子の縁は切れてないし「坂元家」とは養育関係であって、親子関係はない。
俺が調べたページはブックマークしといて、岬と墓参りに行く時の移動時間にでも見せてあげようと思う。
それから、約束の日が来て岬と共におばあちゃんの墓参りに行く準備をして待ち合わせ場所に向かおうとしてた。
兄妹で行くつもりだったのだが、パーティメンバー全員がついて行って手を合わせたいと言ってくれている。自分達の親兄弟の代りでも線香をあげて手を合わせておきたいとの事だ。
嬉しい事だなと思い、同行を許可した。こいつらとは小学校からの縁だが気の良い奴らで陰口とかしてるのも聞いた事も見た事もない。
同年代の子のいじめで自殺騒動とかがニュースで流されると、助けてくれる存在は居なかったのだろうかとか真剣に考えたりする良い奴らだ。
しばらくして待ち合わせのバス停で岬を待っていると、遠目に四名がやって来るのが見えた。
どう見ても、岬の父親と祖父母の四人だ。岬だけこっちに来るように言って状況を聞いてみた所、墓参りに同行して謝罪がしたいらしいとの事だ。
俺は別にあの人達におばあちゃんに謝って貰いたくは無いのだが、謝罪の機会を奪う行為も【善悪値】に影響するので仕方なしに離れてついて来るならと許可だけした。
岬だけ近くに座るように言って、ブクマしてあるページをそれぞれ見せて自分の事を例に挙げながら確認していったが、岬は何も知らないと言う。
それでも、あの日以降は家庭内がギクシャクして自分への当たりも強くなった感じがし、家に居づらくなり家を出たくなったらしいのだが、部屋の借り方や暮らし方が分からないと言う。
そこで、部屋を借りる際には協力するし、電化製品で必要なものがあればゆっくりでも揃えていけば良いと伝えといた。
最初に必要な費用は出してあげるからと言うと、なんだか優しさが「お父さん」みたいだねって言われてしまった。
バス内でそんな他愛も無い会話をしつつ、目的の「白水峡公園墓地」に着いて、入り口すぐにある墓花用の花を購入してから、祖父に聞いてた場所の墓石前まで行くと、阪本家の墓石が建ててあった。
一通りの掃除を済ませると、ろうそくと線香を立てお供えに持ってきた和菓子を供えて手を合わせた。両親の都合で、おばあちゃんに会いに来るのが遅くなってしまったと謝罪もしたし、生きてる内に会いたかったとも思ってしまった。
[実父の思い]が【加護】欄に贈られなければ思い出す事も来る事も無かったと思うと、自然と涙が流れた。
確実に実父の記憶に引っ張られてるなと思ったが自分自身も心が温かくなる事に嫌な感じはしない。
隣を見てみると、岬も涙を流していたが、自分とは違う思いで流れた涙だろうと見守るだけで声を掛ける事はしなかった。
その後、パーティー仲間が順に墓参りしてくれ、最後に岬の家族が墓前に向かって土下座せん勢いで謝罪の言葉を述べまくっていた。
声に出す必要があるのかって疑問と、その姿を見せられても特に何も感じなかったし、おばあちゃんも迷惑だろうなと思ってしまった。
岬の方を向くと複雑そうな表情であったが、なんだか考えてる事が同じなんじゃないかとも思ってしまった。
「一つだけお願いしておきますが、ここの事をSNSで拡散したりしないでくださいね。おばあちゃんや先祖を静かに眠らせてあげたいので」
その一言だけ、岬の家族に伝え帰る準備を始めた。ここの墓地は供え物は持ち帰り、ろうそくや線香の火の始末も厳格だ。
最後に、墓石に向かってまた来るよ。と声を掛けて離れた。
その後バスで帰宅して、ホテルでまったりと寛いでいると岬からメールで「お部屋探しお願いします。家は出る事にしました」と届いたので、「直ぐに家を出たいならいつでもホテルに部屋とるからな」と返しておいた。
どう判断するかは、岬次第だからね。
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〔神〕を呼称する存在
私は上司に状況を説明し、星の上の有望な魂と肉体をリソースにし星の未来の軌道修正をした事を正直に伝えた。この時の私は自分に下されてる処分に付いても考えていた。
予定されていた以上にリソースを使ってしまい、結果星はうまくいったが、と言う所だろう。
上司は少し考えこんで、未来予測を幾通りもしてたのだろう。そして。
『今回は不問に付す、あの時点での分岐ではいい結果は何もなかった。捧げられた魂に感謝し星をしっかりと見守れ』
『はい』
『それから、あの星の魂は少し特殊かもしれないので、経過観察もしっかりとするように』
『畏まりました』
上司との会談が終わり、特殊任務室の自室へ戻る。そんな折、審判と裁きの女神役が時を止めてまで、時間が戻った真実を公表してしまった。あの魂は望んでは居なかった筈なのだ。
審判と裁きの女神役を呼び出して今回の事を聞いてみる事にした。
『なぜ、時を止めてまで星の上に全ての真実を告げて来たのかな?』
『なぜと言われましても、あの星の上では死者の魂を正確に認識出来ないようで、死者の魂への誹謗中傷が絶えませんでしたわよ?』
審判と裁きの女神役は何千件と起こる魂の侮辱行為にうんざりしながらも答える。
『それと時間を止めてまで、あの魂の事を伝えるのは別の事だろう?』
『そうですわね、今回はたまたまあの魂に関係が深い魂での出来事でしたので、少しあの魂に同情したのかもしれませんわね』
審判と裁きの女神役は、あの魂に振り回されてても同情はしてたらしい。
『あの魂は伝える事はないと言ってたが、どうしてだい?』
『それをおっしゃれば、貴方もあの魂の二人の子の魂にあの魂の思いや記憶を贈ったではありませんか?』
質問を質問で返してくるなんて、面倒な。
『我のは感謝の印にすぎんよ。星が無事に生命の安定線上に戻りつつあり、人種の数の調整も未だ高水準ではあるが保たれている』
自分のは問題無いと答えておく。
『わたくしのも只の事実を告げただけですわ。それにうんざりですのよ、愚かな勘違いで亡くなる者すべての魂が穢れ悪しき魂と等しき扱いを受ける事が。しかもそれがたかがゴミの魂の分際で善き魂や、強き魂を穢すような事を口走るなど許せはしませんわ』
審判と裁きの女神役も結構なうっぷんが溜まってるんだなと理解させられた。
それだけ、この星の魂がいろんな色にすぐ染まる事が原因でもあるのだろうが、あの魂との盟約で魂の監視期間を長めに取るようにしている。即処分とはしていない、しかしゴミを見続けるのにも限度はあるがな。
問題は凍結された第三幕の第二段をいつ採用するかだな。次代の子が生まれ始めるようになるまでは到底実行に移せないのは確かだが、今実行に移すと前回の二の舞になりかねないからな。
それと第三幕の第二段との言い方も変えないとな、すでに順番は違っているのだ。
それから三年と少しの間、星の上の魂の状況を注意深く観察したが。特に大きな問題もなく【善悪値】の上下動が激しく繰り返されている。
【善悪値】は上がり難く、下がり易い。それでも上げようとする努力は認めるべきだな。
他の星では【善悪値】が下がって【黒色表示】以下まで下がってしまった瞬間に絶望し、肉体が変貌し【魔物】へと成り下がり、周りに被害をばら撒くのだからな。
長い期間にはなるが、しっかりと見極め見守るとしよう。星が害されない限りは。
『我も役目を失って友と呼べる魂も失い、暇なのだがな?』
良い感じで思い耽って居たのに、守護竜役を任せていた柱がいつの間にか室内に入り話しかけてきた。
『そうは言われても、今のあの星で最高難易度【ダンジョン】は持て余すだろうし、第三幕の第二段が凍結解除された場合にはそれこそ、人種の絶滅しか未来が見えないからな。
今しばらくは他の柱の手伝いでもして、また役目を全うする時が来たら申し訳ないが役を全うしてくれ』
そう言い宥めておく。この柱が一番あの魂と接点があったからな、思う所は我々より大きいのかも知れないな。
『そうさせてもらおう』
一言だけ残し部屋から去っていった。
柱とも友誼を結べる魂とは稀有な存在を消失してしまったな。
お読みいただきありがとうございました。
完結させたその後の話までお付き合い頂き、ありがとうございました。