関係者のその後6
後1話で最後です。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
今井智樹 妹と会って
無事にと言って良いのか、京都嵐山を発ってから試練の最高難易度【ダンジョン】があった場所には電車を乗り継いで、阪神今津駅で人に聞いてすぐにたどり着けた。
今ではもう最高難易度【ダンジョン】は存在しないが。人々の記憶にはしっかりと残ってる。
公園には人っ子一人居なかったが、日本の【ダンジョン】で始まりの二つの内の一つがあった場所であり、数多くの不幸や死者が生み出された場所でもある。感慨に耽ってても何も起こらないしどうしようもないので仲間と相談する。
この近辺で近いダンジョンは甲子園球場の中に出来た中難易度【ダンジョン】か、芦屋市の小学校校庭の初級【ダンジョン】のどちらかだろう。
妹が行くとしたらどっちの【ダンジョン】に行ってるのだろうか?
記憶の中では、実父から【レベル】や【スキル】を沢山覚えさせて貰ってた筈だし、安定して生活出来てるとは思う。いや違うか自分も何だかんだと【スキル】を覚えさせられてたわ。
実の父さんと少しでも長く居れた事を少し羨ましく思うが、[実父の思い]では自分達の事を知ったのが実父が消える日の6日前だ。しかも俺や妹は実父が消えた後に全てを知ったわけだし。
それでも妹は【ダンジョン】の時からだから1年近くは実父との接点はあったわけだ。
公園で今後をどうするかを話し合いして、近くの球場内の中難易度ダンジョンから行ってみようとなった。単純に甲子園球場に興味があったってだけなんだけどさ。
阪神今津駅に戻り二駅で阪神甲子園駅だ。駅のホームからは、球場外壁に阪神甲子園球場と書かれの文字は見えるが、改札口からは見えなかった。少し南に歩けば国道43号線の高架下から阪神甲子園球場の文字がハッキリと見えてきた。
以前は観戦チケット売り場であったであろう場所が、入ダン手続きをする場所になっていた。そこで説明されたのが変わり果てた甲子園球場の内容であった。
元阪神甲子園球場内は様変わりしていた。位置的にちょうどグラウンドの中央に【ダンジョン】の入り口が口を開けており。
観客席は【ダンジョン】産素材で作られたであろう防壁で囲まれ、その上にはこれまた【ダンジョン】産素材で作られたであろう軍用ボウガンが並べられ一般人は立ち入り禁止区域となっている。
万が一【ダンジョン】から【魔物】が出てきた時の備えだそうだ。
【ダンジョン】には入らずに、自衛隊員が駐屯してる場所へ行き「坂元岬さんの兄なのですが、居所に心当たりはありませんか?」と聞いてみると、しばらく待たされたが一人の自衛隊員がやってきて、真摯に話を聞いてくれた。
やってきたのは松本二等陸尉さんで、なんでも実父とのやり取りをした事もあるとの事だ。当時は振り回されまくりで大変だったと聞かされた時は申し訳ない気持ちでいっぱいになってしまった。
それでも、食料をちょくちょくと提供しに来てくれた事はすごく助かってたそうで、集団の全体的な【レベル】アップに非常に貢献してたそうだ。
あと、松本二等陸尉さんは実父が消えた事を既に知っていた。芦屋市の【ダンジョン】の舟木三等陸尉さんから聞いていたそうだ。なんでも「坂元岬さんからの情報だが真実の可能性は高い」と報告されてた。
それと、妹の実家の連絡先も知ってるとの事で連絡してみてくれるらしくて、しばらく待つように言われた。そこからはトントン拍子で話が進み、松本二等陸尉さんが場所をセッティングしてくれる事になった。
そこは、妹には苦い思い出の場だろうホテルでの広間だった。約束の時間に現れたのは、妹の岬とその両親が付き添ってやってきてた。
初めましてとぎこちない挨拶をしたあとに、【加護】で[実父の思い]があるのかを確認しあって兄妹である事を実感できた。出来たのは良いが別れた時の面影なんか覚えてもないし、16年も経てば他人感が半端なかった。
そこから、実父の話を少しして記憶に違いが無い事が分かり自分は懐かしくなるものの、妹は記憶に欠片もないらしくて、違和感が凄いとのことだった。正直妹の話を聞いてても共感は出来なかった。
だって、おばあちゃんを死に追いやった両親を本当の両親と思い、実父をおじさん呼びする妹には共感出来る訳がないが、それでも唯一血の繋がった兄妹なのだ。おばあちゃんも生き返ってるはずだとも言ってたが、友人たちの言葉が心に刺さる。
《【白色表示】や【黒色表示】にまで戻ったが実は【ステータス】内には未だにその言葉が目立つように表示されている》
妹におじいちゃんと、おばあちゃんに会いに行かないかと言うと、何度も両親と共に尋ねたらしいけど門前払いされてるから行けないと言う。そう言う事で行かないと言うなら無理に誘う必要はないが、妹が「もし会えたら、岬の両親が謝りたいと言ってた」と伝えて欲しいと、なんともかってな事だ。
その場は分かったとだけ言い、その後は妹が生まれてから引き離されるまでの記憶の無い部分を話聞かせるだけで妹が泣きだした所でお開きとした。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
今井智樹と祖父
俺は妹の岬から祖父母の住む住所を聞き、マップアプリで道案内してもらいながら一人で尋ねることにした。友人たちにはホテルで部屋を取って貰って待っててもらうように頼んだ。嫌な思いをするのは自分だけの方が良いかも知れないと思ったからだ。
あの一言がどうしても忘れる事が出来ず、不安なのだ。
祖父母の家に着きインターフォンを押したら男性の声で応答があり、「孫の智樹です」と伝えると玄関を開けて貰えて部屋の中へ通された。
部屋の中はスッキリと片付けられていて、居間の奥には仏壇も目に入った。
話を聞くと、やっぱり祖母は生き返っては居なかった。岬の家族が謝りたいと言う事も伝えてみたが、良い顔はされなかったが、おじいちゃんは岬とは会ってみたいと言ってくれた。
それから、いままでどうしてたのかを時間が許す限り話しておじいちゃんの家に泊まる事になったので、友人や岬に連絡をした。その際に岬には「明日の昼なら会ってくれるそうだから、来るなら来て」とだけSNSで送るだけにした。
おじいちゃんは、会見日の出来事を知り酷く後悔したらしい、息子と縁を切って親戚連中にまで息子とは縁を切ったから一切関わるなと伝えまくった事も悔いてるらしい。
元嫁に言われるままに息子を悪者にして離婚が成立してからも養育費の支払いが一回も無いと連絡が来ては金を振込んでたそうだ。
おじいちゃんも頑固だから、警察に捜索願いを出したそうだが。見つかったなら遺産放棄の書類を送るように伝えてもらう為だけのようで、職務質問で息子が見つかった際には直接話したくも無いと警察官に遺産を放棄する旨の書類を送るように伝えてもらったそうだ。
その後わずか1週間で司法書士経由で実父から父親と弟家族の遺産放棄の書類は届いたそうだ、その際に母親とは縁を切ってないので遺産放棄するつもりはないが金銭を要求するつもりもないと書いてあって、母親を思い出せる品だけ相続出来れば良いと一言書いてあったそうだ。
泣きながら本当に取り返しのつかない事をしてしまったと後悔していた。徹底的にやりすぎて遺産放棄の書類まで揃えさせるなんてやり過ぎだったと。
涙を流しながら話す祖父だがこれにも共感は出来なかった。
その話を聞いて俺は実父の何処に悪い所があったのか、なぜ自分の息子を信じずに元嫁の言葉だけを信じたのか、わからなかった。
俺はまだ、実父が消えた事は口にしてない。言い出すタイミングが無かったのと実父を切り捨てた祖父にも腹が立ってたのもあるし、祖母が生き返ってない事でも気持ちにポッカリと穴が開いていたのもある。
夕食時には実父の弟さん家族、所謂叔父に当たる人物の家族と従弟に当たる双子がやってきた。[実父の思い]で感情を知ってしまってるだけに、叔父と親しくしたいとも思わない。なのでこの人等にご馳走になるのが嫌になり持ってる食材を〈アイテムボックス〉から取り出して使うように頼んだ。
明日の岬の家族が来た後はもう来る事は無いかな。祖母の墓前参りはしたいから場所を聞いたらもう用はない。
俺も今井家とは別に関係が悪い訳でもないし、後を継ぐのは今井家だし。実父には悪いけど実父もその辺を理解して打明けなかったようだしな。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
今井智樹と祖父 対 坂元岬家族
一晩経って、朝食を祖父と叔父さん家族と一緒に食べてぎこちない会話をして過ごしたが、何を話したのか思い出せもしない。昼頃になると妹の家族がやってきた。
インターフォンが鳴り祖父が自分で応対すると、孫の岬ですとインターフォン越しに聞こえてきた。祖父が妹の家族を招き入れると坂元家の祖父母まで同行していたのには驚いた。
祖父が居間に招き入れ、相対する形でテーブルを挟んで席に着く。
「孫の岬がお世話になってるそうで」
いきなりじいちゃんは喧嘩腰で話しかけるから吃驚する。
「この度は奥様に対して誠にお詫びのしようもない事をしてしまい申し訳ありませんでした」
妹の家族は揃って謝罪の言葉を口にして頭を下げる。
「許す事は出来ません。時間が戻ったからと、家内が生き返った訳でも無いですので。あなた方を含め大多数の人に殺されたままです。孫の岬が会いたいと、孫の智樹に言付けしたから会っただけですし、孫にも久しぶりに会いたかったのもあります」
「そんな!、奥様は生き返っては居ないのですか?」
現岬の父親がそう問いかける。
「ええ、時間が戻っても仏壇に遺影と位牌がある状態ですよ?生き返るとでも思ったのですか?あなた方含め大勢に殺されたままです」
「そんな、善人は生き返る筈ですわ、生き返らないって事は〔神〕様から穢れ悪しき魂と認定されて生き返らなかっただけでしょう?」
現岬の母親がとんでもない事を言い出す。
「何をもって家内が穢れ悪しき魂の持ち主と断言するのかね?あなた方に殺されたのは事実でしょう?私は絶対に家内を殺した人々を許しませんよ、内容が直接だろうが間接だろうがね」
祖父も負けずに言い返す。
「だって生き返ってないって事は〔神〕様に不要と判断されて魂は処理施設に入れられたって事でしょ、私たちが責める以前に穢れ悪しき者だったって事じゃない、罰にあんな一言が付くから気にして謝りに出向いてても一向に会ってもくれないし、あなたも謝罪ぐらい聞く耳を持ったらどうなのよ?」
妹の母親は言いたい放題だし、自分の祖母を穢れ悪しき魂と決めつけて話して来るから聞いてて気分が悪い
「お言葉を返すようで悪いが、ここに謝罪に来る奴らは玄関先で言葉だけ告げ立ち去る、誰一人として仏壇に線香一つあげず、納骨された墓の場所すら聞こうとしない、そんな奴らのどこに謝罪する気持ちが籠ってると言える?アピールがしたかっただけだろうが!」
祖父も半ギレ状態で今まで謝罪に来た連中を引き合いに出して言い返してはいる。
「岬のおばさん、あんたらがやった事は曲げようのない事実だし、祖母が自殺したのも事実として記憶してる、何の確証もなく罪のない人を責めたのはあんた達二親とその祖父母だろ、なんでそんなに態度がでかく出れるんだ?」
俺は我慢ならずに苛立ち交じりで聞いてしまった。
「私たちはね岬を大事に育てて、実父から【レベル】も【スキル】も託された岬に期待してるのよ、この先の世界を生き抜く為にね、それで謝罪に来てみたら自殺したまま生き返れもせずなんて、穢れ悪しき魂だったって事じゃない、もう形だけの謝罪はしたしお暇させてもらうわ」
岬の現母親は言いたいだけ言って帰ると言い出してる、そういえば会見の日の映像でも実父の頬を叩いたのはこのおばさんだったなと今になって思い出した。
「ええどうぞ、お帰り下さい。当方は謝罪されたとも思ってませんし許す事はしません。勝手な言い分で勝手にすればよろしい」
祖父も半ギレ状態がだ帰ると言う人を引き留めはしないようだし、妹側の祖父母は最初の謝罪の言葉以外一切喋る事もしないし、元から謝罪したと言う形だけが欲しかったのかもな。
「それでは失礼しますわ」
席を立ち掛けた時にテーブルの上に金色の粒子が集まりだして「審判と裁きの女神」様が顕現された。
『我は審判と裁きの女神』
『汝等に審判を言い渡す』
岬の家族に向かっておもむろに言い放ってる。それにしても凄い圧だ身動きすらできない。
『汝等、坂元家は自身等が同調圧力により死に追いやった魂への贖罪の気持ちもなく、生き返らなかった事で、善き魂を穢れ悪しき魂と決めつけた事への罰を言い渡す』
やっぱり、おばあちゃんは善き魂だったんだ。
『阪本仁の母親は時間が戻る時点で既に輪廻へと還ってしまっていた為に生き返ることはなかった。また汝らの阪本仁の娘を使っての今後の生活方法も我々は知っている。【白色表示】になった事から【レベル】が高く【スキル】を所持してる阪本仁の娘に依存する事が汝等祖父母も含め話し合われたであろう』
そんな事まで〔神〕様はお見通しなんだ。そりゃ嘘は付けないし実父は異空間に隠れるしか逃げる手が無かったわけだね。
『審判を言い渡す、穢れ悪しき魂の持ち主である汝等には罪を表示し「死神の視線」が贈られる。存在が消えぬように贖罪に励め』
岬以外の家族の表示が【赤色表示】になり、「坂本仁の母親を死に追いやった一人」「善き魂への冒涜(輪廻に還りし魂に穢れ悪しき魂と罵った)」その2つが赤文字で表示されている。
『阪本仁の遺児二名よ、汝らの母親家族と一族の中で元妻の口車に乗り阪本仁に対して敵意を持つ一族も既に処理施設送りとなりこの星には存在しない、未だに思い出があるのは存在を消される時には既に処理場送りとなっていた為である。
我の裁きを無視してこの国から去ろうとした故に、神罰によって処理場送りとなった』
『地球と呼ばれし星に住む人種よ聞くがよい。審判と裁きの女神の独断なれど時を止め告げる。
時間が戻り生き返った者は輪廻にも還す程の価値も無くリソースとして使うにはエネルギーとしても脆弱すぎた魂故ある程度の数が揃うまで保管された魂である。
阪本仁の献身によりそれら保管された魂が時間を戻した時点で生存していた魂は元に戻されたのだ。膨大な数の魂を元に戻すのにどれだけの【レベル】や【善悪値】を必要とするか知る由もなかろうが、現在の星の上にある【レベル】持ちや魂では不可能としか言えぬ。
また生き返らなかった者はすでに処理場送りになっており。輪廻に還れたのは極僅かな魂のみだ。
我々は阪本仁からの提案と共に、地球人種の肉体の脆さや性根の良さなどを聞きとり、時間を戻す為の計画を模索したが使えるリソースが少なく実行不可能であった。本来であれば近い内に人種は絶滅していた。
しかし阪本仁は時間を戻す策にその身と魂を捧げ、今後輪廻に還る道すら放棄して我が子の未来だけを願った。
今の暮らしが成立してるのも、その願いの過程でしかない。
この事は、阪本仁からも伝える事はないと返答を得ていたが、真実を知って尚感謝すらしないゴミには審判を下す必要があった為に顕現した。たった今、審判が下された魂が四つある』
『【ステータス】内に阪本仁に関する記載がある魂は心して生きて行くが良い簡単に【赤色表示】に転落し「死神の視線」が贈られる事となろう、くれぐれも魂を穢す行いはしないようにな』
その一言を最後に金色の粒子となって中空に溶けるように消え去っていった。
「・・・・・・・・・」
審判と裁きの女神様が消え去るのと同時に、妹の母親が崩れ落ちて泣き出した。だがおじいちゃんにはそんな事は関係なく家から出て行くように告げるだけだった。
岬も泣いているが何に対して泣いているのかは分からない。
妹の両親や祖父母は泣き叫びながら、今更な事を口走ってる。今更の謝罪が誰のどこに響くと言うのやら?
自分も呆れるしかなかったし、隣の部屋で話を聞いていた叔父さん家族も許す気はないからさっさと出て行って下さいと突き放してる。
おじいちゃんだけは、妹の岬に「岬だけならいつでも顔を見せに来てくれて良いからな」と言ってるが実父と祖父や親族との確執も記憶で知ってるので戸惑った顔をしただけだった。
そこからは、話にもならず追い出される妹の両親と祖父母を見送るだけしか出来なかった。自分からしたら赤の他人だし、施設で引き取られる際に兄妹揃っての引き取りも拒否された、ただ妹と引き裂いただ
けの存在でしかない。
岬の家族が去った後に、女神様の言葉で息子がこの世に居ない事を知った祖父はもの凄く落胆してたが、[実父の思い]で知った事を全て話した。もちろん母親以外の親族は居ないものと思ってる事も伝えたし、母親以外は憎んでる記憶しか無い事も伝えた。
おじいちゃんは凄く落ち込んでいたが、自分の息子の言い分を聞かずに嫁に来ただけの女性の言葉だけを聞き入れた結果でしかない。自業自得だろう。
しばらくしてから自分もおばあちゃんの埋葬されてる墓の場所だけ聞いて仲間が待ってるからとお暇する事にした。
おじいちゃんは、いつでも来てくれて良いと言ってたが、もう来る事もないだろう。自分も[実父の思い]に引っ張られてる感じがしないでも無いが、どうにも歩み寄れそうにない。
それに会いたかった、おばあちゃんが居ないのが一番の理由かもしれない。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
坂元岬とその家族
遺族の家を追い出された五人だが、沈黙したまま車に乗り自宅へと帰り着いた。誰もが言葉を発する事が出来ずにいる。
確かに母親の言い様はおかしいと思った。生きてようが死んだままであろうが、真摯に謝るのが筋ってもんじゃないのかと思ったが、母親は違ったようだ。
生き返ってない事から穢れ悪しき魂と決めつけて、謝罪する価値が無いとでも言うような言い方だった。
あれじゃ、喧嘩を売りに行ってるとしか思えなかったよ。一方的に自分が正義みたいな事を捲し立ててたが、結局は審判と裁きの女神様が顕現して審判を下されたのが、私の家族。
何も私と血の繋がった一族に対してあのような言い方をする必要は無かったと思う。
なんだか、ここ数か月思い悩んでた事が馬鹿らしく思えてきた。私に対して一番の思いを持ってたのは実父だけだったのかと落胆した。
真実を知って尚、実の家族だと思おうとしてた四人が私を利用して生き残る道筋を立ててたのは別に良い。育てて貰った恩があるし、元々そう考えてた。
でも、死者の冒涜や形だけの謝罪とかは違う。死者を責めて良いのは死者によって被害を被った遺族や被害者達だけだろう。
四人は、違うの違うのと繰り返すだけで、何が違うのかさっぱり分からなかった。目の前で繰り広げられた、血の繋がった祖父との言い合い合戦。
挙句の果てには審判と裁きの女神様の顕現で、穢れ悪しき魂がどちらなのかもハッキリされた、今では見たくない表示が四人ともの頭上に【赤色表示】で出されている。
おじさんは表示を見る度にこんな気持ちになってたんだろうな。
車で移動してなければ今頃は注目の真っ只中だっただろう。
しかも「死神の視線」が付いてるって事は、いつ存在を消されてもおかしくない状態だ。
私が知る限り時間が戻っても「死神の視線」が付いてる人は、またテレビに出るようになった女性アナウンサーだけだ。
彼女は自分自身の罪と罰に真剣に向き合い、遺族に毎日の様に会いに行っては門前払いされている女性。
そんな時にお兄ちゃんから「大丈夫か?」の一言だけがSNSで届いた。「分からないよ?何もかもがぐちゃぐちゃしちゃってる感じ」と返したが、返ってきたのが。
「考え過ぎないで、自分に素直になって考えな」「当分は甲子園のホテルに滞在するから、相談には乗るよ」ってだけだった。
なんか、おじさんっぽくて似てる雰囲気があって、ホッとした。今少し考えてみよう。
お読みいただきありがとうございます。