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関係者のその後5

もう少し続きます。

 ◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇

 坂元岬 時間が戻った直後


 私は自分の【ステータス】内の【加護】に付いた[実父の思い]に触れた瞬間に、おじさんだと思ってた人の真実を知ってしまった。

 自分達を助ける為にどれだけの苦難の道を辿ったのかとか、100階層のドラゴンさんに会うまでは正に地獄そのものだった。

 試練の守護竜って言うだけはある。99階層からは次元が違った。いや、それも違うか。私たちが舟木さん達パーティーと一緒に最高難易度の【ダンジョン】に連れて来てもらった時でさえ【レベル】も上がったし少しは戦える自信もあった。それなのに2階層で【魔物】の突進は受け止められなくなり、ギブアップしてしまった。

 おじさん曰く【加護】の[女神様方の寵愛]の効果で【ステータス】が上がったからだと言ってたっけ。

 最高難易度【ダンジョン】は最低でも【加護】を貰えた人が挑める場所だ。


 そして、おじさんの記憶の中の赤子は私なんだと思うけど一切の記憶が無い。おじさんの記憶では私が8か月の赤子の時に、会見場で見た女性がおじさんから私を引き離した。「審判と裁きの女神様」に平気で嘘を吐く女性が実の母親なんだと言う事も理解もした。その後、施設に預けられるまではおじさんも知らない事で記憶にはない。


 そして実の両親だと思ってた二人や祖父母が血が繋がって無い事実でも悲しくなった。今までずっと大事にしてくれたし、血が繋がって無いなんて思ってもいなかった。それを思うだけでも涙が止まる事がなかった。


 泣くだけの私を親友達は家まで付き添ってくれた。それからは母親が出迎えに出て来たけど知ってしまった事が大きすぎて話をする事が出来ず泣いて一晩過ごした。


 一晩たち両親から真実を聞きたいから、意を決して聞いてみる事にしたの。


 朝から両親に居間へ集まって貰ってから、決意して顔を上げて両親を目にすると頭上に見たくない表示は消えていたし【白色表示】になっていた。


 両親曰く昨日の時間が戻った瞬間に表示が【白色表示】に変わってて、【ステータス】内には阪本仁さんへしてしまった事は消えていないそうだ。時間が戻っても記憶がある状態で戻ったから戒めの為に【ステータス】内には残されたんじゃないかとお父さんが言ってた。


 そこまで聞いて私が本当に、お父さん、お母さんの実の子なのかと聞いた、聞いてしまった。両親は少し動揺した風に見えたが、血は繋がってないが本当に親子だと思っていると明かしてくれた。

 そしてなぜ突然そんな事を聞いてくるのかも聞かれたので正直に【加護】の所に付いた[実父の思い]で血の繋がった父親の思いと記憶のすべてを知ったと伝えた。


 お父さんが「その[実父の思い]ってのは、私たち親子関係を確認する必要が有るほどの内容なのかい?」って聞いてきたので、[実父の思い]で知り得た事の全てを泣きながら語って聞かせた。スキルを沢山覚えさせてくれた事も含めて全てをだ。


 両親は言葉を失ったように沈黙し何も言えない状態になったので、いったん考えを纏めたいと言い出し部屋に戻ってる様に言われたが、部屋に戻ってからも気持ちは落ち着かなかった。

 実の両親と思ってた二人が血の繋がりはないが本当の親子と言ってくれたのもうれしいし、[実父の思い]で知ったおじさんの記憶にある幼子と赤子への12~13年間の思いも知った。


 そしておじさんはもうこの世界には居ない。


 翌日になって両親に呼ばれて居間に行くと、大丈夫か?と聞かれたが正直大丈夫なのかどうかもわからない。一つ言えるとしたら胸にぽっかりと空いた穴がある感じがずっとするだけと答えた。


 それを素直に言うと両親は左右から抱きしめてくれて、岬の本当のおとうさんは消えてしまったかも知れないし、私たちは岬の()()()()()()()()()()()()だと言う事も昨日ずっと考えた。それでも阪本さんは真実を知っても岬に名乗り出ずに出来るだけの事をしてくれ、私たちに岬を託してくれたんだろう?この先も続く生活の為に【スキル】も覚えさせて貰ったんだろう?近くにいた時間は短いかもしれないけど、ちゃんと岬の未来の為に色々してくれたはずだよ?


 その言葉で胸に空いた穴が少し塞がった気がして気持ちも幾分軽くなったようだ。


 自分を赤子の頃から育ててくれたのは、この両親だ。お父さんも、お母さんも、この人達だけだと思いを新たにして生活が続いていく。


 ◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇

 坂元岬 一か月経った頃の出来事


 私は何気なく各地の初級、中難易度【ダンジョン】での【ドロップ】報告が載せられ続けてるSNSを眺めていたある日、一つの書き込みが目に付いた。

 それは無記名での投稿だったが、「信じられないかもしれないが真実を書く、阪本仁がその身と魂を捧げて〔神〕様が時間を戻す事にしてくれた」との書き込みだった。


 真実を知るのは私と両親だけだ。直ぐに両親に確かめても「SNSはこりごりで書き込みなんか出来ないよ」と言う。


 その投稿は、速攻で「嘘乙」と書き込まれてあっと言う間に書き込み上限に達した。次に立ち上がった掲示板でも「嘘を書くなとか」「一人の人間如きで時間が戻るか」等の書き込みが相次いだが、最初の情報への批判的な書き込みをしてた人達が徐々に【善悪値】が下がり始めた、「最初に嘘乙って書き込んだ者だが【灰色表示】まで戻したのに【黒色表示】まで下がった」と書き込まれてから流れが一変した。


 その後も続々と批判や嘘判定してた人々が【善悪値】が勢い良く下がる現象で真実の情報を嘘と決めつける行為は〔神〕様はお許しにならないのだろう。と、理解したが時すでに遅しであった、下がった【善悪値】はまた時間をかけて善行を積み上げてて行くしかない。上がり難く下がり易い、実に慎重に行動をするかが問われる。


 中には「阪本仁なんていなくても世界は時間を戻されたわ、〔神〕も人類の適正を見るだけの試練だったんだろうしな、阪本仁の名前なんか出すな、胸糞わりー」と書いた投稿者とそれに賛同したネット民二十数名達が一瞬で【赤色表示】に変わり、「阪本仁の誹謗中傷を拡散した者」&「死神の視線」が付いたそうだ。


 即座に悔い改め書き込んだ内容を削除&訂正文を投稿したが、今回は表示が戻る事もなく「死神の視線」が消える事は無かったそうだ。その後は誰も知らない。


 って、そこじゃないのだ、「信じられないかもしれないが真実を書く、阪本仁がその身と魂を捧げて〔神〕様が時間を戻す事にしてくれた」と書き込んだ人物と連絡を取りたい。

 おじさんの記憶にあった兄の可能性があるからだ。でもSNSで自分の情報を出すのは躊躇われるしどうすれば良いのだろう?


 両親に相談してみたけど、方法は掲示板の運営者に連絡して開示してもらうしか思い浮かばなかったらしいが、それも重要案件でもない限りは実行してもらえないだろうとの事だった。


 なので、私は「()()()()の言う事は全面的に信じる」とだけ書き込んだ。


 ◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇

 坂元岬 六か月半が経った頃の出来事


 舟木さんパーティーと出会った事が切欠で内に秘めていた思いをすべて吐き出す事が出来た。その結果その日の探索はお預けとなり、桜は急用が出来たと謝ってから先に帰ってしまう始末。

 私はと言うと[実父の思い]を口にする度に泣けて来るのが恥ずかしくなり、俯いてると勘違いさせてしまう結果になり、気まずい。


 その後は火力発電所が稼働するまでは大変な生活を強いられたが、時間が戻る前とでは大違いな安心感はあった。ちゃんとした建物がありトイレが使え水道から水が出るだけで電気が来てなくても生活は安定する。柔らかい布団で寝る事が出来るだけでも体は楽になる。それを思えば小屋での生活が苦しすぎた。


 ◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇

 坂元岬 三年一カ月が経った頃の出来事


 知り合いに[実父の思い]の話をしてから約二年と半年が経った。()()は安寧を取り戻し生活するうえで不便に感じる事もなくなった。


 スーパーも普通に営業してるし商品もそれなりに並んではいるが全てが【ダンジョン】産で一部分だけ加工されて誰もが手に持てる状態で売られている。

 食べ物屋さんも営業はしているが、調味料が無いなりに素材毎で補い合い【料理】スキルを持つ人が試行錯誤したメニューが提供されている。お値段もそれなりにするらしい。


 値段も食材の【レベル】によって変動するので、おじさんが振舞ってくれてた【レベル】の食材ならとんでもない値段になったに違いない。


  それから、今から半月前にお兄ちゃんの今井智樹さんも、私を訪ねてきてくれた。お兄ちゃんとはSNSでやり取りを続けてる。おじさんから覚えさせてもらった【スキル】はどうも、私たちを守る物だった様だと言われて、考えてみれば【スキル】のおかげか私たちだけは大きなケガもなく不便を強いられる事も少なかった。


  お兄ちゃんは、おじいちゃん、おばあちゃんの家にも一緒に行こうって誘ってくれたけど、試練の最高難易度【ダンジョン】から脱出した後の会見後に両親と共に伺った際には態度が激変してて会ってさえくれなかったと伝えた事から、お兄ちゃん一人で尋ねてみる事となった。お兄ちゃんがおじいちゃんの家を訪ねた翌日に会う事が出来ると連絡が来たが。その時に考えてもいなかった事が起こり、私の心は沈んだままだ。


 それから、実父の事だけど私はこれから「お父さん」呼びする事にし。両親は私を赤子の頃から育ててくれた二人だけど、おじさん、おばさんと呼ぶことにした、義理の祖父母とももう会ってない。けど「お父さん」って口に出す度に胸がチクッってするのは実の父親の思いを知ってしまったから来る今の両親への罪悪感から来るものだろうか?


 最後にお兄ちゃんに保証人になってもらう予定で一人暮らしをするつもりでいる。

お読みいただきありがとうございます。

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