関係者のその後3
まだ1時間後に予約投稿してます。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
山之内桜 視点 時間が戻った頃
私は木造の小屋の中で両親といた。試練の最高難易度【ダンジョン】を無事に連れ出して貰えてから、両親とギクシャクしてしまっていた。
それと言うのも両親の頭上に、おじさんや、おじさんのお母さんの件が、ハッキリと表示されてて両親の方向を向く度に心が痛くなるからだ。
その、おじさんには二度も命を救われている。
なのに自分は何も恩を返せていないし、両親を見れば恩を返す処か恩を仇で返すにしかなってない。そんな表示のされてる両親の方を向きたくないのも理解してもらいたい。
両親は私に謝るが、私に謝っても何の意味もないし、両親もそれは分かってるはずだ。
それでも私からは両親に歩み寄れない。そんなモヤモヤしてる時にそれは起こった。
さっきまで小屋の中で両親の見たくない表示が目に入るから目を背けていた筈なのに、鉄棒の前で親友の岬と夏美、夏美の妹の春美ちゃんと居てる。
その瞬間〔神〕様からお告げがあり試練開始前の時間に戻したこと、今回は試練もしない事も告げられた。
なにがどうなったのか分からないが、ここってあの試練に落ちた場所ってのは理解できる。試練でおじさんの異空間に居た間の記憶もあるし、マイちゃんチーちゃんも足元に抱き着いてきて親しい仲である事が分かる。試練が開始された時であるならば、あの道路をおじさんが自転車で通らないとおかしい。
夏美と岬もおじさんを探してキョロキョロとしてたが、岬だけ動きを止め突然泣き始めた。どうしたのか聞いても反応すらしてくれない。マイちゃんチーちゃんも岬を心配して抱き着いてるけど反応は一切しない泣きながら深く考え込んでしまってる様子だ。
そんな様子を目にしたのか、マイちゃんとチーちゃんのママが近寄ってきた。本音で言えばこのママの方を向くのも嫌だ、おじさんの事が表示されているから。だけど今回は違った表示も【白色表示】に戻り「信号無視数回」と出てるだけだ。どうして?
気になるから不躾とは思いながらもと聞いてしまった。答えは簡単で頭上表示されなくなっただけで【ステータス】内には今にもはっきりと目立つように表示されてるそうだ。
とりあえず、マイちゃんとチーちゃんをママさんに任せて、岬を岬の家まで連れて行く事にした。夏美と春美ちゃんに協力してもらって岬をなんとか家まで送り届けると、岬の母親が出て来てくれたけど岬の母親の頭上からも見たくない表示が消えていた。
そのまま岬を岬の母親にお任せして、自分たちも解散して自宅に急いで帰る事になった。
自宅に帰ると母親が頭上の表示が無くなったと言ってきて、喜んでいたが自分は素直には喜べなかった。
複雑な気分で突っ立てると、「時間が戻ったなら阪本さんのお母様も生きてるわよね?。今の内に本当に申し訳無かったと謝りに行くわよ、あの人ももうすぐ帰ってくるから、桜も一緒に行って頂戴ね!」と言ってきた。
結果、話も聞いてくれずにインターフォンが切られただけだった。おじさんのおかあさんが生きてるのかさえ分からなかった。
マイちゃんママが言ってたもんね、【ステータス】内に目立つように表示されてるって、私に言わないのは、やさしさなのか、自己保身なのか、分からない。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
山之内桜 視点 六カ月半経過後
時間が戻ってから六カ月半が経った。お告げ通りに六か月目には地球から掘り出された資源は戻されたが、植物は隔離される事はなかった。でも、植物からは、なにも収穫は出来ないらしいけどね。
夏美と春美ちゃんの生活は普通に戻ったけど、私は両親が【ステータス】の事を言ってくれない事で冷たい態度をとり続けちゃってる。
夏美や春美ちゃんは私と一緒のようでたまにおじさんを探してる風な事を言うけど、岬だけはこの六か月半で一度もおじさんの話をしない。おじさんと何かあったのだろうか?
そんな折、将大君のお兄さんが動物が隔離されてしまったし、久しぶりに初級【ダンジョン】に食料集めに行かないかとお誘いがあったので、四人で参加する事にした。総勢16名の賑やかなパーティーだ。
芦屋市立打出浜小学校の校庭に着いて、簡易テントで入ダン手続きをしようと入ろうとした時に、舟木さん率いるパーティーが出てきて軽く会釈だけしてテント内に入った。前回とは違って各個人がそれぞれ住所氏名を記入し【レベル】の記入は個人の自由らしい。これから【ダンジョン】に入る為の仕組みとか決まり事が作られて行くだろうと、時間が戻る前のここのリーダーさんが教えてくれた。
入ダン手続きを済ませテントの外に出ると、舟木さんパーティーが待ち構えていた。
どうしたのだろうと疑問に思っていると、舟木さんからここ最近で阪本氏とお会いしたかとの質問だったので「会ってません」と首を横に振るだけで答えた。
でも、岬だけが何かを決意したのか、少しずつ私達も知らなかったおじさんの事の全てを泣きながら語ってくれた。内容も衝撃的だったし、そこまで試練の最高難易度【ダンジョン】が過酷な場所だったなんで知りもしなかった。
それに、おじさんが望んで居たのが、子供たちを両親の元に帰して、幸せに暮らして貰う事をずっと願ってたらしい。
そしてなんと言っても岬の実の父親ってのも驚いた、「そんな素振りなかったよね?」って聞いたら、お互いに知らなかったらしい。
〔神〕様との話し合いの結果ご褒美で子供の情報を教えて貰って知ったみたいなの、そしてお父さん?は誰にも何も伝えずに消える事を選んだんだけど、〔神〕様が感謝の印として私とお兄ちゃんに【加護】として[実父の思い]として贈ってくれたみたい。
「お兄ちゃんまでいたの?」って夏美が反応してたけど今はそれ処じゃない。私は今日の【ダンジョン】行きを急用が出来たと、皆にごめんなさいして、自宅へと急いだ。
おじさんは、私たち子供達が親族との関係が壊れるのが一番嫌だったんだ。
だから見たくもない表示をしてる人間がいっぱい居る【ダンジョン】前広場に来ては食料を提供してたんだ。
私やナツやミサキにマイちゃんとチーちゃんの親が少しでも【レベル】を上げて生き延びれるようにと。
自分の子供でも無い他人を、たった二か月間一緒に居ただけで大切に思って貰えてた事を話を聞いて実感した、いや、実感させられてしまった。
家に帰るなり、両親をリビングに呼び出して、岬から聞いた話を試練の最高難易度【ダンジョン】の事を中心におじさんの苦労話を聞いてもらった。
そして【ステータス】内に隠し事をしてる事も、マイちゃんチーちゃんのママから聞いてて、時間が戻った直後から全部知ってた事も話をした。
既におじさんがもう地球上の何処にも存在しない事も伝え、最後におじさんが私達子供が無事に両親の元へ戻って幸せであって欲しいと願ってたって事も伝えて今まで冷たい態度を取り続けた事を両親に謝った。
私がいつまでも両親とギクシャクしてる姿を、おじさんは最初から望んでなかったはず、そうじゃないと【ダンジョン】脱出後におじさんの異空間から出る際にあんな事は言う必要がないもんね。そう思った瞬間に理解してしまった。
そっか、「おじさんにはもう、お礼も言えないんだ」
お読みいただきありがとうございます。