関係者のその後2
誤字報告とかあれば助かります。
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舟木涼香 視点 時間が戻った瞬間
さっきまでパーティーを率いて【ダンジョン】の14階層で戦ってたはずだ。それがなぜ伊丹駐屯地所内にいる?それに建造物も無事?。どういうことだ?
それに佐々木始め他のメンバーはどうなった?まさかまたトラップで幻覚でも見せられてるのか?
そう思った瞬間に〔神〕様のお告げが下され、試練開始直前まで時間が戻り試練は必要なくなったと告げられた。
「時間が戻った???」
そこからは伊丹駐屯地内を駆け回って確認しまくった。その結果上官から叱られてしまったが、時間が戻ったのは間違いないようだった。なぜなら、【ダンジョン】に引き込まれて死んだ筈の男性隊員四名が生存していたからだ。そしてその中に最愛の人が居た事が一番うれしかった。
戻れなかった人は【黒色表示】や【赤色表示】で〔神〕様に不必要と判断されたのかもしれないと思い込む事にした。
そして話を聞くとやっぱり【魔物】に【ダンジョン】内に引きずり込まれ死んだとは思うと言われた。だが死ぬ瞬間や恐怖は覚えていないと言ってたので、安心する。他の三名も同じような感じでPTSD(心的外傷後ストレス障害)の発症は免れたようだ。
私は嬉しくなり過ぎて彼に抱き着きうれしさを表現したけど、次第に顔が近付くにつれてキスをしようとした瞬間にお互いの体が磁石の同極どうしの様に弾かれる事になった。忘れていたけど異性に対して感情を持って触れ合えるのは強き善き魂を持った人物同士しか触れ合う事が出来なかったんだった。
私の【レベル】は150オーバーにはなったが【緑色表示】で、彼は【レベル】表示が無く【白色表示】なだけだ。彼の【レベル】上げも頑張らせないと触れ合う事も出来ない。
彼が殺された後に何があったかもザッと伝え、さらには自分も【ダンジョン】内に連れ込まれたが試練に選ばれてた成人男性に助けて貰えた事も伝えた。そして世界の概念が書き換えら建造物の何もかもが崩れ去った世界も語って聞かせたがピンと来て無い様子だった。
何はともあれ、最愛の人が無事戻ったのは嬉しいけど以前の様な純粋な気持ちが湧かないのはなぜだろうか?お互いに【レベル】を上げないと触れ合い愛し合う事も出来ない世界だ。相手が強き善き者にでもならないと好意は戻らないのだろうか?
とにかく最愛の人が戻ったのは純粋にうれしい。
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舟木涼香 視点 六か月が過ぎた頃
私は今、自転車で各地の自衛隊拠点を走り回らされている。なぜかと言うと〔神〕様のお告げの通り資源は回収され動物は微生物まで含めて全てが隔離された。今回は植物は残されたが植物からは何も得る事が出来ない。
そのうちまた建造物も消え去るのかと思うと不安しか無いがそこは〔神〕のみぞ知る事だろう。
なぜ自分と松本二等陸尉の二人が自転車で各地の自衛隊拠点を移動させられているかと言うと、まだ魔石を燃やしての火力発電所が稼働していないからだ。
電気自動車に期待されたが魔石を火魔法で燃やすと火力が高すぎて今ある火力発電所ではその火力を受け入れる事が出来ず壊れてしまうのだ。仕方なく私こと舟木三等陸尉と松本二等陸尉が〈アイテムボックス〉のスキル持ちなのを良い事に荷運びをさせられていた。
自衛隊内部も大幅に変わった。上層部には【赤色表示】や【黒色表示】者で逮捕者や懲戒解雇者が続出したのだ。そのせいか自分も昇格した。昇格したのに荷運び役・・・
これは、「阪本氏に愚痴でも言わないと気が済まないわね」つい自転車を走らせながら愚痴が口に出てしまう。それと言うのも、時間が戻る3日前に突然と集団を訪ねてきて、特定の人物だけを阪本氏の異空間に招き入れては【スキル】を渡して行ったからだ。その時私に〈アイテムボックス〉を覚えさせたのが阪本氏である。
沖縄や離島以外は自転車で走り周らされる予定だ。沖縄を始め離島からも住んでる所を離れて陸続きの場所へ移動する事を勧められたが一応は自己判断に任せる事となった。
そして資源が失われる前には道路上に車を置く行為は固く禁止された事から走り放題ではあるが、一般道では時たま自転車に乗った人とすれ違うし追い抜く。【レベル】が高いおかげで高速走行が可能で高速道路を走るのは気持ち良いが、やっぱり扱き使われてる感が否めない。
一般人が高速道路を自転車で走行すると【善悪値】が下がるそうだが、政府関係者の緊急走行とした場合は下がる事がなかった事から、自衛隊員でも【レベル】の高い者がリアカーを自転車に繋いで荷運びを担当している。
願わくば一刻も早く電気を運搬用電気自動車にも使えるようになって貰いたい。
阪本氏から託された【スキルブック】だけど、一部だけ上官に提供する旨を伝えた。〈鍛冶〉と〈鋳造〉と〈採掘〉をそれぞれ二冊ずつだけ覚えさせる人が決まったら知らせてくださいと上官に言うだけにし国に任せた。先に渡してしまうとどこで個人的に使われるか、横流しされるか不安だった為に直接渡す事を条件で伝えた。ま、そんな事をしても罪状で表示されて【灰色表示】以下になればスキルが使えなくなるだけだから、意味は無いけど【スキルブック】が無駄になる。
いつまでこんな事させられるんだろうか?【レベル】は上がらないが〈アイテムボックス〉のレベルは上がってるからまだ我慢は出来る。同パーティーだった佐々木達が羨ましい。
「やっぱり、阪本氏に思いっきり文句を言ってやるんだから!」
自転車で走りながら大声で愚痴ってしまった。それからは練馬駐屯地、市ヶ谷駐屯地、十条駐屯地、三宿駐屯地、用賀駐屯地、目黒駐屯地、富士駐屯地、滝ヶ原駐屯地、板妻駐屯地に物資を運び地元に戻ってくるのであった。自転車は不具合が出るので駐屯地毎に整備された物に乗り換えてる。これだけ周っても半月程で帰って来れる自分の身体能力にも驚く。
自転車でこれだけの駐屯地巡りってアホかって言ってやりたかったが、我慢した。阪本氏にすべてぶつける為に!
それから久しぶりに伊丹駐屯地に戻ってきて、佐々木等とパーティーを組んで芦屋の初級【ダンジョン】に食料集めに行く事になった。6人で自転車に乗って一列で進む姿はシュールではあるが道路交通法では並走は禁止行為なのでやってしまうと【善悪値】が下がる。
ま、車も動かなくなって電気も風力と水力発電だけだから電車や主要機関だけで各家庭にはまだ送られてない。現在は水道に圧を掛けて各地に送る施設や政府や自衛隊駐屯地や消防や救急に病院と言った施設を優先している。
電気自動車を使用出来てるのも自衛隊車両の一部と警察車両の一部に消防救急関係だけだろう。それとなぜか太陽光発電は利用不可能だった。星に張られた結界が原因か大気中に充満し始める【魔素】が原因かは分かっていない。
芦屋市立打出浜小学校の校庭にやってきた。校庭に建てられた簡易テント内に入り、【ダンジョン】に入り食料調達の任務に就く事を告げ、ついでに阪本氏は顔を出したかも尋ねるがあの日から一切見かけていないとの返答だった。
あの子供好きの阪本氏が六か月間一度も?考え事に耽りながらもテントを出るとそこには、水永優大率いる16人パーティーが今まさに簡易テントに入ろうとする所で顔合わせするのであった。
そして簡単な挨拶をして【ダンジョン】に入ろうと思ってたが、あの子達のパーティーに聞けば阪本氏の居場所が分かるかも知れないと、しばらく待つことにした。
5分程して少年少女のパーティーが外に出てきたのでは話しかけて、阪本氏を知らないか聞いてみたら、一人の少女が六か月間掛かって自分の中で何らかの決着を付け初めて話すと言い、泣き出しながら全てを語ってくれた。他のパーティーメンバー誰もが知らなかった様子で話しに聞き入り、真実が淡々と語られていく。試練中の【ダンジョン】脱出の所では皆が言葉を失っていた。
自分の知る阪本氏はどんな場所でも当然にように振舞ってた。それがボロボロになりながら歯を食いしばり弱音一つ吐かず脱出の事だけ考え、子供達には一切の心配を掛けずに成し遂げていた。しかも手足の切断だけでも数回あったそうだ。食い千切られた訳じゃないので引っ付けてポーションで治してたそうだが、自分は手足を折られただけでも心が折れてしまっていた事を考えれば凄い。
そして人類滅亡の危機にあった計画の方向修正に〔神〕様とやり取りし、自らの肉体と魂を捧げて世界の時間を試練開始前に戻した?理由が我が子の未来を守りたい為だけに?
結局最後の別れのつもりで【スキル】や【スキルブック】を託された訳か。自分は愚痴の一つでも聞かせてやりたいとの思いで、話を聞いた事を後悔した。真実は如何に残酷な事か。
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