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関係者のその後1

この後1時間毎に数話投稿して終了します。

 ◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇

 今井智樹 視点 時間が戻った直後


 時間が戻った瞬間に【ステータス】の【加護】の項目に[実父の思い]なんて物が追加されていた。その項目に触れた瞬間に【スキル】を持って来てくれたおじさんが実父だと理解させられた。そして訳の分からない涙が流れた。会見の日に見た態度の悪かった女性が実の母親だと言うのも今思い出せば記憶にある母親と重なるような気がする。自分を捨てたと聞かされ続けていた実父がこの世界の時間を戻す為に、その身と魂を捧げた。


 〔神〕様とのやり取りから実父の記憶まで全てが頭の中に飛び込んで来た時は混乱もした。捨てたと聞かされていた実父の記憶に一日たりとも俺と岬の事を思い出さない日が無かった。実父の記憶の中の俺と岬は幼児と赤子だった。養育費を稼ぎ出す為だけに公園や浜辺で寝泊まりした記憶や、安定して働けてた時期の充実してそうでそれでいてどこか悲しげな記憶も次々と頭に過る。


 離婚成立直後から本当に日本各地を傷心のまま放浪しその場その場で多くの人に助けられ癒されて来ていた。実父の記憶の中では、俺をボーリング場に毎日のように連れて行ってくれる、おばあちゃんの姿もはっきりと思い浮かんだ。この記憶を見て不意に三歳当時の記憶が蘇り、ボーリングの球を転がして喜ぶ自分と喜んでくれるばぁばが楽しかったんだと懐かしく思った。大きくなった自分を見せると喜んでくれるだろうか?探して会いに行こうと思う。


 実父が試練の挑戦者と選ばれた時も一緒に落下した子供達の事ばかり考え安全に地上に帰す事ばかり考えていた。実の娘と二か月も一緒だったのに、お互いに気付かないで必死に地上へ戻すと接する姿を見てまた泣けたし。試練の最高難易度【ダンジョン】での記憶が壮絶過ぎた。


 試練に選ばれた子供達は妹を含めて知らなかったようだが、何度も何度も大きな怪我をしていたのを見たのは絶句させられてしまった。手足が切断されるなど立つ事も出来ない位ボロボロになりながら子供達の居ない異空間へ入ってはポーションを掛けたり飲んだりして、地上を目指していた。自分ならこんな状況で頑張れるだろうか、心が折れる方が先だと思ってしまった。


 子供達を見る度に、俺や妹を重ねて見てるのを知り捨てられたとばかり思い込んでた自分を悔いた。


 いつの間にか泣いていた自分をパーティメンバーは大層心配してくれたが、説明が難しかった。なので【スキル】を持って来てくれたのが実の父親で、その実父が体と魂を捧げて〔神〕様が時間を戻してくれたと伝えるだけにした。


 ◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇

 今井智樹 視点 あれから3年


 時間が戻った日から3年の月日が経った。この3年間は激動と言っても良いほど何もかもが変わった。

 植物は伐採は出来るが星に吸収されるように白い光の粒子となって消えるか元に戻る、今までのように農業や林業などは不可能になった。もちろん、植物から食料を得る事も出来ない。


 電気は魔石を燃焼させての火力発電を、二年前に燃焼室を【ダンジョン】産素材で作り直す事によって賄えるようになったが、火力発電所と送電システムを【ダンジョン】産素材での作り変えが急がれている。


 魔石炎はクリーンで二酸化炭素は排出されてないと、結論を出すしかなかった。勇気ある人が人体実験よろしく燃え盛る魔石で一杯にした密閉空間に入って、どれだけ息が持つか試した結果、燃えるのに酸素が使われてる様子もなかった。真実は分からない。

 人体の検査にしてもエコーもレントゲンもMRIもすべて意味がない物となったので、新システムを考えているそうだが、自分には分からない。


 自動車も電気自動車が主流になったが、飛行機と船は使用不可能であった。と言うのも空と海には巨大生物の目撃情報が多く寄せられ、使用を禁止にした。が、元より燃料が無い。漁をするにしても、すでに動物は微生物も含めすべて隔離されている。


 実父がよく悲しんでいた様に、調味料・・・と騒ぐ人も増えた。他には、タバコ、酒、と呻いてる人も多く見かける。


 また国外の情報は一切入ってこない、国を分けられた結界はそのままに、上空にも地球儀の様な星の映像が映し出されている、人口が居なくなった国は赤く染まるのは時間が戻る前と同じだ。日本人の総人口も正確な数値じゃ無いが4千万と少ししか残って居なかったそうだ。


 一部地域だけで【レベル】150越えや100越えの地域があったが、強き善き者同士での結婚が推奨され子を産む事が求められてる。人口を増やさないと国としてキツイようだ。


 そして何と言っても、一番整備されたのが探検者組合。効率よく魔石と食料と資材を集めて各地へ分散させるためだ。食料に関しては腐る事が無いのが大きい。

 武器防具も【ダンジョン】産素材で簡素な物が作られるようにはなったが、実父が使ったり持ってたりする物と比べると陳腐な品でしかない。


 宇宙空間に打ち上げられてた衛星やデブリと言われる宇宙ゴミもすべて資源として星に戻された。その際ISS国際宇宙ステーションに滞在していた人はそれぞれ出身国に戻されてたそうだ。

 〔神〕様は地球から出る事を禁止するかのように地球の重力圏に結界を張って地球から宇宙空間に出れなくなった。


 次に注目するのはSNSだろう。日本国内だけの中継基地局を使いSNSが使えるようにはなった。もっぱら【ダンジョン】からのドロップ情報の拡散装置みたいなものだ、以前みたいに注目を集めたがる人は出て来ない。デマの情報もまったくなく、信用できる情報しかアップされなくなった。

 俺も時間が戻って少しした時に書き込んだが一部の人が悲劇に見舞われてしまいそれ以来書き込んでは居ない。


 だが、「()()()()の言う事は全面的に信じる」との書き込みだけが今もはっきり思い出せる。俺は男であるかも女であるかも書いてはいない、この一言を書ける可能性があるとしたら【加護】の[実父の思い]を得た妹だろうと。



 歌手やアイドルもテレビ番組から減った。と言うのも【スキル】で〈歌唱〉〈踊り〉〈演奏〉〈演技〉〈偽装〉〈変装〉〈話術〉等がある事が分かり。【スキル】を持たない者の歌声は酷く、ダンスも見てられない。ドラマも学芸会レベルにも満たない陳腐な物となった。それ以前にそういった職に付いてた人々も食う為に自ら【ダンジョン】へ行かないと生きていけない。

 俺も好きだったアイドルグループの歌が陳腐な物に聞こえ、グラビアアイドルの画像を見ても今までの様な魅力を一切感じなくなった。俺だけじゃなく日本国内全てでそんな感じだ。


 次いで犯罪も減ったと言うか、ほぼ無くなった。【善悪値】の数値が下がる事と頭上の罪状表示は、全ての人に恐れられた、謀る事も偽る事も出来ない。全ての真実が表示されてしまうのである。

 また通報しない人まで「匿った者」や「通報しない者」と出てしまうので、他者の目が気になり食料集め所じゃなくなり、家族といえ通報するケースが相次いだ。

 育児虐待や育児放棄も激減した、その事に関してだけはきっと実父は喜んでるはずだ。


 高校三年生の時にやっと情報とか仕組みが分かってきた【ダンジョン】に関する授業が追加された、なにも三年生だけの授業じゃなく、中学1年生から高校三年生までの必須授業となった。探検者組合への組合員になる方法とか【ダンジョン】内での基本行動などが含まれてる授業と教師は言ってたが、毎年教える事が増えたり減ったりする科目であろうとも言ってた。


 他にも細々と変わった所はあるが、パッと思いつく限り大きなものでこんなもんだろう。


 この春に成人式も無事に出来て、妹を探しに行く旅に出る事にしたのだ。高校時代からのパーティーメンバーに突然だがパーティーを抜ける事を告げると驚かれると共に理由を聞かれたので、[実父の思い]って【加護】の阪本仁の全てを仲間に言って聞かせた。それがいけなかった。仲間の両親や兄や姉に「阪本仁の誹謗中傷を拡散させた」や「阪本仁の母親を死に追いやった一人」と当時頭上に付いていたらしくで、一斉に謝られた。


 自分がなぜ今更謝るのか尋ねると【白色表示】や【黒色表示】にまで戻ったが実は【ステータス】内には未だにその言葉が目立つように表示されているらしいと家族から聞いていたそうだ。そういや、以前聞かれた時は【スキル】を持って来てくれたおじさんが実父だと告げただけだった。阪本仁の息子って初めて言ったかもしれない。言葉にしてみると恥ずかしいな。


 気にしてないと伝え、そう言う訳だから妹を探しに行ってくるわって言うと、皆して付き合うと言ってくるので家族の承諾を得れたらなと言い返すのでやっとだった。内心嬉しすぎて感激してた。


 それから二日後にパーティーメンバー揃って出発する事になった。高校時代無くなった修学旅行気分でちょっと楽しみだし、妹を探しで会うのも楽しみだ。


 小さい頃に別れ離れになった妹に拒絶されなければ良いが、楽しみ半分、不安半分の旅立ちであった。

お読みいただきありがとうございます。

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― 新着の感想 ―
[一言] 後日談ありがとうございます。 おじさんのおかげで少しはマシになった世界。 おじさんが生きて幸せになれなかったのは寂しいけど、遺志を子ども2人が知って前を向いて生きているのが何よりの救いなんだ…
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