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第八話 おじさん〔神〕と対話する②

誤字報告ありがとうございます。

 ◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇


『それでは、子供の居ない【赤色】【黒色】を駆除せよとのお告げの場合は?』

「同じですね、お断りします。自分個人の心の問題でもあるのですが、自分の中では殺人行為は最大の禁忌と位置付けされてますので」

 どのような条件を付けられても、殺人行為なんか人間として最低最悪の屑に落ちたくはない。そりゃさ自分も只の人だし、殺されそうになったとしたら、抵抗して相手を死なせてしまう事も無くはないだろう。でもそれとこれは違う。断じて違う。


『ではこのまま帰さないと条件を付けたら【赤色】【黒色】を駆除をしてもらえる?』

「しませんね。子供の無事も確認出来たようなものですし、心残りはそう多くはありません。そもそも質問自体がおかしくはありませんか?〔神〕様方なら私の手を汚させずに【赤色】【黒色】など、人知れず存在を消し去る事が可能ですよね。実際にやったと思うのですが、私は認識すら出来てませんので言い切る事は出来ませんが」

 ま、強き善き魂として呼ばれてる筈だし、断ったとしても何かのエネルギー元にされる程度だと思うんだよな、あの処理施設には送られないと思いたい。


『では、質問を変えよう。今の星の上はどう思う?』

「意味が分かりませんが、〔神〕様の思惑通り進んでるのではないですか?」

 どう思うも何も何を聞きたいのか理解出来ない、理解力不足で申し訳ないです。


『聞き方が悪かったね。そうだな先ほど言ってた生活が苦しいとは?」

「ああ、そう言う事ですか。そうですね、現代人は生活を快適に補える機器を作り出す事によって生活が成り立っていました。そこに突然すべての生活基盤というか生活補助的機器を失った結果、過去の生活に戻った?としか言えません。過去の生活ってのは地表を掘って出て来た痕跡から過去の生活スタイルを推測したり、残ってる文献などから過去当時の生活スタイルを想像予測した物ですので確実って訳では無いのですが、過去を見る事が可能なら見ていただければと思います」

 自分には文明の利器を失った結果を、見聞きした曖昧な事しか答える事が出来なかった。


『ふむ、確かに【ダンジョン】で全て賄えるとしてたが、動植物も隔離中となると厳しいか』

「そうですね、簡単に木材も手に入りませんし。仮に【ダンジョン】内で全てを賄えるとお考えなら無理があるとしかお答えできません。全ての人がアイテムボックス系のスキルを持っていれば少しは違ったかと思いますが、住居一つ作るだけでも現状では途方もない苦労が強いられてます」

 工具も無く木を切り倒すだけで石斧モドキでの倒木作業に、台車などなく人海戦術で木材を持ち上げて運ぶ、その際にも【魔物】への注意対応も必要となれば苦労しかない。


『そうなると、星に還した建造物を元に戻すと生活が楽になる?』

「なりませんね、それだけですと雨風が防げるだけです。食料を手に入れる為に【ダンジョン】に行かなければなりませんし【ダンジョン】からの距離に寄っては移動だけで苦労すると思います。トイレにしても現在は排泄物を【ダンジョン】内に捨ててますが、いくら体内微生物も【魔力】に置換されたとは言え、近所にまき散らすのも気持ちの良い物ではないです。地面を掘って埋めようにも掘る事が難しくなった現在じゃ不可能に近いですよね。やっぱり建造物を戻すのであれば、電気エネルギーを作りだせる仕組みも戻さないと生活は不自由します。水道一つ取っても途中で水圧を掛けて各家庭に水が送り出されてます。ただし【ダンジョン】で食料を得れるのは危険は伴いますが良い事だと思いますし、貧困も減ると思います」

 自分は何を言ってるんだ。もっと必要な事もありそうだが突然の質問じゃこれが精一杯か?


『そうなるとまた星を掘り資源を採取すると言う事かな?それだと確実に星は死ぬ』

「違います、〔神〕様方なら我々人類が必要としていたエネルギーに代わる何かを用意できるのでは無いかと発言しただけです。星が死ぬ事を望んでる人類は居ないとは思いますが、生活を快適にする過程で星を傷付けその命を脅かしたのも事実でしょう。人類が作り出した物によって認知しないうちに絶滅した種も数多くあるかと思いますが、私は知りません。〔神〕様方から言わせると、知りませんは無責任と取られるかも知れませんが、自分の命を繋ぎ我が子の為と養育費稼ぎをし、その場その場で決められた事を守り生きてきただけです。私個人がいくら決まり事を守り、リサイクルとして分別ごみの出し方を守ったとしても、その後に関わる国や自治体から請け負う企業が周りに一切気付かれずに不法投棄とかしいても知りようがないです」

 さらに自分は何を言ってるんだ、質問からかけ離れた返答をしてどうするよ。


『ふむ、魂が多すぎて生活が楽になるとそういったゴミが湧いてくるって事か?』

「そうですね、それは否定出来ません。なので〔神〕様が人類は不要と思えば消し去ればそれで終わる話だとは思いますし、人類には抵抗することすら出来ません」

 あっちゃー変な方向に話をやってしまった。人類滅亡したら自分のせいだ、すまぬ。


『ああ、そんな事はするつもりが最初からないので安心はしてほしい。それに既に多くのゴミは回収して処理場送りになってる。【白色】以上の魂はまだどう使うか悩んでる最中で保留にもしてある。輪廻に返ったのは優秀な極一部と産まれて来る筈だった魂と存在を消された魂の近くに居た幼子の魂だけだ』

「それを聞けて少しは安心しましたが、すでに多くの人命が回収されたとは、どれほどなのでしょうか?」

 いったい人類はどれ程の被害を出したのだろうか。


『ん?そこは教える必要も、知る必要も無いと思うが?どうして知りたがる?魂の流れはすでに決まっているからな、その流れを変えるのは簡単ではない』

「単なる好奇心からでしょうか?」

 たんなる興味から聞いてしまった。


『汝は面白いな、ここに呼んだ魂の中では一番話が聞ける。他の魂は【赤色】を排除する事に目的を置きすぎだったからね。中には魂が幼すぎて思考放棄し自己暗示で〔神〕の指令とし【赤色】を排除し続けた魂もあった。他には【白色】以上の魂を纏めて【黒色】【赤色】を徹底的に排除した魂もあった。その中でも汝の魂が住む国が一番【黒色】【赤色】のゴミが多く残ってる』

「それは自分には理由が分かりませんが、〔神〕様が[疫病神の視線][死神の視線]を付けなかった事が原因なのではないでしょうか?」

 ゴミが残ってると言われても、また排除指令の話に戻されるんだろうか?断り続けて無礼とか言って存在を消されるか有効利用される結果しか思い浮かばない。


『それも違うな、我々は一定の基準で[視線]を付与して行った。しかもその魂の過去未来をしっかり確認してな。罪を罪と認識しない魂や、罪を認識して同じ罪を繰り返す魂に[視線]を付与して存在から消去した。付与されなかった魂は異例だが、そこが今回汝の魂を呼び出してでも聞きたかった事の一つだ』

「呼び出した一つと言われましてもその話の中で理解出来たのが、なぜ[視線]が付与されなかった魂があったのかって事でしょうが、分かりませんとしか答えようがありません」

 やぱり存在消去は実行されていたのか、それにしても呼び出された理由が曖昧過ぎて理解出来ない、自分の知識量じゃ無理ー。


『ふむ、聞き方が悪かったかな。ではなぜ【善悪値】が改善する魂が多く存在する?[視線]を付与された魂も未だに存在している。どうしてだ?』

「?【善悪値】はそもそも上下動するものではないのですか?」

 自分の【ステータス】を見てた時も【善悪値】は小幅ではあるが上下動を繰り返していた。


『違うな、【灰色】以上の魂にのみ上下動するようになってたはずなのだ。他の星でもそうなっている。でもこの星の上の魂は【黒色】【赤色】に穢れ悪しき魂になった魂も改善傾向が見て取れた、なぜだ?』

「なぜだ?と申されましても。悪い事をしたと知ったら反省し償いを考えたりするからとしか?なかには許される事を大前提にして考える人も居ますし、酷い者になると自分は許されるべきだろうと考える者も居ますね」


『本来ならば【善悪値】がマイナスにまで下がって【黒色】や【赤色】になると肉体が【魔物】へと変貌する。他の星ではそうなってる。自浄効果とでも言おうか』

「なぜ他の星では、反省や償いが認められてないのでしょうか?」

 いきなり【魔物】化ってやりすぎな気もする


『そうなってるとしか言えないが、管理しやすかったとも言える。我々の柱が【善悪値】の下がった魂を監視し続ける事は不可能だ。それぞれの星で処理して貰うのが最適だ。そうやって処理された魂は勝手に処理場に送られる』

「管理者側のシステムって事なのですね。星々に住む生命では抗う事もシステムを変える事も出来ないですし、効率的なのは分かりましたが、勿体ないですね」


『勿体ない?何がだ?』

「いえ【黒色】や【赤色】まで下がって【魔物】化するのは分かりましたが、その【魔物】を倒すのに【白色】以上が負傷や最悪命を落とすとか起こりえませんか?それなら【黒色】や【赤色】になったとしても反省や償いの時間を与えれば・・・あ、そもそもが違うんですね、申し訳ありません自分の価値観で答えてしまったので、他の星のシステムにまで感想を述べるべきではありませんでした。マイナスまで下がった【善悪値】が上がる事が無いシステムではどうする事も出来ませんでしたね」

 そもそも大前提を思い違いしてた、地球と他の星では違いがあるって話だったもんな。


『ふむ、それではこの星の魂は肉体が変貌せずに反省や償いをする魂は改善する見込みがあると?』

「そうなりますかね、他の星みたいに【魔物】化しないならば。不確かですけど【ステータス】の表示と頭上に出る表示で罪を真摯に受け止めたならばですが。ただし罪を理解した魂でも身勝手な者はすでに存在を消された魂みたいに望みは無かったかと思います」

 さっきから難しい質問ばっかりでわからん。


『ほぅ、他の星の魂とは作りが違うのか興味深い現象ではあるな。魂の事はこれから見極めるとし。汝はこの後の星の上はどうなると推測する?』

「自分にお聞きにならなくても、もうご存じなのではないでしょうか、さっきも[視線]の話の時に話題に出てましたが、過去も未来も見る事が可能なのですよね?私の推測にはなんら確実性はないのでは?」

 過去未来を見る力のある存在に未来を推測した所で意味などないだろう。


『汝は聡いな、結果はすでに知っている。結果を変える案でも出ないかと聞きたかっただけだ』

「そう言う事なら、まず回復魔法のスキルを手に入れてない地域では全滅までは時間の問題でしょう。負傷者が増大して餓死者で溢れかえると思います。ただし自分みたいに【加護】を与えられた存在が居る地域は持ちこたえるかも知れませんが数は減ると思います。そして【レベル】を上げない事には子作りも出来ませんので、やっぱり全滅します。」

 子が生まれないんじゃ先はないよね、強き善き者だけを集めたかったようだけどさ


『やはりそう推測するか。結果でも汝と汝に近しい集団だけが数を減らしながら最後まで残った』

「それは何となく理解できます、最後は寿命でしょうね」

 自分にもう子供を授かる資格が無いと思ってるので、子孫を新たに増やす事はない。


『そうだな、汝も頑固であった』

「そう仰るって事は、自分の知らない未来では子を残せとお告げでもされたのかも知れないですね」

 知らんけどね。


『で、現地の魂の事、生活の事を我々より知るであろう汝なら、どの地点を選ぶ?』

「理解しかねますが?」

 多分過去のどこかの地点からやり直す方法でも聞いているのだろうが、自分にそんな力も権限もない。


『いや、理解しているだろう?今の星の上が想像以上に酷いことになってるなら考えた事があるはずだ』

「そうですね、考えた事はあります。この際実行出来るかどうか等は置いといて、お答えしますね」


『良いね、考えを教えてよ』

「では、私が選ぶ地点は試練開始前です」


『理由を聞いても?』

「はい、まず今生き残っている人類と、処理場にも輪廻にも送られていない魂があるなら、時間を戻せば肉体に魂が帰る事も可能かと推測した上での話になります。処理場送りになった魂は〔神〕様方から見たら不必要な物として考えれば、大層な数が処理場送りになったものと推理します」


『そうだね、ゴミは処理場送りに出来たがまだ残ってる』

 そのようですね。でもそれは〔神〕様方がお告げになったルールに則って存在してる者ですよね。

その人に問題はないはずです。それに時を戻せば実は【白色】だった可能性の人も多いはずだと思います。


『ふむ、そう思う理由は』

「簡単ですよ、自分が試練に落とされた事から地上では憶測や捏造記事等で騒ぎ立てられ、それに同調してしまった人が【善悪値】を落とした可能性が大きいと思うからです」

 試練さえ無ければ存在を消されなかった人も居ると思えば可哀想ではあるが、元から反省も償いもする気がなかった者と思えば気も軽くなるか。


『それだと、汝の子供が奪われる前に戻る事も可能だぞ?』

「今の記憶を持ってそこまでの時間を戻るのはキツイですね、記憶を当時の状態に戻さない限り親子共々不幸になる未来しか見えません。それに今は例え話であって今の記憶を持っての過去戻りの話をしてますが、最初に魂の流れはすでに決まっているんですよね?なら子供と引き離される思いを2度もする事にはなりたくないですね」

 あんな思いを2度もしたくない。心が癒えるまで十数年いや今もってまだ癒され切ってはいない。


『それじゃあ話を戻すけど、試練開始前に時間を戻しても結果は同じにならない?』

「ですね、これは記憶を持たない状態で時間が戻った場合ですが、試練開始日に【ステータス】を全人類に導入して、【善悪値】の説明と【黒色】以下で死んだ場合に送られる処理場の映像を見せれば、未来も変わって来ると思います。記憶を持ったまま時間だけ戻すのであれば今更な説明ですので必要ないですけど。今の時点で言うと既にこの星の人類の肉体の強さを存分にご理解頂けたと思いますので、試練自体に意味が無いとも思いますし。初日に2700人程の死者を出したそうじゃないですか。最後に概念の書き換え導入も6番7番の概念のみを試練開始前の時点で導入し様子見が良いと思います」

 またあの苦労をするのはご勘弁願いたい。


『試練をしないのであれば、汝に与えられた【加護】も【スキル】も手に入らないが?』

「構いませんよ」

 子供達との二か月は心地よかった半面、癒されると同時に心も抉られてたのも事実だ。


『即答とはね、同じ流れを辿らないならの話としては面白かった』

「そうでしょうか?今自分が申し上げた事をシミュレーションした結果もそう悪い物になるとは思いませんが。それに【ダンジョン】で【ドロップ】する魔石ですが、高火力で燃えるようにでも設定すれば電気を作り出す事も可能ですし生活を維持しつつ魂の減少速度も維持でき数の管理もしやすいのでは無いでしょうか?」


『そうだね、それが実現すればね』

「不可能でしょうか?あれだけの事を出来る存在が不可能とは思えませんが?」

 存在を消したりと過去や未来を確認したり出来る存在が無理だとは思えないが?


『出来ないとは言わないよ、出来るとも言えないけどね』

「意味が分かりませんが?」

 本当に意味が分からない。


『簡単だよ、純粋にリソースが足りない。まず時間を戻し建造物がある状態に戻すのはリソース的にも可能だよ。今現在星の上にある魂を肉体毎、戻した時間へ移す事もリソースは足りるから出来る。問題は今現在魂だけの存在となって利用方法を模索する為に保管してある魂を肉体に戻すためのリソースが足りない。生き返らせるのとは違うから使うリソースが少なくて済むのは助かるが、戻した時間に存在する肉体への魂の定着に使うリソースが不足してる。なので出来るとも言えないって訳』

「どれほど足りてないのでしょうか?」

 また興味本位で聞いてみたが


『それは言えないし、知る必要はない』

「槍をリソースに戻してもって事ですよね?」


『当然だね、その槍の膨大なリソースを使っても足りないのは事実』

「槍以外でリソースとして使えるものは何かありますか?」


『それも言えないし、知る必要はない』

「そうですか」

お読みいただきありがとうございます。

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― 新着の感想 ―
[良い点] 山場がいっぱいで目が離せません。 [一言] 一気に追いつきました。 睡眠時間がやばい。
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