第四話 おじさん訓練に付き合う
誤字報告ありがとうございます。
感想も読ませて頂いてます。暖かい言葉ありがとうございます。
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〔神〕と呼称する存在
『長いね?』
第一段が終わらない。
『あのルールは失敗だったのでは?
一瞬で98%だから現地時間で2日ぐらいで終わるかと思ったらもう3か月経つぞ。結果98.94%で止まったままだ』
疫病神と死神担当のリーダーが問うてくる。
『凄いよね、あの6つの感情を真摯に理解して魂に刻み込み続けるなんて。
この星の人種には時に驚かされてばかりだよ、あの魂もそうだし。
いっその事「視線」外しちゃって次に移行するかい?』
『それは辞めといた方が良いだろう、ルールの途中変更は我々のすべき事ではない』
疫病神と死神担当のリーダーが断言してきた。
『まぁリソースが増えてるから良いけどね』
【白色】が【ダンジョン】で死んで輪廻に返す程じゃないのはリソースとして確保してある。
すべてを輪廻に返すと一気に10億とかまで増え過ぎるからな。強き善き魂でもない限りは輪廻に返す事はない。
『この星の魂を見てて思ったのだが、真摯に反省し改善する魂が極稀に出現してるのはどうしてだ?本来なら汚れた魂は戻る事が無いのが実情だ』
疫病神と死神担当のリーダーが至極難しい事を聞いて来たが答えはない。
『憶測の域を出ないが、我々が作って管理した魂じゃないから、希少種なのかも知れないね』
『それにしては魂の構造は我々が管理してる星の物と大差がないぞ?』
両手を大きく広げて違いはそんなに無いと主張してきた。
『とりあえず、まだ第一段が終わらない事を告げて来たら?」
審判と裁きの女神が提案してくる。
『そうするか?また上空にでも表示する方が良い?』
前回の回収率みたいな感じで。
『要らないでしょ』
『そう、それじゃ告げるだけで済ますよ』
それにしても、この星の人種の魂は興味深い。なぜ善悪値が改善するんだ?他の星では穢れた魂は厄介な存在に変貌し、他の魂へと攻撃性を増す事になるのに。
この星の人種は姿形が変わる事無く存在し続けている。そもそもが善悪の概念がないのか?法なんて物を振りかざすぐらいなのだ、善悪の概念がない筈がない。
いや、そもそもが単一種なのか?この星の人種はもしかしたら、姿形が似通った別の種の集まりの可能性があるのか?
でも、肉体の構造調査の際には大差はなかった。あるとしたら体内に共生していた膨大な数の微生物の差と質ぐらいだった。
それもすでに【魔力】に置き換えられ、体内からは微生物は隔離したので差はなくなった筈だ。それでもなぜ?国毎にこうも行動が変わる?
ある国では、我々は神ではないと宣言し。またある国では圧政に苦しんだ魂が反旗を翻し国を崩壊させた。【ステータス】が導入された瞬間から、現代兵器が効かない体になった事で善なる魂が穢れた魂を駆逐する国もあった。
国で纏まりだ!、民族一致団結だ!、そう言う魂ほど真っ先に穢れた魂を見放した。逆に普段は他の魂に関心が無い大国ほど穢れた魂を救うのに手を差し伸べてた。
ん?【魔力】が無かったから?それも違うな。ここまで繁殖……いや繁栄か。
なるほど、精神の成熟度が我らが管理する星々の魂より、数段階も上にあるのか。そうなると希少種ってのも考えられる。
どうすれば上手くいく?我はこの星の魂が分からなくなりつつある。
最初の解析検証で理解したつもりだっただけかも知れない。
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おじさんを始め集団の人々も混乱していた。第三幕の第一段の終了と、第二段の開始が告げられないからだ。
ずっと身構える心構えで三か月過ぎた。何か〔神〕様側の思惑があるのかと不安になる。
それでも、一か月間はいつ何が起こっても動けるだけの用心はした。二か月目に突入するとドラゴンさんに会いに行き、なぜ第三幕の第一段が終わらないのか聞いたけど「答える事は出来ない」それだけだった。
何か出来る事はあるかと聞くと「【レベル】を上げ、【スキル】を育てろ」それしか言わない。雑談や食事の時は饒舌になるのに、〔神〕様の関係する事になると途端に、沈黙か許可されてないだそうだ。
集団の皆が平均して【レベル】50に達して【ステータス】の比較をしたそうだ。そこから判明した事実は、【灰色表示】者は三割ダウン、【黒色表示】者は5割ダウン、【赤色表示】者は7割ダウンが判明した。
次に分かったのは、【緑色表示】者が一割増し、【青色表示】者が2割増し、も判明した。
ただ、舟木さんに言われた事は、【白色表示】者との比較なのでと言われた。
それから、優大君パーティー。【レベル】50オーバーになって居て、最高難易度【ダンジョン】で鍛えて欲しいと言って来た。どうしたものか。
行けて10階層位だよと言うと、それでもと言うので承諾したら、なぜか舟木さんパーティーも参加する事になった。なぜ?
自分が走り回って移動してるせいか、初級【ダンジョン】と、中難易度【ダンジョン】と、最高難度【ダンジョン】で獣道っぽく足跡が出来上がってた。
余談だが、マイちゃんも行くと駄々をこねたが、さすがにね(汗
優大君パーティーだが、よくよく思い出すと【スキルブック】をあげてないじゃん。そう言う事で聞き取り調査と今更ながら名前も聞く。
水永 優大、パーティーリーダーで、アタッカー担当。
福田 柚奈、副リーダーで参謀で、戦闘中の警戒と指示。
山田 務、斥候兼アタッカー。
小林 詩、戦闘で負傷した人を後ろに下げて手当担当。
井上 陸、タンカー志望だが、アタッカーやってるそうだ。
中村 岳、アタッカー、弓が使いたいらしいけど無い。
それなりに考えては居てる構成だ。
ついでに、島田優斗君。将大君パーティなのに忘れてたよ、ごめんね。聞けば木刀を使ってるそうだ。
それぞれに【スキルブック】を渡した。
水永 優大君、剣術Lv1と双剣術Lv1
福田 柚奈さん、統率Lv1と水魔法Lv1
山田 務君、 探知Lv1と短剣術Lv1
小林 詩さん 回復魔法Lv1と生活魔法Lv1
井上 陸君 盾術Lv1と身体強化Lv1
中村 岳君 弓術Lv1と投擲Lv1
島田優斗君 剣術Lv1、お友達も1個しか与えてないし、当時は攻撃性の高いスキルを与えるのは避けたんだよね。
とりあえず、これだけ覚えれば少しは何とかなるかな。
「それじゃあ、最高難易度【ダンジョン】に入る訳だけど、覚悟は良い?」
「はい」
「はい」
二つのパーティリーダーが返事して入る事になった。
「1階層は【キラーニードルラビット Lv5】だったかな?。頭の針は鋭いと思うし、動きも早いんだと思う」
「いや、思うっておっさんそれ何の情報にもなってねぇーじゃんかよ」
左手の甲で将大君がツッコミを入れてくる。
「ごめんね、1階層に来た時には既に戦うほどの【魔物】じゃ無くなってて」
そう言いあってる間に〈探知〉にはそこそこ反応がある。
「気付いてるかい?」
「「「はい」」」
ここに居てる探知持ち3人が返事を返してきた。因みにサクラちゃん、ミサキちゃん、ナツちゃん、ハルちゃんは、連れてきていない。
第三幕の第一段が終了されて、第二段が開始された時に、両親を見ときなさいと置いてきた。
「なら、やってみ」
そう言って【魔物】から離れるように動く。
将大君と横田君の二人で2匹の【キラーニードルラビット Lv5】を連れてきた。嘗めすぎじゃないかな?
長尾君と佐々木さんが躍り出て盾役を受け持つが、動きについて行くので精一杯の様子だ。その時【魔物】の一匹が佐々木さん目掛けて突進を仕掛けたのを、木製の盾で受け止めようとしたのだが、それは悪手だ。
木製の盾を簡単に割られ、頭のニードルが腕に突き刺さってしまった。
初級【ダンジョン】の2階層ごときの木材で受け止めれる訳もない。因みに自分は懐かしの鎧姿だ。
最初だけ判断を間違ったがアタッカー連中と連携してなんとか二匹の【キラーニードルラビット Lv5】を倒すのに成功してた。
「手大丈夫?」
回復魔法を受けては居たが心配はしておく。
「回復魔法で怪我は癒して貰ったが、盾が役に立たなかった」
割れた盾を見ながらそう返答してきた。
「だろうね、初級【ダンジョン】の2階層の木材で作った盾じゃね。予備はあるの?」
「ああ、予備は1個あるが受け止めには使えないな」
一人で納得してるし良いか。
「パリィを鍛えると思ってガンバ」
適当に応援しとく。
それからは、一匹ずつ誘い出しては倒して【レベル】アップしてた。1階層の魔方陣にも案内して起動させて順番に登録させてった。
「ほな、次は2階層行ってみよか!」
「は、はぃ」
「はいっ」
なんだが元気が無い様な気がするけど、気のせいだよね?
「2階層の【魔物】は早く無いから戦いやすいと思うよ、動きも単純だったし。【キラーバイソン Lv10】って牛だったと思う。動きもとろくて突っ込んでくるだけの魔物でさ、牛乳を期待するやん?ドロップは肉だけなんだぜ」
それじゃあ行ってみようと先導するも、元気が無いので聞いてみたら、休憩をしたいとの事なので異空間に入って貰い休憩してもらった。その間に2階層に移動してるなど思いもよらないよねー。
「おっさんはさ、いったい・・・・・・ダメだ聞きたい事が口に出せない」
将大君が多分【ダンジョン】の事を聞きたかったのだろうが、女神様の贖罪が終わるまでって条件が生きてるようだな。仕方ないか。
「まぁ聞きたい事は大体わかるよ。おじさんは137階層から上がってきた。会見の日にも〔神〕様が言った通りね」
その瞬間、全員が驚きを表していたが、こっちが話せてもあっちは聞くに聞けないようだ。
「最初の空間は外部から敵が来る事が無いと〔神〕様から告げられてたんだけど、中央に山積みになった地上の瓦礫の中に、【魔物】が一匹だけ閉じ込められてて、3時間後に瓦礫が消えると襲われるって仕組みだった」
「うへぇー極悪」
横田君が苦い物でも口にした様に言葉を吐き出した。
「多分、あれで全滅した人達も大勢居たんじゃないかな?知らんけど」
「そうですね、初日で2700人程がお亡くなりになったのが次の日に確認されましたよ」
舟木さんが当時の事を教えてくれる。
「どうやってそんなに詳しい数字が分かったの?」
不思議だなぜ分かった?
「それはですね【ダンジョン】発生翌日に、入口の結界に【ダンジョン】内部の生存者数が表示されるように〔神〕様がしたんです。それで、ここの【ダンジョン】だけが1と0を表示するもんだから、地上では大混乱でしたよ」
舟木さんマジ便利。
「そうそう、それでおっさんが子供を見捨てたって広まって大炎上しまくりやったで」
将大君がそう言った瞬間に周りの子供が口を封じるように手で口を抑えにかかった。
「こら、その話はおじさんには辛い思い出になるから言わないの!」
佐藤さんが将大君を叱ってる。
「ああ、そう言った事があっての事だったのね。なんで子供を見捨てたってなってるのか不思議で仕方なかったんよねぇー」
「私も【ダンジョン】の中で助けて貰った時に、子供を見てなかったから不安ではあったんですよ?」
舟木さんも不安だったらしい。
「〔神〕様も酷な事をしはる。なんでそうなったん?」
「なんでも【ダンジョン】に落ちた人が無事なのか知りたいって祈りが多く届いた結果、生存数だけ表示するって告げられたんです」
佐々木さんが詳しく教えてくれた。
「へぇー、それでこの異空間に入ると【ダンジョン】内には居ないから、数字が減って1と0の表示だけだったのね?」
なるほどねー。
「そうです。それで1が表示されてる時にあの時助けた【赤色表示】されてた女性がいたでしょ?あの人が最初にニュース内で成人男性が子供を見捨てたって口走っちゃって、あの騒動に」
舟木さんもほんと詳しいねぇー。
「ねぇ、なんであの時の【赤色表示】の女性の事覚えてるん?そんな騒動起こしたなら「疫病神の視線」か「死神の視線」付いててもおかしくない?覚えてるって事は存在が消えてないって事でしょ?」
それとも「視線」が付いてなかったのかな?
「そうですね、不思議ですね」
舟木さんが同意する。
「ま、いいか、休憩終わり!さぁ頑張ろう!」
有無も言わせず異空間から出す。
「あれ?さっきの場所じゃない?」「休憩してる間に2階層に移動しときましたよ、時間もったいないし」
「うへっ」
「やっぱ鬼教官だ」
「鬼や」
「厳しいよな」
皆して言いたい放題・・・・
「移動しなくてすぐ戦えるんですから、喜んでくれても良いんですよ?」
「「「「・・・・・・・・・」」」」
皆で黙るなよ。。。泣くぞ。。。
「まぁいいや、ほらほら探知にちらほら反応あるしGO-」
「あーい」
「はい」
将大君さ、気を抜いてるとビビッて漏らすぞ。【キラーバイソン Lv10】は4m程の体格だ。1階層のウサギほど機敏じゃないが、迫力は大違いだからね。
そう思案してたら悲鳴が聞こえてきた。
「ぎゃあああああ、むりむりむりむりむり」
あらら、追いかけられてーら。
「阪本さん、大きさは言わなかったですよね?」「そうでしたっけ?」
舟木さんが疑うが、とぼけといた。
「でも突撃してくるって言いましたし、牛とも言いましたよ?」
うん、確かに言った!
「でも、あそこまで大きいのは予想外ですよ!」
舟木さんがキレ気味に物申す。
「そう言っても、戦闘始まってますよ?」
がんばってねーって手を振っておいた。
おーおー、まるで鬼ごっこだ!マイちゃんとチーちゃんと遊んだなぁー(遠い目
あ、二人ほど跳ね飛ばされた。うん、生きてるね大丈夫だ。
「まだ無理そうだね。とりあえず倒すよ?」
「はぃぃぃい」
死神の鎌で一閃して首を切り落とし青黒い粒子になる。
「おつかれさま、とりあえず異空間出すから入ってね」
そう言ってゲートを開き皆を迎え入れたら出口へ向かう、まだここは早そうだ。
異空間に入り様子を見ると、回復魔法を掛けて貰って休んでるようだ。
「大丈夫でした?」
「いや、踏まれたり蹴られたりしなかっただけ助かりました」
佐々木さんが感想を述べるがきつそうだ。
「とりあえず、今回はここまでで初級【ダンジョン】前に移動しますね。また付き合いますよ」
「「「お願いします」」」
それじゃさっそく戻りますか
「着いたら声掛けるから、そのまま休憩してて」
「はーい」
将大君が返事を返したので早速移動してしまう。
走りなれた道を爆走しながら芦屋についた。
「ついたよ、帰ってやすみな」
そう言って異空間から全員出て貰った瞬間に時が止まる。
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『地球と呼びし星に住みし人種よ、第三幕の第一段はまだ終わらぬ』
『このまま魂の数が減るようならば、第二段と第三段が同時で開始するかも知れない事を告げておく』
今回はそれだけ告げると時が動き出して重圧も消える。
お読みいただきありがとうございます。