第一話 プロローグ
誤字報告本当に助かります。ありがとうございます。
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おじさんは500階層から慎重に進みだした。・・・いや停滞したとも言う。
それと言うのも、防具も武具も【魔物】に対して貧弱になり始めてしまったからだ。
動きこそついて行けるが強度も硬度もすべてが499階層以下と比べる事すら出来ない程桁が違う。
例えば、いま苦戦真っ最中の【魔物】が厄介だ。
【デビルライノス Lv2500】かれこれ2日は飲まず食わずで戦ってる。あ、ポーションは飲んでたわ。
なにせ巨体でもあるんだが、【デスゲーターキング】ほどは大きくないのに、硬い、タフ、強い、その分ガンガンと戦闘に使ってるスキルは伸びるがキツイ。
まず、突進攻撃を回避し損ねると鎧が砕ける。また回避出来ても掠っただけで、おろし金で大根をすりおろすみたいに簡単に削られる。
斧でザクザクしたろと思ってたが、斧がボロボロに砕けた。今は死神の鎌を使ってデビルライノスの背中に飛び乗って鎌で攻撃をしているがこれが壊れるのも時間の問題だろう。在庫があるからと使い潰すのは惜しい。
これは、ゆくゆくはパーティ単位で倒すことになる【魔物】なんじゃないか?
ここは一旦撤退して自宅ゲートに入り込み逃げる。ほんとに異空間作成スキル優秀!
そして食事をとり、風呂に入ってサッパリした。
俺は今一本の小瓶を弄びながらどうするか悩んでいた。我が子ではないがサクラちゃんが両足を切断した時の事を思い出すと使うべきか温存すべきかずっと悩んでる。
この小瓶【エリクサー】と言うんだが欠損した四肢も治してしまうのを目にしてしまった為に一カ月前から異空間に入る度に、悩みの種になっていた。
左手を治すべきか?もしくは、またあのような場面に直面した時の為に温存か。我が子が同じ目にあってしまった時に、これが有るのと無いのとでは大違いだ。
正直、今のところは戦闘になっても、確実に逃げ込める安全な場所があるのは、他の人と比べたら恩恵がでかすぎる。
ある程度の命の保証は出来てると言っても過言じゃ無いから、使わなくても何とかなりそう。
毎回そんな事を考えながら小瓶を弄んでしまう。子供達がこの異空間に居た時は賑やかだったのにな。空間が広すぎるのか、割と寂しい。
結局使う決心がつかずに今日も温存される小瓶であった。
そして過去には造形術を筆頭に製造系スキルで義手みたいな物でも作れないかチャレンジしてみたが、そんな知識が無いのに出来る訳がない。でも軍手は出来た。
医学書とかを見たら載ってるのかも知れないが、預かり品を勝手に見る訳には行かない。相手も信用して預けてる事だしな。
ラノベとかで土魔法とか錬金術とか錬成術とかで簡単に何でも作り出してしまう主人公が羨ましい。
英雄志向だった将大君があこがれるのも分らんでもないな。
それはさておき、問題はデビルライノスをどうするかだ。肉体性能が劣ってる訳じゃない。たぶん。
問題は武具なんだけど、400階層で手に入れた武器が最高性能だったがそれも既にボッロボロである。
倒せないのは時間の無駄だし、499階層を探索するべきだろうか。
翌朝、軽く朝食を済ませたが、目玉焼きを作ったのに塩も醤油もないんだぜ?俺の調味料どこ?(涙
さて、気持ちを切り替えて、ゲートから顔だけ出して〈探知〉スキルで確認してみるも反応は無いので今の内に階段まで引き返す。
499階層を探索した結果、レベルはそこそこ上がったが、特に解決法には至らなかったので498階層に上がって探索する。
第三幕まで残り2か月と2週間程なのだが、この際、赤ちゃん成分を補充しに戻るのもありかなと思い、探索しながら490階層まで上がって様子を見る事にした。
498階層でそんな事を考えながら移動はしていたが決して油断はしていなかった。なのに突然の出来事だった。壁から突然飛び出してきた槍に脇腹を貫かれたのだ。
鎧はなんの抵抗も出来ず貫かれ、自身の肉体の防御力を貫いてきて確実に内臓まで達してる。
焼ける様な痛みが走り全身に痺れも感じたので、槍を抜く前にゲートに飛び込み槍を抜き去って即座に上級ポーションを飲み干し、傷口にももう一本振りかけた。
レベルが上がってから肉体が傷付いたのは左手を食い千切られて以来だ。しかもまだ全身に痺れが残る。
解毒魔法をなんとか使うもレベルの低い解毒魔法じゃ大した効果は発揮しなかった。
「絶対に我が子を見つけるまでは死ねない!気を強く持て俺!」
それでも何度か解毒魔法を使い続けたが、ブラックアウトするように意識を失うのであった。
・・・・・・・
どれだけ意識を失ってたのか分からない。腹はかなり減ってるから相当の時間気を失ってたと思う。
起き上がって傷口を確認すると、傷は塞がってるようだ。痛みも残ってない。
何だったのかと辺りを確認すると、自分を貫いた三又の槍が異空間内に転がっていた。
手に取って見ると名が表示されたが凄まじい力強さを感じた。「トリシューラ」・・・・は?インド神話のシヴァ神の持つあれ?
真横から貫かれたから中央の槍が刺さっただけで済んだのか?向きが90度変わってたら命が無かったかも?
・・・・・・・
それにしても【ダンジョン】にしろ、ポーションやスキル名など、ゲームみたいなものが多く有って、〔神〕様がこの星を詳しく解析してこれからの管理の為に落とし込んでるのは何となくだが感じてた。
もしかしたら【魔素】【魔力】で管理されてる他の星と同じようにされてるだけとも思ったが、この星の空想の神話まで出てくると話が違ってくる。
確実に星の歴史から空想までも網羅されてるのだろう。
まさか神話とかも落とし込まれてる可能性がある?それとも空想の武具だけ?
それにしても何で貫かれた?罠には注意してたし〈探知〉は切ってない。
あの三又の槍もそうだ。持った感じでは力強く反応を示したのに、ただそこに置いてあって目に見えてるのに〈探知〉には何も反応を示さない。
この先こんな無反応の罠があるのかと思うとゾッとする。
また悩み事が増えた。空想の神話だろうと神の武器を持つ事がどういう事か。
とりあえずどれだけ意識を失っていたのか確認するために外に出てみるしかない。でも、腹も異常に減ってるからまずは腹ごしらえしてからにしよう。
[ステータス]
【名前】:阪本 仁
【年齢】:45
【性別】:男性
【レベル】:2379
【状態】:バツ1
【善悪値】:89
【性格】:おだやか
【結婚可能人数】:5人まで
【生命値】:526354
【魔力値】:517433
【筋力値】:205246
【体力値】:169551
【器用度】:196323
【敏捷度】:124933
【知力値】:142780
【精神力】:178475
【 運 】:67
《スキル》:造形術Lv94、頑健Lv99、怪力Lv99、機織Lv24、裁縫Lv36、糸紬Lv52、鋳造Lv31、鍛冶Lv76、採掘Lv82、陶芸Lv30、調合Lv49、料理Lv72、手芸Lv52、錬成Lv31、錬金術Lv43、火魔法Lv93、土魔法Lv87、風魔法Lv82、水魔法Lv95、回復魔法Lv82、解毒魔法Lv24、解呪Lv1、威圧Lv99、探知Lv99、槍術Lv7、棒術Lv5、体術Lv79、剣術Lv47
《固有スキル》:[異空間創造作製Lv9]
《加護》:[女神様方の寵愛]
[簡易表示]
【善悪値】の数値により、簡易表示は【銀色文字】で表示されます。
【名前】:おじさん
【レベル】:2379
【状態】:不安
〔環境設定〕のパネルには、《時間軸同調》《温度設定》《風景設定》《水源》《小川作り》《床面の硬度調整》《床面の起伏調整》《竈作成》《第2の金色ゲート》《第1の銀色ゲート》《第3の金色ゲート》《第2の銀色ゲート》《第3の銀色ゲート》《囲い壁作成》《風呂場作成》《トイレ作成》《空間拡大量3倍》《?????》だった。レベルを1つ上げても拡大量が増えただけだった。
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芦屋市立打出浜小学校
ニカ月半ほど前に訪れてくれた阪本氏によって、2階層の木材を大量に提供して貰えた。
今では〈大工〉スキルを持つ者は四名にまで増えてそれぞれがレベルにあった加工をしてスキルレベルを上げている。
今では不格好な木材テントは数を減らし小屋と言っていい程の建物が増えた。
既に過去存在した全ての建造物は跡形もなく星に戻された。地面は土がむき出しだが、掘る事もできない。僅かに掘れれば良い方だ。
それから、ここの集団は全体的に【レベル】が上がっている。阪本氏の食糧の恩恵は大きいだろう。
だが、最近は問題も起こりつつある。それは【黒色表示】者の中で「疫病神の視線」が付いた者と【赤色表示】者の中の「死神の視線」が付いた者が暴言を吐きまくってる。
暴れた所で制圧するのは赤子の手をひねる程度の手間だ。まあ、彼らなら赤子にすら負けるかもしれないが。
暴言に反応しないように指示は出してるが、子供の事を罵られると親が言い返してしまう場面もそこそこ起こっている。
それのせいで、集団全体がイライラしてきてる感じだ。
【ダンジョン】でのレベル上げは順調と言えるだろう。木材で鈍器や木刀や盾を作ったり、枝葉の葉の繊維を紡いで布に仕立て簡易的な服も作ったりして配給した事により裸になる心配が減ったのは大きい。
ただ、身に着けてる衣服は脱がない限り一気にボロボロになったりしないのは〔神〕様の温情だろう。
あとは舟木から聞いたが、阪本氏は蜘蛛の吐き出す糸とドロップする糸を集めて布を作り、衣服作りをしてるような事を言ってたと言うので実行させた。
蜘蛛の糸は思ったより頑丈な布が作れて探索にも役立った。
あと言い忘れてたが、ミルクのおじちゃんはと幼子に聞かれるようになった。ミルクの在庫も減ってきたしそろそろ顔を出してはくれないだろうか?
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地上
あれから、490階層まで戻って転移魔方陣で1階層まで戻り外に出た。景色が激変してて凄い驚いた。
まず【ダンジョン】入口の頭上を走ってた阪神電気鉄道の高架線路が消えていた。そして甲子園球場の中にあった【ダンジョン】の入り口まで遮る物が何もない。ただ人は増えてるようだ。
3号神戸線も無くなってるし、電柱も電線も無いから空が広く見える。
本当に綺麗さっぱり建造物が崩れて消えたようだ、ゴミ一つ落ちてない。
いや〔神〕様からしたら【黒色表示】や【赤色表示】がゴミなのか、星は綺麗にしたがまだゴミ片付けが残ってると表現したらしっくり来てしまう。
とりあえず誰かに話を聞きに行こう。近くから行くか。知り合いが居るかもしれないしな。
そう言う事で、元甲子園球場内にあった中難易度【ダンジョン】に来てみたが、小屋と言って良いレベルの建物が建ってる。
「すみません、ここのリーダーに会わせて貰えませんか?」
近くにいた同年代そうな人に声を掛けてみた。
「お、新入りか?」
話しかけると高確率で新人扱いされるのは何故だ?
「ちゃいます、少し前までここに集団は居なかったと思ったんでどうしたのかなと」
本音を伝えて不思議に思ったと答えた。
「ああ、ここのまとめ役がスキルの〈アイテムボックス〉を手に入れてな。資材集めと食料集めが捗った結果人が集まりだしたってわけだ」
おいおい、そんなスキルバラして大丈夫なのかよ。
「そんな人のスキルを教えて大丈夫なんですか?」
つい聞いてみちゃったじゃないか。
「ああ周知の事実だからな。それにこんな世界になったんだ、悪さなんかでけんよ」
そりゃごもっともで。
「で、リーダーさんはどこへ?」
「【ダンジョン】の中だな。良い人でさ集団で入ってはアイテムボックスに入るだけの物を持ち出してくれてる」
それもそうか、一番活躍出来るんだもんな。
「それじゃまた来ますわ、芦屋の方を周ってからでも」
そう言ってまた来る事を伝える
「そうか、来訪者が居た事は伝えとく。夜ならリーダーも帰ってるからな」
親切にリーダーの滞在する時間帯まで教えてもらえた。
「ありがとございます、また来ます」
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芦屋市立打出浜小学校跡
困った、臨港線も無くなったし、目印になる建物も無くなった。大体の方角で走るしかないのか?
〈探知〉ない人だと、少し角度がずれたら通り過ぎる事必至やな(汗
しばらく走ると少し方向がズレた位置で集団の気配を感じ、遠目にも小屋が乱立してるのが目に入った。
無事に到着出来たようだ。
「こんにちは、リーダーさん居てますか?」
近くに居た人に場所を聞く
「・・・・・だれだ?」
なんか反応がおかしいな?
「阪本と言います、たまに来て離乳食やミルクを提供してますね」
ああ、阪本さんか、リーダーならあの小屋やと教えてくれたので、「どうも」と言って離れた。
「変な感じだったな、何かあったんかね?」
とりあえず聞いた小屋に向かってノックして返事を待つ
「はい、入ってきて良いですよ」
そう返答を貰えたんで遠慮なく入る。
「お久しぶりです、お元気でしたか?」
「おおお、阪本さんじゃないですか随分と久しぶりですね」
そんなに経つのか?
「因みにどれくらいぶりでしょう?【ダンジョン】の中で重症を負って長い事気ぃ失ってて、地上に出てきたら建物が何も無いからすっごい吃驚しましたよ」
どれぐらい経過してるのかな?
「それはそれは、お怪我の方は大丈夫だったのですか?」
先にどれだけ時間経過したか知りたいのにぃー
「ええ気を失う前にポーションとか使ってからでしたからなんとか、それで第三幕開始までどれくらいです?」
「あと数日としか・・・
その言葉を遮るように時が止まるのであった。
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〔神〕と呼称する存在のお告げ
『地球に住む人種よ、後三日後より第三幕の開幕となる』
『心清らかにして待つが良い』
『第三幕は三段階での進行が予定されている。イレギュラーな事が無い限りは計画通り進むであろう』
『第三幕の第二弾では後悔の無いようにするがよい』
あれ、第一弾の事はまだ秘密なのかな?
その言葉を最後に重圧が解けたが疑問が残った。第一弾は何が起こるんだ?
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〔神〕と呼称する存在の会話
『指示通りあの魂にこの星の神話から得た情報で作った武器を罠で発動させたが失敗に終わったそうだ』
疫病神と死神担当の柱に特別に頼んだ事だ。
『あの魂の育ち方は異常だ。計画に問題が生じるかもしれないが、あの魂には悪意や悪感情は一切ない』
あの不意打ちの一撃で大ダメージを与え魂を呼び出すはずが失敗し、さらには【ダンジョン】内で消えるはずの武器を自分の異空間に持ち込まれてしまった。
あのレベルの武器じゃないとダメージを負いにくい肉体になってるのも問題なんだがな。
『あれだけのダメージだと魂も体から離れやすくなり呼びやすいはずなのに、強固な意志で一時として肉体から魂が離れる気配もなく呼び出せなかった』
『仕方ないが魂を鍛える時間を減らせただけでも良しとしよう』
出来ればここに呼んで、我々の同胞となるように今後の動きを命じたかったのだが、肉体がある今ではそれも出来ぬ。
『今回のこと反発されないように、慈愛と慈母の柱連中には知られぬ様にな』
慈愛と慈母の連中は強硬手段は好まないし、子供への視線の配布も反対側にまわったしな。
『それにしても、あの魂は考えが読めない。今では母親を死に追いやった一人と出てる魂にまで慈悲を与え施すんだからな』
『人種の生活圏が狭まれば断罪しまくる魂との接触もあり得るな。今のままだとまず間違いなく断罪しまくる魂が抑え込まれるか輪廻に飛ばされるだろう。
だがあの魂はまだ人の命を奪ったりはした事がない。断罪者達との接触がどう出るか』
深く考え事をしていたら不意に話しかけられた。
『何か考え事ですか?あの魂を呼び込もうと致しましたでしょ?』
慈愛と慈母の連中か。
『まぁここに来てくれて同胞へと迎え入れられればなとね』
嘘は言ってない。
『そうですか。それは良い事ですが、まだ時期尚早ではないかしら?』
それは重々承知してる事だ。
『そうかも知れませんね、ちょっと慌てすぎました。なんせ魂の強化具合が尋常じゃない速度だったもので』
これも嘘ではない、驚きの速度で魂が強化されている。
『そう言う事にしておきますわ』
そう言って立ち去って行った。
お読み頂きまして、ありがとうございます。
読みにくい文章で本当に申し訳ないです、学の無い肉体労働者の執筆と馬鹿にしながら読んで頂ければ幸いです。




