第十五話 徳島に到着も
誤字報告ありがとうございます。
いつも大変助かっております。
自分は今、高松自動車道を爆走していた。
文字通りアスファルトの舗装を踏み砕きながらだ。ここ数日で一段と柔らかくなってきた。
もう紙は原型を維持出来て無いのかもしれない。自分の異空間に運び込んだ書籍は原型を保ってるので医学書系は救われるかも知れない。
その前に人類が絶える事もあり得るかもしれないのと、更に言えば医学書を理解出来る人物の生存も必要だろう。
俺じゃ分からん!
だって、ドイツ語で書かれてる物もあるんだぜ?
そう言う事で書籍はしばらく眠りにつく事だろう。なぜなら書写するにしても最低限の知識が無いとねって事で眠らせた。
それからたまに〈探知〉に反応する集団の気配は申し訳ない気持ちで先を急がせてもらった。
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芦屋市立打出浜小学校 校庭
阪本氏がここを去って十日程過ぎたある日【赤色表示】者で住み分けられてる所から騒がしくなった。
自分はついに【赤色表示】者が自分等で取れる食料の少なさと、【青色表示】や【緑色表示】や【白色表示】者から向けられる視線に嫌気でもさして不満が爆発したのかと思った。
話を聞きに来てみると、阪本氏に叱られ泣きながら食事を与えられた子供たちの頭上の表示が突然に【灰色表示】まで戻ったそうだ。
詳しく子供たちに話を聞いてみると、おじさんのお母さんを死なせちゃったんだとすごく後悔して心の中でおじさんとおじさんのお母さんにごめんなさいと思い続けてたそうだ。
自分たちが取った行動がどうダメだったのかもしっかりと話し合ったりもしたらしい。
その中には自分の両親にも話を聞いてもらった子も居たそうだが「そんなのは書かれる側の言い分で、書くのは自由だ」「ちょっと文句言われただけで死ぬ奴は死ぬ」「そもそも書かれる様な事をした事が問題だ」等と言われてたらしいが、子供達はおじさんが叱った事を優大君のパーティの子や【白色表示】者以上の人達にも聞いて周ったそうだ。
真剣に叱られた事を考えた子だけが突然に【灰色表示】まで戻り、おじさんに食べさせて貰った食事で上げて貰った【レベル】により食料の取得が楽になった結果。
取ってきた食料を【白色表示】の怪我人に提供した瞬間に【白色表示】まで戻ったと聞いた時は、これが神の救いなのかと思ったりした。
が、阪本氏が何かをしたって事も考えられる事でもあったので、子供達にはきちんと何が悪かったのか考えて反省した結果を〔神〕様が見ててくれたんだねと言うだけにしといた。
それでも一気に38人の子供が救われたのは【赤色表示】者や【黒色表示】者に取っては自分たちもと思う者から、なぜ子供達だけだと憤慨する者まで出始めた。
この事が切欠で【黒色表示】者や【赤色表示】者の子供達を集めて何が悪くてそんな表示が付いたのか事細かに説明しきつくなり過ぎない様にしっかりと叱った。
表示が様々ですでに紙の情報が失われつつある今、六法全書も崩れ去り法律違反を説明するのは難航したがそれでもしっかりと違反を繰り返してた事が原因だと叱った。
「なぜ車も全然通らない道路にある信号を赤信号で渡っただけで駄目なのか」と聞かれもしたし「安全には注意しながら赤信号でも渡ってたよ」等と聞かれた時は法律だからとしか言えなかった。
〔神〕様の善悪値の最初のボーダーラインが法律を指標とされていたのは間違いないことなのだ。
そこには法の抜け穴を利用した者も【黒色表示】認定されているので、厳格には間違いがない。
第二幕が開始されると、償い方法のすべてが失われた。
それでもこれだけ一気に【赤色表示】から【白色表示】にまで戻れるのは何か手段があるのかも知れない。考察するにやってしまった事への正確な認識と徹底した後悔それに謝れる心か。
それにもしかしたら若年者限定ってのもありそうだな。
そこからは実験も兼ねて【黒色表示】者と【赤色表示】者全員に頭上に付いた罪状に対して、しっかりと何が悪かったのか認識し徹底して後悔し許しを請う相手が居るなら心の中で謝罪を繰り返してみるべきだと提案してみた。
それを聞いた大半が何も間違った事はしてない、これこそ冤罪だ等と言うものが少なくは無かった。
後日談だが、そう言い切った連中の全員【黒色表示】者には『疫病神の視線』と【赤色表示】者には『死神の視線』が加護欄に付いたと報告があった。
真摯に話を聞き考えてみると返答した者達へは付かなかった事からしても、〔神〕様は見ているのだろう。
これには追加の情報もあった。加護欄に『疫病神の視線』や『死神の視線』が付いた者が付いた瞬間に心を入れ替え罪に真摯に向き合い謝罪に明け暮れると心の中で願った瞬間に加護欄から消えたと言う。
それを聞いた者が追随したが、消える事はなく。
消せるのは加護欄に付いた一瞬だけの出来事なのだろうと判断された。
自分がルールと思い込んでる人程今後の世界では生きて行く事が難しくなるようだ。
さらに後日談となるが、10歳未満の子供たちに話を聞かせ叱った者の中から 【灰色表示】者が急増したのだ。
それにより阪本氏より託された食料で【レベル】を上げ護衛をつけて食料を取りに行かせ、【白色表示】者へ提供させたら【白色表示】になったのだ。
父親や母親が食料調達に苦労する様を見る事になる子供達にしても、救いであり罰であるのかもしれないし、我が子が苦しむ姿を見る祖父母にしても子育て方法を間違えたのかと自戒の念に囚われる者もでた。
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加古川バイパス脇の加古川市立氷丘南小学校敷地
この中難易度【ダンジョン】周りの【黒色表示】者や【赤色表示】者に中難易度【ダンジョン】は危険だと入る事を諦めてもらった。
少しでも死ぬ人を減らしたい思いで初級【ダンジョン】を目指して欲しいと残ってた糧食から保存の利く物をすべて提供して自身の足での移動をお願いした。
それも〔神〕様の決められたルールにより上位色から下位色への食糧の提供が出来ない決まりとなっていた為、保護する事もできなかった。
中には子持ちの家族も居たが、苦渋の決断で初級【ダンジョン】に向かうようにお願いもした。
そんな折【銀色表示】の者が訪ねてきて情報の交換を要求した。
すんなりと、幼子と乳飲み子と親に食料を提供すると言ってのけた。それはいとも簡単に実行され幼子と乳飲み子と両親は久しぶりに腹一杯食べれたようで涙する者も中にはいた。
自分等にも食べさせて欲しいと言い出した民衆に彼はこう言った。
「うーん自分は構わないと思うのですが。
ここの管理者さんは情報の見返りで離乳食とミルクと親御さんへの食事の提供で手を打たれたので勝手に提供出来ないんですよね。管理者さんがこちらに提供するものがあれば問題ないんですけどねぇー。
なので今はお子さん達優先で親御さんと一緒に元気になってもらおうとね。
私も悪意があってこんな事言ってる訳じゃないのは理解してもらえると思いますが、こんな御時世と情報の見返りを求められ交換条件で取り決めた事ですので、ご理解ください」
そう言って断るのだ。食べさせても良いと言うならまだ食料を持ってるはずで、提出してもらえば初級【ダンジョン】に向かうように言ったが自宅に引き籠ってる家族も多くそれらにも分けてあげる事が出来る。
そう思った自分は大量の食糧を持つ人物に徴収を仕掛けた。
何も独占したいとか思っての事ではない。少しでも助かる人を増やすために。
しかしそれは間違いだった。彼は我々を歯牙にも掛けず、我々は威圧されただただ恐怖に心を支配された。
身を震わせる事すら出来ないほどの圧だった。
最初の話の時から印象を悪くしてしまったし。
自分はやり方を間違ったのだ。元々【銀色表示】者なのだ悪人でもなんでもない初めから頭を垂れ救援援助をお願いすれば良かっただけなのかもしれない。
今更だが、よくよく思い出すと【レベル】すら見る事が出来ない存在など出会った事が無かったから自分より格下と思い込んだのが大間違いだった。
彼は我々を無視して食べたいと訴えていた民衆にも分け隔てなく食料を与え【レベル】まで一様に上がった。
そして、最後に離乳食用とミルクと子育て中の家族へと肉を置いて行った。
その際に理不尽に奪ったりするなとキツク言われはしたが元からそのつもりもない。
次出会う事があれば心から謝罪するとしよう。
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やっとの思いで徳島へ到着も徳島県立鳴門渦潮高等学校の校庭に初級【ダンジョン】か中難易度
金毘羅駅前に着いて懐かしく思い辺りを見回し、大将の居酒屋を目指し歩いて行くと閉店告知の紙がボロボロになりながらも貼られていた。
貼られている閉店日は自分が最高難易度【ダンジョン】を脱出した日の2週間前であった。
店もどう見ても誰かに痛め付けられた様な傷みがある。
店前にあった生簀は割られ、落書きを上塗りして消した後も散見される。
何があったのか聞きたいが店内からも人の気配はしない。元々大将は違う所に住んいて朝に仕入れしてから来ると言うスタイルだった。自分は店内の座敷席で寝泊まりさせて貰っていた。
坂出市の市長から教えて貰った徳島県立鳴門渦潮高等学校の校庭に初級【ダンジョン】か中難易度があるらしいので、その場所を探し移動していると大勢の気配を〈探知〉スキルが反応した。
反応のあった方へと進むと初級【ダンジョン】のある場所であった。
近付いて行き、居酒屋名と大将の名前の三木さんを探してると伝えると、ここの集団で活躍してると教えて貰えた事でホッと出来た。
ここの学校の校長先生が取り仕切ってるので紹介してもらいに着いていく。
「はじめまして、三木さんを訪ねてきました」
結構な御高齢の校長先生だな。
「はじめまして、ようこそお越しくださいましたな」
「それで、三木さんはお元気でしょうか?」
「ええ、頑張っとりますが・・・」
「何かあったので?」
「良い人なんじゃが『道路交通法違反常習者』って付いて【黒色表示】なんですわ」
「あちゃー【黒色表示】かー、当時は豪快な運転と短気でしたからね」
「まさにそれじゃ、本人に聞いたら『スピード違反常習者』と『信号無視常習者』って出てるそうじゃ」
「あはは、深夜に店から帰る際にってやつですね」
「本人はそう言っとたの」
「それで、三木さんは今何処に?」
「今は【黒色表示】者を率いて食料集めだな。【緑色表示】の奥さんと【白色表示】の娘の為にせっせと食料を集めて自分が食べる分を減らしても上位色に渡して【善悪値】を上げる努力をしとる」
「いつ戻られるかスケジュール的な物ってあります?」
「朝に入って夕方には出て来る感じじゃな」
「それじゃ待ってる間に準備するとしますかね」
そう言っていつも通りの準備を始め三木さんが出て来るのを待つのであった。
準備が完了しいつでも始めれる頃に【ダンジョン】より三木さんパーティーが帰還した。
「大将!お久しぶりです、覚えてますか。仁、仁って色んな遊び教えて貰った阪本です」
「おおお、覚えてるぞ久しぶりだな。一時はよくニュースでも新聞でもお前の名前が出ない日は無かった位だぜ」
「マジかー」
「マジマジ、それで仁が働いてた店ってだけで嫌がらせや店の備品の破壊とか散々だったぜ!」
そう言って、ガハハハッと笑うが嫌味が一切ないただの報告として伝えただけなのが分かる。
「えー、そんな事まで」
「ま、俺もSNSで仁はそんな奴じゃねぇって反対意見書いたもんでよ。それが気に入らない連中ってのは少なからずいて、店に被害が出たってだけさ」
「あー三木坊よ、それだけじゃないじゃろが」
そう言って拳を振り上げる真似をする
「坊って言うなって、それにあれは示談になって不起訴になっただろうが」
「なにがあったんで?」
「チッ、どうもこうもねぇよ、店に来た客が店の中で仁の悪評を大声で騒ぐ目的でわざわざ東京からやってきてよ。
それに同調した地元の客まで大騒ぎしやがって、挙句には未成年殺しとまで騒ぎやがるから瓶ビールで頭勝ち割ってやっただけさ。
そうしたら激怒して店の中で大暴れし始めて机からカウンターケースから破壊の限り尽くされた」
「すごい大事やん」
「それで警察は来るわ、小火が出て消防まで駆けつける騒ぎになってな、最初はどっちも示談なんかにサインする気もなく徹底抗戦のつもりでいたんだわ。
ところが、仁が無事に脱出してきてさ会見を開いただろ。見てて面白かったぞあの太々しい態度で着席してからの問答。
それで、一時間ぐらい誰も動かない映像が流れてたんで放送事故になりかけてスタジオが中継を引き取ったりして時間を潰してたんだがよ、仁と子供達の親族が会場に戻ってきて中継が会場に戻ったんだわ。
そしたら子供達が無事に金色に光る長方形枠の中から出てくるやんけ。それで親族との涙の抱擁が映し出されて少ししたら、〔神〕様の試練終了のお告げだろ。
そこまではまだ良いさ、その後は〔神〕様が会場の者以外には言葉は届かないがって言ってから、えらい別嬪さんが会場に現れてた後に空中に贖罪率にステータスにも出てたらしいやん」
「そうでしたね」
「それでその日のニュースで沈黙の時間に何があったのか事細かに取り上げられて理解したってわけさ。
そしたら店で大暴れした連中から、店の改修費だの慰謝料だの和解金だのと来るわ来るわ。
でも既に店は閉店しててさ、その分も含めて慰謝料がっぽり請求したら全額認めやがって、こっちが怪我をさせた事も自業自得なんでと一切責められることなく、被害届も即取り下げられてって感じだな」
「一発逆転ですね」
「そこからはSNSにも嘘つき呼ばわりして申し訳ないなどの書き込み通知が鳴りやまなくてな。
俺に謝るぐらいなら、阪本仁に直接詫びろって書き込んだら収まった」
「あはは(汗」
「いやー良いタイミングで出て来てくれたぜ。仁は絶対に子供を見捨てる様な奴じゃないって信じてたからな、会見で子供が出てきた瞬間涙がでちまったぜ」
自分も話を聞いててじーんと来てしまった。
「それでじゃ、阪本さんは三木坊を探して来てくれたんじゃが?」
「おお、そうでしたそうでした」
「大将の今日の収穫を全部俺に提供してくれませんか?」
「良いぞ?何か考えがあるんだろ?」
「ええ、自分で言うのもなんですけど【銀色表示】なので贖罪の足しになればなとね。
今夜の食糧は私が提供するので心配もないしね。
それじゃ大将のパーティーメンバーにも協力してもらって、肉やキノコを焼いて提供してやってよ。
俺は幼子と乳飲み子に、離乳食とミルク用意して癒されとくからさ」
「ほんとに仁はあの頃と変わらねーな、店に来たお客さんのお子さんを抱っこさせて貰ってはニコニコしてたもんな」
「そうでしたっけ?」
「そうだよ」
「ま、話してても腹は減ってるでしょ。ここに集まってる集団の分の食糧位ならいくら食べても大丈夫な位あるので、お代わり自由で配布してやってよ。
ただし権利は主張しないように大声で叫んでね。銀色表示者からの提供だから権利を主張したら食えなくなるぞとでも」
「わかった、やっとく」
そう言って鉄板に薪を詰め込んで魔法で火を熾しあとは任せた。人望はある大将だ、任せて良いだろう。
「こっちは、離乳食と人肌に温めたミルクもあるので、お子さんに是非どうぞ!」
いつも通り、子供の笑顔に癒されながら配布するのであった。
「てかさ、大将結婚出来たのな?」
「おい仁失礼じゃないか?」
「いや、熊みたいやん当時から。それが娘さんまで居るなんて想像出来んって」
「マジで失礼な奴やな、こんなイケメン捕まえてよ」
「いやいや、どこにイケメンが居てるよ」
「ここだここ」
「ないない、で娘さんは?」
「やらんぞ、いやいや年齢考えろ熊」
「熊ちゃうわ。来たらちゃんと紹介する。嫁はべっぴんやぞ腰ぬかすなよ」
「そうですか、楽しみにしてます」
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神と呼称する存在
『疫病神と死神の視線の配布がほぼ終了しました。いつでも第三幕に移行出来ます』
『分かった。まだ期間はあるから、その魂との紐づけされてる魂の調査も抜かりなくするように』
『そちらも粗方終了していますし、魂消滅場の容量確保も滞りなく済んでます』
『わかった、ご苦労様』
お読みいただきありがとうございます。
感想もありがとうございます、賛否両論おありでしょうが描きたい様に書かせて貰ってます。




