第十一話 神を呼称する存在の今
誤字報告ありがとうございます。とても助かってます。
感想も全部読ませて貰ってます、肌に合わない方には申し訳ありません。
今回は伏線の話なので少し短めになってしまってます、ごめんなさい。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
管理者側の調査報告
第二幕が始まったが思ったより生息数が減っていない。
現行の生活基盤の大半を失わせたはずなのに、全人種の繁栄力の強さを見誤った。
同種殺しの者とか理不尽な事件を起こした者とか人種が裁くと思っていた。
それがまさか食料を提供出来なくなった刑務所と言う施設が犯罪者を解放して自分たちで【ダンジョン】に入り食料を得させるとは面白い事をする。
さて、やろうと思えば一瞬で星を消し去る事も可能だが、消し去ってしまえば輪廻システムも消え知的精神の魂は再び輪廻システムを求めて広大な世界を彷徨うだろう。
そうなると悪しき魂が多すぎるのが問題だ。これだけの魂が解き放たれ他の世界の輪廻に紛れ込んだりすれば大事だ。
なのでこちら側で回収し消し去るまでをしないと後の仕事が増える。自我の根付いた魂は厄介だ、消し去るまでに途方もない時間が掛かる。
それに優良な魂も複数見つけた。神の加護を与え頭角を現している者も見受けるが、まだまだ時間が掛かるだろうし見ていて実に興味深い行動をする魂も見受けられる。
報告を受けてる中では最有力魂とでもしておこうか、神の使徒の如く穢れ悪しき魂を断罪しまくる存在だ。国が機能を停止した瞬間法律が意味の無い物となったと声高に叫びながら目につく【赤色表示】者を殺害して【善悪値】が下がるかを確認した瞬間【赤色表示】者を目の敵の如く殺害してくれているので我々は助かる。
この魂は強いぞ。【赤色表示】者からの憎悪にもくじけないし、この魂の持つ基準で断罪が行われてるようだ。同族殺しをメインに断罪しまくってるが、過去にあった戦争での同族殺しの魂には温情も与えている。
ただそれも自国内だけしか活動できない。第二幕で国を移動する事は出来なくなったので生存か全滅かだ。
女神連中は幼子と遊ぶ魂を見ては輝き方が色々あって興味深いと言う。一時はその魂も暗く染まりそうになっていたそうだが魂自身で跳ね除け色んな色に輝くらしい。
この魂の考え方は危険だ、要注意である。他者を育てる者は我々の計画に遅延を齎すだろう。
第二幕が完全開始された時に、金色と銀色の者は下位色全てに慈悲を与えられる様にしたのが原因だろうが、善き行いを促す為でもあったし妥協点ではあるな。
しかしこの魂は強大な力を得ている。【魔素】【魔力】が充填されるまでの星では一番の脅威とも言えただろう。あの時はヒヤリとした。
今はもう力が暴走しても破壊できる範囲が数キロ程度で収まるだろう。
まあ、女神連中が興味津々で見てるから何かあれば報告されるであろう。
次はこの魂か。この魂も素晴らしいし美しい色に光り輝き幾つもの色に変っているのも見ていて飽きない。
やっている事も徹底して【白色表示】者以上の者へしか手助けしていない。
【灰色表示】以下はまるで同族じゃ無いとでも言わんばかりに叩きのめして追い払っている。
こちらの魂も興味深いが、少し能力が弱いか今後に期待だな。
下手したら魂同士の思想の違いから衝突する事も考えられるが、それもまた一興。
それに魂の輝き方が変わるのはなにもこれらの魂だけではない。他にも多く見受けられる。
死神役や疫病神役を与えられたチームは文句しか言ってこない。主に増援要求だ。腐った魂は見るのも悍ましいらしい。
善悪値を処理してるチームからも増援要請が来ていたが、一時期一地域から拡散された事柄に目を付け贖罪という名の時間稼ぎをして何とか処理が追いついたらしい。
審判と裁きの女神役をやらされた彼女は文句を言っていたが、最近ではノリノリで各地へ顕現してはバッサリと断罪しまくっている。
数が減らないとは言え20億ほどの腐った魂は回収出来た。善き魂は改修した輪廻システムに戻し、いずれ強き善き者の元で新たな生を受け魂を育てるだろう。
それでもこのまま行けば500年程でバランスの取れた星へと導けるだろう。【魔力】を有するようになり寿命も1.5倍~3倍は伸びるはずだし、強き善き者同士は自然と惹かれあうし強き善き者の子が増えるのも時間の問題だな。
もっとも数が減らない理由の一つに【ダンジョン】の浅い層だけで食料を得て命を繋いでるだけの存在が邪魔でしかたない。
それに上手く行かないなら、星を消し去らなくても空気を無くせば死滅するだろう。リセットを選ばせないで欲しい所ではある。
それも第三幕の一段目が始まるまでだ。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
コンコンコン、ノックを3回して返答を待った。
「入れ」
「失礼します」
上司の部屋を訪れたが前と同じで仕事をしていらっしゃる。
「これが第二幕が始まって少しの現状です」
「そこのソファーに座って少し待て」
またこのパターンですか。何時間お待ちすれば宜しいのでしょうかね?
「よし確認する資料を寄越せ」
あっれー今回はすぐだったぞ。
「こちらです、第二幕が始まって少し経った状態です」
そう言って報告書を渡す。
「順調に悪しき魂は回収出来ているな。星の生命力も徐々に回復へ向かう事だろう。後は人種の穢れ悪しき魂の回収と最終的な数の調整か。まずは穢れ悪しき魂の回収に取りこぼしが無い様に徹底して見逃すな」
「はい、重々承知しております。今より約370億年ほど前の話になりますが穢れ悪しき魂が他の世界の輪廻に入り込み、その世界が混乱の極致に達しましたしね」
「あの事故の事か。今もって魂の消滅が確認されないほどの穢れ悪しき魂だからな。すでにあの空間に捕らわれた魂はなすがままであろうが、監視体制も万全だから問題なかろう」
「穢れ悪しき魂は最善の注意をもって監視に当たっておりますが、何分穢れ悪しき魂の数が膨大な為、増援要請が出ておりますが可能でしょうか?」
「分かった、200柱の増援を許可する」
「200柱もですか?ありがとうございます」
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
「よぉー、また長いこと上司の部屋に入り浸ってたようだが何をしでかした?」
どこにでも出てくる同僚だな。いちいち報告する必要は無いが不愛想な対応すると面倒だしな。
「ああ、今回はあっさりと報告書に目を通して貰って程々の評価を頂いて増援要請も受け入れて貰ったってだけさ」
「まだあの面倒な星の管理業務に当たってるのか。あんな星消去してリソースに戻し新しい星を誕生させれば面倒な事をしなくてもすぐだろうに」
指令以外の事をしたら自分の評価に響くだろうが。
「まぁな、言いたい事は分かるし理解もしてる。でも受領した命令では今いる生命体の数の調整での試みみたいなもんだと思う。自分だって何度も空気をなくして死滅させてまえば楽だろうと思ったぐらいさ。
でもな、優秀な魂もいくつも見つかってるし時間を掛ければいつかは我々の同胞に迎え入れられる日も来るんじゃないかと期待もしてる」
「そんなもんか。こっちの管理してる星では抜群な魂が育ってるぜ。魂のレベルも300を超える猛者だ」
「それは凄いな。お互い頑張ろう。管理業務が残ってるのでこれで行くな」
こっちの某おじさんのレベルはすでに500を超えているがな。要注意魂とマークはしているが。
そんな楽しくもない会話を終えて管理業務をしてる特殊任務特別室115号へ戻って管理業をしている同僚一同を前に、200柱の増援が認められた事を伝え各部署に何柱の増援を希望するのか確認し出来るだけ希望を参照に振り分けを行うのであった。全部の希望なんて聞いてられないって。
「ちょっと良いかしら?」
「はい?」
「なぜ子供にまで【赤色表示】をお許しになったのかしら?子供なら諭せば一気に【白色表示】まで意識改善も可能だったのじゃないかしら?」
「ふふふ、なぜだと思う?」
「分からないから聞いてましてよ?」
「その諭すものが真摯に諭した場合に心の奥底までその言葉を受け入れられた子供は【白色表示】に戻るのさ。ただし即効性はないから数日は【赤色表示】や【黒色表示】のままだがね」
「そんな回りくどい事をする必要はあるかしら?」
「ありますよ。一度は悪認定されてしまって真摯に叱って貰わないと魂にまでは響かないでしょ?
ただでさえ、異常とも言えるほどの人口を抱えた星ですよ。今まで70億オーバーの人種が存在した星があったかい?」
「そう言えばそんな星の話は聞いた事ないわね?多くても3億いくかどうかで調整されてるし、星のサイズにもよるわよね」
「そんな星の知的精神を有する魂が悪に染まり他の星の輪廻に紛れ込んだら、とんでもない事が起こると思わない?」
「ええ、それは大事になるでしょうね。他の星には【灰色表示】者すらいませんもの」
「だから子供と言え【赤色表示】されてしまうのは仕方ないことなのさ。真摯に叱ってくれる魂が現れる事を期待するんだね。そんな試みをする魂があるかは分からないが、もし現れた場合は驚く事になるだろうね『慈愛と慈悲の女神』さん」
「それなら、私達が娯楽で眺めてる魂がやったわよ?」
「マジで?」
「マジで。あの魂は言った後に言い過ぎたと凄い後悔してましてよ。見てて面白かったですわよ」
「へぇー面白い魂だね、さすがは・・・・」
「何かおっしゃいまして?」
「いえ、それだけでしょうか?」
「ええそれだけですわ」
そう言って振り返り元の場所へ戻っていく女神を見送り、あのおっさんの魂はやっぱり要注意だな。やる事が真剣過ぎる為に穢れ悪しき魂を善き方向へ導きかねない。このままでは予測以上の善き魂が増える事になりかねないな。
「ま、今の所特に問題はないか理解してない事象はその後続く事もないだろう」
「話は終わったか?」
「はい、善悪値処理班のリーダーさんどうされました?」
「ああ、このままじゃ穢れ悪しき魂が多すぎて星の為に使うリソースが足りなくなりそうなんだ。
国が機能しなくなって法律がうやむやになっただろ。そうなると違反してた行動を反省をもって守る事を繰り返す事により善悪値は元に戻って行く仕組みだったのが、軽い違反者も反省する事が出来なくなって穢れ悪しき魂と回収されてしまい、リソース不足に繋がるって訳さ。どうする?」
「ええ、もちろん考えてますよ。第三幕でその辺は改善できるはずですので、今しばらく管理処理をお願いしますね」
「ああ分かった。何かややこしい処理があるなら始める前に教えておいてくれよ」
「はいはい」
軽く手を振り送り出す。
「少し良いか」
「はい、どうされましたか」
「死神、疫病神班のチームリーダーをしてるんだが、本当に星中に視線をばら撒いて良いのか?
ただでさえ【赤色表示】になったら能力値ダウンなのに、疫病神の視線でそこから更に5割ダウン、死神の視線だと8割ダウンだぞ。満足に動けなくなるが本当に良いのか?」
「構いませんよ、疫病神の視線と死神の視線は重複しませんし。それに救済措置も設定してたでしょ。疫病神の視線にしろ、死神の視線にしろ加護欄に付いた時に行った行為に対し真摯に謝罪すれば加護は消えるって事。別に許される必要は無いんですよ、真摯に謝罪するかどうかが判断基準なだけだし簡単に消せますよ」
「そういえば、死神役、疫病神役担当部署の柱は知らなかったですね。
【白色表示】で等倍、【緑色表示】で1.1倍、【青色表示】で1.2倍、【銀色表示】で1,5倍、【金色表示】で2倍。【灰色表示】と【黒色表示】と【赤色表示】は秘密。
表示色で既にステータスの基本値に修正率が付いてレベルアップ毎に修正率が適用されるので、レベルが上がれば上がるほど差が出るけど、表示色が変わった瞬間再計算されますよ。
それに第二幕から第三幕一段目まではただの粛清ですよ、穢れ悪しき魂を回収する目的のね。
さぞ怖いでしょうね、魂を消去する映像を見せた訳ですし。今の時点じゃ善悪値は改善しようがない。心から後悔してる魂は多いんじゃないでしょうか。
心から後悔じゃなく、心から謝罪すれば疫病神の視線と死神の視線は消えるんですけどね。それだけ後悔はしても謝罪する気は無い魂が多いって事なんでしょうね」
「謝罪しても取れてない魂が存在するがどういう事だ?」
「謝罪した気持ちになったとか、謝罪してますってアピールとかですかね?謝罪して許されない場合に憤りを感じたりしたら真摯に謝罪出来てないって分かりそうなんですけどね。
それにね、穢れ悪しき魂の回収と言っても少しでも改善した魂を回収しないと消去後に純粋なエネルギーとして再利用するまでに途方もない期間を要しますしね」
「わかった、基準通り選定して視線を与え続けておく」
「救済の時まではもう暫く掛かりますが、よろしくお願いしますね」
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
本音で言えば、更生出来ない悪と認定した魂はこっちで勝手に回収してしまって、更生可能な魂は更生方法を伝えて善き魂にまで導き、死したのちリソースに戻すってやり方も無くは無いが、平等に機会を与える事が大前提であるからこの様な迂遠なやり方になってしまった。
試練で一番目立った魂を時間稼ぎに利用もしてしまった。
恩賞を与えるとか言ってただこちら側が時間が欲しかっただけで利用させてもらったし。
善悪値の選定作業が追い付かなかったから善悪値の動きを止める必要があったからだ。
そのせいでこの魂は多くの魂から憎み恨まれてもしまった。この魂には面と向かってあなたの悪口を広めていますよと言われている様な状態にさせてしまったのだ。救いは強き善き者であった事か。
一時期魂が壊れかけたけど持ち直したし。
第三幕の準備も完了した。この魂はもう少し利用させてもらおう、輪廻に帰るその際までは。
お読み頂きありがとうございます。