第二十四話 運命の日②
長くなったので、2話に分けました。
しばらく見守っていたのだが、突然それは起こった。
『お待たせしました、現時点を以って全ての【ダンジョン】の中には生き残りが居ませんので、試練は終了となります』
『それにしても一つの【ダンジョン】で我々の予測を遥かに超えて生きながらえ無事に全員が脱出すると言う奇跡的であり、死ぬほどの努力の果ての結果と言いましょうか、素晴らしい行動力と強い保護欲で誰一人欠ける事無く成し遂げたのは、最後まで結果の出なかった【ダンジョン】だけです。賞賛に値しますね』
『おじさんには、後ほど心の苦痛を和らげてあげましょう』
『では、第二幕の開幕と行きましょうか』
『第二幕では、全員に【ステータス】が与えられます、【ステータス】の内容は項目をタップすると効果や意味が分かるようになっていますので、説明は省かせて貰います』
『我々は、後の世界にはゴミは必要ありませんので、どうぞ自分がゴミにならないように最大限の努力をして下さい』
『あなた方が生きてきた人生がそのまま反映されてますので、自分を振り返り正す所は正し、謝罪し償う所は償い、ご自身をどうか高めてください』
『ゆくゆくの我らが同胞となられる事を願っています』
『我々には、ほんの僅かでも悪の因子はありません。純粋に星の管理をし同胞になれる魂が育つよう導いてるだけで、手助けとかも一切いたしません』
『我々に助けを求められても、助けることは致しません見守るだけです。ですが神罰は落としますし、加護を与えたりも致します』
『今から半年後にあなた方人種以外の生物は隔離します。草木もです、これ以上種の絶滅は避けたい所です』
『あなた方の知覚で言うなら、火星や月の表面の様な世界になると思っていただければ分かりやすいでしょう。ただし月の引力により風や水の水位変動による災害はそのまま残ります』
『今から半年後に【魔素】や【魔力】の無い構造物は破壊を始めます。また掘り出された鉱物やガスや化石燃料も星に戻し星の命を最優先とします』
『今後は【ダンジョン】周りを掘った国は分かると思いますが、地面を深く掘るのは不可能になります』
『その際に、建造物の倒壊などにより生命体が損傷しようが我々は関与いたしません』
『今から3か月後には【ダンジョン】の数が増えます。【ダンジョン】内で鍛え様々なものを得て暮らしを立て直してください。別に立て直せなくても我々は興味ございません』
『新しく追加される【ダンジョン】は試練を潜り抜け生還した人がいる国には、初級、中難易度、高難易度、最高難易度の4つが、人口に比例して【ダンジョン】の恵みを得られるように発生します』
『残念な事に生還者の出なかった国には中難易度、高難易度、最高難易度の3つの【ダンジョン】のみとなります。早く人口を減らすための処置です』
『国が崩壊するまでは、国の定めた法を厳守してください、様々な国がおありのようですが、国それぞれの法を厳守する事をお勧めしますし、追加で法を作るのは禁止しますし、法の抜け穴を使うことも許しません』
『では一つ見ていただきますが、先の試練で【ダンジョン】に巻き込まれたゴミのその後の様子を見てもらった方が、ご自身を振り返るのに良いでしょう』
その瞬間頭の中に、3人の男女の凄惨な姿が永遠と繰り返される映像が脳裏に浮かんだ。
『その3人の内1人の男性は、生前は強盗傷害で【ダンジョン】に巻き込まれた人物です我々は選んでいませんでした。
一緒に落下した男性2人を刺し殺し、4人の女性を強姦しつくして、3時間後に現れた【魔物】によって命を落としました。
このようなゴミの魂は再利用も出来ないし純粋なエネルギーとして使うにしても自我が芽生えた魂をエネルギーに戻すのも膨大な時間が必要になります』
『この男性の魂を使えるエネルギーに戻すのに約56億年程かかります。
56億年程ずっとあの苦痛が続くと言う事ですね、もちろん自我がある状態ですので意識がありながら体が溶かされる痛みを知覚し、意識がありながら体が細切れにされる痛みを知覚するなど、ありとあらゆる苦痛が与えられます56億年程も意識が途絶えることはありません』
『ゴミの状態で死ぬとその【善悪値】を0に戻すのは果て無き事であるのを先にお知らせしておきます。現世に居る間にどうか、御自身を見返して【善悪値】を0以上に持って行く事をお勧めします。ゴミは輪廻の輪には戻る事が叶わないので、死後はあのような方法で【善悪値】を強制的に0に向かわせます。マイナスで死なない様にご注意くださいね』
『では次に、書き換える概念についてだが、六か月後から導入される』
1、【魔素】【魔力】が発生させたエネルギーは一瞬の【魔素】の揺らぎを発生させるだけで持続してエネルギーを生み出さない。
2、【魔素】【魔力】が無い建造物は著しく早く朽ちる。
3、【魔素】【魔力】が高濃度でない限りエネルギはー伝播しない。
4、【魔素】【魔力】が無い電荷は発生しないと言う概念。
5、【魔素】【魔力】が無い生物は生存出来ないと言う概念。
6、【魔素】【魔力】が無い物質は、【魔素】【魔力】を有するエネルギーを通す事や透過させる事は出来ないと言う概念。
7、【魔素】【魔力】が無い物質で、【魔素】【魔力】を有する物質を破壊する事は出来ないと言う概念。
6、7、は理解してる魂も居るが、試練開始時に既に導入されている。
『これは重要な事ですので覚えておいてくださいね』
『もっとも、覚えなくても使えなくなった技術とかで自然と理解するようにはなってます』
『さて、最後ですが、【ダンジョン】はその国に住む人が入れる物では無いと言う事も伝えておく』
『簡単に言えば、自分の体の中に流れる血が濃い国が選択されると言う事だ、どこの国に住んでいようと関係ない、自分がどこの国の【ダンジョン】に潜れるか選択できる場合は、体の中に流れる血の割合が均等の場合のみだ』
『例で言うと、ハーフだと思っていた人が実は完全なハーフではなく、どちらかの親の親の親ぐらいの代ですでにハーフとなっていた場合は、血が均等に半分にならないので入れる【ダンジョン】の国に移動するように、一人一回のみ入れる【ダンジョン】の国へ転送しよう』
『これで、第二幕の説明は終わった。最短で3か月後の第二幕の開幕を心して待て』
『それでは最後に、あの最高難易度【ダンジョン】の137階から無事に生還したおじさんへの褒美を与えたいとそこに顕現化する〔神〕が居るので後はその〔神〕に一任してある』
『また、ここに居る者にしか言葉も届かないようにしてるので、全世界は不自然に時が止まったままとなりますが、動き出すのをお待ちください』
『では、後はお任せします』
そう言われた瞬間から会場のマスコミと自分との中間点から自分よりの方に眩いばかりの金色の粒子が集まったかと思うと、絶世の美女と言っても過言ではない程の神々しい美女が顕現されたのであった。
『我は、審判と裁きの女神』
『汝は、無事に試練を終了したにもかかわらず、同族からの誹謗中傷で心を病み、またその誹謗中傷の対象が汝の母親へ向けられ、母親もまた謂れのない誹謗中傷によりその命を自分の手で閉じてしまった』
『ああ、なんて事だろう、たかだがゴミの分際の言い分で数の暴力に晒されて虐げられるなど、あってはならんし、強き善き者は崇拝こそされ、蔑まされたりはあってはならない、嘆かわしい』
『我、審判と裁きの女神の名において命ずる、罪深きもの贖罪の方法は、己で広めたこの者の悪評を回収し正確な情報に書き換える事とする』
『100%になるまで、この者と一緒に脱出した者に【ダンジョン】の情報を求める行動を禁罰とする、破ろうものなら神罰が下ると知るがよい』
そういった瞬間、空に0%の数字が出現し、誹謗中傷を広めた者たちの【ステータス】にも回収率なる物が現れたようだ。
『では、貴様らゴミが広めた情報の齟齬を説明してやろう、まず未成年者は見捨てられては居ないのがこの場で実証された』
『次に、出でよ』
女神さまが手を振った瞬間、元妻とその両親と妹が召喚された、これだけで心が痛くなったが、耐えた。
『汝に問う、この者との間に交わされた約束は今回の試練以外で破られた事があったか、正確に答えよ』
「え、え、ここどこ?」
『さっさと答えよ、汝はこのおじさんとの契約で今回の試練以外で不履行が行われた事があるや否や?』
「あります」
『嘘であろう、この我に対して嘘を付くなど愚か者のする事ぞ』
『我が真実を語ってやろう、汝はこのおじさんとの離婚の際に、血の繋がりだけが家族と言い張って、裁判所なる所で性格の不一致で離婚が成立し、その際の契約で、おじさんが養育費を子供一人に付き月額3万円払うで双方同意しているではないか、長男と長女それぞれで月額6万支払うとなっておるな。
それでいて汝は月一回の子供との面会権は汝の一方的な考えで、一度も実現しておらん』
『それでも、おじさんは子供の為にと月額15万を汝に振り込んでおるな、試練で落とされる前の月まで13年間毎月』
「くっ」
あーあ、元妻さん、女神様をきつめな目つきで睨んでらっしゃる。
『さらに言うぞ、離婚成立後半年ほど子供の面倒を見ていたが、おじさんからの養育費が15万と安定して振り込まれる事に味を占め、我が子二人を施設に放り込んで育児放棄しているではないか、それでなぜ養育費が振り込まれ続けているのか説明せよ』
ええ、智樹と岬が育児放棄で施設に放り捨てられてるだって?
『無言は肯定とする』
『次に汝達じゃ』
あら、義理の母親や父親にまで事が及んだぞ?
『汝達は離婚前にこのおじさんが訪ねてきた際に一切の言葉を聞かず娘の言い分だけを信じ、このおじさんをストーカーとし冤罪で通報し国家権力により追い返しておるな、その際に何も悪くなかったおじさんに対して、死ねと十数回も連呼しておるわ』
『よって、世間に出回っている、我が子を捨てて養育費の支払いもしていないと言うのは、この元妻の狂言である』
『また我が子を捨てたのは、このゴミ女である』
『汝等への贖罪を申し付けるぞ』
『汝等にはおじさんへ速やかに全額の倍を返済し、おじさんの子供を探し出しておじさんの元まで連れて来る事を申し付ける』
『速やかに履行されない場合は神罰を持って処されるものと理解すべし』
『この広場に居るゴミ共よ、真実は今暴露された』
『最初に記事を書いた者の信憑性も地に落ちた』
『なお、この裁きはここに居る者のみに見聞き出来た事である、我は優しくないのでな世界には何一つ伝わってはおらん、己らの贖罪ゆえ、広めた悪評を訂正し真実のみで上書きするがよい』
『くれぐれも、100%の回収以外は贖罪にならず』
『さて、汝よこれで少しは鬱憤が晴らせたかの?』
「私の誹謗中傷に付いては、これで満足ですが母親の死は未だに気が晴れず、母親の死に関与した者への殺害許可を頂きたいと思いますが、法を厳守するようにとの事でございましたし、無理なことですよね?」
『そうじゃの、それは無理な相談だ、汝が力を振るえば今の時点の地球だと4分の3が吹き飛びかねん』
『それじゃこうしよう、母親の親族すべての許しを得ない限り【善悪値】が善き方向へ向かう事が無いとし悪い方へは簡単に動く様にしよう』
『その者が死んだのちの苦痛が長く続く事を贖罪とする、良いな』
「はい、それで母親の死を我慢しておきます。女神様方に感謝申し上げます」
『では、今後も理不尽なゴミの言い分がまかり通りそうな時は我が顕現して裁きを行う故、ゆめゆめ忘れぬようにな』
そのように言い残し、金色の粒子となり中空に溶けるように消えていった。
「えっと、そう言う事らしいので、私のお話はここで終了とさせて頂きます」
このまま子供達とも会わずに静かに会場を後にし、付きまとわれるのも嫌なので、【ダンジョン】の結界を押し通り、異空間にてしばらく気持ちを落ち着けるように休むのであった。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
残された会場の混乱
「総理、総理は阪本氏の真実を知りながら隠蔽していたのですか。お答えくださいと言っても頭上に出てますし、真実なのですね。」
「女神様が顕現なされたが映像には映っているのか?」
「いえ、映っていませんし、言葉も録音されてません。」
「どうするんだ、こんなの回収できるのか?」
「無理だ、【ステータス】を見てみたか?状態の所にずらっと罪状が羅列されてるぞ」
「こんな状態で死んだりしたら、永久に苦痛に苦しめられるのか」
「総理が真実を公開してれば、我々は阪本氏の母親まで詰め寄って死に追いやるまで行きすぎな報道はなされなかったと思いますが、総理はどうお考えなんですか?」
「それこそ、官民の垣根があり、そもそも捏造記事に踊らされたマスコミもどうかと思いますが、捏造記事を書いた〔週刊真実〕の記者に詰め寄るべきじゃないですか?
というか、その記者を逮捕拘束し、すべて吐かせろ。
冤罪で苦しんでる受刑者が2人居るとなってるし、一人は死刑執行までされてしまっているから洗い出して、すぐに償いの準備にかかれ」
「だめだ、SNSで真実を書き込んでも、嘘乙で一蹴された」
「問題はこれ以上、阪本氏を怒らせてはならないって事だ、女神様が言っていたように地球の4分の3を破壊できるだけの力を秘めてるらしいから」
「それも問題だけど、まずは拡散した情報の回収と訂正が先だろう、それぞれに贖罪方法が下されてるし、【ステータス】が導入されてからは、妙に体が重いんだよな」
「ああ、【ステータス】の【善悪値】の項目に書いてあったぞ、簡易表示の色で補正が掛かるって、黒や赤になると、本来の半分も能力が発揮できないらしい」
「いや、それもそうだが、半年後には食料は手に入らなくないか?すべての動植物を隔離すると言ってたって事は、そう言う事だろう?」
「だめだ、どんなに真実だとSNSに書き込んでも、嘘を書くなとか、笑われて終わる」
「それも問題だが、ニュースで報道するにしても、少し間違った表現してしまえば、【善悪値】が悪い方に動くぞ」
「SNSで嘘乙ってやつに、苦情を書き込んだら、俺の【善悪値】が更にマイナス方向に動いた」
「俺の罪状欄に、「自転車運転中の信号無視常習者」とか「自転車運転中のイヤホン使用常習者」とかがあるんだが?」
「小さな違反も反映されるみたいだぞ?」
「やばいな、死にたくなってくるぐらいの罪状欄だが、今死ぬと永久とも思える苦痛を味わう事になるので、少しでも挽回したい」
「問題はさ、阪本氏の母親を死に追いやったと出てる人は、遺族に謝罪しすべてに許されないと、【善悪値】が一向に改善しないどころか、マイナス方向にだけは動くっていう地獄を見ることにならないか?」
「わー、いったいどうすれば良いんだ?」
会場にいたほとんどの人間が頭を抱えて考えてみるも何も解決策が思い浮かばないのであった。
「とりあえず、地道に一つずつ謝罪し、流してしまった報道を訂正してお詫びしてを繰り返すしかないだろ?」
「100%まで持っていければ、阪本氏と話しをする事は可能になるんだし、拡散してしまった情報を訂正し真実を告げて歩こう」
「たった2か月程度の拡散だ、すぐに回収して元に戻るさ」
この時、たったの2か月での拡散の回収が不可能である事を知る人間は居ないのであった。
なぜなら、たまたま街道のテレビニュースを見てしまったホームレスがその後テレビなど目にする機会もなく、生活してるなど、この場に居る者にとっては考えに及ばなかった。
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「おかあさん、おじさんのお母さんを死なせてしまうまで、責めたの?だって、お母さんの簡易表示が【赤色表示】で、「阪本仁の母親を死に追いやった一人」って出てるよ?」
「そ、それはニュースであなた達を見殺しにしたって報道されたから」
「なんで、【ダンジョン】の中の事が分かるのよ?それに、お父さんも、「阪本仁の誹謗中傷を広めた」となってる。あんなに酷い怪我をしたり、手首を失っても、私たちのために薬を使わないぐらい、私たち優先で居てくれたおじさんの、おかあさんを死なせちゃったんだ。
ねぇ、私どんな顔して、おじさんに会えばいいの?
それに、他の皆の親族にも「阪本仁の母親を死に追いやった一人」や「阪本仁の誹謗中傷を広めた」ってなってるって事は、皆して誹謗中傷を広め、おじさんの母親の元へ行って責め立てたのね?」
「私たちおじさんにもう会えないんだ」
「だからおじさんは最後に、どんなであっても抱きしめてあげてと、私たちの親族が心配してたのは事実だからって事で言ってくれたんだ」
「それに、ほんとなら親族の【レベル】上げするのも、我慢に我慢をしてやったんだろうね」
「私おじさんに謝ってくる」
「私も行きたいけど、もう無理だよ。会場を出て行ってしまったし、おじさんの異空間に入られたら見つけられる訳ない。最初に見たでしょ、おじさんが中に入った後に入り口が消えた時、サクラは不安で取り乱した位になにも痕跡がなかったもん」
お読みいただき、ありがとうございます。
これにて1章が終わりますが、おじさんの活躍と、神のシビアな取り締まりはまだまだ続きます。