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地球の管理者が決まりました。  作者: ルドラ
第一章 試練編
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第十九話 日本の情勢

 ◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇


 脱出した自衛隊員3名


 俺たちは無事に脱出できた日から2日間は病室に閉じ込められた、その間は検査らしい検査もなくただただ軟禁状態に等しかったが、出された食事だけは豪勢だった。


 そして、3日目からが目まぐるしい忙しさに肉体的というより精神的に疲れ果てた。


 と言うのも、どうやら【ダンジョン】脱出者は、採血すらできない肉体になっているらしく、我々が【ダンジョン】内で推測した通り、【魔素】か【魔力】を有さない物質ではってやつだ。


 おっと、話がそれたな、まぁなんだそう言う事で、今まで測定で使えてた機器が一切反応を示さなくなり、体重を計るのも一苦労するほどだ。


 体育館に連れて行かれたかと思えば、基礎体力から反復横跳びや垂直飛び等の身体能力の測定をされたり、遠投や走力測定に持久力測定だ、それだけならまだ良い。


 一番精神に来るのが、【ダンジョン】から持ち帰った物質の鑑定作業につき合わせられるのはうんざりだ。

 こっちに運べだの、こっちに乗せろだの、数百回も荷物移動させられた挙句、分かった事と言えば何も分からなかった事だけが分かっただとさ。

 それからも、【ドロップ】品の鑑定作業に同道させられ、荷物運びをやらされた。

 

 また【ダンジョン】の結界が黒くなってしまっているが、再度入る事が出来るのかと実験にも付き合わされた、我々3名は拒否をしたが、上から下ってくる命令なので仕方なく従った。


 従った結果だが、再度結界を超えて【ダンジョン】内に入る事は不可能であった。


 無駄に2週間も隔離させられて、家族ともアクリル板越しと言うありさまだ。自分は犯罪者では無いぞと何度激昂したことだろうか。


 ま、2週間が経過しアイテムの鑑定もひと段落下した今では普通に家族の元に戻る事が出来、一緒に落下し命を落としてしまった仲間のご遺族にもその最後を伝える事も出来、誰が脱出できても必ず遺族に手渡せるようにと準備してあった遺髪も渡せた。


 政府は遺髪も取り上げようとしたが強い意志を持ち抵抗し断った。


 仕事である自衛隊の訓練も今では3人で別訓練をするようになった。と言うのも一般の自衛隊員との身体能力差で歯車が嚙み合わないからだ。


 思考速度にしろ反応速度にしろ、射撃訓練の命中精度からして桁違いの精度で上昇してしまっているし、こちらからも上官へ進言し肉弾戦の強化を申し出た。


 理由の一つとしては、今後【ダンジョン】内を行動する上で銃火器が無意味になるからだ。嫌と言うほど実感させられた。


 後は耳にするのも鬱陶しいが、兵庫県側の【ダンジョン】の結界に表示される数字が変わる毎に緊急速報が流され、コメンテーターやらインタビュアーやらが、成人男性を犯罪者の如く扱い、成人男性は所謂住所不定の生活をしているようで、そのせいで親族の住居が特定され毎日のように、インタビュアーが突撃したり住居を囲むように報道陣が陣取ってるようだ。


 そんなこんなで、軟禁生活から解放されて元の生活に戻ってきたある日、試練の為に【ダンジョン】に囚われてから一ヵ月と一週間が経った頃だろう、成人男性の生みの親である母親が連日の報道やSNSで届くDMによる誹謗中傷に耐えかねて、一緒に落下した未成年者の親御さん宛に「申し訳ありませんでした。」の一言を残してこの世を去った事件が発生した。


 後で聞いた話だが、試練に選ばれた未成年者たちの親族がこぞって押しかけて、罵声を浴びせ続けたそうだ。わが子を返せとか。


 俺はこの話を聞いて憤りを感じ、政府から止められていた【ステータス】内容の一部である、【善悪値】の事をSNSで流した所、嘘乙の一言で一蹴された。


 この世界は狂いだしている。真実も判明してもいないのに命を落とすまで人を追い込む、それも殆どの人が匿名の壁に隠れて行っている。


 このニュースを見た時は本当に激昂しかけた。


 ◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇


 試練開始から一か月と3週間目に突入したある日の事である、日本の兵庫県西宮市にある【ダンジョン】以外の全ての入り口が既に真っ黒に染まってしまって、結界に生存人数を表示しなくなって2週間が過ぎた頃の事である。【ダンジョン】からは何も出て来る事が無いので人々は元の生活を取り戻しつつ監視の目も緩くなり、監視カメラも録画のみで結界前には対人センサーが設置されるのみとなったある夜のこと。


 某掲示板で目指せ勇者と人を募っていた愚か者の集団があった。


 勇者を目指す6人組が準備万端で監視カメラから延びるケーブルを切断し、対人センサーから延びるケーブルもカットすると、6人で一斉に結界を押し始めるのである。


 〔神〕が言っていたように結界に触れていると極稀に魔物が気付き出て来て【ダンジョン】内に引き込まれると言う事を実行したのである。


 この6名は、人より早く【ダンジョン】に入り強くなり有名になりたいと言う功名心とどこから出てくるのか分からないが、自分は勇者だと信じて疑わない性格に酔ってとんでもない確率でとんでもない【魔物】を引き寄せてしまうのであった。


 祈るように【ダンジョン】の結界を押し込み1時間ほど経過した頃だろうか、突然二人が結界内に引っ張り込まれ残された4人は入れた事に歓喜するのであるが、それも一瞬の事であった。


 あろうことか【ダンジョン】から出て来たのはどす黒い肌をした成人と同じ背丈のゴブリンのメスであった。


 一瞬でもう2人の腕を掴むと結界内に連れ込み結界には数字の5が表示され、徐々にその数値は減っていく。


 それを見た残りの二人は一目散に【ダンジョン】前から逃走するのであった。


 ◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇


 時は少し戻り、ダンジョン内の魔物


 その個体は、本来なら自分の群れを統率する立場にありながらも、命からがら手当たり次第に階段を上り自分に向けられる脅威から最速の行動で逃げ出したのである。


 本来の生息地は11階であり、我が兵と共に11階層を我が物顔で蹂躙していた。


 それが突然のことである、配下のソルジャー達が襲った個体から手痛い反撃を受け悉く配下のソルジャーはその数を減らして行ったのである。

 それを敏感な感覚から脅威と察知するや否やその集落を一目散に逃げだし、供も連れずに手当たり次第安全な方向へと感覚頼りで移動しまくった。そもそも上階にはこの個体の脅威になりえる存在などなく、再度の集団を作り上げるべく安住の地を探していたのであるが、そもそも獲物が小さすぎて配下を増やす事も出来ず、腹を満たす事も難しいのでずっとイライラし通しだった。

 それと言うのも、この魔物は食べる量で配下を出産すると言う特殊個体であり、オスを食べればオスのソルジャーやファイターなどを生むのだが食べた物の質により生まれてくる個体の強度が変わる。

 またメスを食べれば次期統率者となるメスを生み、蜂の分蜂よろしく新しく生まれてきたメスを筆頭に新しい集団を作り上げて種族を増やすのである。


 食べた質によって生まれて来る配下の強度が変わるため、この階層で食べれるラット程度の量じゃオスだろうがメスだろうが、配下を生む事が叶わないのであった。


 空腹でイライラしながらもラットを探して移動してると、壁の裏から気配を感じ壁に触れてみると壁をすり抜けて階段を発見し見上げるとそこには旨そうな獲物が数匹居たのである。


 こうして、配下を生み出すのに必要な量のエサも4体手に入り、餌を引きずって(ねぐら)にしてる空間で空腹を満たし、配下を出産していくのであった。


 少し残念なのは2体の獲物を逃したのが悔やまれるがどうやらあの場所にはまだまだ餌がありそうで、配下に集めさせればまた集団を作り上げる事が出来そうであるとほくそ笑むのである。


 ◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇


 勇者(笑)6人が起こした事件は、【ダンジョン】入り口前に出来た大量の血だまりにより発覚することになるが、誰の仕業かなどは分からずじまいであった。


 警察は、結界に触れないように慎重に現場検証をし、複数人の足跡を発見し、監視カメラと対人センサーのコードは切られており、近辺の防犯カメラの映像を元に6人の男性が結界前に居た事が分かっただけであるが、それが誰なのかは短期間の捜査では特定出来なかったのである。


 それでも、結界ギリギリ迄の足跡などを採取してみればどうやら結界内に入り込んだような足跡が発見され、大慌てするのである。


 即座に警察機構は上に報告し、政府の知る所となると【ダンジョン】から何が出て来ても良い様に自衛隊の派遣を検討するのであるが、一足遅く現場検証をしていた3人の男性警察官が手足を折られた状態で結界の中へ引きずりこまれたのであった。


 事件現場を目撃していた同僚警察官や野次馬の証言から、どす黒い肌の成人と同じ背丈の人型の【魔物】が2匹出て来て、警察官を襲ったと証言がとれ、それはくしくも再度設置された監視カメラにもバッチリと襲撃の際の映像が映って居たのだが、動きが早送り再生でもないのに早すぎるのだ。


「ダンジョンの生存者数が4になってるってことはまだ生きてる!救出に向かいましょう」

「どうやって?」

「連れ去られる事はあっても、自分からは入れませんよ?」

「ぐぬぬぬ」


 そうやって救出方法を話している間にも、表示される数字は徐々に減って行く。

 しかも災難はこれだけでは終わらない。


 数人で救出方法を話し合ってる最中にも、結界をすり抜けて【魔物】が2匹飛び出てきたのである。

 飛び出してきた【魔物】に対して即座に発砲して応戦するも、銃弾が一切効果を発揮せず、跳ね返されるだけである。


 また【魔物】も銃を脅威とは捉えておらず避けるそぶりすらしない。


 こうなってしまうと【魔物】の独壇場であり。この場は差し詰め美味しい狩場と言った所だ、この場にいた5名の警察官は、先の3名よろしく手足を折られ生きたまま【ダンジョン】内へと連れ去られてしまうのであった。


 この情報を得た上層部は急ぎ自衛隊の派遣とSATの出動要請もだし、【ダンジョン】を中心に簡易防壁を築く指令を出すのであるが。


 ここまでの人的被害は、初めの勇者(笑)4名と、警察官8名と甚大な被害が出ている。


 自衛隊とSATは【ダンジョン】の入り口を中心に15メートル程の距離を開けて、装甲車や金属塊などを積み上げ簡易的な防壁を築き上げたが、【魔物】を外に出さないだけの効果しかないだろうと現場の人間は思ったという。

 実際はなんの効果もなかった事をじきに知ることになるのだが。


 簡易ではあるが防壁らしき物が完成し高所作業車を用いての見張り塔も完成させた時には、【ダンジョン】の結界は無情にも表示は1を示すのであった。

 

 ◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇

 日本国首相官邸サイド


 磯部総理はこの非常事態を真剣な表情で報告を聞いていた。


「なるほど、それでいったい誰がこの事態を招いたのでしょうかね?」

「鋭意捜査中ではありますが、昨日の今日では如何ともしがたいと申しますか」


「出来るだけ、民間人の仕業と大きく打ち出して、分かっているだけの情報を大きく出し、政府への目を逸らす必要がある。出せるだけの情報はマスコミにリークでも発表でも良いので、こんな愚かな事を仕出かした輩には注目の的になって頂きましょう」


「はっ、そのように情報操作致します」


「その件は、任せますので良しなに」


「次に、【ダンジョン】から出てくる【魔物】対策ですが、茨城県ひたちなか市の陸上自衛隊勝田駐屯地敷地内の【ダンジョン】から齎された情報では銃は効果が無いとなってますし、ナイフ等も効果が無いそうですので、現場にはそれを伝え大口径な銃の使用も認める旨を命令書に記載し、出てきた【魔物】にどの兵器が有効かの実地確認もするようにしなさい。爆発物の使用は慎重にし、決して【ダンジョン】入口に当てないように細心の注意の元実行するように致しなさい。くれぐれも、上海の二の舞には注意してくださいよ」


「分かりました」


 ◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇

 首相官邸(災害・危機管理情報)

 官房長官・記者会見


『兵庫県西宮市の【ダンジョン】より【魔物】が出て来るようになった件で判明してる所までお知らせします。


『まず、本日未明に【ダンジョン】入り口前に血だまりが出来ているのを自衛隊の監視部隊が発見。その際に、監視カメラと繋がる記録装置への配線が切られており映像は記録されてません。また、対人センサーの方も動力源との接続が切られていて、作動を止められて居たとの事です』


『その後の捜査で、近隣住民の防犯カメラの映像を総当たりした結果、6名の男性の関与が疑われてますが、現場より逃げ去ったのは2名と言う事も判明しています。2名は車で逃走した事も判明していおります。』


『その6名ですが、某掲示板で呼び掛け合い集まったとの情報も上がってきてますが、掲示板管理会社への情報開示と合わせて捜査中との事です。その6名の愚かな行動のせいで、男性警察官8名が生きたまま【ダンジョン】内へ連れ去られ、既に絶望的との情報も上がってきております』


「私の私情ではありますが、某掲示板の書き込みを拝見した事で沸々と怒りが湧いてきて仕方ありません。自己中心的な思想で愚かな行動を起こし、善良な警察官に被害者を出すなど言語道断であり、許せない行いであると断言します。一刻も早く容疑者が確保出来る事を願っており、お亡くなりになられた警察関係者様におかれましてはお悔やみ申し上げます」


 ◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇

 昼の番組を変更してニュース速報をお伝えしています。


「たった今官房長官の記者会見が終わりましたが、【ダンジョン】から【魔物】が出て来る件はどうやら、民間人の6人組が某掲示板で呼び掛けあって集まり、犯行に及んだようですね」


「そうみたいですね、某掲示板を拝見いたしましたが、自分も勇者になりたいってスレタイでしたね、一体何を勘違いしたのでしょうね」


「この6人は一体何をしたのか理解できてるのでしょうかね?」


「と、申しますと?」


「【魔物】が出て来るのが今回だけとお思いですか?私は今後も定期的に出て来ては被害を拡大していくものと考えてますが?」

「証言にもありましたが、まず【魔物】は警察の所持してる拳銃ニューナンブで発砲して応戦したそうですが、避けるそぶりも見せずに真っ向から弾かれたそうですよ?」


「最初に3名が生きたまま連れ去られ、その後に5名がこれまた生きたまま連れ去られてます」


「そう言われれば、今後も出て来ないと言う確証はなにもありませんね」

「自衛隊も防衛陣地を構築して、出て来ても被害が出ないように戦線を構築しましたしね」


「本当に馬鹿者共のせいで、これから先も怯えながら生活しないといけない近隣住民に同情しますよ」


「馬鹿な行動のせいで、命を落とされた警察関係者にはお悔やみ申し上げます」


 ◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇

 

 この夜、3度目の【魔物】の襲撃があり、日本国が持ち得るすべての重火器を【魔物】に向けて使用されたが、どれも効果なしと判断され、この際の襲撃でまた2名の自衛官が生きたまま連れ去られるのであった。


 この【魔物】が出てくる事件が解決するまでの6日間に連れ去られたのは、女性アナウンサー1名、女性自衛官5名、男性自衛官18名の計24名にのぼった。


【ダンジョン】の結界には7と数値が6日間に渡って表示されるのであった。

お読み頂きありがとうございます。

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[気になる点] 主人公のお母さん自殺したってこと?… 見捨てるどころか助けてるのに…
[良い点] こぞって押しかけて、罵声 [一言] 読み進め中です 吐き気を催す邪悪。 ていうか頑張る物語と思ってたら胸糞系だったので失意orz うーん 取り返しがつかない。 どんなふうに話が進んでいく…
[良い点] 面白いです。ジワジワ来る面白さです。 [気になる点] 会話も地の分も標準語ベースなので「居てる」にはかなりの違和感を感じました。 [一言] 読者の視点は、主人公に注目している女神様方視点に…
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