第十五話 おじさん とにかく頑張る。その頃の自衛隊も。
「「「おじさん、ずるいーずるいー」」」
一斉に非難轟轟と騒ぎ立てられる。
「お、おぅ・・・そんなに食べたかったんだね?」
「そうだよー、ここに来てから甘いものなんか、おじさんのリュックに入ってたお菓子だけだったし。一番甘いビスコのクッキーはチーちゃんのご飯に取ってあるから、ずっと我慢してるんだもん!」
ミサキちゃんが甘い物に飢えているようだ。
「お、おお、そっかそっか、それは済まない。(汗
それじゃあ、甘すぎるから少しだけ食べてみて体調に問題が無いようなら料理で使う感じで使っていってもらおうか?」
「「「うん」」」
そうは言ってみたけど、肉とにんじんだけでの食材で、蜜なんかどうやって使えるんだろうか・・・・
「えっと、指で摘まんで取れるかな?」
「わーーい、いっただっきまーす!」
「「「「 !!!!!! 」」」」」
「おじちゃーん、取れない。。。クスン」
「はいはい、それじゃ手を出して、少しずつ取り分けるよ!」
「「「「はーい」」」」
「マイたんもたべゆ!」
マイちゃんまで、食べると言い張りだした!
こんなに甘いのを食べさせても良いものか、確か赤子には蜂蜜は厳禁だったはずだが、3歳児の場合はどうだったか、えっと確か蜂蜜はボツリヌス菌がダメで1歳までは確実に与えるなと注意されたっけ。。。
我が子はどうだったかな、上の子が幼稚園入園前に奪われたから記憶が曖昧だが、確か4歳になる前には一緒にパンケーキを食べた時に蜂蜜だったかメイプルだったかを掛けて食べた記憶があるんだよな。困ったなこんなに嬉しそうに食べるって言われたらダメって言えない・・・・
エリクサーがあるし少量を食べさせて異常があれば即治療するでやってみるしかないかな、甘やかしすぎだとは思うが。
「それじゃ、マイちゃんもちょっとだけお口に入れてあげるね」
「あーい」
「嬢ちゃん達にも言っておくけど、チーちゃんはまだ駄目だから、絶対に口に入れないでね。料理に使っても駄目だからね、下手したらチーちゃん死んじゃう可能性あるから、蜜だけは慎重に扱ってね。」
「「え、そうなの?」」
「「わかりました、絶対に与えないようにしときます」」
「それじゃ、皆も舐めてみてね、体調悪くなったら言うんだよ。よく考えたらおじさんレベル上がって少し頑丈になってたから問題なかっただけかも知れないし」
そうなんだよな、レベル上がって加護まで頂いてるから、数値化してない耐性力が上がってる可能性もあったんだよな。何かあったらどうしよう、ドキドキ。
今度からは、不安な食材は荷物置き場で確認してから持ってくるようにしようと固く誓うのであった。
「「「「あまーい」」」」
「おいちぃー」
「はいはい、味見は終了ね!」
「皆どうかな、お腹痛くなったりしてないかな?」
「うん、大丈夫、すっごく甘くて幸せ一杯だよー」
「それじゃ、蜜はおじさんが荷物置き場に保管しとくね。今のところ料理に使えないだろうし、使えるようになるまでちょっとずつは舐めさせてあげるから、ちびちゃん達の為に少し我慢してね。
メイプルシロップだったら、チーちゃんも少量なら食べれたんだろうけど、蜂蜜は2、3歳までは絶対に与えたらダメな食材だし、蟻蜜がどうかは分からないけど蜂が集める蜜とそう変わりがあるとは思えないからね」
これは糠喜びさせちゃっただけだな、本当に申し訳ない。
「それじゃマイちゃん、お口くちゅくちゅしにいこうか?」
「あぃ」
「皆も、うがいはしといてね。虫歯になっても歯医者さんに行けないからね」
「「「「はーい」」」」
チーちゃんを抱っこして、マイちゃんと手を繋いで水場まで移動してうがいをさせて、少しだけマイちゃん、チーちゃんと遊ぶと言いつつ、皆の体調に変化が無いかを確認してから攻略再開する事にした。
おっと、忘れない様にポーション類は荷物置き場に戻しておこう。
「それじゃ、おじさんまた上目指して戦ってくるから、ちびちゃん達をよろしくね」
「はーい、いってらっしゃい」
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嬢ちゃん達の会議!
「やっぱり、おじさん怪我してたんだね、怪我した姿見せないのも心配させない為だったとおもう。それに本当なら蟻蜜も持ってくるつもり無かったんじゃないかな?」
「なんで?」
「だって、マイちゃんが食べれるか分からない物と、チーちゃんは絶対に食べたら駄目ってのを持ってくるのおかしいじゃん。絶対私達が違和感に気付いて心配してるかもって気を使ったんだと思うよ。」
「そっかー確かに帰ってきた直後にどうしたのか聞いちゃったら、速攻で甘味の話になったもんね。怪我ももしかしたら見せれない位に大きかったのかもしれないね」
「でもおじちゃんが心配ないって言ってたんだし、気にしないようにしとこうよ!」
「「そうだね、そうしとこう。」」
「でも、あの蜜は甘くて美味しかったねー」
「「うんうん」」
「それでも食べた後にさ、おじさんが直ぐに脱出の為に出て行かなかったのは、私達やマイちゃんの体調を見てたんだと思うな。マイちゃんとチーちゃんを相手してても、私たちの方もちょくちょくと意識向けてたよ。二人と遊んでるときにはこっちに意識向けてた事ってほとんどなかったのに、やっぱり未知の物を食べさせたって心配だったんだろうね」
「おじさんってやさしいね・・・」
「「うんうん」」
「おねーたん、あそぼー」
そうこうワイワイと話してたら、ハルちゃんが相手しててくれたマイちゃんが私たちの所にやってきて遊んでと言ってきたので、ハルちゃんの方を見るとチーちゃんのおむつ替えをしてくれてるみたいだったので、慌てて手伝いに走るのであった。
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行ってきますをして、草原に戻ってきた自分は、次の獲物を探して蟻塚の方向へデスラビットの角を片手に持って慎重に進みアリを探すのであった。
「居ないな、それにしてもこの角も片手で持って軽く振り回せるまでなった。もう一本の角も持ち手を作って両刀で装備するか、アリの甲殻を盾にでも加工して持つか、悩み処ではあるな」
警戒しながらも、今後の装備を考えつつ移動してると、右の方の草が動くのを視界が捉え一気に緊張状態になり、慎重に警戒してると草を分けて先程と同等サイズのアリが現れたのを視認するや先手必勝と一気にアリの右横を通り抜けざま右手で持った角で狙い定めてアリの足関節を連続で切断するのに成功した。
一気に右側の足2本を切断されたアリはそれでも怯まずに、態勢を振り向き即座に蟻酸を吐き出してきたが、レベルアップの影響か、このアリの個体の性能なのか、さっきのアリと比べると遅く感じてしまう位には動きがハッキリと見え、回避も苦労することなく再度右横を通り抜けざま残った足を切り落とすのに成功すると、あとはもう頭部を切り離し消えるまで突き刺すだけの作業と化すのであった。
しばらくし、青黒い粒子となって中空に消えていったあと、レベルアップを知らせるログが流れるのであった。
[ステータス]
【名前】:阪本 仁
【年齢】:44
【性別】:男性
【レベル】:294
【状態】:バツ1
【善悪値】:85
【性格】:おだやか
【結婚可能人数】:5人まで
【生命値】:65048
【魔力値】:63945
【筋力値】:25415
【体力値】:20995
【器用度】:24310
【敏捷度】:15470
【知力値】:17680
【精神力】:22100
【 運 】:67
《スキル》:造形術Lv67
《固有スキル》:[異空間創造作製Lv2]
《加護》:[女神様方の寵愛]
[簡易表示]
【善悪値】の数値により、簡易表示は【銀色文字】で表示されます。
【名前】:おじさん
【レベル】:294
【状態】:良好
これでまた戦いが楽になるはずだ。この調子でレベルが楽に上がるうちに上げきりたい。
絶対に子供たちを地上に連れ帰るんだ!
【デスアーミーアント ソルジャー】のドロップ品は蜜と甲殻だけなので適当に荷物置き場に放り込んでおく。
「さて、今の戦いは楽に相手の行動力を奪えたしこの調子であと数匹倒しときたいな。でも油断はせずに1対1を原則に慎重にだ」
そう息巻いてこぶしに力を入れ握りこみ決意新たに次の【魔物】を探しに移動するのであった。
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「こんばんは、夕方18時のNEWS18のお時間です」
「【ダンジョン】関係のニュースからお伝えしたいと思います」
「まずは世界全体での情報を送り致しますが、未だに脱出成功者例は韓国の1名だけです。三日が過ぎた現在で言うと、500カ所のダンジョンで確認できてるだけで456カ所のダンジョンで結界が黒く変わってる事が判明しています」
「亡くなったと思われる人の数は2736名と判明し、分かってるだけでも落下人数が6名より多かったか少なかったりした【ダンジョン】ではほぼ全滅との事です」
「これは初日で亡くなった数とそう変わりがありませんが、増えてるのは事実ですね。それでは、コメンテーターの方々の意見もお聞きしたいと思います」
「そうですね、意見を求められても分かってる事が殆ど無いと言うのが現状ですが、韓国の脱出者さんのその後の情報も無いのですかね?」
一人のコメンテーターが韓国で脱出成功した人のその後の情報は無いかと尋ね返された。
「そうですね。政府発表では韓国領事を官邸にお呼びして話を伺ったとは発表されていましたが、韓国領事からは脱出直後のインタビューで発した以上の情報は何も無いとの返答だったとの事でしたね」
「何らかの情報を得られたが、政府が発表していないだけなのか、韓国側も入手した情報を出してないだけなのかは、分かりませんね」
「まぁ、我が国と韓国との関係性を考えるとそう簡単に情報を得られるとも思えませんが」
「はぁ、そうですよね。水面下では何らかの交渉が行われているとは思いますが、何か得られるものがあれば発表もされるでしょう」
「私は、韓国の発表は隠されてると思ってますよ!」
「椿さん、どうしてそう思うのですか?」
「だってそうでしょう、脱出直後のインタビューでは【ダンジョン】内で【魔物】を倒して【スキル】を手に入れたとおっしゃっておられましたよね。と言う事はですよ【レベル】が上がってないとおかしいでしょ、【レベル】に関する情報も出て来てませんし、【レベル】が上がって居たら、身体能力にどれだけの上昇があったのかも韓国側は掴んでると思うんですよね」
「そう言われればその指摘の可能性はあるとは思いますが、1体倒しただけでは【レベル】の上昇まではしなかったって事も考えられますよね?」
「そうですね、その可能性も無きにしも非ずとは思いますが、私は【レベル】は上昇していると思ってますよ。極秘情報ですが私が入手した1枚の画像データですが、見て頂けますでしょうか?」
そう言ってモニターに一枚の画像データが映し出された。
「ステンレスタンブラーですか?」
「少し変形していますが。ステンレスタンブラーですよねこれは?」
「そうですね、私が韓国側の知己から極秘で入手した画像データなのですが、脱出した直後の男性が軽く握りつぶしたそうですよ。詳しい事までは教えては貰えませんでしたが、このタンブラーで最初に水分補給した時の事だそうです」
「え、と言う事は握力でこうまで変形させたって事ですか。それなら椿さんの言っているように【レベル】が上がって居るかもって事も信憑性が出てきますね」
「ええ、私もこの画像データを見てからその疑念が晴れる事は無かったですね。ただ、憶測なだけで確証は何も無いんですけどね」
「もちろんこのデータは私の繋がりのある政府高官へは知らせてはあるので、この辺からも何かしらの情報を得て貰える事を期待はしています」
「続きまして、中国上海の【ダンジョン】で神罰が発生した現場からのレポートです。中国の片平さんを呼んでみましょう」
「片平さん、その後なにか有りましたでしょうか?」
「こちら片平、発生からすでに72時間が経過し未だに要救助者の救出作業が難航していますが、各国からの救援要請が出されるも、ほとんどの国からの援助要請を受けておられません。日本からも救援要請を打診したそうですが、中国側から断られたそうです」
「今連絡が取れない数だけでも18万人以上との事で、救助された数は6000名程との発表です」
「日本人被害者も多数含まれているようで、日本大使館では確認作業を急いでるそうです」
「とてつもない被害ですね・・・」
「今分かってる事は以上です。私たち外国人報道関係者はあまり現場にも近付けずに離れた場所からの撮影許可しか出されていませんし、中国当局からもあまり情報を得られないのが現状です」
「そうですか、また何か分かりましたお知らせください」
「こちら現場からは以上です。片平がお伝えしました」
映像が途切れると、スタジオは沈黙が支配し、誰も何も言えないようであった。
「それにしても、各国からの救援要請も受けないとは、大丈夫なのでしょうかね」
「日本人の被害者も多数含まれているとの事ですし、柔軟に救援要請を受け入れて欲しいですよね」
「良く分かりませんが何かしらのプライドが邪魔をしてるのかも知れませんね。それで救出遅れでお亡くなりになる方にはお気の毒なのですが」
「それでは続きまして、国内【ダンジョン】の情報に移りたいと思います。
「我が国の【ダンジョン】2か所では、茨城県ひたちなか市の陸上自衛隊勝田駐屯地敷地内の結界の表示数値は3のままで3日が過ぎ、兵庫県西宮市のダンジョン結界の表示数値は1と0を繰り返してるとのことです」
「国内情報は何も変化が無いとしか分かっておられないだけですね。言える事はいまだに兵庫県の【ダンジョン】だけが不可解な表示を繰り返すって事だけですね。これは一体何を意味してるのでしょうか」
「分かりかねますね。不可解ではありますが、予測も憶測も立てようがありませんし、見守るしか出来ないですよね」
「そうですよね、ニュースで取り上げるも、何もお伝えできる事が無いのが心苦しい所です。無事に脱出される事を心よりお祈りしております」
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日本国首相官邸サイド
「それで、ニュースでも取り上げられてましたが、あの画像の件はどうなりましたか?」
「磯部首相、入手した画像を韓国領事館へ打診した所、そのような事実は無いとの返答しか頂けませんでした」
「そうですか。人類存亡の危機でも知りえた情報開示もしないのは如何なものでしょうかね・・・」
「仕方ないですね。それでその後の状況の変化は何も無いでよろしいでしょうか?」
「そうですね。今のところは何もお伝えする事が何も無いです。申し訳ありません」
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その頃の茨城県ひたちなか市の陸上自衛隊勝田駐屯地敷地内のダンジョン内の状況。
あの水場を離れて以降、立て続けに【魔物】に襲われ、3名が目の前で動かなくなり悲しむ間も無く全力で逃走するしかなく、遺体はおろか遺品すら回収する事も叶わずに今に至る。
「クソ、銃は効かないし、ナイフも刃毀れするするばかりで役に立たない。出来るのは肉弾戦のみ。向こうは牙や爪に相手によっては武器まで携帯してやがる。しかもなんとか体当たりで武器を手放させても、我々では持ち上げる事も出来ないとは。」
「あの水場で手に入れた水を飲んだだけで【レベル】が上がったが1だ。分かった事と言えば落ちている石で殴りつける方が一番ダメージを与えてる感じがするのが不思議で仕方ない。一体此処はどうなってるんだ、銃弾は弾かれるか、めり込みもせずに受け止められるかだけで、わずかばかりの衝撃すら与えてもいない」
「佐伯3等陸尉、我々の【ステータス】にあるように【魔力】が何かしら関係してるのでしょうか。この【ダンジョン】内も【魔素】と【魔力】がとも〔神〕が言ってたし、このどちらかか、両方が無い物質ではここの【魔物】に対して効果がないのかと推察致します」
「それもメモに記載しておいてくれ。知りえた情報は報告せねばならんが、そこに推察条項があっても構わんだろう」
「「はっ」」
しばらく、メモに分かった事を走り書きして休養を終えた。メモは人数分用意されそれぞれが所持する事にしている。万が一の為である。
メモ内容
1、銃弾が弾かれるか止められる、ナイフも切る事も突き刺す事も不可能であった。
2、遭遇した魔物は、ナメクジ型、カタツムリ型、蜘蛛型、小人型(ゴブリンかと思われる)を発見。
3、1等陸士の佐藤と宮崎が、小人型との戦闘時に一瞬のうちに致命傷を負わされ連れ去られる。
4、1等陸曹の馬場が頭上より襲撃された際に、蜘蛛の糸に絡め捕られ圧死する。捕らわれた直後に救出を試みたが、追加の蜘蛛の出現により撤退を余儀なくされる。
5、どの魔物も驚異的な力で太刀打ち出来ず、出来る事と言えば体当たり位である。
6、我々の【ステータス】にあるように【魔力】が何かしら関係してるのか、この【ダンジョン】内も【魔素】と【魔力】がとも〔神〕が言っていたし、このどちらかか、両方が無い物質ではここの【魔物】に対して効果がないのかと推察。
7、ダンジョン内で入手した水を飲んだだけでレベルが1に上昇した。
8、落ちている石での投擲や殴打には魔物に対してダメージを与えてる感じがする。
9、落ちている石は【ダンジョンの石 Lv2】と持った瞬間ポップアップされる。
「よし、今の処はこれだけだな、この先も慎重に進んでなんとか脱出するぞ」
「「はいっ」」
この後も数回の魔物との接近はあったが、なんとか気付かれる事もなくやり過ごしながら進み、3名もの被害を出しながらもなんとか上の階への階段を発見した一行は、階段を上がった近くで用心しながら一夜を過ごす事にした。水も残り少なく、糧食も僅かであと1日持つかどうかであったが。
この時、階段下で野営しなかった事が運命を分けるとは誰も気付いては居なかったのである。
お読み頂きありがとうございます。




