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地球の管理者が決まりました。  作者: ルドラ
第一章 試練編
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第十一話 一部試練者達の今、娘さん等の思い。

 日本の深夜日付変更前に飛び込んで来た速報で混乱する人々の事など知る由もない、試練を課せられし者の現状。


 ◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇


 茨城県ひたちなか市陸上自衛隊勝田駐屯地所属の6名は落下直後から僅か数分の短い話し合いで、迅速に行動を開始した。


「佐伯3等陸尉殿、先ほどの〔神〕なる存在の言う事はどう言う事なのでしょうか?」

「分からん。分からんが、話の内容からはここに救出隊が来る事はないだろうとは判断できる。それに、目の前に【ステータス】なんて物が見えるようになってるのだ。状況を鑑みるに我々は試練とやらに挑む人員として選ばれ、この【ダンジョン】から無事に脱出するべきなのだろう。無線も繋がらないし、スマホも電波が無い状態だしな」


「丹後2等陸曹、現在の我々の持つ装備品の確認と糧食の残量確認を急ぎ行え。

 準備が出来次第移動を開始する。【魔物】なる存在も居るようなので細心の注意を払いながら移動するものとする。装備品の僅かな音漏れや足音にも注意しするように!」


 そこからは迅速に行動に移し、〔神〕なる存在に言われた安全地帯を全世界の試練挑戦者たちの誰よりも早く出立したのであった。


 慎重に慎重を期し、10メートル程度前方が見渡せる通路を進み、最初の広間に到着した6名はそこで初の【魔物】と遭遇するのである。


「佐伯3等陸尉、銃弾が弾かれます!」


 その【魔物】の見た目は、ナメクジだった。ただ大きさが跳び箱の3段目程の大きさがあり動きはそれ程早くは無く、逃げる事も可能なのではあるが、その遭遇の仕方が悪かった。


 慎重に進んでいたにも関わらず、広間に侵入し辺りを見回し次に進むべき通路を発見し移動を開始した直後の事である。頭上より隊列の中央に居た、千葉1等陸士の背中へと落ちてきて、千葉1等陸士に張り付いたまま、今の状況に陥る。


「小銃も拳銃も、銃弾は着弾直後に弾かれてます、跳弾に注意が必要です」


「ナイフでの刺突もダメです、刺さりません。」


 ここで、3等陸尉の佐伯が素手でナメクジに掴みかかり、力一杯引っ張り引き剥がしナメクジを隊員の居ない方向へ放り投げる事に成功するもナメクジは健在でありまた、ナメクジ体表の粘液が自分の掌に絡みつきその手の器用さを奪われてしまっている。


「触った感じは柔らかかったぞ。それに粘液もかなりの粘度があり手が使えないが、なぜ銃弾が弾かれたのが分からん。」


「佐伯3等陸尉殿、この後どうしますか。千葉1等陸士は背中の装備と衣服が溶かされ背中の皮膚も僅かに炎症を起こしています」


「応急的に持っていた水で濯いでる所であります」


「佐伯3等陸尉殿も手を濯いでください。その粘液に溶解成分があると手がなくなります」


「ああそうだな、そうさせて貰おう。そして速やかに退避するぞ。【魔物】の動きは緩慢だ。急ぎ足で次の通路まで移動だ」


 背後を警戒しながら通路に飛び込みしばらく進んで、背後からの追跡が無い事に安堵し、通路の壁を背に全員が座り込んだ。


「佐伯3等陸尉殿、銃弾が効きませんでしたし、ナイフの刃も刺さる事も切断する事も出来ませんでした!」


「自分が掴んでみた感触で言えば、非常に柔らかくブニブニした感触で体表は粘液で覆われてたな。粘液には攻撃性は無い様で、手は無事だが千葉1等陸士の方はどうだ?」


「はい、命に別状はありませんが、千葉1等陸士が背負っていたバックパックが溶かされ中の物の大半を失いました。あと背中の皮膚が赤くなり炎症を起こしてる感じです。意識も体の動きにも今の所は影響は無いようです」


「思っていたより状況は厳しいな。更に注意しながら進むぞ。もたついていても食料の残量も少なければ、飲食物を手に入れる方法すらまだ確立されてないからな」


「「「「はっ!」」」」


 注意に注意を重ね何とか【魔物】との遭遇もせずに上階へ移動できる階段を見つけ上階に移動すると、そこは広々とした平野のフロアであった。


 慎重に索敵しつつ平野を進むと小高い丘の向こうに、池と言うには大きすぎるが、湖と言うには小さすぎる感じの池を発見し、池の畔にこじんまりとした林があり、水源を確保するのと同時に野草や茸の類も見つける事に成功する。


 ただ惜しむ事があるとすれば、この林で木の枝を加工し鈍器でも用意しなかった事が、運命を分ける事になろうとは。


 なんとか飲食物を手に入れたまでは順調だったと言えよう、だが順調だったのはここまでであった。


 ◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇


 アメリカユタ州に出現した【ダンジョン】に挑まされてる人々


「おい、さっきの声の主は〔神〕と言っていたが、なんなんだここは?」

 最初に体格のがっしりした男性が疑問を口にする。


「俺に聞かれても、分かる訳ないだろうが」

 中背の男性が返答すると。


「私たちどうなるのよ!」

 ちょっと高飛車な女性が聞いてくる。


「知るかよ!、俺も聞きたいわ!」

 がっしりした男がやけくそに言い返すが


 実に纏まりの無い連中のようだ。


「おい、見てみろよ【ステータス】が見えるぞ」


 男はそう言って、自分の目の前の空間を指さすが周りの連中には見えて居ない様であった。


「何も見えないが?」


「そうじゃない。「ステータス」と言うんだ。そうしたら目の前に映し出されるのが見える」


「うお、なんじゃこりゃ」


「これなら、【魔物】が居たとしても戦えるんじゃないのか?」


「むり、私には無理よ!、ここで救助を待ちましょうよ!」


「なんなのよこれは、誰か助けに来なさいよ!」


 スマホを見ながら911しても反応が無い事で更にヒステリックに喚き散らしてる何処かお嬢様っぽい雰囲気の女性に対して冷静な言葉が投げかけられるも。


「それは無理だ。〔神〕も言ってただろ、外からの救助は来ないと。【ダンジョン】入口は封印されて誰も侵入出来ないってさ」

「じゃあどうすればいいのよぉ!」


 更にヒステリック度がヒートアップして、手が付けられない様相が漂い始め。

「知るか、俺が聞きたいわ」


「おいおい、落ち着けよ。こんな状況で落ち着けってのも変なんだけどさ、喧嘩してても良い事なんかないだろうがよ。それに、ここで救助隊を待つ?何日待つつもりなんだい?食料どころか水すらも無いんだぞ。どうするんだい?」


「黙って聞いてたが、俺はここから移動するわ。そのヒステリックな女とは一緒に行動は出来ない。【魔物】をやり過ごしたい時に、喚き散らされても良い事はなさそうだしな」


 そう言って、一人で立ち去る男性が広間を出ようとした所で、女性が一名慌てて後を追って行ったのであった。


「あー行っちまったな、まぁ奴が言う事も一理はあるから冷静になろうぜ」

「とりあえず、俺の名はローガンだ。君らは?」

 がっしりした男性が自分の名を名乗り他のメンバーの名を聞いてくる。


「私はエイヴァよ」

 高飛車お嬢様風の女性が名乗る。


「自分はカズヤ、日系アメリカ人だ。カズと呼んでくれ」

 中背の男性が素性を明かし。


「私はハーパーです」

 最後の女性が名乗る。


「2人行っちまったけど、どうする後を追うか?」


「私は嫌よ協調性の欠片も無い人とは居られないわ」


 この女、自分の事は棚上げして、広間を出て行った2人を協調性の欠片も無いと断言した事に、他3人は唖然とし、呆れるのであった。


「さて、彼女はこう言ってるが、他に意見はある?」


「今から追いかけて行った所で、彼の態度からすると同行は出来ないだろうな。こちらはこちらで脱出方法を考えて動く方針にした方がよかろう。」


「そうね、それが良いわ、あんな協調性の欠片も無いのとは無理よ」

 自分が言うかって空気が流れるが、この女はちっとも気付いても居ない。


「ならどうするの?」


「そうだなー各自でもう一度【ステータス】の確認をしてから、自分に出来そうな事を考えてみるってのはどうだろうか?」


「そうするか。」


「「「「ステータス」」」」


 各自がステータスを確認し能力値の数値がどれほどの事が出来るのか体の動きから力の強さまでをじっくりと検証し、お互いに相談しあいながら弱点を庇えるようにして時間が過ぎていくのであった。

 各々がステータス検証に没頭し、相談して過ぎ去った時間が【ダンジョン】に落下してから3時間が経過した頃だろうか、自分等の落下時に一緒に落下した瓦礫が空中に溶けるように消え去った瞬間、瓦礫の有った場所から一匹の蛇が現れる。


「おいおい、蛇が居るぞ。長さは8フィート(244センチ)程か。サイズは普通に見えるが【魔物】なのか、太さも俺の手首ぐらいあるんじゃないか。」

「なんでよ、ここは安全地帯って言ってたじゃない。どうして【魔物】が居るのよ、〔神〕は嘘を言ったの!?」

「どうするのよ、いきなり【魔物】とか言われても武器も何もないのよ。如何すれば良いのよー」


 この女、【魔物】を前にしても、またもやヒステリックに騒ぎ出し、ついには大声で喚き散らし叫び出してしまった。


「おい、騒ぐな気付かれただろ。馬鹿かお前は」


「はぁーあんたに馬鹿とか言われたくないわよ。私は悪く無いわ、早くなんとかしなさいよ!」

 挙句、自分は悪く無いと言い切る、まったくもって呆れる存在だ。


「咬まれたり、巻き付かれたりしないように注意しながら頭を潰すぞ!チャンスがあれば全員で仕留めるぞ」

 そう言った瞬間、蛇が獰猛な速度で襲い掛かってきた。


「は、速いぞ、ぐあぁ」

 ローガンが蛇の動きの速さに驚いて回避しそこねて腹に突撃を食らってしまい背後に弾き飛ばされてしまうが、幸いにも咬まれたり巻き付かれたりしなかったのは、運が良かっただけなのかもしれない。


「くそ、見た目のサイズ処じゃないぞ。なんて突進力だ。痛ててて」


「大丈夫か。バタフライナイフじゃ刺さりもしないぞ。硬すぎる」


 カズが所持品のナイフで突き刺してみるもその鱗は硬く突き刺さる事もなかった。それどころか力一杯突き刺したせいで、ナイフの切っ先が欠ける始末。

 そうこうして回避しながらもナイフで切り付けを行っていたが、ナイフの刃がボロボロになってしまう。


「キャアアア、嫌ぁ離して、痛いぃぃぃ、助けて!お願いよ、早く解いて、ゴフッ、ぃゃ、、、、」


攻撃の手数が減ったのを感じた蛇がハーパーの足首に巻き付いたかと思った一瞬でハーパーの身は蛇の方へ勢い良く引っ張り込まれ巻き付かれた足首から足へ遂には胴体に巻き付かれてしまい、あまりの絞め付けの強さにより、ハーパーの胴体と足は絞め千切られてしまい、その命をあっと言う間に終わらせられてしまう。


「うわわわ」

「ひぃぃぃぃ」


 このヒステリック女ことエイヴァは、悲鳴を上げながら広間から唯一の出口である通路の方に全力で逃走してしまい、取り残された男2人が呆気に取られた一瞬で、カズはハーパーと同様に足首に巻き付かれ、ローガンは腕を噛みつかれてしまい、逃走する機会を一瞬で奪われてしまった。


「わわっわ、離せぇぇぇぇ」


 カズは巻き付かれた足を引っ張られ壁に叩きつけられてしまい、激しく頭部を打ち付け意識混濁し、意識が回復することなくその生を終える。唯一の救いは死の瞬間を認識しなかった事だけかもしれない。

 咬み付かれていたローガンもまた、壁に叩きつけたカズを離した蛇によって絡みつかれて、抗える事の出来ない締め付け力によって絞殺されてしまい、その生をあっけなく終わらせられた。


 蛇は絞め殺した2人と意識混濁のカズを丸呑みで腹に収めると、取り逃がしたエイヴァの後を追って広間から出て行くのであった。


 その後、【ダンジョン】内での出来事など知る由もない地上の人々は、アメリカユタ州の【ダンジョン】の結界には数値を示す事なく黒く変色し【ダンジョン】内に生存者が居ない事を表しているのを確認し、【ダンジョン】内に落ちた人々の家族や友人は落胆するのである。


 ◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇


 僅か1日足らずで、2700名に上る犠牲者を出したと大騒ぎし声高に被害者の追悼とかお悔やみや見舞金等の話をする人が出て来るが、地上の人々には挑戦者の受けたその過酷さ等知る由もなく、数値だけで驚愕するものであったが、後に自分等も生活の為に挑んで行かないと駄目な事になるとはこの時は誰も思ってもいなかった。


 世界は確実に〔神〕なる存在により、その在り方が変わって来てしまっているのだが、その事に気づく者も居らず、またこの試練の期間が〔神〕の予測よりも大幅に長期化するのであった。


 ◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇


 【山之内 桜】視点

 

 私は山之内桜13歳。日曜日に親友の岬と夏美、それと夏美の妹の春美ちゃんの4人で線路下の公園で待ち合わせをし、春美ちゃんが逆上がりが出来ないとの事で、練習する事になっていた。


 お昼ご飯を食べてからの集合だったので13時過ぎだろうか。4人で集まって鉄棒で練習しようと思っていたのだが、鉄棒付近に3,4歳くらいの女の子が鉄棒の支柱を手で掴んでくるくると支柱回りを回りながら遊んでいたので、近付いて行き、「お姉ちゃんたちも鉄棒を使って良い?」と声を掛けると、「うん!」っと返事してくれたので、女の子の邪魔をしないように春美ちゃんの背丈にあった鉄棒を選んで練習をしていたんだ。


 練習中も女の子は何が楽しいのか、支柱を掴んでクルクル回りにこやかにしてる。鉄棒から少し離れた位置によちよち歩きをしてる赤ちゃんがこっちに来ようとしてるのも見て取れる、あの赤ちゃんのお母さんは気付いてない様子だから、自分が赤ちゃんに意識を向けてたんだ。


 よちよち、よちよち、本当にたどたどしく歩く赤ちゃん、カワイイ。


 鉄棒の支柱で遊んでた女の子もあかちゃんに気付き、名前を呼びながら近付いて行く所を見ると姉妹のようだ。女の子があかちゃんに近付いてからまた鉄棒の支柱に突進してきて支柱を掴んではクルクル回りだしたのを、赤ちゃんが見ていて、よちよちと近寄ってくる。


 赤ちゃんのお母さんは、ママ友とでも言うんだろうか赤ちゃんを胸に抱いた女性と楽しそうに話し込んでて、赤ちゃんから意識が離れてしまってる様子。


 そう思って、朗らかな気持ちで赤ちゃんを眺めていると、突然それは起こったの。


 いきなり足元の地面が無くなって、私達4人と鉄棒の支柱で遊んでた女の子が落ちたの。私達は突然の事で悲鳴を上げる事しか出来なかったの。


 悲鳴を聞いた赤ちゃんのお母さんだろうか、女の子と赤ちゃんの名前を叫び悲鳴を上げているのがわかるけど、もう自分達も女の子も赤ちゃんも落ちてしまってる、落ちてる筈なのに落ちるスピードがゆっくり感じるのは、こういった危機的状況で感じる事のある景色がスローに流れるってあれなのかな?


 そんな事を考えてると、後ろから声が掛けられる。「お嬢ちゃん、お嬢ちゃん、手を伸ばしてあの子供と赤ちゃんを、おじさんの所に引っ張れるかな?」って行き成り言われたの。


 首だけを後ろに向けてみると、小太りなおじさんも一緒に落ちてる事が分かった。でもおじさんの言いたい事も分かったので、返事をしてナツとミサキに協力して貰って、女の子と赤ちゃんを引っ張ろうとしたけど、空中だと自分も引っ張られる感じで引き寄せれない感じだったの。


 そうと分かると、おじさんは全員で手を繋いでおじさんが引っ張ると言い出したので、言われたとおりに女の子と赤ちゃんまでを、私達4人で手を繋いで私がおじさんと手を繋ぐことになった。仕方ないじゃない私が一番おじさんの近くに居たんだし、おじさんの手はちょっと汗でべた付いた感じがしたけど我慢したもん。


 おじさんが全員を引っ張るとおじさんの体にぶつかる様に全員が近くに引き寄せられた。デブっとしたおじさんのお腹にぶつかったよ、トホホ。

 言われたように、女の子と赤ちゃんをおじさんに受け渡すと、おじさんは手慣れた手つきで女の子を首元に抱きかかえ、赤ちゃんを片手で横抱きにして胸元に赤ちゃんの頭をくっ付ける形で抱きかかえてた。


 しばらく見ていたが、おじさんは女の子と赤ちゃんの背中を両手で器用にトントンとリズムよく触れては離すを繰り返して、落ち着かせてるようだ。


 つい、ジーっと見すぎたのだろう。おじさんも苦笑いしながらおじさんにも何も分からないよと言われて、落下速度が遅いけど着地時に衝撃があるのかもしれないから注意するようにだけ言われたんだけどね、衝撃もなく普通に地面に着地したよ。


 その後は〔神〕様の声が広間内に響き渡って、ここは【ダンジョン】で【魔物】が居たり罠があったりするみたい。私達は試練に偶然選ばれたみたいなの。訳が分かんないよ。怖い。


 私達が不安になってる中、おじさんが自己紹介しようって事を言い出したんだけど、おじさんの名前は阪本 仁って言うそうだけど、知った所でおじさんとしか呼ばないだろうからって事で好きに呼んでと言われたよ。不安になってる私達に気遣って少しでも気持ちが軽くなるように言ったのかな?


 私たちはおじさんに自己紹介して、女の子と赤ちゃんの事を聞かれたけど、知らない子なので素直に知らないと答えた。


 おじさんは、すごく優しそうな顔で女の子と赤ちゃんに接してる。


 ふと、おじさんが【ステータス】が見えると教えてくれたので、自分もおじさんに言われた通りに「ステータス」と声に出すと、ナツやミサキに春美ちゃんも同じように声に出したので【ステータス】画面を出したんだと思う。


 そこでナツが声に出して内容を読んじゃったのが駄目だった。はっきりと聞こえちゃって、自分も同じ個所に目が行ってたから、本当に凄く恥ずかしい思いをしたんだから!

 私は、思い出したくもない恥ずかしい思いをしたけども、ミサキも春美ちゃんも顔を真っ赤にしてたから、同じなんだと思う。


 そこからはしばらく静かな時間が過ぎたんだと思う。私達が自力回復するまでおじさんも聞こえなかったフリをしてくれたんだと思う。

 

 しばらくして復帰した私は、おじさんに【スキル】は何もないよと答えるのが精一杯だった。


 そこからは、おじさんは女の子と赤ちゃんに戦わせるなんてのは不可能だと言い、今の現状で何か案はあるかと聞かれたけど、何も思い浮かばなかったから首を横に振るだけしか出来なかった。


 そしたら、おじさんは良い案はないけど、しないと駄目な事はあると言う。なんだろう?

 ミサキが何か聞き返すと、おじさんは食べ物と飲み物、それに武器に使える物や、女の子や赤ちゃんとの移動の際の注意が必要と答えた。考えてみたら確かに言われた通りだ。食べ物がなければ死んじゃうし、魔物から隠れてる時に、女の子や赤ちゃんが泣きだしても困る。


 おじさんは、抱き抱えてた二人を私たちに抱かせて、辺りを見てくると離れていった。女の子も赤ちゃんも寝ちゃってて、カワイイ。こんな時じゃなければ楽しかっただろうなー。


 おじさんが鉄棒の残骸を集めて来た時に女の子が目を覚まして、おじさんが女の子の名前と赤ちゃんの名前を上手く聞き出してた。本当にやさしそうに話し掛けてから、二人をもう少し見といてと頼んで鉄棒を一本手に持って広間の壁を叩いたりしている。


 マイちゃんが歩き出したので、私とミサキが後ろを着いて行くと、中央のアスファルトの瓦礫の所に大きなウサギが瓦礫に挟まれてるのが遠目から見えて、ミサキがおじさんを呼んだらマイちゃんがおじさんに、ウサギを助けてと頼んだ後に走り出したの。


 おじさんが大きな声でマイちゃんを止めてと叫んだので、私は一気に走り出してマイちゃんを捕まえたのね。そしたらマイちゃんの目の前の地面に曲線が引かれたのよ。そしてウサギの方からとても怖い雰囲気が伝わってきて、マイちゃんを抱き抱えて後ろに後退ったの。


 で、おじさんが集まってって言うからマイちゃんを抱いたままミサキとおじさんの所に行くと、おじさんがあれは【魔物】じゃないのかなって言いだして、怖いから今のうちに倒すって言って私達にナツの所に戻っててと告げ瓦礫に上り【魔物】に飛び込んで行ってたの。

 しばらくして、おじさんが戻ってきたんだけど、手の拳が痛そうに赤くなり血も滲んでた、そして【魔物】はまだ倒せてないらしい。おじさんがまた広間をうろちょろし出して、ポケットに何かを詰めて両手で大きな岩を抱えて【魔物】の所に行っちゃった。あのウサギは本当に怖いよ。


 途中、赤ちゃんが泣きだしたのをおじさんは気にしてナツに指示を出してたけど、おじさんもこっちに戻って来たそうにしてるが、【魔物】を倒すのを優先するって言って殴ってた。


 しばらくして、殴る音も聞こえなくなったかと思ったら、おじさんが動かなくなってたので見てると、おじさんのズボンがいきなりずり落ちて黒のボクサーパンツ姿を晒したのを機に、ミサキが大爆笑し始めて広間内に笑い声が響き渡ったの。顔を赤くしたおじさんがズボンを穿きなおすのを見ながら、しばらく動かなくなってたけどどうしたのと声を掛けちゃった。


 そしたら【レベル】が上がったらしくて、【スキル】まで手に入ったって言ってたのに、先に赤ちゃんが泣いた理由の確認をしてくるってちょっと呆れたよ。紙おむつを外された赤ちゃんを抱っこしてたナツに自分のリュックサックからTシャツを出して巻いてあげててと言うと、ミサキが勝手にリュックサックを開けて良いのか聞くもんだから、おじさんも気軽に良いよと答え【スキル】の確認するって言った後におじさんが崩れ落ちたので、ナツがどうしたのかって慌てて聞いてたのに、ミサキがお菓子の袋を持って食べて良いか騒ぎ出したら、おやつタイムにしようって言いだしたの。


 こんな時なのにお菓子タイムって、大丈夫なのかな。私は不安で一杯の心の中を外に出さない様にしてたんだ。それなのに、このおじさんったらリュックサックから、水とカルピスの原液とプラスチックのコップを取り出したと思ったら、私達にもお菓子を食べなと、マイちゃんと赤ちゃんを抱き寄せて自分の膝の上に座らせて、あやしだすのよ。そしたら次に言って来たのがもっと気軽に話して良いよだって。知らないおじさんなのに気軽に接せる訳ないじゃない。


 それでも今は空気を読んで、少しでも気を落ち着ける為におじさんの提案に乗って私も苗字で呼ばれるより呼ばれ慣れてる名前呼びで良いと言うと、私達を「ちゃん」付けで呼んできて、びっくりしたよ!

 一気に距離を詰めすぎじゃないの!って思ったけどおじさんのお子さんと同じぐらいの年齢の私達だからって理由だった。


 その後はおじさんはまた広間の中で持ち運べなかった大きな岩と本を運んできたりと動き回ってたけど、私達じゃ持ち上げる事も出来ない謎ルールで力になれなかったんだよね。なのでおじさんに頼まれた裁縫を引き受けてTシャツを切り裂いて布おむつってのを作ったよ。

 おじさんが手に入れた【スキル】を確認すると言って金色に光る四角の中に入った瞬間におじさんも金色に光る四角も消えちゃったのを見た瞬間、私は不安に押しつぶされて不安で不安で、おじさんが出て来た時に大騒ぎしちゃったの!恥ずかしい。


 そしてどうするのかと思い悩んでたら、おじさんが中央の瓦礫の山が無くなってると言い出して中央に移動して色々見始めたんだよね。私達も着いて行ってみたけどあれだけあった瓦礫のほとんどが無くなってるのよ。ハルちゃんが消える瞬間を見てたらしくて空中に溶けるように消えていったらしいのよね。おじさんもその話を聞いて、ハルちゃんに感謝してたよ。何も分からないより、少しでも情報が有った事が助かんるんだってさ。よくわからないけど大事な事なのかな?


 そこからは、色々と今後の対策を考えたんだけど、一番驚いたのはおじさんの手に入れた【スキル】が安全な空間を異空間に作って私達を避難させられるって物だって。おじさんは他にも選べる【スキル】が有ったと言ってどんなものか教えてくれたけど、その中に一人だけで脱出する【スキル】が有ったのにそれを選ばなかったって事が、このおじさんの事を少しは頼っても大丈夫そうかなって思う切っ掛けになったんだと思うな。


 そうこうしてたら、おじさんがそろそろ夜だよと言い出して、私たちに寝て良いよと言い出して【魔物】のドロップ品の皮を下にひいてくれて寝る事になったんだよね。こんな時でも即行で寝れるミサキに呆れるやら羨ましいやら・・・


 朝なんだろうか、一番最初に起きたらおじさんに挨拶されたけど、頭が半混乱してて現状理解が出来なかったんだよね。やっぱり昨日の出来事は夢じゃ無かったんだ。


 おじさんの作った異空間内に入って色々とおじさんが調整した結果、避難するにしても食料以外では取り合えずの不便さは感じないかな。水も流してくれたし、そのお水を飲んだら【レベル】が上がって驚いたんだよね。その後おじさんは脱出の為に移動するって言って異空間から出て行っちゃったので、私達は

おじさんのリュックサックに入ってたタオルを勝手にお借りして、水浴びしたりしたの。チーちゃんがお漏らししたのを切っ掛けにね。


 その最中におじさんが戻って来たのを気付いた時にはすごくドキドキしたよ。おじさんが見に来ないかなとか、知らないおじさんに裸を見られるのは死ぬほど恥ずかしいもんね。そんな私の気持ちを他所におじさんは時間を潰してくるよとミサキに言って出て行っちゃったんだけどね。少しホッとしながら水浴びを終わらせて、しばらくするとおじさんが帰って来たのよね、大きな箱を抱えてさ。


 箱の中にはお肉と人参とポーション2本と本が2冊入ってたの。本は灰色の見た目でおじさんが自分で使った銀色の本よりはみすぼらしいかな。でもおじさんは灰色の本は【スキル】の本だって言って、私達に使わせようとしてるのよ。おじさんが使った方が脱出に役立つんじゃないのって思ったよ。


 で、色々と話し合った結果、料理の【スキル】はナツが、火魔法の【スキル】は私が覚えたのね。火魔法は私がついつい興味に抗えなくて覚えたいって手を挙げちゃったんだけどね。

 その後はおじさんと一緒にお昼ご飯を作って食べたんだけど、ナツの料理はおいしかったよ。もっと材料があれば美味しい物も作ってもらえそうだ。おじさんは食べ終わると本当にしんどそうにしながら少し休むと言って柔らかくした地面の方に移動して寝ちゃった。食べた後に寝るのはどうかと思うけど、よくよく考えたら、おじさんって昨夜は私達の事を見守ってくれて安全地帯だと言われてたけど見張りしてて寝てないじゃない。それなのに脱出の為にすぐに移動開始したりして、本当に疲れてたんだね。


 しばらくは、私達はおじさんから離れた位置でマイちゃんとチーちゃんと遊んでたんだけどね。マイちゃんがおじさんに飛びついたんだけどおじさんは起きなかったの。そしたらマイちゃんがおじさんに抱き着いたまま寝始めて、チーちゃんもおじさんの横に寝かせて、私達は少し話し合ったの、このおじさんは信用しても大丈夫じゃないかってね。


 おじさんの作った異空間内部も暗くなってきて、私達も眠くなったけどおじさんを起こす事はしなかったのね。ミサキはチーちゃんの近くで寝ちゃってたんだけどね、ははは。

 しばらくして、チーちゃんが泣き出したの。そしたらおじさんが真っ先に起きてチーちゃんの様子を見てたのは驚いたかな。マイちゃんが抱き着いても起きなかったのに、赤ちゃんが泣くと起きるって。


 チーちゃんがお漏らしして濡れて気持ち悪かったようで泣き出したみたいなの。おじさんは手際よくおむつを外して他のに付け替え始めてチーちゃんを抱っこしてあっさりとチーちゃんを寝かしつけちゃった。すごい。


 おじさんが話しかけてきて、おむつの洗濯してくると言ってたのに異空間から少しの間出て行ってしまって少しして手に何かを持って戻ってきた。おじさんは眠そうにしてる、私とナツをみてはにかんだ様に、寝て良いよって言っておむつを手に水路の方に行っちゃった、ナツと顔を見合わせて寝ちゃうかって頷き合って寝る事にした。無事にお母さんとお父さんの所に帰れますように・・・。

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― 新着の感想 ―
[一言] 自衛隊の階級は基本的に三尉や三曹、二士など略して言いますよ、後どんなに目上であっても殿なんて言いませんw
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