潜むもの #2
町を出て、依頼のあった村に向かって歩いていた
その村は周りを山や川に囲まれており、のどかな場所だ
「オオカミやゴブリンではなさそうだよなぁ」
「……案外人だったりするかもしれませんよ?」
「ありえなくはないな。むしろそっちのほうがやり易くてありがたい」
人なら対処も簡単だ
100人とかいるなら話は別だが…
「いや、案外何とかなるかもな」
「……?」
だが、そんな大人数で気づかれないはずがない
そんな人数なら食料の確保だけで一苦労だろう
「今の状態ではまだ何とも言えんな。村の人に聞いてみなければ」
「……まもなく着きます」
「どうにも静かな村だな」
見えてきた村に活気はなく、出歩いている人も見当たらなかった
「まさか全滅でもしたか?」
「……だとすればだいぶ厄介ですが」
村の入り口のほうにあった家の戸を叩いてみるが、反応はない
仕方なくほかの家に行くが、どこも反応は帰ってこなかった
不審に思って最後の家の扉を開けて中に入ると
「…いますね」
「あぁ、だがあれは死んでるな」
村人は家の床に倒れていた
口元には血の跡があり、腕はあらぬ方向を向いている
この時点でオオカミやゴブリンの線は消えた
オオカミならこの状態で放置することはない
巣に持ち帰って餌となるか、その場で食べられるかだ
ゴブリンも巣に持ち帰り餌にするだろうから放置することはないだろ
「しかし外傷がないな」
「剣やかみつかれた後もなく死んでますね」
近づいてよく見ると折れているのは腕の骨だけではなかった
「足、背骨、肋骨」
「……全部折れてますね」
「いよいよ怪しくなってきたな」
どうやれば全身の骨をここまでバキバキにできるのか
それに…
「剣や弓はどうやら準備していたようだ。だが壁に立てかけたまま使われた様子はない」
「…つまり、相手は気づかれずに村人を殺したと」
「たぶんな。しかも村の中にも争った形跡どころか血の跡すら見ていない」
「……面倒な依頼になってしまったみたいですね」
相手は隠密行動が得意でさらに、全身の骨を折るような残虐性と力を持っている
食料や金品をそのまま残しているあたり、盗人の可能性も低いだろう
そして何より厄介なのが
「どこに行ったかの手掛かりが全くない」
「…血の跡どころか足跡すら見つかりませんね」
「これはまいったな。どこに行ったか見当もつかない」
いっそのこと占いで方角を決めて探してみるか
「…絶対に無駄足になるのでやめてください」
「とはいえこのままじゃ帰れん。今日はこの家に一泊してまた明日調べよう」
「わかりました」
夜が近づいてきたので、死体が無い家で一泊することにした
幸い食料はそのままあったので少しもらった
レアは気が張って疲れていたのか飯を食べるとすぐに寝息をたてて眠りに入ったようだ
俺も少しうとうとしてきて
「何か来たな」
気配で目が覚めた
足音や息遣いを聞いたわけではないが
確実に何かがいる気配がある
俺は家からそっと出てその気配に向かって隠れながら近づいていく…
「なんて面倒なことはしないがな」
レアを起こさずに家を出るとこまではしたが、こっそり近づくなんて面倒なことはしない
あえて足音を立てながら、その気配に近づいて行った
さて、村を壊滅させた犯人を見ようじゃないか
「人ではないと思っていたがまさかな…」
「……」
俺の目の前にいるのは蛇だった
ただ体長は優に10メートルはあり、上半身は人のように見える
「ラミアか…」
ラミアとは半人半蛇のモンスターだ
通常は深い森の奥におり、人里まで降りてくることはないのだが
どうやら今回は違ったらしい
しかし、普通は大人数で遠距離から仕留めるモンスターだぞ
「面倒だからおとなしく森に帰ってはくれないか?」
「シャァアア!!」
どうやら話し合う頭はないようだ
となれば
「どうやら、殺すしかないようだ」
俺が死ねばレアが危険だ
負けるわけにはいかないな
誤字脱字、意見等あればお願いします。