金足りぬ
朝、ベットの上で目が覚める
あの後町まで行き、宿をとった
金はなかったが、乗ってきた馬を売って宿代を作ったのだ
「とはいえ、このままじゃ文無しだな」
俺一人なら野宿でもなんとかなるが
「うぅーん」
今はレアがいる
可愛い少女に野宿はきついだろう。何よりそんなことはさせたくない
「とはいえ、俺ができることなんてほとんどないぞ……」
今まで奴隷として生きてきた俺にとってできるのは力仕事、殺しに……
「討伐くらいか……」
基本的に各町には傭兵ギルドがある
傭兵とは言え扱い的には自警団のような役割だ
警備、治安維持、中には探し物などの雑務までこなす
そして仕事の中にはモンスターや獣の討伐もある
「腕一本で生きてきたんだ、いまさら別のこともできないか」
基本的に最初に登録さえしてしまえば自由に仕事を受けられる
なら……
「今日の予定は決まったな」
俺はレアを起こさないようにゆっくりとベットを降りた……
「うぅーん。…おはよう……ございます。ガイル…様」
つもりだったのだが、降りた瞬間に盛大にベットが揺れた
「悪い、ゆっくり降りたつもりだった」
「いえ……それよりどこか行くのですか?」
「あぁ、少しな。金がなきゃ宿も取れなくなる」
「それなら私が盗んでも……」
「それはだめだ」
女に犯罪をさせて稼ぐなんて情けないことはできない。何より……
「レアにそんな生き方はしてほしくない。分かってくれ」
「分かりました。では、私はガイル様のお手伝いをさせてもらいます」
自分の女ぐらい自分で稼いで食わせてやりたい
「わかった。それじゃあ準備して向かうか」
とにかくギルドに向かわなければ……
「ところでなんで様付けなんだ?」
「……こう呼ばれると男性は喜ぶと聞いたことがあったので」
レアは少し知識が偏っていそうだ
「ようこそギルドへ。登録ですか?受注ですか?報告は向こうのカウンターでお願いします」
俺とレアは町の中心地にあるギルドのカウンターに来たのだが……
「おい……お前…」
「…男性の方ですよね?」
「失礼ねぇ。れっきとした女よぉ?大人の女性にその質問は失礼なんじゃなぁい?」
「どこの世界に髭ずら、スキンヘッドで熊みたいな体形した女がいるんだよ……」
明らかに男性の姿をした受付嬢に用件を伝えた
「登録だ。討伐依頼を受けたくてな」
「了解しました。では手続きを行いますので奥の部屋へお願いします」
「さっきのしゃべり方はどうしたよ」
「毎回あんな話し方なわけじゃないですよ。少しからかっただけです」
「その見た目でそのしゃべり方も大概だぞ……」
別の職員に奥の部屋に通された
「ではこちらの書類にサインをお願いします」
「これは…まぁそうだわな」
「討伐依頼はもちろん、警備・治安維持も危険が伴います。当然事前に契約を交わし、命の危険があることを理解してもらう必要がありますので」
「あぁ…わかってる」
俺は書類の一番下にサインをし職員に聞いた
「次は何をすればいい?」
「以上です」
「以上?もう終わりか?」
登録というからにはいろいろ時間がかかるのかと思っていたが……
「手を抜いてるんじゃないだろうな?」
「……まさかそんな」
「……まぁいいだろ。これでいつでも依頼が受けられるんだな?」
「はい。先ほどのカウンターで受けていただけます」
さっさと受けて依頼を終わらせよう
ここ二日ほど何も口にしてないからいい加減腹が減ってきた
「さぁて、依頼にいくか…」
誤字脱字、意見等あればお願いします。