4話 失敗は時に親友を作る
学校生活2日目の放課後、
そのまま能取さんのお見舞いに行く事にした。
先生から聞いた住所が意外と家から近かったのですぐに能取さんの家へ到着した。
そしてインターホンを押して、数分経つと家の扉が開く。
そうすると能取さんによく似ている男性が出てきた、能取さんのお兄さんだろうか?
「磨琴?……」
その男性は僕の事を知っている様子だった。
「あの……能取さん…サクヤさんのお兄さんでしょうか?」
そう言うと不思議そうな顔をされた、
おかしな事を言った覚えは無いのだが。
「私にお兄ちゃんなんて居ない………」
そして不思議そうな顔のままそんな事を言い放った。
それはどういう事なのか?
まさか本人なのだろうか、そう思い1つの可能性が出て来たので、その事を質問してみる事に……
「もしかして能取さんの体質は僕と同じ、
『性別変化』なの?」
そう、ごく稀に同じ体質を持つ人が居るとされている、その事を知る人も少ないのだが都市伝説好き辺りは結構知っているらしい。
かく言う僕も戦時中にどこかで聞いた事がある。
「違う…『反映』……」
そう言う事か、確かにそれなら『性別変化』以外で、男性になる事は可能、恐らく体温の事は、
少々ややこしいのだが。
僕の場合元の体温が高い為、体温を下げると性別が変わるとなっているが、一般的な体温の人がこの体質を使用する場合は熱を出した場合に書き換えられると考えられる。
『反映』となると体質だけでは図れないが、あの初めて会った時の異常以上の雰囲気を含めると、学年1は能取さんと言う可能性が出て来た。
「朝日奈、ここに居たか。少々厄介な事が起きている、お前の本来の力を貸して欲しい。」
能取さんの強さについて考えていると、
急に後ろから声を掛けられる、溜先生だ。
「どうしたんですか?息を切らしてこんな所まで、何があったのか詳しくお願いします、魔法女王の力は余程の事では無いと使いたくありません」
「それがな、3年で『上位魔法使い』序列1位の御剣政宗が、何者かに操られて居るのか校内で、次々と他の『上位魔法使い』や『準上位魔法使い』を倒して暴れている。
御剣は学校内のどの人物よりも強い、教師も含めてな、そんな奴が何故暴れているかは少し検討が付いているが、それよりも先にあいつをどうにかしないと学校が危険だ、とりあえず学校に向かってくれ」
「確かにそうなると僕、否。
私の力で以外無理そうですね、分かりました。
私がどうにかします。」
そう言うと私は『体温調整』の魔法を解く。
「ああ頼む、ついて来い。それと能取お前は風邪を引いているんだから来るなよ?この風邪薬を渡すからそれを飲め。」
能取さんは風邪薬を受け取った。
「徒歩で向かう必要はありません、『瞬間移動』」
そして一瞬で校内に着く。
「驚いた!この魔法は使える者が数える程しか居ないと聞いているが、やはりお前だと当然使えるのか。」
溜先生もかなりの実力があるはずなのだが、それでもこれには驚いている様だった。
そして、周りを見渡すと、数々の生徒が倒れていた、その中には撃田君も、
気を失っている様だ。
「あと言い忘れていたが、御剣は普段の実力よりも強化されているらしい、それも含めてお前じゃ無きゃ無理そうだ」
学校に着いてから、さらっと溜先生がいちばん肝心な事を思い出し言ってきた。
そうしていると、御剣先輩がこちらに気付き、刀を持ち襲いかかって来た。
こちらも持っていた魔法女王専用の武器『朝日之琴杖』で何とか防いだ。
御剣先輩の攻撃が止むことは無く次々と仕掛けてくる、一撃一撃が重たい、そしてこちらから仕掛ける隙も無い。
かなりきつい、この私と同程度の強さがある、
何者かによって強化されているとは言え強過ぎる
元の御剣政宗と言うと男もかなり強いと言える。
流石教師に、教師の誰より強いと言われるはず。
このままだと流石に負ける可能性まで出てくる、
唯一の救いは操られ暴走し、理性を失っている事だ、まともな思考が出来て無い事もだが、
この場合に打って付けの魔法がある、
それを使用する事にした。
「『精神支配ノ解放』」
この魔法は存在するものの誰も使える者が居なかった伝説の魔法。
そしてそれが効いて来たようだ、しかし、暴れた反動で御剣先輩は倒れた。
「おい!暴動出て来い、お前の仕業だと分かっているぞ」
そう溜先生が叫ぶと逃げる影が見えたが、追えなかった。
「その暴動と言う人物は一体誰なんですか?」
「暴動強士一応この学校の教師で体質は『身体強化付与』任意の相手の魔力、身体能力を強化させるが暴走しやすいと言った物だが、到底あの国家兵器並への強化や理性が消えると言った事までは出来なかった、第三者が関わっていた可能性がある。
それと朝日奈、他の生徒が目が覚める前にお前は帰れ。
更に、騒ぎになる、後始末は私が何とかする」
そう言われ学校を去ろうとし、
校門をくぐり、その帰り道。
誰かが後をつけて来ている、
そして目の前に姿を現した。
「ゲッ!焔さん貴女だったのか。」
思わず、魔法女王の姿で名前を呼んでしまった。
「ク、魔法女王様が、な、何故、妾の名前をご存知なのだ?とても光栄な事なのだがのぉ」
当然理由を聞かれる、それもそうだ、魔法使い全員の頂点であるはずの魔法女王が数ある魔法学校の『上位魔法使い』ではあるがその中の生徒の端くれである人物の名前を知っているのだから。
「え!?え〜と、クラスメイトだからね、誰とは言えないけど名前を知ってて当然だよ。
焔さん『上位魔法使い』だし。」
し、しまった。テンパりすぎて本当の事を、色々話し過ぎた。
「だけど、焔さんこの事は絶対他の人には話さいでね、私達の秘密だから」
悪足掻き程度に最低限のフォローをしておく、
これで納得してくれるといいのだが。
「分かったのじゃ、魔法女王様。
それにこんな特別な秘密など、誰にも教えとうない、独り占めしかないのだ!!
それと……。」
笑顔でそう言うと、言葉の途中でもじもじし始める。
「魔法女王様の秘密だけ知るのは、不公平じゃと…思うのでな………妾の秘密も知って欲しいのじゃ………」
恥ずかしそうに、そう言うと、今度はみるみるうちに姿が変わって行く。
「これが妾の正体…体質の『玉藻』なのじゃ。
そ…それと、妾の事は陽狐と呼んで欲しいのじゃ」
焔さん…いや陽狐ちゃんの姿には、白に赤の線が所々に入った綺麗な耳と尻尾が生えていた。
凄くふわふわしてて柔らかそう……
「陽狐ちゃんよろしくね、私の名前は朝日奈磨………あ…。」
やってしまった。いくらやらかせば気が済むんだろう私。朝日奈まで言っちゃったし、そしたら、
磨琴か翼しか無くなるじゃん。
「フッ……フフフフフフッ。それは言ってしまっておるでわは無いか?………ってもしや妾………」
私の仕出かしたミスに思いっきり笑う陽狐ちゃん。だけど、何かに気が付いた様子で、顔が青ざめて行く。
「申し訳有りませぬ、魔法女王様、いや、磨琴様。今朝はあの様な事を言って侮辱してしまい。
知らぬ事とは言え許される事では無かったのじゃ。煮るなり焼くなり好きにして下され」
私の正体を知る事によって今朝の事を思い出し、
アワアワしながら、必死に謝罪してくれている。
かわいい。。。
「それじゃあ、遠慮なく……………私と友達になって!!」
「分かったのじゃ…………って、そんな事妾から頼みたい事なのじゃが、そんな事で許して下さるのか?」
私の要求にものすごく驚いている。
「うん。いいよ、正直今朝はちょっと嫌な娘だなぁって思ったけど、今の陽狐ちゃんの反応を見ていると、素直で可愛いなって思えてきた。
だから友達になろ、陽狐ちゃん。」
「グスン……グスン……喜んで……なの…じゃ………磨琴様」
泣きながら喜んでいる、余程私に憧れを抱いてくれていたのだろう、その狐の少女、焔陽狐の笑顔は化かされているのでは無いか?と思える程輝いていた。
そして歩きながら帰り道の途中まで、一緒に色々な事を話した、
まず、耳と尻尾は普段『玉藻』の能力の1つ『擬態』で普通の人間に姿を変えているらしい、そのお陰で、もう1つの『玉藻』の能力の1つ『炎操作』だけだと誤認されているらしい。
体質をバレないようにしているのは流石だが、
せっかく可愛い容姿が勿体無いと思ってしまう。
そのせいで陽狐ちゃんが今朝猫娘と呼んでいた少女、猫条ミミと言う子を私が来る前の日、つまり入学式の日に自分と同じケモ耳の娘でも擬態出来ない事でからかってしまったのだと言う。
そしてさっき私のが帰ろうとした時、つけて来たのは、御剣先輩が暴れていると聞いて駆け付けたのだが、もう私が倒してしまっていて、それを見た陽狐ちゃんが私が魔法女王だと思い気になって追って来たらしい。
後は戦時中の出来事とかを話した。
それを聞いている陽狐ちゃんは目を輝かせながら夢中になって、真剣にその時の心境等の細かい所まで、聞いてきた。
さては、魔法女王ヲタクだな?
それに、この秘密の事も絶対に内緒にすると聞き飽きる程念押しして言っている、ばらす事はしないだろう、彼女も秘密自体を宝の様な扱いをしていた、それにしても、今朝の態度とは裏腹に、
根はものすごく素直で、耳と尻尾も生えてて、
めちゃくちゃ可愛い!!もふもふしたい。抱きしめたい。彼女にしたい。
ご注文は狐、お持ち帰りで。
こほん……それはさておき。
そんなこんなでとてもとても可愛いツンデレの(デレ始めればちょろい)友人、いや、親友と言う存在が出来た。
前回磨琴が、「翼は抜けている所がある」とか言っていたけど、絶対磨琴も人の事言えないくらいに抜けてる、やっぱ姉妹ですね(笑)